動けなかった。
ただ圧倒的とも云えるその存在に、まるで糸が切れた人形のように動けなかった。
幻獣たちを目の前にしたときもこれほどのものではない。
凍りついたまま、直後に現れたバケモノの話を聞くしか選択肢が無かった。
あの存在が何であるかを判断する術はない。
そもそも世界が違う故に、その名称を聞かされたところで理解は出来ない。
だが、理解する必要すらなく、アレはこの場で絶対なのだと思考に直接植えつけられた。
動けなかったと言えば嘘になる。
事実、あの場にいた見知らぬ男は僅かとは言えども声をはりあげ、一歩前進した。
結果としてその男はただの土くれになってしまったのだが。
「くそッ……!!」
単純な話、彼は臆したのだ。
恐怖に駆られ逆らうこともせずにひざまづくことしか出来なかった。
しかし、これで良かったのだとロックは自身に言い聞かせる。
もし何らかの抵抗をしていた場合、消されていたのは自分だったかも知れないのだ。
何も分からないまま死んでしまうことだけは願い下げだった。
自分にはまだやらなければならないことがある。
そう、それは――――――――
そこで、彼は意識を完全に覚醒させた。
目に映るのは先ほどとは違う地面。そして自身の体中を伝う冷や汗。
拳で両膝を叩き、自らに鞭を打つ。
今大事なのは状況把握。自分がどういった状況に置かれているか、確認する必要がある。
まず、あのバケモノの発した説明。
あそこに集められた……数十人はいるかと思われる者達と殺し合いをすること。
そして元いた世界に帰還するには、自分が8人を殺害するか、最後の一人になること。
ふと、傍に落ちているカバンに目がいった。
ロックは恐る恐るそれを開けてみる。
中に入っているのは、食料や現在時刻を表しているであろう時計、懐中電灯、地図、そして何かが書かれた紙。
「これは……」
名前、だろうか。
それがずらっと、総勢50名の名前が2列に列挙されている。
こんな見たこともない文字を理解できる事に疑問を持ったが、それ以上に驚いたのは
「……嘘だろ」
自分の名前と、よく知る名前が1、2、3、4、5、……と1匹。
そう、あの世界から呼ばれたのは彼だけではない。
彼にとってのかけがえのない仲間が、この殺し合いの場に喚ばれている。
「仲間を、殺せっていうのか」
出来る筈がない。無論、力関係で殺せないと言うわけではない。
ロックとてそれなりに力を持っている。よほど規格外でもない限り戦い抜くことが出来るだろう。
しかしそういうことは問題ではない。仲間を殺すと言う選択があり得ない。
少なくとも、彼はそう思っていた。
だが、他の者はどうだろうか?
もし自分の仲間が殺しに来たら?
その時自分はどうすればいい?
みすみす殺されるのも御免だ。けど、殺さないと言うことはすなわち自身の死を意味する。
答えは、出なかった。
(とにかく、あいつらを探そう……話はそれからだ)
バッグの中に入っていた、通常の長さの倍もありそうな剣を手に携える。
こういった武器は彼の領分ではないが、それでも丸腰よりはマシだろうと考えてのことだ。
「……確かカイエンがこんな感じの武器使ってたよなあ」
誰とも無くつぶやき、ロックは東を目指した。
地図を見て方位を確かめたもののこの地図のどこにいるのかさっぱり判断できない。
とにかく、地図に書いてあることが本当かどうかを知るために、海岸に向かおうとした。
それにこうして動いていれば、仲間に出会えるかもしれないと思ってのことだ。
無論それは、危険人物と出会う確率が高まることと同じなのだが。
彼は、後ろからの視線に気づかずにそのままその場を立ち去った……。
【B-Ⅰ東部 森/一日目・深夜】
【ロック・コール@FF6】
【状態】:健康、冷や汗
【装備】: 楼観剣@東方project
【道具】:不明支給品(0~2)、支給品一式(支給品は確認済み)
【思考・状況】 基本思考:仲間を探し、これからどうするか決める。
1: 自分の位置を確認するために、東に向かう。
2:主催者に恐怖。
3:攻撃されれば対処するが、仲間を殺すことは出来ない。
4: 出来れば自分に合った武器が欲しい。
※ ※ ※ ※ ※
青年が立ち去るのを、隠れて見送った少女が一人。
「どうしよう……」
東風谷早苗は迷っていた。
彼女は馬鹿ではない。人並みかそれ以上の思考力は持ち合わせている。
だからこそ、この場でどうすればいいのか判断がつかなかった。
ルール無用の殺しあい。
『世界』の最後の一人となれば、傷を癒しどんな願いも叶えた上で元いた世界に帰還させる。
但し、8人殺した場合にも元の世界に帰還させる。
他にも詳しいことはあったが、要約すればこのような感じだ。
死にたくない。
そんなのは当たり前だ。これからもその気持ちは変わらないだろう。
だが、最後の一人になるまで生き残れる可能性は?
地図を見て、名簿を見て、その可能性が殆ど無いと彼女は実感した。
この『世界』……縮尺が無いのでどれだけ広いかわからないがここで50人を殺し合わせるのだ。
おそらくそう広くはないだろう。その時点で、隠れて残り人数が少なくなるまでやり過ごすのは難しい。
というよりも、最終的に一人になるのならば『殺す』行動をせねばならない。
――――――そんなこと、出来ない。
当然だろう。
彼女は今まで人殺しをしたことも、それをせねばならない状況に陥ったことも無い。
だからそう考えるのは当然のことだ。当たり前のこと。
だけど、その当たり前のことをいつまで保てるだろうか。
人を殺すということは、常識――――云わば倫理や道徳の類だが――――を捨てることを意味する。
捨てれば自分自身が自分で無くなってしまう。
だけど、何時までもそうしないでいられるのだろうか。
そう簡単に結論は出せない。
だから今は、考える時間が必要だ。
(そうだ。誰とも会わなきゃいい)
ならばグズグズしている暇は無い。
こんなところで油売っていないでさっさと一時的にでも安全な隠れ場所を探さないと……
「おい!止まってくれ!」
彼女の提案は、開始十数秒で一瞬にして崩れ去った。
※ ※ ※ ※ ※
暗いので正確な色が判別できないが、緑がかったように見える髪の少女がなにやら蹲っていた。
危険は無さそうだ、なら助けなきゃいけないんだけど不用意に近づいたら危険なこともある。
とにかく周りに他の気配は無さそうだしもう少し様子を見てから……と思ったが、
いきなり向こうに走り出そうとしたので思わず声を掛けてしまった。
「…………誰ですか」
女の子の声にはとても敵意が篭っている。ように思えた。
とりあえず聞かれたら答えねばなるまい。
「俺は衛宮士郎だ」
「そういうこと聞いてるんじゃありません!」
思いっきり怒鳴られた。
なんでさ。
「と言うか……何の用ですか?まあこの状況で近づいてきたって事は選択肢は限られるけど」
口調は強めだが、彼女でも気づかないうちに彼女が震えてるのがわかった。
「君を殺す気なんてない。ただ話がしたいだけだ」
「それって変質者の常套句ですよ?」
「……」
なんていうか……さらりと毒舌だな。
「君をどうこうしたいワケじゃない。本当だ。お願いだから話を聞いてくれ」
そう言って、俺はバッグを投げ捨てた。
こうでもしなければ信用されないと思ってやったのだが
「おかしいです」
「へ?」
「殺し合いをしろ、とか言われて放り出された場面ですよ?
それで初対面の人間に対して武器を捨てるなんて考えられませんよ普通。
だから……まだ何か隠してるんでしょう?」
ん……まあ確かにそうなんだけど言っちゃっていいんだろうか。
魔術は秘匿すべきって遠坂も言ってるし、この娘に言っても信じられるかどうかはわからない。
というより多分信じられないと思う。
でもこのままこうしていても話が進まないのは確かだ。
とにかく今は情報が欲しい。そうして俺は、話すことにした。
「え、そうなんですか?」
意外。予想外の反応が返ってきた。
魔術の存在自体に驚いていると言うより、俺が魔術使いだということに驚いてるようだ。
ワケを聞いてみれば、彼女は風祝だと言うことらしい。まあ巫女みたいなもんだとか何だとか。
それで神様の力を借りて、色んなこと……もとい奇跡が行えるんだそうだ。
遠坂が聞いたら仰天しそうな内容だが、今はどうでもいい。
それ以降、何か少し打ち解けたような雰囲気が流れたので俺と目の前の少女は距離を置いて情報交換することにした。
彼女―――東風谷早苗が知っている名簿の人達。
面識があるのは3人だけらしいが、彼女が言うには信用できるかどうかは会わないと解らないらしい。
俺の方は……なんだこれ。
サーヴァントが5体。冗談じゃない。どうしてランサーが2人もいるのかさっぱり分からない。
それからこのアヴェンジャー。多分サーヴァントなんだろうけどこんなクラス聞いたことも無い。
で、極めつけは『子ギルガメッシュ』。
なんだよこれ。ワケがわからない。考えても無駄な気がしたので俺は考えるのを止めた。
次第に、少女が落ち着かない様子になっていた。
まあ、こんな森の中で落ち着けというのが無理な話なのだが。
俺は常に周りの気配を探っていたし、それは彼女も同じだった。
但し、その警戒には俺の事も入っているようだ。
「何にせよ、自分が何処にいるのか分からないと話にならないな。東風谷、どうする?」
「あっちに……西の方に行きたいです。特に理由はないんですけど、歩いてればいつかは端にたどり着くでしょうから」
一理ある。
別に反論する必要も無いので、その案を通すことにした。
道中での危険性は拭えないが、こうも見通しの悪い場所だとなおさら危ない。
一刻も早く安全な場所を見つけなきゃいけないのは明白だ。
そうして、俺たちは西へ向かうことにした。
ふと、彼らは自身の身体に気になることがあった。
東風谷早苗の場合、とりあえずは二柱の力が問題なく借りられるということ。
此処に彼女達はいない。それでも力が送られてくるということは早苗と彼女達にまだ繋がりがあるということ。
心強いものではあったが、逆に疑問が浮かんできた。
もしかすれば、隔絶された世界で別の場所に繋がりがあるということは他に帰る方法があるのではないかということ。
そんな淡い希望が芽生えるが、すぐに掻き消される。
そんな不確かなことを考えている場合ではないからだ。
衛宮士郎の場合も似たようなものだ。
彼は色々な出来事もあって遠坂凛という少女、もとい魔術師と契約を結び、彼女から魔力が流れるようになっている。
しかし、彼女の名前は名簿には無い。通常、あまり距離が遠ければ魔力の供給は行われないのだが現に魔力が流れ込んでくるのが
確認できた。可能性として、彼女が近くにいるかもしれないということだが、名簿には載っていない。
幾つかの制限がかけられているようだが、投影魔術に基本的な問題はない。
固有結界も使用可能。しかし使う気はない。魔力の消費が激しいし、使うとしてもよっぽどのことがあればの話だ。
各々で勝手に自己分析しながら、森の中を突き進んでいく。
ただ一つ危険なのは、まだ二人ともこの殺し合いの脅威を実感していないということだ。
危機に直面した場合、一体彼らはどうするのか。そして、どうなるのか。
誰も知らない、誰もわからない。
【B-Ⅰ中部 森/一日目・深夜】
【東風谷早苗@東方project】
【状態】:健康、
【装備】:
【道具】:不明支給品(0~3)、支給品一式(支給品は確認済み)
【思考・状況】 基本思考:生き残る。
1: 自分達の位置を確認するために、西に向かう。
2:士郎を警戒。
3:人殺しはしたくない。
4:あの男の人(ロック)は追いかけるつもりはない。
※力は問題なく使えるようです。
※ロックの姿を確認しました。
【B-Ⅰ中部 森/一日目・深夜】
【衛宮士郎@Fateシリーズ】
【状態】:健康、
【装備】:
【道具】:不明支給品(0~2)、支給品一式(支給品は確認済み)
【思考・状況】 基本思考:仲間を集って情報を集める。
1: 自分達の位置を確認するために、西に向かう。
2:危ない目に遭っている人がいれば助ける。
3:サーヴァントに会った時は……
4:東風谷を守る。
※凛ルート(UBWルートTRUEエンド後)からの参戦です。
※凛からの魔力供給はあるようです。
【投影魔術に関しての制限】
宝具の投影も可能。
但し真名解放と壊れた幻想を使用した場合、魔力消費(大)となる。
(元から魔力消費(大)の場合は(極大)になる)
固有結界の使用は可能ですが、制限は後の書き手さんにお願いします。
最終更新:2009年05月21日 21:45