アットウィキロゴ

人の姿なく、されど争いは絶えず

深い森の中、踏み出した一歩は小枝を踏み折った。

それを、逃さず聞いた男が一人いた。
それがスタートの合図となるなんて、踏んだ彼女は思いもしなかっただろう。
だが、現実に起きたことは取り消せず、戦いは開始5秒にして幕を開いた。

「もう、いやっ……い、いきなり何なのよ」
長いおさげを振り乱し、額に汗して森を駆ける。
彼女を知る誰もが、そんな姿を見たことは無いだろう。
「ゲホッ……もう、息が……」
彼女、パチュリー・ノーレッジは喘息持ちである。
その二つ名は『動かない大図書館』……生き物なのに、普通の図書館と違いは特に無い。

歩くより飛ぶ方が、飛ぶことより動かないことが多い彼女にとって、現状は最悪であった。
二つ名の通り、知識の化身と言っても過言ではない彼女は、当然のように運動不足である。
加えて、もとより病弱な彼女がどれだけ走っても、それは長く続かない。
そして何より、何故だかいつもと違って走るより飛ぶ方が疲れてしまう。

もう逃げ切るのは無理だとパチュリーは悟る。
短いスペルをつむぎ、振り向きざまに魔力を解き放つ。
数発の弾幕が、木を表皮を剥ぎ大地を抉る。

だが、肝心の相手には当たらない。
彼女の存在を認識した瞬間襲ってきた、紅い装束に身を包んだ男には。
「今ので終わりかよ! さっさと終わらせてもらうぜ!」
近づいてくる男の手には剣が握られていた。
まだ切り込むにも距離はある。

咳き込みながらも、パチュリーは必死にスペルの詠唱を続ける。
「げほっ……アグニ、シャイン!」
火のスペルを唱え、パチュリーの周囲から先ほど以上の火の弾幕が男を襲った。
無数の弾幕を前にしても男は怯むことなく進む。

「マハラギッ!!」
男が言葉を紡ぎ、突き出した掌から炎が吹き荒れる。
パチュリーの放った弾幕とぶつかり合い、爆風が土煙を起こし、周囲を覆った。

「むきゅー!?」
驚愕するパチュリーが新たにスペルを唱える暇すら与えず、爆風を割るように男は飛び出した。
「弱いことは罪! 俺より弱い自分を恨め!」
その距離は、もはや男の間合い……凶刃の射程だった。
爆風はパチュリーの視界をふさぐ。
避けることも、死を恐怖する暇もパチュリーには与えられず、剣は脳天に振り下ろされた。


聞こえたのは、金属音だった。
開かれたパチュリーの視界には、距離を置き驚愕に目を見開く紅い装束の男。
「どうした……女子供には襲いかかれても、オレには畏れ逃げ出すか、小僧!」
自身の前に立つ、幻想郷では見たことも無い、屈強な妖怪の姿だった。

「ようやく歯応えのある悪魔が出てきやがったな! お前を倒して、俺は今以上の力を手に入れてやる!」
「このオレを倒す、か。よほど力に拘りがあるようだな」
余裕ある妖怪の声が気に入らないのか、男は目を血走らせる。
「黙れ! アギラオッ!」
先ほどとは違う、一点に集中した炎が妖怪を襲う。

「退いていろ、女」
ドンっと軽く押され、パチュリーは弾かれる。
その直後、パチュリーがいた場所もろとも、炎に包まれた。
「ハハハ、見掛け倒しか! 俺の力を試すことすら……!?」
言葉を遮ったのは、結果だった。
収まった炎の中から、妖怪は多少の表皮を焦がしただけで出てきたのだ。

「中々の炎だったが、カイザーフェニックスに比べれば火遊びにすぎん」
「こいつ……!」
怒りを露にする男を余所に、妖怪は片手を前に突き出す。
「次はお前が耐えてみるがいい……閃熱呪文【ベギラマ】!!」
妖怪が呪文を唱えると、手からは炎――否、それ以上に輝く熱線が生み出された。

「ア、アギラ―――ッ!!」
紅い装束の男がいた場所が、熱線に包まれる。

――そして、爆風が収まった後には大きく抉れた大地だけが残った。

「……殺したの?」
「いや―――跡形も残らぬ火力ではない。うまく逃げおおせたか、そこらに転がっているか……」
パチュリーは周囲を見渡すが、人がいるようには見えない。
隠れているわけではなく、完全に逃亡したようだった。

「けほっ……お礼を言うべきかしら」
「助けたつもりは無い。ああいう輩がいては、考え事の邪魔だっただけだ」
パチュリーのことなど眼中に無い様子で、妖怪は思考にふけっている。

「……まぁいいわ」
荒い息を吐き、パチュリーは座り込み荷物を開く。
ペットボトルの水を飲み、その時目に入った支給品を手に取る。
剣……ではない。一見すればハズレのように思えるものだった。

「これは……」
「おい、女」
先ほど眼中になかったというのに、今度は向こうから話しかけてきた。
「……なに?」
「お前は……死者が蘇ると思うか?」
その発言に、パチュリーは返答する。

「死すまでの記憶を継承し、何代か後に生まれ変わる秘術。死ぬ前に口にすれば、灰になろうと死が訪れることの無い不死の酒。
それなら知っているけれど、死者を即座に蘇らせる術というのは、本で読んだうちでは成功例はないわ」
「ほう、そんな秘術や秘宝があるのか。だが、オレはどちらも当てはまらぬな」
「……オレは、というと」
パチュリーの問いに、妖怪は頷く。

「あの広間に呼ばれる寸前に、オレは命を落とした。間違いなくな。
蘇生の方法ならオレとて知っている……そのどれもが、けして間に合わぬ状況だったがな」
勘違い、妄想……そんな可能性は、おそらくはない。
あの広間での出来事を考えれば、それは起こりうると納得するしかない。

「あの巨大な存在を、あなたは知っている?」
「いや、見たことも聞いたことも無い。だがアレは……神、なのか?」
妖怪の問いに、パチュリーは頷く。

「あの巨大な顔……名乗ったとおりなら、伝承どおりなら……万物の神の名前だったはず。
そして、漆黒の竜と蛇の化身は……その神と敵対するはずの、魔界の王の名と姿をしていた」
「魔界の王だと!? バカな、あのような存在がバーンやヴェルザーの他にいるなど聞いたことも無い!」
バーン、ヴェルザー。その名をサタンと同格のように言う妖怪だが、その名にパチュリーは心当たりすらない。
「あなた、妖怪じゃなくて魔界人?」
「……元、だ。魔族の体はとうに捨てた」
妖怪、ではなく魔族(本人は違うといっているが)はパチュリーを見据える。

「どうやら、オレの知らぬ魔や神に詳しいようだな」
「あなたも、私の知らないことを知っているようね」
一瞬の沈黙が訪れ、先に動いたのは魔族の男だった。
「ここでは落ち着いて話もできん……場所に移動するぞ」
早足で歩き出すハドラーを、パチュリーは追いかける。
動く理由は彼女にも分かる。争いを起こした場所に長時間いれば人が集まる。
さっきのような相手が来ても面倒なだけだ。

だが、パチュリーに魔族を追走するだけの体力は無い。
体力も無く、これ以上喘息の症状が悪化すれば、死に関わるというのに。
「……あれ?」
駆け足で進む自分の足が、驚くほどに軽かった。
そればかりか、呼吸は安定していて喘息の兆候は収まっている。
「……この、鞘?」
胸に抱いた鞘が、まるで疲れを忘れさせてくれるように淡く癒しを与えていた。

「女、どうかしたのか?」
謎を解くよりも、そろそろ気に障ったのかパチュリーは魔族を呼び止める。
「パチュリー……『動かない大図書館』パチュリー・ノーレッジ。それが私の名前よ」
「……そうか、すまなかったなパチュリーよ。ならばオレも名乗ろう。
オレの名はハドラー。『超魔生物』ハドラーだ」
聞いたことも無い種族名を名乗り、ハドラーは再び歩きだす。

「どこに行くの?」
「町に行けば情報も集まるだろう。それまでに、お前の話も聞かせてもらう」
地図を取り出し、現在地を確認する。
たった今、森を抜けて目の前には小屋がある。

おそらくここはA-Ⅳ。近くの町である絶望の町までは距離がある。
調子が良いといっても、もとより体力の無いパチュリーには辛い距離だった。
「案ずるな、歩くわけではない」
ハドラーは荷物から高級そうな装飾の鞘に収められた剣を取り出し、抜き放った。
ぎょっとするパチュリーを気にした様子も無く、ハドラーは虚空に剣を振るう。

「………スキマ?」
パチュリーには、そう表現するしかなかった。
剣を振った空間が、切り裂かれるように割れた。
幻想郷でも高位の大妖怪、八雲紫の能力と良く似ていたのだ。
空間から、鼻息荒く二頭の牛が現れた。
並みの牛ではない。妖怪に変化しても不思議ではないほどの魔力を秘めている。
その背後には、古代の戦争で使われたような戦車が一台。

「支給品の一つだ。後ろに乗れ、オレが手綱を握ろう」
「ええ、そうさせてもらうわ」
パチュリーが戦車に乗り込むと、ハドラーは戦車を進めた。
まるで馬が引くような速さで、戦車は町へと直進する。

「(……流されるままにホイホイとついてきちゃったけど)」
パチュリーは思う。
今更だが、このハドラーという男は神の『裁き』とやらに乗っているのだろうか、と。
「(少なくとも問答無用で襲ってこない分、あの男よりまだマシね)」
そして考える。自分はどうなのか、と。
幻想郷を作り出した最高神は龍である。
それすら身の一部に過ぎないサタンは、おそらくは更に上の存在。YHVHに至っては同等かそれ以上だろう。

逆らってどうにかなるはずもない。
この呪印がある限り、風化した本のように崩され殺される。
もしくは、消し炭も残らず十字の焼印に押しつぶされるか。
かと言って、八人殺害せよと言われ無茶をする性格でもなかった。

「……ハドラー、あなたは名簿に知った名前はあった?」
「いくつかな。部下が一人……元部下が一人、名も見たくない奴が一人。そして、オレの宿敵ともいえる男が、三人」
気のせいか、ハドラーの顔が一瞬綻んだ様に見えた。

「私も何人かいるわ。殺し合わせたいなら、赤の他人を集めた方が効率が良いと思うんだけど」
「悪趣味な神の考えることなど、大方ろくでもない。気にするだけ時間の無駄だ」
たしかに、とパチュリーは再び名簿に視界を戻す。
霊夢に魔理沙、アリス。
図書館にこもるパチュリーにとって、同じ館に住むものを除けば、比較的会う機会の多い三人。

そして八雲紫。
参加しているのが不思議に思うほど、神出鬼没な齢数千年の大妖怪。
何度か会ったことはあるが、あれが掴まるなど想像もできない。
それほどまでに、神と魔王の力が凄まじいということだろう。

奇跡が起きても、五人しか生還できないこの殺し合い。
それが幻想郷の五人となる可能性など万に一つもない。
どうしようもなくなれば、彼女たちを殺して元の世界に帰還する道しかなくなるのだろうか。
まず一筋縄ではいかないだろうし、あまり気乗りもしない。

いつも本を借りては返さない魔理沙にお灸を据えたい気持ちはあるが、殺すほどかといえばNOである。
八雲紫に至っては、弾幕ごっこではない真剣勝負で勝てるか知れたものではない。
「(どう動くにも、知識を得ないと)」
知識は偉大である。
無理だと知るにも、知識が必要だ。
神の呪いが解けるか解けぬか、知識を十全と得るまでわからない。

まずは、目の前のハドラーから。
鞘を抱きしめながら、パチュリーはハドラーの言葉を待った。

「(オレも甘くなったものだ)」
それが、自身に抱いた感想だった。
殺し合いの場で初めにしたことが、人助けとは思いもしなかった。

支給された剣で召還できる戦車……ゴルディアス・ホイールを試しに呼んでみたときに聞こえた戦闘音。
何を思ったか、間に入るなど……以前の自分からは考えられぬこと。
「(感化されすぎたか……アバンと、その使徒たちに)」
正義を語るつもりも、行使するつもりもない。
だが、弱きものを恥じもせず狙うような輩を、放っておける性格ではなくなってしまったらしい。

「(助けに入ってみれば、それほどの弱者でもなかったがな)」
パチュリーと名乗る女は、とてつもない魔力を秘めていた。
ポップに匹敵か、もしくはそれ以上の魔力……まるで体が弱く、使いこなてはいなかったが。
「(……役には立つ、か)」
聞くことを聞いて放り出し、死なれても目覚めが悪い。
足手まといにならぬようなら、向こうから離れるまで行動を共にするのも良いかもしれない。

「(とはいえ、どうするか……一度死んだ身。命など惜しくはないが……)」
そう、自分は死んだのだ。
大魔王の居城、大魔宮でのダイとの死闘に破れ、宿敵アバンの手の中で死ぬ……武人としての本懐を遂げたと言ってもいい。
それを無粋に蘇らせられた自身の怒りは言葉では表せない。
どうやら、先に散った部下のフェンブレンやザボエラまでいるらしい。

ザボエラは……ゴミクズとは言え、かつての自分も大差ない外道。
苦しまずに逝かせてやってもいい。
フェンブレンは、かつての自分が持っていた功名心を強く受け継ぐ部下だ。
かつての自分同様の非道さを発揮しているならば、出来れば止めたいものだ。
アバンたちにも、これまでの非道を省みれば、死んだ身といえ合わせる顔はない。

「(味方は少ない、か。だが、このように命を弄ぶ神も魔王も、気に入らん!)」
頭だけしかない万物の神だという存在……天も地も魔界もない、すべての神だとでもいうのか。
人間の神は捨てたものではないと思ったが、やはり多くの神はろくでもないものらしい。
オレならばともかく、アバンの使徒が神の『裁き』などを受ける必要があるはずもない。
「(あのサタンとやらも、魔界の王と知られる実力者でありながら、神の使い走りとは情けない!)」
理由はどうあれ、神と手を組むなどバーンにも劣る腰抜けではないか。

命を懸けて殺せるならばそうしたいところだが、それでは死んだ男の二の舞だろう。
「(この刻印をどうにかせねばな)」
それでもなお、力の差は歴然ではあるが死の宣告を回避できるのならば、光明は見えてくる。
アバン、ダイたちへの償いの足しにはなるだろう。

「(幸いに、時間はまだあるので、な)」
蘇ったハドラーの体は、万全のものだった。
正確には、自身の最強武器であるオリハルコン製の剣「覇者の剣」は抜き取られていた。
だが、灰となったはずのその体は、超魔生物となったあの日の姿そのままだったのだ。

その事実に、戦慄した。

それはつまり、自身に埋まるあの最凶最悪の爆弾――黒の核晶まで復活していることを意味していたのだから。
だが、結果から言えばそれは杞憂だった。

自身で胸を切り裂き、内部を露にすると、そこには黒ではなく、紅の結晶が埋め込まれていた。
荷物の中には、メモが一つ。

『汝が内部に宿りし結晶、『裁き』が妨げとなりしものなり。よって、代用となりえるものを支給せり。』

赤い結晶の名をレリック……「超高エネルギー結晶体」と呼ばれる絶大な魔力を秘めた宝石だそうだ。
得体は知れないが、地図上の全てが消し飛ぶ爆弾よりはマシだと思い我慢するしかない。

「(……あいつのような、力を求める者は少なくはないのだろうな)」
神と魔王の甘言に流される愚か者は出てくるだろう。
昔の自分を見ているような、力こそ全てだと信じる者ならば、なおさらだ。
「(あの姿、何故か引っかかるものがあるな)」
自身の姿を見るような、デジャヴ。
超魔生物となった自分のように、あの男も何かを捨て去ったのだろうか。
いくら考えたところで、わかることではなかった。

戦車を、町へと進める。
それまでに情報を得るため、オレはパチュリーへ質問を投げかけた。

【A-Ⅳ 1日目 深夜】
【パチュリー・ノーレッジ@東方Project】
【状態】:疲労(小)、魔力消費(小)、神威の車輪搭乗中
【装備】:エクスカリバーの鞘@Fateシリーズ
【道具】:支給品 不明支給品0~2
【思考・状況】
基本:呪印が解けないか知識を得る。
1.自分の知らない知識を集め、本当に脱出できないか確かめる。
2.知り合いと殺し合いはしない。
3.そもそも疲れることは避けたい(体力的な意味で)
4.とりあえずハドラーと行動する。
【備考】
エクスカリバーの鞘の効果で、喘息が落ち着いています。
飛ぶと走る以上に体力の消費が多いようです。

【エクスカリバーの鞘】
真名を全て遠き理想郷【アヴァロン】。セイバーがいないため真名を開放できるかは不明。
使用者の魔力を治癒力に変換し、所持者を癒す。

【ハドラー@ダイの大冒険】
【状態】:健康、魔力消費(小)、神威の車輪搭乗中
【装備】:スパタ@Fateシリーズ、レリック(核として代用)@リリカルなのはシリーズ
【道具】:支給品 不明支給品0~1
【思考・状況】
基本:神と魔王に反逆するため呪印を解く
1.絶望の町に向かう。
2.その間に、パチュリーから情報を得る。
3.殺し合いには乗らない。
4.知り合いとあったときの対応を思案中。
【備考】
死亡後からの参戦です。覇者の剣、黒の核晶はありません。
黒の核晶の代わりにレリックが動いています。
レリックを除去すると体が朽ちていきます。

【スパタ】
征服王イスカンダルの持つ剣。宝具ではないが武器としても優秀。
魔力を込めて振るうと空間を裂き、神威の車輪【ゴルディアス・ホイール】を召喚できる。
二頭の巨牛、ゴッド・ブルに引かせている戦車で、相手にぶつかればただでは済まない。
降りると空間へと帰っていく。牛が死亡した場合どうなるかは不明。
魔力を更に使用すれば、対軍宝具、遥かなる蹂躙制覇【ヴィア・エクスプグナティオ】を発動する。
イスカンダル本人がいないため、使用可能かは不明。

【レリック】
ロストロギアの一つ。
赤い宝石のような外見で、凄まじい魔力を内包している。
原作では、リンカーコアと融合させ死者ですら復活させるエネルギーを見せた。
外部からの大規模魔力で爆発する危険性がある。


傷ついた男が、森を抜けようと歩いていた。
「くそっ……俺は強くなったはずだ。なぜあんな悪魔に……」
土壇場で発動したアギラオは、悪魔の熱線を軽減した。
結果、紅い装束の男は命を取り留めたのだった。
男――自分の名前も思い出せなくなった彼は怒りを露にする。
「俺は死なない。ゴトウみたいに無様に死んだりはしない」
男は、巨大な魔王に逆らった軍人を知っていた。
ゴトウ――日本を崩壊に導く原因を作った、悪魔と契約した男である。
彼からすれば憎い男だが、とうに死んだ男である。

「どうせなら、オザワのやつを生き返らせてくれればよかったのに。強くなった俺がもう一度殺してやったのにな」
軽口を叩きながらも、その表情は冴えない。
彼は、強さを得るために悪魔と合体した。
悪魔の力を手に入れ、憎きオザワを殺した後は、ただ力だけを求め続けた。
ヤマ【閻魔大王】の下で、悪魔を殺し続けたこともあった。
最終的にたどり着いたのは、ガイア教団だった。
そこで活躍が認められ、教団内で彼はカオスヒーローと呼ばれた。

いつしか自称するようになり、本来の名を完全に忘却していった。
そして、二度と二人の友と道が交わることはなかった。
一人は、メシア教徒にメシアともロウヒーローとも呼ばれる中心人物に。
一人は、神にも悪魔にも加担しない、人類の味方としてザ・ヒーローなどと呼ばれるようになった。

力が法となる世界を作る最終決戦。ミカエルを殺すはずだったのに、こんな場所に呼ばれてしまった。
そして現れたのは、明らかにミカエル以上の存在。そしてアスラ王以上の魔王。
「このチャンスを、逃すわけには行かない」
彼は、この殺し合いに乗ることを決めた。
結局、どれだけ力を手に入れても、彼はそれ以上の力を持つ誰かの下で働いてきた。

「もうおしまいだ。俺は、どんな神も魔王すらも越える力を手に入れる!」
五人殺した者には強き武具を。最後まで生き残ったものにはすべての願いを叶える。
「少し無理してでも、五人を殺して褒美を貰うんだ。帰ったって、俺はまだ最強になれない」
弱そうな奴から狙うつもりだったが、さっきのような醜態は二度と晒さない。
「そうだ! 無理をしてでも俺は力が欲しい」
だからこそ、これを使おう。
自身に支給された、夢を叶えるという宝石を。
青く輝く宝石を、舌に乗せそのまま飲み込む。

「ガ………アアアアアアアア!!」
そして、身を焦がす激流が彼を襲った。
橋の手前で苦しみながら、大地に倒れる。
身悶え、苦しみ、絶叫を上げる口から強い輝きが漏れ出す。

転げ回り、死んだように動かなくなったカオスヒーロー。
その体が、ゆっくりと起き上がる。
「……フ、ハハハ。どうだ、ハハハ。俺はまた強くなったぞ、ワッハッハ!」
外見に変化はなかった。
それでも彼自身にはわかる、高まる魔力に笑いを堪えることが出来ない。

あの時と同じ……悪魔と合体したときと同じ高揚感。
「もう一度あの高揚感が味わえるなんて、夢みたいだ。
それともこれは夢なのか? 夢だとしたら……イイ、夢だ」
名に偽りはなかった。
ジュエルシード……夢を叶えてくれる宝石は、自分に力をくれたのだ。

ニィッ、と笑いカオスヒーローは、知らない。
その宝石が本当に夢を叶えたことなどないことを。

そして、これからも知ることはない。
一つの可能性として、彼が強い力を身に宿したことによって自滅したことを。

彼が、知る由もない。

【A-Ⅲ 橋 1日目 深夜】
【カオスヒーロー@真・女神転生Ⅰ&Ⅱ】
【状態】:中度の負傷、ジュエルシードによる能力の底上げ
【装備】:ブラッドソード@FF6、ジュエルシード(飲み込んだ)@リリカルなのはシリーズ
【道具】:支給品 不明支給品0~1
【思考・状況】
基本:優勝する。
1.まずは五人を殺して強い武具を得る。
2.その力を使って優勝する。
3.できるだけ弱そうな奴を狙う。
【備考】
ラストダンジョンでロウヒーローと言い争っていた頃からの参戦です。
ジュエルシードを飲み込んだことで、能力が上がっています。
今のところ、暴走や自壊の兆候は見られません。
名簿はまだ見ていません。

【ブラッドソード】
攻撃力は並だが、たまにドレインの効果がある剣。

【ジュエルシード】
ロストロギアの一つ。
手にした者に幸運と望みを叶える力を与える。
などという設定があるが、本編中では一度も望みを叶えたことなどなかった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年05月21日 20:45
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。