仮面ゲーマー ~ SKY RIKEY外伝 プロローグ:『イナゴ』

―― 思い出すのは、いつもあの時のことだ…… ――

―― 『ふみやちゃん!!こっち!!』 ――
―― 『フミヤ!!走れ!!』

―― 爆発音が響く ――
―― 炎が燃える ――
―― 瓦礫に足が引っかかり、助けてと泣き叫ぶ声が聞こえる…… ――
―― もしも地獄というものがあるなら…… ――
―― この熱さが……この断末魔が……多分その地獄なのだと思う…… ――
―― そんな中……父さんと母さんは……俺のことを護って……一緒に逃げて…… ――

―― 『あっ!!』

―― 母さんが、転んだ…… ――

―― 『ふみやちゃん!!逃げて!!』
―― 『母さんのことは俺に任せて、お前は早く逃げなさい!!』

―― 父さんと母さんを置いて……俺は逃げる…… ――
―― 背後から……誰かの叫び声が聞こえる…… ――
―― 誰の叫び声なのかは……考えない…… ――
―― 考えたらきっと……振り返ったらきっと……走れなくなる…… ――
―― そう確信しているから……走る ――
―― 振り返らずに……ただ……走る ――
―― 地獄を見ないように ――
―― ただ逃げるために…… ――
―― 走る。走る。走る。走…… ――

【起床時間です!!】

「ハッ!!……ハァ……。また……『あの日』か……!」
いつものように俺は目覚める……。あの日の地獄の中で逃げまどっている間に、『施設』の起床の合図によって『現実』にたどり着いている……
あの日からもう2年以上……毎日……毎日……繰り返してきたことだ……
「……顔を洗うか」
俺はだるさの残る身体を起こして、洗面台に向かう
両手の掌の上に水を蓄えて、ぱしゃんと一気に顔にぶつける
水の冷たさが俺の意識は完全に『地獄』から『現実』に引き戻してくれる
後はまず歯を磨く。そして髭をそる。そうして身支度を整えた後に……
俺、藤松 文哉(ふじまつ ふみや)のいつもの一日が始まる……

俺たちが暮らしているこの『施設』は、所謂孤児院だ
2年前……突如俺たちの住む『世界』とは違う場所から、バケモノたちが攻めて来た……
それによって俺の父さんと母さん……色んな奴らの親が死んだ……
そうして身寄りのいなくなった俺たちは……この『彗星院』で暮らすことになった……
ここで俺たちは、自立が出来るようになるまで生活をする。自立が出来たと判断される定義は、『仕事に就けたか』どうかだ……
毎年、何人かの人間がこの施設を『卒業』する
進路は各々それぞれ違うようだが、施設の人間や学校の先生と相談して決める
資金的な問題で、奨学金を貰えた人間以外は、大学にあがる人間はいない
みんな15~18の間にどこかに就職して行ってしまう……
そんでもって俺は、2年前既に高1だったから、こうして18になるまでここで2年間暮らした
そして……俺も小さい町工場への就職が決まった
そんでもって今日は……学校に行く最後の日……卒業式だ……

「ほい!今日が卒業式の子にはサービスするよ!!」
食堂のおばさんは、俺にサービスでおかずのシャケを一匹多く盛ってくれた
「ありがとうおばちゃん」
「いやあ寂しくなっちゃうわねえ!最後はシャキッ!と決めて来なさいよ!!」
「はいはい。ありがとね、おばちゃん」
俺はそこまで食べる方ではないが、おばちゃんのご厚意を無下には出来ない
なので頑張って胃袋の中に普段よりも多い量の魚を掻き込んだ

俺はいつもよりも重い腹を抑えながら、最後の登校を行う
学校に来ると、やり慣れたルーティーンを終えて、自分の教室で最後のホームルームを行う
そして卒業式が始まる……

BGM:『咲いて』(合唱)[原曲歌唱:everset]

特に特別なことは起こらなかった
普通に校歌や卒業曲を歌って……
普通に卒業証書を貰って……
普通に卒業式は終わった……

すると、あいつはいた
でも、状況はかなり最悪だった
「いやッ!やめてください!!」
「なんだよッ!!いいだろ!?」
「こっちの方でも『卒業』しようぜぇ~!!」
「いやッ!いやッ!!」
……本当に、最悪だ
同じ施設の屑の二人によって……あいつは襲われていた……!!
「何やってんだてめえらァ!!」
気付けば俺は叫びながら屑どもに向かって飛び込んでいた
「うわっ!!てめえ!!ネクラの分際で何してんだよ!?」
「調子乗ってんじゃんじゃねえよ!!」
多勢に無勢というものだろうか
喧嘩慣れしている二人に喧嘩慣れしていない俺が勝てるはずもなかった

―― ふみやちゃん! ――

声が……聞こえる……
これは……
母さんの……
声……
そして……
母さんの……
ぬくも……り……

「…………やちゃん!……みやちゃん!ふみやちゃん!」
「ッ!?」
気付くと俺は、アイツの膝を枕にして、介抱されていた……
「良かった!!気付いてくれた!!」
「泉……さん……?」
俺はあいつに……泉 桜子(いずみ さくらこ)に声をかける
「俺……寝てたのか……?」
「うん……。ボコボコにされたせいで気を失ってた……」
「そっか……。かっこわりィなぁ……!」
「ううん……!かっこよかったよ……!あいつら私に何も出来なかったし」
「そっか……。どうにかなったかァ……!良かったァ~……!!」
俺は安堵する
桜子は優しく俺を見下ろしていた
そうして立ちあがれるようになるまでの暫くの間……俺は空を……桜子を眺めながら横になった……

その後、俺たちは18時頃に施設に帰って来た
「おかえりなさい。フフッ。しっかりしてきたみたいですね、『卒業』」
 カウンセリングをしに度々この施設にやって来るシスター服の女性が、俺と桜子にそう言ってきた。悪戯な笑みを浮かべていて、何もかも見透かしているかのような雰囲気があった……
「え?は……はい……」
「うぅ……」
俺たちは『心当たり』があるので……顔を赤くしてシスターから目をそらした
保健室で傷の手当てをしてもらってて……そのまま自然と『そういう』雰囲気になって……そのまま……
「おう!お前ら!」
「さっきは悪かったな!大丈夫か?傷腫れてないか?結構強くぶん殴っちまったからなぁ~!」
桜子に『乱暴』して……俺を散々ぶん殴った二人が、何食わぬ顔でそう言ってきた
「どの面下げて言ってやがるんだてめえら……!」
「あはは~……。まあ、許しちゃくれないよな……」
「でも今はなんつうか……『スッキリ』したっつうか……幼稚な行いをするような自分からは『卒業』したっつうか……そんな感じなんだよね。だからさ!許してくれないだろうけど謝るよ!ごめん!!」
二人は俺たちに頭を下げた
シスターは嘲るような笑みを浮かべて二人を眺めていた
「あぁ……うん……。反省したってことは分かったわ……。一生許す気はないけど……」
桜子は、動揺しながら二人にそう言った
「そうだな。普通に犯罪だったもんな。警察に突き出されても文句言えないもんな」
俺は追撃を加える
「「お!お許しをぉ~!!」」
二人は土下座した
そしてそのままそそくさと俺たちの前から消えていった……
「なんだよあいつら……?」
「さいってい……!」
俺たちは呆れながら、二人を冷ややかに見つめる
「フフッ」
シスターは嘲るように二人を見ると、ゆっくりとその場を去った
「……まあ、いっか。どうせ俺たちはもうすぐ『卒業』するんだ。どうせ暫くしたら無理に顔を合わせる必要もなくなる……」
「うん。そうだね。でも……」
桜子は、俺の手を繋ぐ
「え?」
「卒業しても……出来るだけ……一緒にいよ?私たち……」
「……うん」
俺は、桜子の手を強く握り返した

―― そこに……いつもの地獄はなかった…… ――
―― いつもいる父さんと母さんの代わりに……そこには桜子がいた…… ――
―― 俺は桜子と手を繋いでいる ――
―― お互いの温もりを感じている ――
―― そうして二人で……桜の降りしきる道を進んでいく…… ――
―― ずっと……ずっと……ずっと……ずっと…… ――
―― ず……あれ? ――
―― 温もりが……熱に変わる…… ――
―― 手にかかる重さが……軽くなる…… ――
―― 周囲にばちばちという音が響き……熱が広がっていく…… ――
―― 桜の木が……燃える…… ――
―― 周囲が……『地獄』と化していた…… ――
―― 俺は慌てて桜子の方を見る ――
―― そこには……燃える制服の袖と……焼け焦げた腕の骨しか…… ――
―― なく…… ――
―― て…… ――

「うわぁぁぁ!!」
 俺は、寝汗でびしょびしょになりながら目を覚ました
「なんだよ……?あれ……。俺は……不安なのか……?」
幸せが……唐突に『地獄』になる……
今までとは違う悪夢に対して……
俺はそう解釈した……
俺は多分……怖いのだと……
やっと見つけた幸せが灰のように崩れ去ることが……
「ええいッ!!」
俺は不安を掻き消すように顔を洗う
そして無理矢理気分を切り替えると……
いつものように食堂へと向かった……

「あ……おはよう」
「う……うん」
気まずい
というより、気恥ずかしかった
昨日、『卒業』した手前、何だかいつものように接することが、お互いに恥ずかしくなっていた
「おやおや?お熱いねぇ~お二人さん!」
「こりゃあ『ヤッてる』ねえ」
施設の男友達と女友達が冷やかして来た
「は!?そ、そんなんじゃねーし!!……嫌、今のなし。『そんなん』だよ」
「え!?そそそ、そんなストレートに認めちゃう感じ!?」
桜子は困惑している
俺も恥ずかしかったけど、彼女はもっと恥ずかしそうだ
「ずっとからかわれるのも癪だろ?だったらもう認めちまった方が気が楽かなって」
「成る程……。それじゃあ、こほん!……ふーみん!!とっとと食堂行こうよ~!!」
今度は俺が困惑する
「いやいやいやいや!!それはストレート通り越して魔球だよね!!無理し過ぎてるよね!?」
「う……うぅ~!!」
「だァ!!痛い痛い痛い痛い!!そんなに引っ張らないでよ!!」
俺は羞恥が極まった桜子に食堂まで引っ張られる
俺は俺で大分恥ずかしさを感じていた
「「……ごちそうさまです」」
からかっていた二人が手を合わせてこちらを拝んできた
こいつらァ……!!
そういう言っている間に、俺たちは食堂に入っていった……

食堂に入ると、カレーが置かれていた
「朝からカレーって重くない?」
「食べないの?」
「いえ、食べます!」
「おかわりもあるよ!」
「ありがたいです!」
俺はカレーを食べる
同じ食卓にいる施設のみんなもカレーを食べる
美味い
けど、ちょっと苦い?
でも美味い
スプーンが止まらない
「おかわり!」
「私も!」
「俺も!」
「あいよ!!」
俺含めて、みんなどんどんカレーを喰っていく
喰っていく
喰っていく
喰っていく……

そうしている内に……
意識が……
段々と……
遠ざかって……

「よし。そろそろだな。薬品放射!!」

声が聞こえる
同時に、上空で栓が開いたかのような音がした
暫くすると、生ぬるい雨が降って来た
おかしいな?
ここは屋内の筈
雨漏りにしてもこんなに濡れるなんて考えられないが……
そんなことを考えていたら、雨から喉薬のような匂いがした
それだけじゃない
肌が、ひりひりする
ひりひりする
ひりひりする
ひりひりする

「では第二段階だ。電波を流せ!!電磁波もだ!!」

声がする
そのすぐ後に、耳をつんざく音が聞こえる
「ッ!?」
痛い
キーンとする
耳を抑えて、地面に突っ伏す
すると次は痺れるような感覚が身体を走った
痺れる
痺れる
痺れる
痺れる
痛い
熱い
気持ち悪い
痛い
痛い
痛い痛い痛い痛い
成長痛みたいだ
無理矢理何かに成ろうとしているみたいだ
そして、熱い
風邪の時みたいに、熱い
気持ち悪い
カレーを全部吐き出しそうな程に気持ち悪い


なんだこれ?
なんだこれ?
なんだこれ?
なんだこれ?
俺に何が起こっている?
周りはどうなっている?
俺は……俺『たち』はどうなって……

……痛い
痛い
思考が……
痛みと……
熱と……
吐き気に……
押しなが……さ……れ……て……

……

痛い

痛い

痛い痛い痛い痛い痛い!!
熱い熱い熱い熱い!!
気持ち悪い!!
気持ち悪い!!
気持ち……!!

―― ふみやちゃん!! ――

わ……!!
る……!!

吐き気
嘔吐
嗚咽
後を引く吐き気
その分の嘔吐
嗚咽
そして、落ち着く
痛みも、和らぐ
熱も、引く
そして、視界が開けて……


【※●×▲■※!!】
【※●×▲■※!!】
【※●×▲■※!!】
【※●×▲■※!!】

地獄
その光景と、聞こえて来る哀叫を前に浮かび上がったのは、そんな言葉だった
バケモノだ
バケモノがいる
テーブルの上で
厨房だったと思われる場所で
瓦礫の下で
呻いている
そう、俺が、俺たちが今までいた場所
食堂だった場所はいつの間にか崩れ去っていた
瓦礫の中で、バケモノどもがひしめき合っていた
そう、まるで『あの日』のように……
あの日俺から命以外の全てを奪ったバケモノ……

バルバロイのように

だが、おかしい
コイツ等は、何かが違う
例えば、コイツ等は呻いているか、バケモノ同時で互いを貪り合っていた
あの日、一方的に全てを奪った奴らとは、似ても似つかない
それだけじゃない
コイツ等の中には、皮膚に布がへばりついている
その布は、衣服や下着のものだった
少なくとも俺の目の前にいるバケモノは……
先程俺たちをからかっていた男女の着ていた服の布に似ているものが付着していた
つまり……
コイツ等は元々……
「!?」
瞬間、目に痛みが走る
そして、段々と視界が多数の六角形に隔たれていき、真後ろ以外の後方まで視える箇所が伸びていく
【ナンダヨ……コレ……!?ッ!?エ?ナンダコノコエハ!?コレガ……オレノコエ!?】
言葉を発していなかったから気付くのが遅れたが、俺の声色は変化していた
嫌、声や視界だけじゃない
手も……おかしい
俺の手として視ているものは、さっきまでの俺の手ではなかった
昆虫のような皮膚だった
指も昆虫の触覚に近いものに変化していた
【ナンダヨ、コレ!?オレモ、『アレ』ニナッテル?オレモ……バケモノ二……!?】
俺の思考は、最悪の仮説をたてる
嫌、理知的な思考が出来ている以外は仮説も何もない
俺は、俺はもう『人間』じゃない
少なくとも身体は……人間じゃなくなっている……
【●×※▲■!!】
【!?】
慟哭
というよりも哀しき哀叫が響く
バケモノの一人が、俺に近寄る
同時に俺の視覚には、拒絶したい情報が飛び込む


彼女の服だ
桜子の服の布が肌にへばりついている
俺しかしらない筈の太ももの裏のほくろまで見える

嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
あってたまるかそんなこと!!

俺も……桜子も……もう人間じゃ……ない……?

【フ……ミ……】
【!?】
【フ……ミ……ヤ……チャ……ン……】
【ア……アァ……!!】

ああ
彼女が搾り出したような言葉で
最悪が本当に変わった
変わってしまった

なんだこれは?

なんでこうなった?

なんで俺たちから……また幸せを奪うんだ?

なんで?

なんでなんでなんでなんでなんでなんで

なんでだよ?

【●×▲※■!!】
【!?】
桜子に、別のバケモノが喰らいつく
付着した布からして……あのクソ野郎の二人の内の一人だ……!!
【ヤメロォ!!】
気が付くと、俺はクソ野郎だったモノを殴り飛ばしていた
クソ野郎は脳髄を床にぶちまけて動かなくなった



殺した?
相手はもう人間じゃない
人間だった時もクソ野郎だった
俺だってもう人間じゃないかもしれない
それでも、殺してしまった?
俺が?
人を?

そんなことを考えている間に、俺の視界に大量のバケモノが飛び込んできた
【!?】
奴らは何かを感じ取ったのか、一斉に襲い掛かって来る
一斉に喰らいついてくる
【ガァァァァ!!】
痛みを感じ、自分のものとはまだいまいち実感できない断末魔があがる
同時に、もがく
あがく
その過程でバケモノの脳髄を無我夢中で粉砕する
生への渇望が、俺の罪を加速させる

脳髄と共に溢れだしていく。俺の罪が。数えきれない程に
正当防衛になるのか?
嫌、そんな次元か?
冷静に考えられそうになった頃には、自分の身体はバケモノとバケモノになった己の体液で赤く染められていた

そして、そんな俺の隣で、俺の最愛だった筈の存在が貪られていた

【××××××!!!】

悲痛な断末魔をあげて、俺の最愛はもがき苦しむ
それを見て、聞いた俺は、怒りと哀しみに身を任せて、噛みついてくる周囲のバケモノを振り切って、彼女に群がるものを払い除けようとする

だが、その場には血だまりだけが残る
彼女だったものの残骸が遺っていた

虚無
瞬間、俺の心に去来したものを形容するなら、そう名付ける他なかった

怒り
哀しみ
困惑
混ぜこぜになった感情が一周回って、どこか遠くに置き去りになったかのようだった


「素晴らしい!!」
【!?】

がらんどうの心に響いて来たのは、周囲の地獄とはあまりにも場違いな明るい声だった
声がした方を見ると、そこにいたのは銀色の機械を胸部や腕や脚に張り付けた軍服のような服を着た男が立っていた。これまた軍人らしい帽子を被っており、目には眼帯が付いていた
そしてその周囲には、ニヤニヤしている見覚えのある男一人と、ばつが悪そうに俺から目を反らす男性と女性がいた
院長さん……掃除のおじさん……食堂のおばさん……
【ナンデ?ナンデアンタラガソコニイル??ソコノオッサンハダレ??】
「ハハハ!!哀れなものよ!!だが君に襲い掛かる不条理ももう終わりだ!!何故ならばァ!!君は私たち『カナヴァル』の屈強な戦士として生まれ変わり、にっくき異空からの使者たちを屠ることが出来るのだからなぁ!!」
……は?
「いやぁ~!!お眼鏡に叶う個体が見つかって良かったですよ!!高い金をかけて見ず知らずのガキどもを育てた甲斐がありましたよ!!」
「うむ!!院長よ!!大義であった!!我らの元に『就職した個体』も大多数が戦力として安定運用されている!!よくぞここまで優れた個体を集めたものだな!!」
……は??
「……」
「ごめんね……!ごめんね……!!」
……は???

こんな、こんな奴らの為に……
そんなわけ分からないことの為に……
俺は……
俺たちは……!!

【ッ!?】
呆ける俺に向かって、かつて人間だったものたちが群がって来る
噛みついてくる
ああ
俺も『そっち側』なら良かったのに……
そうすれば……こんな後悔と怒りにまみれて……
人間なのか人間じゃないのか分からないまま終わることなんてなかったのに……


≪君はまだ死ぬには早いよ≫

【!?】
声が聞こえた

≪今私は、君にしか聞こえない声で話しかけている。所謂モスキート音の亜種みたいなものだね≫
俺にしか、聞こえない?
≪君が、まだ『人として』生きていきたいのなら、これから投げ入れられるコントローラーを手に取ってくれ≫
コントローラー?
もしかして、バルバロイと戦う力を持つ存在……『ゲーマー』が使うあの……?
≪君はこのままだと、死ぬか道具にされるかしか末路がない。ダメで元々と思って、手に取ってくれないか?君に『その意思』があればだけどね≫
信用しきれない
だが、この声の言う通りだ
このままだと『人間としての』俺は確実に死ぬ
少しでも希望があるのなら、ダメで元々だ……!!
【ッ!?】
決意をした瞬間、俺の視覚にナニカが飛び込む
丸い容器にCDのような円盤が挿入されているものだった
俺は、どこからともなく飛んで来たそれを手に取った
【ッ!!】
≪それが君の答えだね?よろしい。そのコントローラーを腰に持っていってくれ≫


♪:『BLACKSUN』 作曲:松隈 ケンジ

【ガァァァァ!!】
俺は周りにへばりついてくるバケモノたちを振り払う
「おお!!素晴らしい!!」
俺が手に取ったものに気付いていない軍服のクズが癪に障る音を出す
怒りが湧きあがる
俺は、その怒りのままに、コントローラーを腰に持っていく
すると、コントローラーからナニカが伸びて来る。そして腰に巻きついてベルト状になり、俺の腰にコントローラーが固定される
≪そのまま右上のボタンを押したまえ。変身コードは……≫
【トランス・チェンジ!!】
俺は指示通りにボタンを押して、変身コードを口にする
そのままナニカに突き動かされるように、手を×の字に交差させて、前方下方に持っていく。指は折り曲げたまま、掌を右斜めと左斜めに向けて
瞬間、コントローラーからハードディスクが回る音と、熱の籠った苦いニオイが出る
そのまま円盤から装甲のようなものが生み出されていき、瞬時に俺の身体を鎧のように覆う
手足や胴体を覆った後に目元から後頭部にかけてを兜のように覆い、最後に口元をマスクのように覆う

不思議だ
今まで感じていた恐怖も、気持ち悪さも、溶けるようになくなって、思考がクリアになっていく
肩に取り付けられた廃熱用の管から煙が噴き出るのを感じる
脚に取り付けられた管からもだ
そうして熱と共に、俺の中のバケモノが抜けていく感じがする
人間としての感覚が戻っていく
それと同時に、矛盾した心の変化も起こる
目の前にいるバケモノたちへの同情にも似た感情が消えていく
そう、良心が消えていく
そんな感覚がした

「な!?外部制御用のコントローラー!?貴様、どこでそれを!?」
クズが今更驚きの声をあげる
「な、何が起こっているんだ!?」
「これは……!?」
「ふみやちゃん……あなたは……」
裏切り者共が驚いている
ふざけるな
散々人様を好き勝手弄びやがって!
今度は俺は弄んでやるよ!!
【×●※▲■!!】
【×●※▲■!!】
【×●※▲■!!】
【×●※▲■!!】
【×●※▲■!!】
邪魔だ
【×●※▲■!!】
ああ、いいぜ
弔ってやるよ
お互い失ったうえに弄ばれたんだ
最期くらい派手に暴れて……
楽しくくたばろうぜ!!
「あああああああ!!」
仮面の下だから籠っているが、声が『人間』に戻っている
どうやらあの蚊の声の通りだったようだ
だが、声の通りじゃなかった所が二つある
一つは『人間らしい』良心が停止していること。ここに関しては俺はまだ人間に戻りきっていない
そしてもう一つは、明らかに『人間』の範疇を超えた力を人間らしく冷静に振りかざせることだ。その証拠に、バケモノどもは俺が殴り、蹴り、叩きつけるだけで肉塊と化していく。これもまた人間とはいえない

分からないな
俺は人間なのか?
それともバケモノなのか?
【×●※▲■!!】
まあ、今はどうでもいいか
俺は飛び込んで来るバケモノに拳を突き出す
それと同時に、腕部装甲の側面に付いていたカッターが展開される。日本刀のような刃はそのまま、バケモノの脇腹を切り裂いた
【×●※▲■!!】
バケモノは倒れる
成る程
この『身体』の使い方、段々と分かって来た
「ハハ……!素晴らしい!!実に素晴らしいよ!!君こそが!!この施設にいる108体の試験体の頂点に立つ存在!!我らカナヴァルの敵を屠る先陣を切るに相応しき!!選ばれし戦士!!虫のような価値の命を統べ、先導し、滅ぼす皇(おう)!!蝗(イナゴ)の狂戦士(バーサーカー)!!イナゴプロブメだぁ!!」
ぷろぶめ?
何またわけわからねえこと言ってやがるこのクズが
「虫のような命?だったらアンタらの命は虫以下だな。これから俺に、ぷちっと潰されるんだからなぁ!!」
俺はクズどもに向けて跳躍する
「バカめぇ!!服従機能(サー・イエッサー)、起動!!」
クズはナニカを起動させた
と思い込んでいた
「何ッ!?グワァ!!」
俺は奴を殴り飛ばす。咄嗟に装甲でガードしたからか、奴はまだ肉塊にはなっていなかった
ったく、バカはどっちだよ
「な、何故だぁ!?何故服従機能が作動しないぃ!?コントローラーには機能の一部として入っている筈だァ!!」
「は?知るかよそんなこと」
俺はカッターを起動させて奴に斬りかかる
「く、来るなぁ!!」
クズは白銀の警棒のようなものを伸ばすと、青白い電気を帯びさせて、振り回す
少し痺れるが、動きが一瞬止まる以外は、さして問題ではない
俺は、クズを何度も斬りつける。執拗に。何度もだ
クズは警棒と装甲のある箇所での殴る蹴るを行い、帯びた電流で俺を少しの間痺れさせる
だが、圧倒的にこちらの方が装甲も肉体も堅く、動きも早い
俺は、クズの肉をじわじわとそぎ落としていく
怒りと哀しみを込めて、冷徹に、ひたすらに、肉を削り飛ばしていく
だが、どうにも面倒になってきた
そう思った俺の脳内に、二つの情報が流れ込んできた
「ならまずはコイツだ」
俺はその情報の通りにカッターに意識を集中させる
すると、カッターはキーンと音を立てながら、刃を真っ赤に変色させる
刃を超振動させることによってチェンソーのように切れ味をあげ、熱線のように焼き切る
所謂、超振動ブレードだ
「なッ!?」
クズは驚く。俺が奴の警棒ごと胸部装甲を切り裂いたからだ
「ぐへッ!!」
俺は困惑するクズを殴り飛ばして距離を取ると、今度は脚に力を集中させる
そして、地面を踏みしめて、駆ける
助走を付けて、一際強く大地を踏みしめ、蹴る
そのまま天高く、飛翔する
そう、これが流れ込んできたもう一つの情報にあった技
俺に埋め込まれたイナゴの脚力と、コントローラーが生み出す廃熱噴射による遠心力が合わさり、強力な質量と速度と重力を生み出す必殺の一撃
「ゲーマー・キック」
「ぐわぁぁぁぁ~!!」
俺は流星のようにクズに向けて衝突する
爆発音と共に、土煙があがる
俺は、蹴りの勢いのままに後方に飛び退くと、再び大地を蹴る。そのまま一直線に弾丸のように飛んでいきながら、カッターを起動させる
「ぽぴっ」
先程の蹴りで内臓と脚がぐちゃぐちゃになっていたクズは、間抜けな断末魔と共に首を切り落とされて、絶命した
ざまあみやがれ
俺はクズが死んだことを確認すると……
「やめろお前ら~!!離せ~!!離してくれ~!!」
「うるさい!!院長!!あんただけは!!あんただけは逃げちゃダメなんだよ!!」
「私らがのうのうと生きていいわけないだろうが!!神妙にしとくれ!!」
裏切りものの方に歩み寄り……
「ひぃ~!!来るな!!来るなぁ~!!ぷぽっ」
頭を踏み潰した
ったく
どいつもこいつも間抜けな声を出して死にやがって
「は……ははは……!ざまあみやがれ……!!怖くてずっと何も出来なかったけどなぁ!!俺はずっとあんたが嫌いだったんだよバ~カ!!」
掃除のおじさんは、潰れた頭に向けて喚いていた
人見知りな俺にいつも親切にしてくれたこと、今でも感謝してるんだぜ
「ふみやちゃん、本当にごめんね……!私たちが弱かったせいで……!!本当に……!ごめんね……!!」
食堂のおばちゃんは、俺に土下座しながら、涙を流し、謝る
あんたの料理、本当に美味しくて大好きだったんだぜ。母さんの料理の次に。この二年間、本当にありがとな

…………
……

さよなら

そう思ってから暫く、俺の意識はぱたりと途切れた
そこから暫くの記憶は、思い出せない


5

「おえぇ~!!うっ!!ヴォエッ!!」
嘔吐
意識が戻った時の俺は、口元の装甲を口を開けるように開いて嘔吐していた
どこかも分からないトイレの洗面台に突っ伏して、吐いていた

どうなっているんだこれは?
俺の身体は……俺の『存在』は今どうなっている?
思考は錯綜しているが良好だ
『人間』だ
だが、この身体はどうだ!?

「!?」
手に力が入り過ぎたのだろう
握力だけで洗面台が割れた
やはりこの身体は、人間ではない
俺は、目元のマスクを取り外す
俺の顔は、痛ましいアザと、昆虫のように変色や変容をしている
ああ!
人間だけど、人間じゃない!
半端だ!半端なままに、俺は生き永らえている
人とバケモノの狭間で、生かされている……!!
「お前は……誰だ?」
鏡の前のバケモノに問う
「俺は誰なんだよ!?」
鏡に映る自分を殴る
鏡に映るバケモノは割れて、砕ける
「教えてくれよ……!誰か教えてくれよォ!!ッ!?うっ!!」
突然、チクッとした感覚と共に、俺の思考はまどろみに落ちていった
≪知りたいかい?自分が『何者』なのか≫
ああ……沈みゆく意識の中で……さっきの蚊の声が……聞こえる……
≪起きたら教えてあげるよ。おやすみ。良い夢を≫
良い夢?
冗談言うなよ……
俺がいつも見るのは……
悪い夢だ……
だから……目が覚めたらきっと……
悪夢から……覚めてる……はず……だ……

♪:『季節は次々死んでいく』歌/amazarashi
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最終更新:2025年04月09日 13:33
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