「(誰か……いないようね)」
気持ち悪い空が広がる世界に飛ばされた。
それ以上のことは、理解することすら困難だった。
あの大広間での出来事は、人間の理解できる限界を超えていた。
それでも、迅速に行動できたのは日頃の経験の賜物か。
セリスは付近の家へと入り、物陰に身を潜ませた。
「あれが、神?」
三闘神と呼ばれる世界を破壊した神が、彼女の世界には存在する。
そして、その力を吸収したケフカは伝説通りに世界を焦土に変えた。
あれもまた、それと同等の神だというのだろうか。
「……勝てるのか?」
それは、あの神にではなくケフカに、という意味での呟き。
仲間を集め、今まさに決戦へ赴く直前の彼女の心は激しく動揺していた。
あれと同様の存在に挑むなど、無謀ではないのかと。
「……馬鹿だな、私は。一人で勝つ必要なんてないのに」
帝国にいたときとは違う。
今のセリスには心強い仲間がいる。
彼らとならば、どんな苦難にも打ち勝てると信じていた。
「八人殺せば帰れる……それが真実なら……」
それも今後の方針の一つとして加えなければならない。
そう思い、まず何人の参加者がいるのかを調べるため、名簿を開く。
「………嘘」
そこにあったのは、絶望。
名簿には共に戦う仲間たちが、いくつも載っていた。
「50人中、7人……全員は……帰れ、ない」
どれだけ均等に分けても6人しか帰ることはできない。
そして、それですら夢物語であることはセリスは十分承知していた。
実力が拮抗すれば、勝負は時の運……常勝などはありえない。
それ以前に、積極的に殺し合いをするかも微妙だろう。
そもそも自分たちは、神を倒すために戦っていたのだから。
「どうすればいいの……」
思わず、弱音を吐くセリス。
「―――誰か、いるのですか」
その声は、誰かの耳に届いたようだ。
「(くっ、しまった!?)」
今さら気配を消したところで遅いと、入り口を覗き込むセリス。
「……何者だ。と言っても、仲間以外に知り合いはいないがな」
「名乗るつもりはありません。人の気配がしたので、確認しただけです」
周囲を確認して、セリスは舌打ちする。
この家には、出入り口が一つしかない。
「(いっそのこと、壁をぶち抜いて逃げるの手か)」
とはいえ、マッシュでもあるまいし素手では難しい。
何か武器を探すべきだが、荷物を見る余裕があるはずもない。
ドサッ、とドアの近くで何かが落ちた音がする。
向こうから仕掛けてきたかと、身構える。
「………?」
だが、いくら待とうと何のアクションも起こらなかった。
去ったわけでもなく、気配はまだ入り口のすぐ近くにある。
「何をしている。やるのかやらないのか、はっきりしろ」
「……やる気はないですが。襲ってくるなら迎撃するまでです」
まるで理解できないと、セリスは頭を悩ませる。
襲ってくる気がなく、語り合う気もないようなのに何故離れないのか。
「(離れたくても離れられない? そういえば、さっきの音は……)」
まるで荷物を落としたような音。それなりの重量がある何かが落ちた音。
「………怪我をしているのか?」
返答はない。
だが、先ほどの音は地面に座ったか倒れたかした音に違いない。
そうだとすれば、離れないことの説明はつく。
「……勝手に入って休めばいい。襲ってくるなら、迎撃するまでだ」
「……なるほど。それなら、間違って襲い掛からないようにしましょう」
一つ目のカウントを稼いでおくことも、セリスは一時考えた。
だが、全員帰れないことが確定している以上、自身の脱出を急いでも意味はないと結論を出した。
入り口の前に潜んでいた人物が、ゆっくりと姿を現す。
「怪我……どころじゃない。まさか、既に戦闘を?」
「古傷です。ほんの半年前のですが」
現れたのはスーツ姿の女性。
油断なく、セリスを警戒するその女性には。
左腕が、肩ごと失われていた。
その家を、外から眺める男の姿があった。
「…………」
攻撃することも合流することもせず、気配もなく男は離れていった。
町を離れ、しばらく進んだところで男は足を止めた。
目の前に、一人の人物が現れたことによって。
「エドガーか」
「初めに会ったのが君とはな。お互い無事で何よりだ、シャドウ」
近づこうとするエドガーから、シャドウは音もなく離れる。
「どうしたんだ。せっかく仲間同士再会できたっていうのに」
「俺がお前たちと行動していたのは、ケフカを倒す目的があったからだ。
現状、お前と馴れ合うつもりはない」
「……暗殺者業に戻るつもりか?」
多少あった和やかな空気が消える。
一瞬の間の後、シャドウは歩き出した。
「さぁな、少なくとも仕事の依頼はない。だが、この首の枷を外す方法がなければ仕方ないだろう。
……ただ、あの神は気に食わん。」
「フッ、それを聞ければ構わない。一人旅なのは不安だがね」
町の方向へと足を進めるエドガーに、シャドウがポツリと呟く。
「……セリスが町にいたぞ」
「なに、そうか。彼女の強さは知っているが、レディを一人にするのは心配だ。すぐ合流するとしよう」
エドガーが走り去り、しばらくその様子を見ていたシャドウ。
「こんな状況でも変わらない、か。やはり俺は同行できないな」
風に掻き消されるほどの声で呟きながら。
お互い、壁を挟んだまま沈黙が続いた。
響くのは、自身の荷物を探る音のみ。
そこに、空気を裂く音が混じりだした。
「(トレーニング……いや、慣らしか?)」
動きを察知し、警戒を強めたセリス。
こちらに敵意も殺気も向けられず、ただ一心に空を切る様を見て、杞憂にすぎなかったことを理解する。
「(拳の動きが、見えない。まるでマッシュだな)」
仲間の一人、マッシュと同等の格闘家。
近接戦になれば、一方的な勝負になることは明白だった。
「くっ……」
だが、その動きには僅かにぎこちなさが見え隠れしていたのもセリスは見逃さなかった。
「(片腕のせい、だろうか?)」
左腕を失ってから初めて拳を握る。そう感じ取れる動きだった。
「(半年前にと言っていたな。世界が引き裂かれて半年以上……失う理由はいくらでもあるか)」
ケフカによる世界の崩壊。荒廃した世界では、人々は生きることさえ難しい。
凶悪なモンスターがうろつく大地で、どれほどの怪我を負っても不思議でもない。
「(だが、だからこそ……この交渉は通じるかもしれないな)
……交渉をしたい。話を聞いてもらえるか?」
「――てっきり不干渉だと思っていましたが……何か?」
動きを止め、セリスへと視線を向ける。
セリスの行動次第で、矢のように飛んでくるような鋭い視線だ。
「支給品の交換を提案する。剣があれば譲って欲しい」
「つまり、良い武器が支給されなかったと?」
「丸腰だと侮り挑んでくるなら構わない。残った右腕を失う覚悟で来るんだな」
実際、セリスは丸腰というわけではない。
緊張を保ったまま、相手の出方を待つ。
「止めておきましょう。つまり、あなたは私が交換を望みそうな物を持っているということですね?」
「……手甲。どうやら、魔導の品のようだ。その体では、武器は欲しいはずだ」
「魔術にかかわりを持つ者でしたか。……ええ、剣はあります」
お互いに得意とする武器を渡す。
それが、どれほど危険な行為かは承知の上。
「(それでも、生きる術は手に入れないと)」
「……敵と武器の交換など、ありえない」
当然の答えだ。
それでも表には出さないが、僅かにセリスは落胆する。
「――だが、あなたは味方ではないが、敵でもない。ここは、その提案を受けましょう」
「……感謝する。では……」
自然とカウントを始める。
「「――4、3、2、1――――ゼロ」」
お互い、交換する品を相手に向かって投げる。
「なっ――!?」
驚愕に声を上げたのは、セリスだった。
何が飛んでくるかわからない、もしかしたらナイフで脳天を狙ってくる可能性も視野に入れていた。
だから攻撃であっても対処できる……そう思っていた。
飛んできたのが、ギターケースでなければ。
床を破壊し、止まるギターケース。
「―――攻撃と受け取っても?」
「すみません。説明不足だったことは謝罪します。まずは中を確認してもらえますか」
顔を赤らめながら謝罪する女性の言うとおり、用心しながら中を開く。
「これは……魔法剣、か?」
「仁王剣……大陸の魔術礼装のようです。使役者の操るがままに動くと書いてありました」
エネルギー体のような剣を手に取る。
その瞬間、自身の魔力に繋がるような感覚がセリスを襲う。
「ッ……なるほど、持ち主の魔力によって自在に形を変える訳か」
「この武器と対価となる品でしょうか?」
「こちらは十分よ。そちらはどう?」
右手に装備した手甲で拳を振るう彼女に語りかける。
「十分です。更に、手甲に括りつけられた説明書の通りであるならば――」
そこで言葉を切り、女は唱える。
「―――鎧化【アムド】」
手甲を変化させる呪文を。
説明書にある通り、手甲は変化を見せた。
装着した腕を覆う手甲側に集中した、肩当て、胸当て、足を覆う具足へと。
「これ以上の物はありません。十分でない事があるとすれば、この武器を最大限扱えない私の体に他ならない」
「その武器……本来は利き腕じゃない方に着けるべきのようだな」
「その通りです。本来はこちらで防御し、利き手で殴る……私には、利き手しかありませんが」
接近するまで、魔術にすら完全な防御を可能にする武装。
しかし、近づいたときに殴る拳を彼女は持たない。
「あなたの実力なら、蹴りでも十分ではないか?」
「残念ながら、それで通用する相手は多くはない。
初めに出会ったのがあなたのような実力者であることも、それが当然だということなのでしょう」
ここにいる多くは実力者。
片腕の自分が武装するだけで勝てる相手ではないと、本心からの発言らしい。
「私とて、理解している。油断すれば死ぬのは私だ」
「……一つ忠告しましょう。油断しなければ善戦できるというという考えは間違いだ。
理不尽な強さを持つ相手は存在する。今までの努力を一瞬で崩すほどの実力の差は、存在します」
彼女ほどの実力を持ってして、そこまで言わせる相手とは何者か。
「知っている。……それでも戦わなければならないときもあることもな」
ケフカ……あの神の力を手に入れた狂人に挑むということが、それだろう。
一人で戦える相手ではない。
仲間と協力して、初めて勝負になる敵。
その仲間は、今どうしているのか。
「武器も手に入った……悪いが行かせてもらう」
「何か、探す物でも?」
「話す理由はない。敵ではなくとも、味方でもないのだからな」
ギターケースを片手に持ちながら、スーツ姿の女性の隣を通り過ぎるセリス。
「情報収集、というわけではないですが……名前を聞かせてもらえますか」
「……セリス・シェール。帝……いえ、なんでもないわ」
帝国の元将軍などと名乗れば、いらぬ遺恨を残すかもしれない。
一瞬訝しげな表情を見せた女性も、気にせず自身を名乗った。
「バゼット・フラガ・マクレミッツ。協か……いえ、フリーランスの魔術師です」
「魔術師? それじゃあ、まさかあなたも……?」
帝国の人造魔導士なのか。
そう聞こうと思った矢先。
街中に、爆音が響き渡った。
「まさか、戦闘が?」
戦闘しているのが自分の中である可能性はけして低くない。
セリスは質問も忘れ、爆発音の方向へと走り出した。
「まだ1時間ほどしか立っていないのに、もう戦闘が……」
セリスのように駆け出さなかったバゼットは、その背を見送った。
「もし、サーヴァント同士の戦闘ならば……行ったところで」
片腕を失った自分に何が出来るのだろう。
既に攻撃できる部位に硬化のルーンは施してある。
この武器……魔甲拳はそれ以上の破壊力と防御力を秘めている。
それでも、自分の戦闘力がどれほど通じるかは疑問でしかなかった。
「アンリ……どうやら私は、入り口に辿り着けなかったようです」
永遠に続く四日間。
聖杯とアヴェンジャーによって起こされた奇跡は、聖杯の崩壊を持って終結した。
何兆回にも続いた永遠は終わり、バゼットは現実の世界と向き合うときがやってきたのだ。
しかし、着いた先は神の審判の地。
「まったく、彼は嘘ばかりだ。現実以上に厳しい世界ではないですか」
自嘲気味に笑い、名簿に載っていた名前を思い出す。
ランサー・クーフーリン。本来のサーヴァント、ケルトの大英雄。
ランサー・ディルムッド。その名の通りなら、フィオナ騎士団随一の戦士。
キャスター・メディア。思いつくのは、裏切りの魔女と名高いコルキスの王女。
子ギルガメッシュ。ギルガメッシュといえば人類最古の王の名前だが、関係あるのだろうか。
アヴェンジャー。終わりを迎えたはずの、二人目のサーヴァント。
そして、衛宮士郎。アヴェンジャーが模していた姿のオリジナル。
「あなたも、出口にたどり着きそこなったようですね」
聖杯の奇跡すら、あの神ならば介入が可能ということか。
教会の崇める唯一神ならば、偽りのゾロアスターの悪神を上回るのは道理。
「おそらく……ループはないのでしょうね」
死んだらやり直し。それはこの世界では通用するはずもない。
その証こそが、この腕。
この体は現実のものに他ならないという警告なのだ。
「私は……どうすればいいのですか、アンリ」
答えはない。
本人がいたところで、答えてはくれないだろう。
「(令呪もなく、ランサーとアヴェンジャーとの契約も途切れている私はマスターですらない)」
他のサーヴァントはもちろん、衛宮士郎とも面識はなく、向こうも知りはしない。
完全な孤立……封印指定の魔術師であったときは当然だったことが、今では心細い。
「私は―――」
―――ああ。いいんじゃない、正義の味方ってのも?
気持ち良さそうだし。たまには理不尽な死から人々を守るっていうのも―――
「アンリ?」
そんな、空耳が聞こえた。
「そう、ですね。私は不器用なのでした。今出来ることを……やるだけです」
幸い、失った腕を補うだけの戦闘経験だけは備わっている。
幾度となく繰り返された聖杯戦争。
乱戦、トリッキーな攻撃、純粋な戦闘力の差がある相手。
数え切れない死と引き換えに、様々な戦闘経験だけは蓄積されているのだから。
自然とバゼットの足は消えたセリスの後を追っていた。
今、出来ることをするために。
町に着いたエドガーは、セリスを探しはじめた。
「ふむ、ここにもいない。次はどこを探そうか」
片手には支給品である傘が一本きり。
丈夫な傘らしいので武器にはなるが、やはり心細い。
人の気配を探りながら、家を一軒一軒探す……根気のいる作業だった。
「マッシュなら、人の気配を探るのは得意そうなんだがな」
どこかにいるだろう弟を思い、探し終えた家を出る。
「さて、次は……何!?」
先ほど家に入るときは、何もいなかった。
地面に倒れる人などは、けして存在しなかった。
だが、今エドガーの視線の先で倒れている女性は……
「セリス!」
ピクリとも動かないセリスに駆け寄る。
「しっかりしろ、セリス。いったい何が……!」
セリスを抱き起こし、安否を確かめるエドガー。
「キヒヒッ、バカな男じゃ」
セリスの声とは思えぬ醜悪な声が、その口から放たれた。
「ガッ……!?」
首筋に鋭い痛みを感じ、エドガーは飛びのくように離れた。
「バカな、セリス……!!?」
そのまま距離を取ろうとしたエドガーの足がもつれ、倒れる。
「(これは、毒か!)」
すぐさまポイゾナを唱えようとするが、体がまったく動かない。
「キィーヒッヒッヒ!! バカな人間め、その毒を食らえば動けぬわ!」
下卑た笑い声を上げる、セリスの姿をした何か。
その姿が煙に消え、中から本来の姿が現れる。
「キヒヒ、荷物はワシが有効に使ってやろう」
現れたのはエドガーの半分程度の身長の醜い老人だった。
エドガーの荷物を奪うと、蔑む視線をエドガーに向ける。
「この妖魔司教ザボエラに殺されることを、光栄に思うんじゃなぁぁ!!」
そう言い放つと、ザボエラの手に光線が生み出される。
「ベギラマ!!」
エドガーへと向かう巨大な熱線。
それを避けることも防御することも出来ず、エドガーは爆発に飲み込まれた。
「キッヒャッヒャ! この屑めが!」
ザボエラは、吹き飛んだエドガーを見て楽しそうに笑う。
「……ォ」
「な、なにィ!?」
土煙から聞こえる声。
とうに死んだものと思っていたザボエラは鼻水を噴出すほど驚愕する。
「しぶといムシケラめが! ならばもう一撃、メラゾーマ!」
火炎の渦が、サボエラから放たれる。
「オォォォォ!! ロイヤルショック!!」
光が、煙を消し飛ばす。
そして、その光は地面を伝い、ザボエラの足元にたどり着く。
「な、アァァ!?」
メラゾーマを放つため突き出していた手が、メラゾーマの炎ごと消し飛んだ。
「外した、か」
ポツリと呟き、エドガーは前のめりに倒れる。
全身全霊を込めた王家の最終奥義。
それも、毒にやられた体は狙いをつけることが出来なかった。
意識は途切れ、言い知れぬ悪寒が体を襲っていた。
「(毒で死ぬ、とはな。父上と同じか……)」
残された仲間、帰りを待つ国民に申し訳ないと心で謝罪する。
「(マッシュ、済まないが後は頼む。シャドウ、お前も妙な選択をしないことを願うよ)」
もう出来ることはないだろうか、薄れる意識で考える。
「(そう、だ。セリス、いや、ティナでも誰でも、あの敵の、ヒント……何か残したいものだが)」
どの様な魔法か、姿を帰る力を持つ敵。
残せる、な にか ヒ ン ト を … …
「このワシの腕を! 灰も残さぬわぁ!!」
怒り狂うザボエラ。
更に魔法をぶつけようとした直後、足音に気がつく。
「い、いかん!」
この町には、自分が化けた者もいる。
そいつが現れたら、命がない。
「モ、モシャス!!」
自身に変化の呪文を唱え、走り出す。
その姿は、黒衣の男……シャドウの姿だった。
その走り去る姿を、セリスは見てしまった。
「シャ、ドウ……?」
去ったシャドウ、そして残った人影。
「うそ…‥エドガー!?」
駆け出し、そして抱き起こす。
「何寝てるのよ、しっかりなさい!」
だが、その反応はない。
いつものキザな台詞も、女性へ向ける視線も。
――既に、息絶えているのだから。
「ケアルガ……レイズ!」
回復させる魔法を唱えても、何の効果もない。
「ああ……嘘よ、いつものキザな台詞で安心させてよ……エドガー!」
だが、死者は何も答えない。
もう、二度と声を聞くことも、女性を口説く姿を見ることもない。
共に戦う心強い仲間は、早くも失われてしまった。
「う、うう……?」
涙で歪む視界に、エドガーの指が移った。
なぜか人差し指だけ、爪が割れるほど土がめり込み汚れていた。
「何かを、書いた?」
その跡は、すぐ足元にあった。
歪み、やっとのことで書いたような文字。
「ご、ご……ゴゴ?」
それは、仲間の名前だった。
「ゴゴは、ここにはいない。貴方を殺したのは、シャドウ、なんじゃないの?」
死体は答えない。
セリスは、そのダイイングメッセージの意味にも、気付かない。
ゴゴ……崩壊した世界で仲間になった、不思議な人物。
指もまともに動かないエドガーは、単純な文字を二つ残すことで精一杯だった。
重要なのはその名前ではなく、その職業。
敵は、知り合いの姿を真似るのだと。
『ものまね』士、ゴゴのように。
【エドガー・ロニ・フィガロ@FF6 死亡】
【E-Ⅲ 欲望の町/一日目・深夜】
【セリス・シェール@FF6】
【状態】:健康、悲しみ、魔力消費(小)
【装備】: 仁王剣@式神の城
【道具】:支給品一式、不明支給品(0~2)(本人は確認済み)
【思考・状況】
基本思考:仲間を探す。
1:エドガー……
2:殺し合いには乗りたくない。
3:シャドウがエドガーを?
【備考】
ザボエラをシャドウだと思っています。
エドガーのダイイングメッセージの意味に気付いていません。
バゼットを帝国の人造魔導師だと思っています。
エドガーの死体の近くに【風見幽香の傘@東方Project】が落ちています
「間に合わなかった……」
バゼットの着いたとき、そこには死体を前に涙するセリスの姿しかなかった。
彼女も、自分も間に合わず、この世界の参加者は一人減った。
誰に殺されたのか、聞かねばならないだろう。
もしかすると、知っている人物かもしれないのだから。
「(アンリ……ランサー。あなたたちは、どう動くつもりなの?)」
奇妙な色の空を見上げ、バゼットはかつての相棒を思った。
【バゼット・フラガ・マクレミッツ@Fateシリーズ
【状態】:健康、左腕欠損
【装備】:魔甲拳@ダイの大冒険
【道具】:基本支給品一式、不明支給品0~2(確認済み)
【思考・状況】
基本:今、出来ることをする。
1:セリスに殺人者について聞く。
2:アヴェンジャー、ランサー(クー・フーリン)に会ったら……
【備考】
hollowエピローグ直前からの参戦です。
「―――町で何かあったのか?」
町の爆発音は、シャドウの耳にも届いていた。
しばらく足を止めていたが、どうやら戦闘は終わったらしい。
「―――行くか」
再び歩み始めたシャドウは、山道へと入っていた。
―――この手は゛移を封ず゛
「ッ…‥!」
感じた敵意に飛びのくシャドウ。
しかし、飛んでくる物体は意思があるかのように曲がり、シャドウの足を貫く。
「ぬっ……これは」
痛みは少ない。
だが、足がまるで石にでもなったかのように重くなっていた。
「これは、スロウか?」
対象の速度を遅くする魔法。
それに似た何かだとシャドウは推測する。
「そこまでです、悪党!!」
町の方角から現れた人影が叫ぶ。
「私の名前は結城小夜。悪をふっとばす、探偵巫女!」
「……なんだ、たんてい? みこ?」
「探偵とは猫探しをする職業! 巫女は悪鬼を狩る者!」
「……どちらかに絞れ」
なんとも掴み所のない相手だと、シャドウはため息をつく。
「(だが……強敵か)」
ふざけた台詞とは裏腹に、その動きに隙一つない。
懐から、支給品である二対の短剣を構え、戦闘体制を取った。
【E-Ⅲ 山道/一日目・深夜】
【シャドウ@FF6】
【状態】:健康、いろはの矢による鈍足効果
【装備】: アンリマユの短剣@Fateシリーズ
【道具】:支給品一式、不明支給品(0~2)
【思考・状況】
1:呪印がある以上、自分の命を最優先に行動する。
2:目の前の探偵巫女とやらに対処する。
名簿を見て、私は息を飲んだ。
所長である玄乃丈さんに、ニーギさんだけではなく、世界を去った光太郎さんの名前まであった。
「YHVH……異国の神。古き神が、もっとも新しい神である光太郎の力を超えている?」
神の力が弱まりつつある世界で、あれほどの力を振るえる神がいるとは。
「今度こそ、私が神狩りをするときが来たのでしょうか?」
光太郎さんに怒られようと、あの神は狩らねばならない。
この命を絶つことになろうと。
「もちろん、そうではない道も探してはみますが」
首にあるはずの呪印に触れる。
逆らえば、土くれに返す強力な呪いの印。
「だからどうした!!」
絶対最強の魔法の言葉を放ち、反逆を表明する。
「(おそらくは、この『裁き』は何らかの儀式。
介入は最低限に抑えたいはず……少なくとも、この呪いを解く術を手に入れるまでは)」
絶対ではないにしろ、参加者を直接手にかけることは少ないはずだ。
たとえ、この場で土にされたところで後悔などありはしないが。
「!? 今のは、爆発?」
そう遠くない場所から聞こえた爆発音。
その方向へと駆けだす。
「あれは?」
黒衣の男が、疾走して離れていく。
その走ってきた方向には、倒れた男を抱きとめる女性の姿。
「(しまった……今の男が!?)」
慌てて後を追うが、途中で姿を見失ってしまった。
そして、山道に入ったところで追いつくことができた。
「いろはの弓―――この手は゛移゛を封ず゛!」
霊力で生み出した弓で、黒衣の男の足を射る。
完全に゛移゛を止めるはずのいろはの弓。
しかし、それは歩みを阻害するだけに留まった。
「かなりの実力者……それとも、私の力が落ちている?」
ザサエさんの力は使えないらしく、今は結城小夜として戦うしかない。
「そこまでです、悪党!!」
黒衣の男に向かって叫ぶ。
「私の名前は結城小夜。悪をふっとばす、探偵巫女!」
「……なんだ、たんてい? みこ?」
どうやら探偵も巫女も知らないらしいので教える。
「探偵とは猫探しをする職業! 巫女は悪鬼を狩る者!」
「……どちらかに絞れ」
そう言われても探偵の「ばいと」中なのだから仕方がない。
「(相手は武器を持っている。普段は使わないのですが……)」
自身と融合しているザサエさんの影響で、刃物の扱いは可能だ。
懐から支給品の二つのナイフを取り出し、戦闘体制を取った。
【E-Ⅲ 山道/一日目・深夜】
【結城小夜@式神の城
【状態】:健康
【装備】:パプニカのナイフ【太陽】@ダイの大冒険、パプニカのナイフ【風】@ダイの大冒険
【道具】:基本支給品一式、不明支給品0~1
【思考・状況】
基本:神狩りを行う。
1:黒衣の男(シャドウ)をぶっ飛ばす。
2:光太郎さんたちと合流する。
3:呪印を解く方法を見つける。
【備考】
本編終了後からの参戦です。
絢爛舞踏ザサエさんと融合していますが、白にして白亜の能力は使えません。
シャドウを逃げたザボエラと誤認しています。
「キーッヒッヒヒ! バカ同士で争っておるわ!」
その様子を、見て笑うのはザボエラだった。
「ぐっ! ぬぅぅ、よくもワシの腕をぉぉ!」
笑った拍子に失った腕が痛み、ザボエラは怒りに燃える。
「まさかまだ動けたとは……即死してもおかしくない毒を調合してやったというのに」
ザボエラは、体内で無数の毒を配合し爪から出すことが出来る。
人間など楽に殺せる毒を調合したはずなのに、エドガーは反撃したのだ。
「人間だと思って舐めすぎたか……なんとか3人殺して傷を治さねば」
あと二人殺せば、とりあえずは傷を治せる。
「しばらくは身を隠すか……この鏡も使えぬようになるからな」
シャドウと小夜の様子を「映し出していた鏡」から映像が消える。
「遠見の鏡……さすがに便利じゃが回数制限があるのはいただけんのぅ」
マジックアイテム、遠見の鏡。
同エリア内の好きな箇所をしばらく映し出せる支給品。
セリスのことも、シャドウたちのことも、この支給品で調べたのだった。
ただし、制限回数は6時間に3回まで。
そしてこれが三回目。次の放送が終わるまでは使えない。
「あのシャドウとやらには、殺人鬼の汚名を被ってもらわねばな」
その間に、町を離れて隠れることにした。
橋近くの小屋までいけば、ゆっくり休めるだろう。
逃げることは容易い。
トベルーラだけではなく、支給品の靴も良い品だったのだ。
ダッシューズ。装着した者に圧倒的な足の速さを与える靴。
これを用いて、小夜の追跡からも逃れたのだ。
「この鏡さえ使えれば、あと二人殺すことなど容易いわ!」
次に鏡が使えるようになったとき、戦闘が終わった後を狙って行動する。
そうすれば、弱った相手を殺すことでカウントを稼げると踏んだのだ。
「だが、これ以上、このワシが傷つくなどあってはならん。
あのエドガーとやらで試したかったが、次はこれを使ってみるとするか」
残った指にはめた美しく輝く指輪。
鏡同様にマジックアイテムだという、アンドバリの指輪。
「死者に偽りの命を与える、か。それ自体は珍しいことでもないが……」
この指輪は、更に一味違う。
くさった死体などとは違い、この指輪で操った死体の戦闘能力は、生前と変わらないのだ。
「忌々しい勇者ダイを操れば竜の騎士の力が! ハドラーの奴を操れば、超魔生物の力が!
なんという素晴らしいアイテムじゃ、ワシの考案した超魔ゾンビに匹敵するわい!」
残念ながら、同時に使役できるのは一体までという制約がある。
最強の軍団を作ることはできないのを残念に思いながらもザボエラは笑う。
「まぁよい、弱い死体でも囮にはなる。それを餌に強い死体でも作ってくれるわ!
そうじゃなあ……裏切り者のワニなんぞがちょうどいいわい!」
下卑た笑い声を上げるザボエラ。
この場を有意義に闊歩する外道を止める者は、まだいない。
【E-Ⅲ 山道/一日目・深夜】
【ザボエラ@ダイの大冒険】
【状態】:腕切断
【装備】:アンドバリの指輪@ゼロの使い魔、ダッシューズ@FF6
【道具】:基本支給品一式*2、遠見の鏡(6時間使用不可)@ゼロの使い魔、不明支給品0~2
【思考・状況】
基本:自分が傷つかないように殺害数を増やす。
1:町から離れ、小屋で休む。
2:まずは3人殺害で傷を治す。
3:死体を捜して手駒にする。
最終更新:2009年05月21日 21:58