Wolfgang : そろそろ議題も出尽くしたようです。
Wolfgang : それでは、
第136回、コンクェスト評議会、
これにて閉会といたします。
Wolfgang : これはトリオン公、何か?
Trion : ……。
確かに冒険者の活躍によって
コンクェストは着実に戦果が上がっており、
街道の安全も保たれている。
Trion : また、数々の条約と交流により、
我々は互いを警戒する必要が薄れたため、
国境を護る兵士も、かつてのように
始終目を光らせることはなくなった。
Trion : ……だが、その一方、
辺境では、いまだ獣人の勢力は衰えを見せず、
遠地を護る兵士の緊張と疲労は、極限にまで
達している。
Trion : このままでは、
両者の待遇格差は広がるばかり。当然、
辺境の兵の不満は募り、士気も落ち続けている。
Trion : 貴公らの国とて、
それは同じであろう? 最後にその問題を
提起したいと思うのだが、いかがか?
Shantotto : あらあら、
デスティンのおぼっちゃまにしては、
弱気な御言葉ですこと!
Trion : ……何?
Volker : シャントット卿。
トリオン公の申されること、もっともであると
私は思うが。
Volker : バストゥークのような市民兵の場合、
遠地での兵役はそうでなくても士気が低下し易い。
その問題は我が国でも、かねてより懸念されていた
ことなのだ。
Shantotto : あら、
そうなんでございますこと?
Shantotto : ウィンダス連邦の
ミスラの傭兵たちは、こちらがなにも言わずとも、
辺境生活をおおいに楽しんでいますけれど?
Shantotto : 兵の従うべき御大将が
このように弱気では、あがる士気もあがらない
ということではありませんかしら?
Trion : ……。
Volker : しかし、シャントット卿。
傭兵の雇用は、金のかかるもの。
Volker : 領地が広がるほど
傭兵の数も増え、懐が寒くなるような軍制では、
いずれ破綻をきたしましょう。
Volker : なれば、現状のコンクェストにおいて、
一番お苦しいのは、実はウィンダス連邦では
ないのですかな?
Shantotto : オーホホホホ!
なにを言い出すかと思えば、
ご心配には及びませんわ。
Shantotto : わたくしたちの辺境防衛は、
近々、全自動化される予定ですもの。
Shantotto : そうなれば、
デスティンのおぼっちゃまの御心痛も、
カルストのお使いの御指摘も、一挙に
解決ですわ。
Shantotto : それに……そうですわね。
頭さえ下げていただければ、皆様の国にも
お安くお分けいたしましてもよくってよ?
オーッホホホホホ!
Volker : いやいや、それは
頭が下がる提案だ、シャントット卿。
Volker : ……しかし確か、
魔動兵の辺境配備やコンクェスト参加は、
協定違反であったと記憶しているが……?
Trion : ふむ。
それに、どこぞのカカシが生みの親でさえ
裏切ったという話も聞いたことがある。
Trion : 士気があれども
指揮に従わぬ兵は、兵とはいわぬ。
その将たる者も、えせものだ。
Shantotto : あら、言いますことね……。
Volker : ……で、トリオン公。
話を戻すが、問題を提起するからには、
何か、腹案ありと見たがいかがかな?
Trion : あぁ。つい先日のことだ。
我が国の北辺の辺境領主エグセニミル卿が、
20余年ぶりに帰国した。
Wolfgang : エグセニミル……?
終戦後、そのまま手勢を率いて、
北方のオーク帝国に侵攻し、各地を転戦しつつ、
ゲリラ戦術を繰り広げているという、あの……?
Trion : そうだ。
戦塵も落とさず、帰参のため王都を訪れた卿は、
あの大戦以来、初めて市門をくぐり、
そして……驚いた。
Trion : 他国の商人や
冒険者が自由に往来を闊歩し、我が国の商人や
兵と街角で楽しげに談笑する様を見たのだ。
Trion : ……卿は激怒した。
Wolfgang : お怒りになられた?
なぜ?
Trion : 卿が言うには、
当時は、闇の王の軍勢に対抗するため、
アルタナの民は大同団結する必要があった。
Trion : しかし、今日のように、
馴れ合う必要などなかったはずだ。
これでは王立騎士団は牙を失った獅子も同然、と。
Wolfgang : おそれながら、
時代錯誤もよろしい見識ですな。
Trion : そうかもしれん。
だが、否定もできん。
昨今、我が国の王立騎士団、殊に国境守備隊は
ろくに挨拶さえできぬ者が増えたのは事実なのだ。
Shantotto : ……。
田舎騎士のたわ言など、どうでもいいことですわ。
早く本題をおっしゃりましたら?
Trion : やつは、私にこう進言したのだ。
Trion : 「コンフリクト」を復活させよ、と!
Volker : ……。
Shantotto : ……!?
Wolfgang : コ、コンフリクト!
それは確か、優秀な競技者を選りすぐり、
国家間で競われる演習形式の競技。
Wolfgang : しかし、あまりにも激しく
実戦的であったため、死傷者が後を絶たず、
既に戦前には各国で禁じられていた、という
あの……?
Trion : ……そうだ。
Volker : コンフリクトか、
確かに、興味深い意見だ。
Volker : あの形式の競技は
我が国でもそれは盛んだったものだ。
その過激さ故にスリリングで、競技者にも
観客にも絶大な人気があったからな。
Volker : その当時は、弊害のみ
取り沙汰され、国法で禁じられてしまったが……
Volker : ……かつてのように、あれに
国民が熱狂し、スター選手でも誕生すれば、
徴兵逃れや任地脱走など、今の我が軍が抱える
兵役に関する問題をも抑えられるかもしれん。
Shantotto : ウフフ……。
そういった話ならば、もったいぶること
ありませんのに。
Shantotto : よござんす!
わたくし……もといウィンダスは、
その挑戦、受けてたって差し上げますわ!
Shantotto : わたくしの超絶戦略の前には、
愚鈍な騎士や豆鉄砲兵隊など紙人形も同然!
Shantotto : 無敵の信念と
無類の忠誠を誇る、配下の冒険者たちにも
絶対に協力させてみせますもの!
Volker : よし、ならば、
バストゥークも受けてたとう。
三国の共同声明という形ならば、
プレジデントも賛同してくれるだろう。
Volker : それに、
我が国に属する壮健な冒険者同志も、
きっと助力してくれる。
Trion : 決まったな。
では、次はコンフリクトの戦場で
あいまみえようぞ。
Wolfgang : これはこれは……。
珍しく、全員一致での決議ですな。
Wolfgang : ……それでは、
我が国からは審判を選出しましょう。
Wolfgang : 残念ながら、
ジュノは国法で他国と競い合うことを
固く禁じられております故。
Volker : よろしく頼む。
さぁ、善は急げだ。
早速、我々は各々の本国に連絡し、
認可を得ることとしよう。
Trion : ……では、今度こそ閉会だ。
ウォルフガング卿、頼む。
Wolfgang : はい。
それでは、第136回、コンクェスト評議会、
これにて閉会といたします。
Shantotto : ウフフ、
アジドマルジドのかわりに会議に出てみれば、
なんだか面白いことになってきましたわね!
Shantotto : わたくしも選手として
参加できればいいんですけれども、それでは
一瞬で勝負がついてしまいますかしら?
オーホホホホホ!
最終更新:2012年06月12日 09:00