東京の一角にある町帝釈台たいしゃくだいの東京の帝釈台にある一軒家に、一人の少女が訪れた。
「久しぶりー、リッキー」
「雪音、久しぶりって言っても3日ぶりだろ」
リッキーと呼ばれた少年は、ゲームに夢中になりながらも応える。
「それはそうだけど、私にとっては久しぶりなの!」
「わかったよ、雪音。で、またゲーマー協会に戻って欲しいって言いに来たのか?」
綺羅星力人、通称リッキーは。幼馴染の戌上雪音の問いに、少々呆れ気味に返した。
「そうじゃないの。リッキー、教えて欲しいの! なんでゲーマーを辞めたの?」
雪音は、ずっと気になっていた疑問を口にした。力人がゲーマーを辞めた理由は、彼女にとって大きな謎だった。
「そんなこと知ってどうする? 俺がゲーマーを辞めた理由なんて、雪音が知っても何も変わらないさ」
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「ちょっとリッキー、どこに向かってるの?」
「どこにだっていいだろ。それに、この道だったら雪音もわかると思うし」
そう言いながら力人は少し足を速めた。
力人を追いかけていくと、見なれた場所が見えた。
力人が向かった先は、力人や雪音が、フリースクール時代によく子供達と遊んでいた公園だった。
「リッキー!」
力人を呼ぶ声がしたと思うと5、6人の子供達がやってきた。
「ねえ、リッキー、今日は負けないからね」
子供の一人が、リッキーに言う。
「どうかな、俺は最強のゲーマーだぜ。手加減なしで行くからな。」
少し冗談混じりに、しかし真剣な目で答える。
「雪音さん、こんにちは」
子供の一人が、雪音に挨拶し、力人の元へと走って行った。
「(リッキーを見てると、ツルギさんを思い出すな……)」
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つい先日まで、リッキーと雪音はフリースクール〈rainbow road〉で中学生活を送っていた。そこには、プロゲーマーのツルギがいた。
彼はフリースクールの先生、鶴城美咲つるぎみさきの兄で、よくrainbow roadを訪れては、力人達にゲームの楽しさやコツを通して人間性や協調性を伝えていた。
「ゲーマーに必要なのは、どんな状況でも楽しむことだ」
彼ツルギの言葉を、力人と雪音は今でも鮮明に覚えている。2人にとって、ツルギはゲーマー人生の師匠であり、特に力人にとってはゲーマーとしてだけでなく人間として人生を変えてくれた恩人だった。
しかし3ヶ月前、彼はバルバロイとの戦いで命を落とした。力人はその事件を機にゲーマー協会から去り、雪音はフリースクールでの生活を続けていた。
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雪音はそう思いながら力人とツルギを重ねていた。
しかし平穏な日常は突如崩れ去る。
突然風が強くなったかと思うといきなり周りの木々が切断されていった。
「こ……怖いよー!」「……助けて!」
突如現れた巨大な旋風は次々と公園にいた子供達や人々を襲っていく。
平和だったはずの公園は地獄絵図へと変わっていった。
そして旋風から腕に蟷螂の鎌を付けた怪人が現れた。
バルバロイ、異空生命体とこの怪物たちは、別の世界からやって来ては次々に人々を襲い時には怪物へと変貌させ、世界に混乱をもたらす存在だった。
「バルバロイか……!」
そう言ってバッグに手をつけようとする力人を雪音が静止する。
「安心して、私が守るから」
雪音はコントローラーとカセットを取り出し、カセットをコントローラーに差し込む。
『Trans change:スノーハウンド!』
コントローラーから音声が流れ、雪音の服が変わっていく。
変身した雪音は蟷螂のバルバロイの攻撃を避けながら向かっていく。
「能力スキル:冷凍拘束フローズン・バインド」
雪音はコントローラーのボタンを押し掌を大地に置き、氷の波動をバルバロイに放つ。その波動にバルバロイは氷に包まれ、動きを封じられた。
「シャシャシャ……シャシャ……」
バルバロイは氷の中で暴れ、脱出を試みる。
「リッキー、今のうちに子供たちを連れて逃げるよ!」
「まだだ、雪音、奴はまだ倒れてない」
「そんなこと言ったって……」
雪音がそう言いかけたその時背後から何かが飛んできた。
それは蟷螂のバルバロイが飛ばした鎌であった。
「キャッ」
「雪音!」
雪音は逃げ遅れた子供を庇ってコントローラーが外れ、変身が解除されてしまった。
力人は雪音の元に駆け寄り、雪音のコントローラーを見つめる。
「(雪音は子供達を守るために、明らかに実力差があるバルバロイに立ち向かった……それに比べて俺は……その場で見ていることしか出来なかった。今、俺にできることは……)」
力人はふと自分のバッグを見た。
「シャッシャッシャシャシャ」
氷を壊し、動き始めた蟷螂のバルバロイが雪音に襲いかかったその時
「うおおおおおお!」
助走をつけた力人がバルバロイに向かってパンチをくり出した。
「シャシャ?」
力人の急襲によりバルバロイは大きく体制を崩し倒れた。
「雪音のおかげで、思い出せたぜ」
「「リッキー!」」
眼思わず雪音と子供達は驚いた表情で声を上げた。
「これから見せてやるよ、攻略本にも攻略サイトにも載ってない、俺流最強のゲーマーの攻略ってやつをな」
強く言い放つと同時、力人はバッグから取り出したコントローラーにカセットを差し込んだ。
「トランス……チェンジ!」
力人の声と同時に音声が流れ、力人を虹色の光が包み込んでいく。その様子に、バルバロイは鎌を振り上げ、襲いかかった。
「遅いんだよ」
虹色の光が包み終えたと同時、翡翠色のユニフォームを身に纏い、頭部にはヘラクレスオオカブトの角を模した兜をかぶった力人改めスカイリッキーは拳でバルバロイの鎌を破壊し、回し蹴りでバルバロイの動きを吹き飛ばした。
「シャシャシャシャァーーーーーーーー!」
両腕の鎌を失ったバルバロイは叫び声をあげる。
「やっぱりな。鎌を破壊されたら何も出来ないってわけか」
半狂乱になったバルバロイは叫び声を上げながら、リッキー達に向かっていく。
「さて、そろそろゲームセットってところかな」
スカイリッキーはコントローラーのスティックを上下左右に2回動かし、AとB と書かれたボタンを押した。
「 EX奥義エクストリームスキル:大竜巻斬グラン・トルネード」
リッキーは虹色に輝いたコントローラーから取り出したヘラクレスオオカブトの頭角を模した剣を取り出して振り回し、作り出した竜巻でバルバロイを打ち上げた。
「シャシャシャシヤーーーーーーーー」
「これでゲームセットだな」
リッキーは落下してきたバルバロイに回転切りをした。
サイコロステーキ状になったバルバロイの骸は灰化し、消滅した。
「攻略完了だぜ」
そう言いながらスカイリッキーはコントローラーを解除する。
「リッキーやったわね!」
そう言いながら雪音はリッキーに駆け寄る。
「雪音、ありがとな。俺、もう一度ゲーマーとして戦っていくよ」
力人は雪音に対して微笑んだ。
「さてと、ゲーマーとして戦うと決めたが、どうすればいいんだ?所属しているチームとかないんだが……」
「じゃあ、フリーランスでやっていくのはどう?」
決意はしたが、その先を考えてなかったため、慌てる力人に雪音は提案する。
「フリーランス?」
「そう。今、バルバロイのせいで、人手不足になっていて困っているところもあるわ、そこと契約して護衛やバルバロイと戦うところを動画にして宣伝して、それを見た企業と契約して専属ゲーマーになってお金をもらうとか。一応私も、フリーランスだけど」
「えっ雪音、無所属なのか?だってあの時〈Herculesヘラクレス〉のリーダーになれと俺は頼んだはずだが……」
「うん、あの後、協会からリーダーが違反したチームは良くないって言う理由で解散させられちゃって…入りたいって言っていた人たちもみんな別のチームに行ったりしてバラバラになっちゃって……」
そう言いながらも雪音は少し泣きそうになっていた。
「おい、雪音泣くなって、一度、休んで元気出せって」
「ありがとう。リッキー、こういう時は優しいのね」
「雪音、一言余計だろ、あと、さっきのバルバロイとの戦いで疲れてるだろうし、一度休め」
そう言うと力人は雪音をベンチに座らせた。
その時、一人の子供が力人に質問した。
「ねぇリッキー、ゆきねーちゃんは大丈夫なの?」
「ああ、雪音は大丈夫だ、ただ疲れちゃっているだけだから、家に連れて帰る。お前たちは先に帰っててくれ、ゴメンな、本当はみんなとゲームしたかったけどな……」
悲しげに謝る力人に子供の一人が言った。
「ううん、こういう時はゆきねーちゃんの方が大事だよ、だって女の子は大事にしなさいってママが言ってるもん」
「そうか、じゃあ、雪音を連れて帰るからな」
そう言うと力人は、雪音を連れて帰っていった。
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「雪音、落ち着いたか?」
「ありがとう、リッキー」
泣きかけていた雪音は少し良くなったが、ふとある場所を指さした。
雪音の指さした先には、家の前に黒い車が止まっていて、中からスーツの男が出てきた。
「ねぇ、あれってリッキーの家だよね?」
「そうだな、少し話を聞いてくる」
リッキーは家の前のスーツの男に話しかける。
「おい、なんで俺の家の前にいる?お前は何者だ?見たところ泥棒じゃなさそうけど」
その質問にスーツの男性は答える。
「私は株式会社DREAM AND HOPEの社員、真壁と申します。あなたが、スカイ・リッキーさんですね?あなた、降格されてから6ヶ月以上も、ゲーマーズハウスを株式会社DREAM AND HOPE に返却しませんでしたね?これは規約違反です」
スーツの男は、淡々と述べ続ける。
「おい待てよ、なんでいきなりなんだよ!? そんな話、聞いてねーぞ!」
「規約は規約です。もしもう一度住みたい場合は、四神以上の階級に昇格するだけです。3日後に新しく入居する方との契約も成立してますので、今すぐ、退居してください。では」
突然の事に驚く力人に真壁は真顔で答え、車に乗って去っていった。
「これからどうするんだよ…せっかくゲーマーとして戦っていくって決めたのに……」
がっくりした様子の力人に雪音は提案する。
「じゃあ、マッハの家に住めば?」
「マッハって四神の一人か?なんで連絡先知ってるんだ?」
「前にオフ会で会って、その時にリッキーの話になって、連絡先を交換した」
「なるほどな、でもなぁ、アイツには最強のはずの俺が2回も負けたし。あんまり好きではないんだよなぁ」
「そうだったもんね。じゃあ、マッハと連絡が取れるまでうちにいていいよ。(私ってば、バカバカ、なんで、困っているからって異性の幼馴染を自分の家に泊めるわけ?)」
「えっいいのか?雪音だったら、嫌がると思っていたけどな」
「別にリッキーがいいと思うなら住んでもいいよ。ただし、私が許可した時以外は私の部屋に入らない事! いいね?」
「はいはい、分かったって、じゃあおとこばにあまえてってことで」
「それを言うならお言葉に甘えてでしょ」
「そうそうそれそれ」
力人は自分の家から必需品と貴重品を持ち出すと、雪音と並んで雪音の家へ向かっていった。
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その夜、とあるビルの最上階にある大きな部屋〈天帝の間〉にて二人の人物が話していた。
片方は高身長の青年で、もう片方は始皇帝の様な漢服の顔には御簾と白い布をかけ、腰には神々しさと禍々しさが合わさったようなコントローラーを装着した不思議な格好の男であった。
「どうやらスカイ・リッキーが復活したそうです。天帝陛下」
高身長の青年、御中王我御中王我みなかおうがは天帝と呼ばれた男に報告する。
「そうかそうか、報告ご苦労。今のところは彼を生かしておけ」
「それは何故ですか?天帝陛下」
「近頃、バルバロイも増え、さらには強くなってきている。強大なバルバロイを殲滅するまでは、彼を自由にしておけ」
「で、でも、彼は私との戦いに不正し勝利した者、そんな彼が最強のゲーマーであるはずは……」
「日本プロゲーマー協会会長であるオレに何か意見でも?それとも彼が復帰することに何か問題でもあるのかね?」
追放したはずの人物を復帰させようとする天帝の様子に王我は驚きの声を上げるものの、天帝の威圧に言い返すこともできなかった。
「いえ、何も。報告も済みましたので、では」
報告を終えた王我は軽く天帝に礼をし、自分の控室へ戻った。
「何故なんだ……なぜアイツリッキーが急に……」
王我は一人、控室で呟いた。
皆様、お待たせしました。
最新作は〈SKY RICKEY〉です。
これは異世界転生がなぜ起きるのか?そして転生させる異世界人の目的は何なのか?という疑問から考え出したものです。
よろしくお願いします。
最終更新:2025年03月08日 03:22