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常識の差に驚いてはいけない

西に向かう最中、気になったことができた。
お互いに知っている参加者を教えあったが、聞き忘れていたことがあったのだ。

「東風谷、ちょっと聞いていいか。
 お前の知り合いの中に、この呪印をどうにかできそうな奴はいないのか?」

「どうでしょう? 霊夢さんはあんまり勉強してないみたいなので分かりません。魔理沙さんは微妙ですね。
 まあ魔法使いが三人いれば、誰かはなんとかできるかもしれませんけど。
 八雲紫という妖怪は、以前読んだ本によると神にも匹敵する能力を持っているらしいんですけどね」

微妙なラインだが、魔法使い三人と八雲紫が候補ということか。
神に匹敵する能力というのは、いかにも頼れそうではある。しかし、

「――――いや、待ってくれ。魔法使いが三人?」

それはない。魔法使いが三人いる。それをさらっと口にするなんていうのは、流石に俺でも違和感を感じる。
それこそ遠坂なら卒倒しかねない内容だ。『魔法使いが三人いれば、誰かはなんとかできるかもしれない』、なんて。

「ええ。衛宮さんも魔法使いなんでしょう?
 なにを驚いてるんですか」

「いや、だって魔法だぞ? 驚かない方が変だろ」

常識的に考えれば、魔法使いが三人も近場にいるというのはありえない。
しかも、東風谷は魔術師だと名乗った俺を魔法使いだと認識しているようだ。
その三人の魔法使いが『魔術師は魔法使いのようなものだ』と説明したならば筋は通る。
しかし東風谷は神の実在を知っているし、その力を借りている。そんな相手に魔法使いを自称するか?

「変なことを言う人ですね」

東風谷の振る舞いから見て、魔法使いと魔術師に違いがないというのは、彼女にとっての常識のようだ。
こうまで意識の差があると、彼女の言う魔法使いの定義に興味が出てくる。
魔術師にとっての魔法使いとは違う、別の定義の魔法使いがいるとすれば、未知の魔術を持つ者もいるのではないか?

「それより、さっきの質問に答えてもらえませんか?」

「ああ、悪い。ちょっと考え事をしてたんだ」

魔法使いの定義の違いを、ここで考えることに意味はない。
出会えたら直接聞く。それでいいじゃないか。

「色々と考えたいことがあるというのはわかります。
 でも、話の最中に他のことを考えるのは失礼でなくて?」

また妙なしゃべり方だ。さっきまでの口調との違いが気になるが、単に怒っているだけだろうか。

「俺が悪かった。だから、その妙な口調をやめてくれないか」

「妙とはまた失礼ですね。これは流行の煽り口調なのですよ!」

テンションの違いについていけない。お互い、考え方が色々とずれているようだ。
その辺を踏まえると、やはり魔法使いという言葉の意味自体が違うのかもしれない。
……いや、脱線はよくないな。話の続きだ。俺の知る、呪印をどうにかできそうな奴の話だ。

「まずはキャスターだな。俺の知る中じゃあ最高峰の魔女だ。あれ以上の魔術師を、俺は知らない。
 破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)っていう、あらゆる魔術効果を破戒する宝具の持ち主でもある。だから、キャスターが協力してくれるとかなり希望が見えてくる。
 問題は、キャスターが協力してくれるかって点だ。他人を犠牲にするのを戸惑わない奴だ。殺し合いに乗ってるかもしれない。
 クーフーリンっていう方のランサーは、ルーン魔術が得意だったと思う。神話の時代のルーン魔術の使い手だ。本人は槍使いなんで、使ってるのを見た記憶はないんだけどな。
 ――――協力してくれそうな奴がほとんどいない。ランサーはまだ話が通じる方だけど、キャスターを説得する自信はないな」

いざとなれば、自前でルールブレイカーを用意するしかない。投影すること自体は可能だろう。
しかし、それがどれほど劣化するだろうか。劣化したルールブレイカーで呪印を解除できるかどうかというと、かなり難しいだろう。
そもそも、俺ではルールブレイカーの効果を完全に発揮することはできない。ルールブレイカーを使うなら、キャスターの協力は必要不可欠なのだ。

「それは大変ですね。私の知り合いは平和的な人達ばかりですから、安心できます。
 人殺しなんてするはずがありませんからね。そういう場所でしたから。信用できるかどうかはまた別の話ですけど」

それはまた、羨ましいことだ。遠坂やセイバーがいてくれれば、かなり頼もしいんだが。
こんな殺し合いに来てないんだから、喜ぶべきだけど。

「そっか。なら、まずはあんたの知り合いを探すべきかな。
 話を聞く限りだと、協力してもらうのは難しくないようだから」

「探すといっても、どこにいるかはわかりませんよ?
 そもそも、私たちは今いる場所すら分からないんですから」

だからこうして西に向かっているというのに、と言葉を続ける。

「ああ、その心配はない。今いる位置はB-Ⅰだ。間違いない」

断言する。現在位置さえ分かれば、西に歩き続ける必要はないはずだ。

「え? 分かってたんですか?」

「いや、ついさっきだよ。向こうの方に城が見えたんだ。
 地図を見る限り、牢獄の城以外にそういう施設はない」

正直に話した。が、流石に不審そうな目でこちらを見ている。
まあ、この切り出し方はどう考えても怪しいから仕方ないか。

「……お城ですか? 私には見えませんでしたけど、目がいいんですね」

「ああ、目には自信があるぞ」

城を見つけられた理由は、魔力を体に流していたからだ。
こんな場所だから、魔力による身体強化は怠るべきじゃない。
普段なら、せいぜい城の手前にあった橋に気づくかどうかってところだろう。

「本当に見えたんですか? 幻覚だとか錯覚だとかじゃなくて」

「信用できないのは分かる。行きたくないならこのまま西に進んでもいいぞ」

「いえ、自分で確認します。ちょっと待っててください」

確認? 待ってろって、俺を置いて一人で城に向かうってことだろうか。
それは正直、時間の無駄だと思うんだが。
などと考えている俺の目の前で、東風谷は空を飛んだ。比喩ではなく、文字通りの意味で。
森を抜けるほどに上昇し、上空から城のあった方向を見る。そして、すぐに地上に戻って来た。

「確かにあれはお城でしたね。本当に目がいいみたいです」

「飛べるんだな、お前」

「ええ、飛べますよ。飛べない人なんて見たことないです。
 でも妙ですね。ちょっと疲れました。普段は飛んだだけで疲れるなんてありえないんですけど」

「呪印の効果じゃないのか? あんまり空を飛ばれると、神様も都合が悪いんだろ」

様子見とかに便利だし。ずっと空にいると殺し合いにならないかもしれない。
だから、地上を主な戦場にする為に、飛行能力に制限を課した、と。

「確かに、ずっと空を飛んでいたら出会いも減るでしょうしね」

まあ飛べなくなるよりはマシですけど、と東風谷。
日常的に空を飛べるというのは、どういう光景なんだろうか。

「話がずれましたね。位置が判明した以上、西に行く以外の方針を考える必要がありますが」

「それなら、俺はあの城を調べたい。この場所にある施設がどうなっているのかも知っておきたいからな。
 なにより、ああいう場所は早目に確認しておきたい。人数がそろえば拠点にもできるだろ」

「拠点、ですか?」

「ああ。ここから脱出するには、まず呪印を消す必要がある。
 それも、確実かつ何度も行える方法でだ。俺にも考えはあるけど、賭け同然の方法だからな」

「呪印の解除って、できると思ってるんですか?」

「可能性は限りなく低いが、不可能だとは思わない。キャスターだけじゃなく、熟練した魔術師の協力があれば解除は必ずできるはずだ。
 絶対に解除できないようなものなんて、ありえないんだ。時間経過や酷使の結果としての劣化。目標を達成した者の呪印を解除する為のキーワード。
 なんでもいい、ともかく方法さえ見つければ。そりゃあ解除は困難だろうが、可能性は必ずある。俺はそう思っている。
 だから、問題は脱出法だ。呪印は手元にあるから調べられるが、この『場所』を調べる方法は少ない。
 端まで行ってみるのも方法のひとつだろうけど、目立った場所はできるだけ調べておきたい」

「だからあの城を調べたいということですか。
 まあ、言っていることは分かりますけど」

「それもある。けど、協力者を複数人集めることが前提条件なんだ。
 単独でどうにかできるものだとは思えない。必要なのは異なった知識を持つ熟練の魔術師が複数人だ」

「異なった知識という部分はどういう意味ですか?」

「俺の知ってる魔術師の世界じゃあ、魔法使いなんてそうそう名乗れるもんじゃないんだ。
 そもそも魔法自体が少ない。数えるなら片手で足りる。だから、魔法使いだと複数の人間が名乗っているのは変だ。常識ではありえない。
 そりゃあ、魔術師と名乗るよりも魔法使いだって言った方が理解は得やすい。
 だが、神社の人間が。しかも実在の神を知っているような人間が、魔術を知らないってのは妙な話だ。こっちも常識ではありえない。
 だから、魔法使いの定義が違うってことじゃないかと考えた。できれば、あんたの知り合いに会って確認したいんだがな。
 あんたが知ってる魔法使いってのは、どういうものなんだ?」

その疑問に、東風谷は納得がいったような表情で答える。

「魔法使いという種族です。職業を指すこともありますけどね。
 私のいた場所では常識ですよ、これ」

「魔法使いが種族、か。そりゃあ、そういう言い方もできるかもしれないが。
 けど、そういう認識が常識だってことは、それこそ可能性が出てきたか。並行世界か異世界かは分からないが」

「異世界ですか。まあ、確かに異世界といえば異世界かもしれませんね、幻想郷は」

幻想郷とやらは異世界らしい。ただ、文字通りの異世界かというと、少し違うようだ。
気になる。気にはなるが、しかし、

「詳しい話は後にしてくれ。まずは牢獄の城に行きたい。
 さっきも言ったが、目立つ建物はできるだけ調べておきたいんだ」

まずはあの城に行くことだ。室外で話し込むのにしろ、ある程度落ち着ける場所でないと危険だろう。

「わかってます。私も気になりましたし、行きますよ」

どうやら、衛宮士郎という青年は魔術師らしい。魔法使いのようなものだと思っていたけれど、魔術師と魔法使いは違うのだとか。
巫女と風祝のような関係だろうか。あるいは、巫女と現人神?
信用できるかは分からない。見たところ冷静なようだが、それが逆に不気味でもある。
殺し合いをしろと言われた後で、初対面の人間を前に無防備な状態になる。冷静な人間が、そんなことをするだろうか。
しかし、キャスターの情報だけで、彼と行動を共にする理由には十分だった。
私の役目は信仰を広めることだ。つまり、『私の手で』人々を助け、この場所から脱出すること。そうすれば、彼らは信仰をささげてくれるだろう。
だから、彼が言うルールブレイカーとやらが本当に脱出の鍵になるのなら、今ここで別れるわけにはいかない。

「それで、衛宮さん。戦いになったらどうします?
 私はこれでも風祝ですし、現人神でもありますから、結構強いと思いますよ」

「半神に会ったことはあるけど、ついさっき神と出会って、今度は現人神か。
 ここはまるで、神様のバーゲンセールみたいだな」

話がそれているというか、そらしているのだろうか。
本題から外れた返事が返ってきた。

「無視しないでくださいよ。自信がないのでしたら、私が守ってあげますけど?」

そう、自信はある。奇跡を起こす神の力。それこそが私の自信の源だ。
殺し合いの経験はない。人を殺すことになるかもしれない、という恐怖もある。
それでも、いざとなれば戦うことになるだろう。風祝の役目を果たす為に。
人を助けるということは、信仰をささげてもらうということだ。
神への感謝は信仰に通ずる。つまり、感謝されればされるほど、信仰もまた集まるということだ。

「いや、守ってもらう必要はない。魔力も十分だし、武器は自前でどうにかできる。
 俺が危険な状態になったら、見捨ててくれてもかまわないしな」

「そうはいきませんよ。風祝が人を見捨てるなどありえないことです。
 って、武器を自前でどうにかするって、どうやってです?」

「ああ、こうやってな」

と、彼の手に二振りの剣を現れる。本当にいつの間にか。ついさっきまで何もなかった場所に、その剣は現れたのだ。
彼は手慣れた様子で、それを揃えて私に渡した。

「剣ですね。これ、支給品ですか?」

「いや、俺の魔術は変わっててさ。
 剣というか、武器に特化してるんだ」

「武器を出す魔法ですか。珍しいですね」

というか、魔法というより手品である。どこからか取り出した、という意味では変わらない。

「魔法じゃなくて魔術なんだが……別にいいか、遠坂がいるわけじゃなし。魔法でも。
 ともかく、俺の特技はこうやって武器を作ることだ。それ以外はからっきしだけどな」

「なるほど、魔法使いの鍛冶屋さんだったわけですね!」

遠坂。多分、知り合いだろう。その名前を口にした様子から、親しい間柄のようだ。
しかし、そういうことか。武器を作るだけの魔法使いというのは妙だけど、そういう能力の持ち主なのか。

「その表現は近いかもな。というか、そのまんまだ。
 俺は贋作専門で、自分だけの剣は作れないけど」

真似るだけ、ということなのだろう。便利なんだか不便なんだか分からない能力だ。
色々な武器のいい部分だけを寄せ集められたらとか、夢があっていいのに。

「しかし、手慣れていましたね。この剣、お気に入りなんですか?」

「魔力の消費も少ないし、いい剣だよ。
 なにより、俺にもっとも適した武器だからな」

自分にもっとも適した武器だと語るその表情は、どこか遠いものを見ているようだった。
昔を思い返していて、そのままだとこけてしまいそうだったので、声をかけてみる。

「それじゃ、この剣は返しますね」

「いや、東風谷が持っててくれ。その剣は持ってるだけで対物理と対魔術が上昇するし、取り回しも悪くないぞ」

要するに防御効果があるということらしい。便利な武器だそうだ。
しかし、それなら自分で持っていてもよさそうなものだけど。

「お守り代わりですか?」

「ああ。俺は自分で作れるからな。ずっと持ってる必要はないんだ。
 ただ、ずっとそのままってわけにはいかない。この感じだと、多分3時間ぐらいで消えると思う」

「消える?」

「ガラクタとかなら、ずっと残すこともできるんだけどな」

どうやら、武器を作ったままというのはできないらしい。
世界の矛盾がどうたら言っていたが、正直なところ、理屈は分からなかった。

「つまり、俺が作った武器には時間制限があるってことだ」

「それならそうと、手短に言ってくれればいいものを。
 世界の矛盾だとかなんだとか、無駄に説明が長かったですよ」

「悪かったな。一度やってみたかったんだよ、説明するっていうの」

ふん、と顔をそむける。拗ねてしまったのだろうか。
しかし、便利な人だ。彼がいるだけで装備が充実する。
特に、同じ武器を複数用意できるというのは、人数が増えた時に便利だろう。

「機嫌を悪くしないでくださいよ。褒めますから」

「褒めなくていい」

そうして無駄話をしながらも、私たちは城に向かっていた。

【B-Ⅰ中部 森/一日目・深夜】
【東風谷早苗@東方project】
【状態】:健康、
【装備】:干将・莫耶(投影)@Fateシリーズ
【道具】:不明支給品(0~2)、支給品一式(支給品は確認済み)
【思考・状況】 基本思考:生き残り、多くの人を自分の手で救い、信仰心を集める。
1:牢獄の城に向かう。
2:士郎を警戒。
3:人殺しはしたくない。
4:守矢の風祝として信仰心を集める。

※力は問題なく使えるようです。
※ロックの姿を確認しました。

【B-Ⅰ中部 森/一日目・深夜】
【衛宮士郎@Fateシリーズ】
【状態】:健康、
【装備】:
【道具】:不明支給品(0~2)、支給品一式(支給品は確認済み)
【思考・状況】 基本思考:仲間を集って情報を集める。
1:牢獄の城を確認する。
2:呪印を解除できる参加者を探す。
3:危ない目に遭っている人がいれば助ける。
4:サーヴァントに会った時は……
5:東風谷を守る。

※凛ルート(UBWルートTRUEエンド後)からの参戦です。
※凛からの魔力供給はあるようです。
※干将・莫耶(投影)は3時間で消えます


【干将・莫耶】
アーチャーが好んで使う双剣。
宝具としてのランクはC-。

夫婦剣であり、何かのトラブルで紛失しても必ず持ち主の元に戻る、という強い絆が存在する。
剣としての性能も高いが、巫術、式典用の魔術兵装としての側面も持つ。
備えて装備すると対魔術と対物理が向上する。

アーチャー本人のいかなる趣向か、
刀身には魔よけと思われる言葉が刻まれている。

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最終更新:2009年05月21日 22:01
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