2004.10.25
かつて冒険者たちを震撼させた、あの“世にも恐ろしい祭り”が、再び3国の人々の手で開催された。
おばけに扮した人々が街のメインストリートを駆け回るという、この風変わりな祭りは、今回で2回目。そもそも3国の街の人々が、子どもたちや自国の冒険者たちを楽しませるために始めた祭りだった。だのに、おばけ役として参加した街の人々の方が、仮装の楽しさと注目される快感を味わい、忘れられなくなってしまった、というのだから始末に負えない。
そういったわけで、突如祭りに目覚めてしまった彼らは、ずいぶん前から2回目の祭りを計画し、子どもたちや冒険者に内緒でコツコツ準備を進めてきたのである。
さて、そうして開催に至った今回の祭りであるが、読者のみなさんはすでに会場に足を運んでみただろうか?
過去の祭りを体験済みの冒険者はともかく、新米冒険者は、初めて目にする街の光景に戸惑っているかもしれない。
祭りの初日に会場のひとつである
バストゥーク商業区へ赴いた記者は、そこで、いかにも剣の稽古を終えて街に戻ってきたばかり、といった風情のヒュームの冒険者に出会った。
その青年は、ポカンと口を開けて突っ立っていた。何しろ目の前には、ダークストーカーやスケルトン、さらにはバストゥークの周辺ではまず見かけないオークやヤグードといった獣人までもが街中を徘徊するという、悪夢のような光景が広がっていたのだ。
「な、なんてことだ……」
彼が勘違いしたのも無理はない。街の人々が身にまとっていたモンスターの衣装は、冒険者の目を欺くほどの出来栄えだったのだから。
「……かくなる上は、この俺が奴らの魔の手から愛する故郷を守るしかあるまい! マイティストライク発動ぉぉ!!!」
血気盛ん――というより無鉄砲なヒュームの青年は、記者が止める間もなく、おばけの行列に突進していった。
そんな一青年の決心を知ってか知らずか、街路では、菓子類をどっさり抱えたタルタルの露天商が、独特の節回しで客を集めていた。
「え~、パママに妖精のリンゴにサルタオレンジ~。みんな甘くて美味しいよ~。え~、パイもクッキーも焼きたて~。よっ、そこのお兄さん! 競売所よりお買い得だよ~」
ヒュームの青年は知らなかったようだが、この祭りでは、おばけたちに菓子類を手渡すと、まれに景品がもらえる。そのため、現地で菓子類を調達しようという冒険者たちに、彼ら露天商は必要とされているのだ。
話を聞いてみたところ、タルタルの露天商の本業も、また冒険者だった。この祭りに乗じて、自分の店の名を売り込もうと考えた彼は、数日前から仕入れに奔走していたそうだ。驚いたことに、彼は2人の弟たちにも商品を持たせ、サンドリアとウィンダスの会場にそれぞれ派遣しているという。
記者も何か譲ってもらおうと財布を手にした時、仮装行列に単身斬り込んでいった、くだんの青年が戻ってきた。ようやく彼も祭りの趣旨を理解したようだった。
「すみません、俺にもお菓子ください」
他の冒険者がもっている景品を自分も手に入れたいのだといって、彼は照れくさそうにタルタルの露天商に代金を手渡した。そして品物を受け取るや否や、猛スピードで走り去っていった。
なぜだか妙な胸騒ぎを覚え、すかさずその後を追った記者が目にしたものは……。
街の人に、半ば無理矢理ゴーストの衣装を着せられ、見事におばけの仲間入りを果たした彼の晴れ姿だった。
「なtノbさjrふぁえpr;ガぁーー!!」
言葉にならない叫び声が、バストゥークの空を突き抜け、遠くグスタベルグの山々にこだました。
どうやら、2回目の祭りは、ひと味違うようだ。
■関連項目
ヴァナ・ディール トリビューン
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最終更新:2015年04月26日 11:56