石碑


西ロンフォール



石碑には、このように記されている。
この地を訪れたのは、実に10年ぶりだったが、
はるか北方に住んでいた筈のオーク族の戦士を
あちこちで目撃し、驚いた。
王国の膝元たるこの森ですら、しばしば見かけたが、
誇り高きエルヴァーン族の騎士諸君は、彼らを
下等種族と見下し、歯牙にもかけていないようだ。
私は予言しよう。そう遠くない将来、
彼らオーク族は、数万、否、数十万の軍勢を率いて、
この美しき王国に流れ込んでくるであろう。
願わくば、心ある者が立ち上がり、
この予言を老人の戯言としてくれることを願い、
ここに記す。

天晶761年 グィンハム・アイアンハート


東ロンフォール



石碑には、このように記されている。
ここロンフォールの森は、
代々エルヴァーン王族の狩り場として、
丁重に保護されてきた美しい森だ。
勇壮で知られる秋の狩猟大会を見物しに、
私はわざわざ訪ねたのだが、残念ながら
荘厳な儀式ばかりが延々と続き、
実につまらないものであった。
その原因の一端は、狩りの獲物にありそうだ。
本来獲物であった筈の雉や鹿は、姿を消して久しい。
その代わりに、大羊が獲物として放たれているのだ。
予定された獲物。これでは狩りの醍醐味も薄れて当然。
大食漢で悪食の大羊が、下草や根を食べ尽くして
生態系を崩し、この美しい森が損なわれないことを
願いつつ、ここに記す。

天晶751年 グィンハム・アイアンハート


ラテーヌ高原



石碑には、このように記されている。
この高原で目をひくものと云えば、
やはり現地の者が『ホラの岩』と呼び、
近づくことすら恐れる巨大な建造物だろう。
あえて建造物と云ったのは他でもない。
これは奇跡的な偶然が生んだ天然岩でもなければ、
神学者が唱えるように神の御技による館でもない。
確かに、骨のような白い壁面には継ぎ目すら無く、
触ると微かに温かみすら感じられる奇異な材質だ。
しかし、明らかに人工建造物と断定できる証拠を、
偶然にも私はここで発見した。
この証拠を、より確実なものとするため、
私は北の地バルドニアへと旅立つことにした。
おそらく我が生涯で最も長く
危険に満ちた旅となることだろう。
残される娘エニッドの身を案じつつ……

天晶764年 グィンハム・アイアンハート


バルクルム砂丘



石碑には、このように記されている。
風光明媚だが、生命にとっては過酷な環境で
あることを、這いつくばる草が物語っている。
船を拒む遠浅の海。果てなく続く砂、砂、砂……。
海水浴以外、利用価値は無さそうな場所だった。
しかし、遊泳中に足がつった少女を助けたところ、
その御礼にと、
彼女はある驚くべき場所へと導いてくれた。
イルカを見せるために彼女が案内してくれたのは、
天然の良港として最適の小さな入り江だったのだ。
結局イルカは現れなかったが、船乗りだった
私にとっては、それ以上に大きな収穫だった。
私は、この入り江に『セルビナ』と名づけた。
自分の名前が地図に記されると、
少女は無邪気に手をたたいて喜んだ。

天晶762年 グィンハム・アイアンハート


ジャグナー森林



石碑には、このように記されている。
昼なお暗い鬱蒼としたジャグナー森林を横断中、
突然、食いしん坊な私の愛鳥モルテンが
地面を突き始め、あるキノコを掘り当てた。
いやがるモルテンをなだめながら、
そのキノコを取り上げてよく見ると、なんと
それは伝説の食材『キングトリュフ』だった。
モルテンの嗅覚を頼りに辺りを探してみると、
他にもあるわあるわ。
様々なキノコを発見することができた。
今夜は美味しいキノコ鍋にありつけることだろう。
いつの日か、森に迷いこみ、腹をすかせた旅人よ。
森の恵みを探したまえ。
さすれば、汝は救われよう。
ただし、先に汝のチョコボに食べられぬよう、
くれぐれも御用心。

天晶755年 グィンハム・アイアンハート


北グスタベルグ



石碑には、このように記されている。
この丘の頂に、共和国に空前の繁栄を
もたらしたパルブロ鉱山の開拓者達を称え、
モニュメントを建てる計画があるらしい。
私が訪れた時、丁度その礎石が作られていた。
礎石の周囲は、元は墓場だったらしく、
風化して銘すら読めぬ墓石が点在していた。
妙に気になり、民間史書を紐解いてみたところ、
その墓について興味深い事実が分かった。
これらは、まだ共和国が貧困にあえいでいた頃、
最初の砦、つまり現在の大工房が落成した日に、
原因不明の爆発事故で命を落とした、多数の
名も無きガルカ技術者たちの墓だったのだ。
世に喧伝される如く、パルブロ鉱山の開拓者が
大望を成し遂げた英雄かどうかは分からない。
だが、ここに眠る者達が、荒涼たる大地を開き、
そして骨を埋めた、真の漢だったことは確かだ。
私は、この名も無き英雄たちに思いをはせながら、
ここで一晩飲み明かすことにした。

天晶749年 グィンハム・アイアンハート


南グスタベルグ



石碑には、このように記されている。
私は、40年以上船乗りとして生きてきたが、
未だ、この世界をおぼろげにしか理解していない。
町や村で生活している者は、なおさらだろう。
自分の身の周りのことだけに興味を持ち、
生きていくのは、多くの場合、安全だし幸福だ。
好奇心の強い者は、危険に陥りやすいからだ。
しかし、私は遭難の末に偶然拾った残りの人生を、
この費えぬ好奇心に使おうと思いたった。
大それたことだが、このヴァナ・ディール世界の
形を、知りたくなったのだ。
私はその記念すべき第一歩の足跡を、愛する故郷
バストゥークを一望できる丘に残すことにした。
いつの日か、多くの人々に役立つ筈、との使命感と
ゆるぎなき決意を胸に秘めつつ、ここに記す。

天晶748年 グィンハム・アイアンハート


コンシュタット高地



石碑には、このように記されている。
ここにはオーディン風と云う強風が
いつも吹き荒れている。いつ頃からか、
この風に目をつけたバストゥーク職人が、
ここに風車を建てるようになった。
目的は明解。粉挽きだ。イモ類の他に
たいした作物の育たないバストゥークにとって、
サンドリアから輸入される小麦は生命線だった。
一方、サンドリアも大量に産する小麦の買い手として、
また、安価に小麦粉に加工してくれる粉挽きとして、
バストゥークに依存していた。
その両者の依存関係の象徴が、この風車群なのだ。
面白いのは、睨み合っている軍勢を尻目に、
戦闘の最中も、その取引は行われ続けていたことだ。
それを知った両軍の指揮官はかんかんに怒ったが、
彼らでさえ、パンを食べるのだけはやめなかった。
商人に乾杯!

天晶750年 グィンハム・アイアンハート


パシュハウ沼



石碑には、このように記されている。
この沼地には、クゥダフ族と呼ばれる
凶暴な獣人が住み着き、縄張りとして久しい。
多くの命知らずの輩が、
この地で行方不明となっていた。
しかし、完璧な地図を目指す私の中では、
リスクよりも、広大な沼沢地帯を空白のままに
してしまう無念さの方が明らかに勝っていた。
調査中、うっかり火を使ってしまい、
私はたちまちクゥダフ族に捕まってしまった。
そのまま、彼らの村へと連行された私は、
建物が金属で出来ていることに仰天した。
かつてタルタル族の恐るべき力だった炎の魔法を、
今や、我々が煙草の火をつけるのに使うように、
蛮族だと思っていた彼らも、バストゥークの高度な
冶金技術を密かに自分のものにしていたのだ。
計画を全部打ち明けると、彼らは意外にも感激して
解放してくれ、率先して沼を案内さえしてくれた。

天晶763年 グィンハム・アイアンハート


ロランベリー耕地



石碑には、このように記されている。
暖かいガルーダ風が吹く、この地では、
ロランベリーと云う果実が、
広大な果樹園で栽培されている。
爽やかな甘味とぴりりとした刺激的な酸味が
舌に残る独特の味だが、食後の清涼感もあって、
ガルカ族以外の多くの人々に愛されている。
その魅力たるや、肉食中心の獣人ですら惹きつけ、
最近ではゴブリンの夜盗やヤグードの窃盗団と
戦うため、どの畑でも果実衛兵が雇われ、
巡回警備している有様だ。
中でも価値があるのは、蟲が貯蓄した果実だ。
彼らは保存のために特殊な唾液を注入する。
ロランベリーは腐らなくなり、酸味だけが増すのだ。
その強烈な刺激が、マニアにはたまらないらしい。
この果実収穫と海運で莫大な財を成したジュノ村は
今、都市国家へと急速に変貌しつつあるようだ。

天晶757年 グィンハム・アイアンハート


西サルタバルタ



石碑には、このように記されている。
ジュノ海峡をわたってから足かけ5年。
測量しつつ陸路を南下した私は、
ついにミンダルシア大陸の最南端
サルタバルタ平原にたどり着きました。
ここに住むタルタル族は、大魔法時代の主役として
かつて世界に覇をとなえた民族とは思えないほど、
人なつこくて親切な人々でした。
彼らも女神アルタナ様を信奉しているのですが、
私たちとちょっと違うのは、
神子と呼ばれるアルタナ様の生まれ変わりが、
大きな樹の中に住んでいらっしゃることです。
神子さまは自ら私の手をとり、話しかけられました。
その話は世界情勢にとどまらず、未来にまで及び、
とてもここには書ききれませんが、
それは素晴らしい体験でした。
残りの測量は、彼らが魔行船を出してくれるので、
ずっと楽になりそうです。神子さまに感謝しつつ……。

天晶778年 エニッド・アイアンハート


東サルタバルタ



石碑には、このように記されている。
ここサルタバルタ平原には、小さく可愛らしい
タルタル族や天真爛漫なミスラ族の他にも、
かつて文明を築き上げていた種族が
存在していたことは、ほぼ間違いないようです。
例えば、タルタル族がホルトト遺跡と呼んでいる
塔は、設備のサイズこそ近いように見えますが、
建築様式には明らかに異なる部分が散見されます。
むしろ、父グィンハムが、
最後に送ってきた手紙に同封されていたスケッチ
『手のような塔』に酷似しているのです。
ただし、そこはクォン北方の地バルドニアでした。
圧倒的な距離を隔てた塔の近似性。
かつて、世界には広範囲にわたる
高度な文明圏が存在していた。
そして、今もこの世界に影響を及ぼし続けている。
そう考えるのは、私の穿ちすぎでしょうか?

天晶777年 エニッド・アイアンハート


タロンギ大峡谷


石碑には、このように記されている。
ここタロンギ大峡谷での測量は、困難を極めました。
起伏に富んだ地形、過酷な気候、そしてモンスター。
しかし、何よりも私を苦しめたのは、熱病でした。
私はミンダルシア大陸に旅立つ前に、
十分に経験を積んでいましたが、
熱病には何の助けにもなりませんでした。
そう、白魔法でさえも……
高熱で消耗する体力を何とか温存しようと、
ふらふらする足で安全な日陰を探しましたが、
なかなか見つかりませんでした。そんな時、
眼に入った白い物体が、表にある古龍の骨でした。
近寄ってみると、そこにはこの洞穴もありました。
近くに生えるサボテンの水が熱病に効くことも解り、
私は病が治るまで、安全に休むことができました。
その間、私は命の恩人達に、名前をつけました。
兄弟喧嘩の最中に熱波で絶命した、古くて大きな
恩人ギルボ・マッジ・ナビルに感謝をこめて。

天晶774年 エニッド・アイアンハート


ブブリム半島



石碑には、このように記されている。
ここ、ブブリム半島の名物と云えば、
現地のタルタル族がキブブ灯台と呼んでいて、
名前の通り、実際に船乗りや漁師に
利用されている、天然の奇岩群でしょう。
塔のようにそびえたつ、ねじくれた奇岩には、
天辺に巨大な鉱石の結晶体がはまっていて、
夜になると怪しげな光で明滅します。
一体、これは何なのでしょうか?
私の仮説ではこうです。大昔、ここには
硬くて軽くて純度の高い鉱石がありました。
伝説のオリハルコンなのかもしれません。
長い年月を経て、周囲の岩盤は侵食されましたが、
鉱石とその成分を含んだ部分は,残りました。
後に、タルタル族が魔法をかけ、灯台にしました。
……それでも、謎は残ります。
鉱石は、何故ここにあったのでしょう?

天晶778年 エニッド・アイアンハート


メリファト山地


石碑には、このように記されている。
ドロガロガの背骨。
タルタル語で、天龍の骨と云う意味だそうです。
クォン大陸にも、有名な『ホラの岩』を始め、
このような材質でできた壁はたくさんありました。
しかし、ここまで大きく露出しているのは、
見たことがありません。
しかも大きく宙に浮いている箇所もあるのです。
私の故郷サンドリア王国では、教皇様の公式見解、
『女神がエルヴァーン族を護るために作られた
壁の跡』と云う説が、皆に信じられていましたが
そのようなもので無いことだけは確かでしょう。
私の勝手な想像ですが、何かの道、
あるいは水道管のようにも見えました。
父にこれを見せたら、さぞ感激することでしょう。
各地にある白い岩。そして背骨。点と線……。
父は、いったい最後に何をつかんだのでしょう。

天晶778年 エニッド・アイアンハート


ソロムグ原野



石碑には、このように記されている。
私たちが住むクォン大陸と
未知の大陸ミンダルシア。
両大陸を隔てているジュノ海峡は
意外にも、とても狭いものでした。
海峡を渡ると、そこはミンダルシアの入口、
ソロムグ原野
サンドリア王国が世界を席巻した最盛期、
ここには王立騎士団の城が築かれていました。
しかし、3人のタルタル魔戦士の夜襲によって、
チョコボ達が混乱し、圧倒的だった筈の騎士団は
無様にも敗走。次々と海峡に追い落とされました。
有名な『ソロムグの壊走』です。
サンドリア士官学校でも必ず教わる、有名な
この血塗られた地から、私は測量を始めました。
でも、歴史は歴史。
過去を見つめるだけでは、何も始まりません。
私は、タルタル族やヤグード族と親しくなり、
いつか両大陸の架け橋になりたいと願うのです。

天晶770年 エニッド・アイアンハート


バタリア丘陵



石碑には、このように記されている。
ここには無数の塚山がある。
伝説によると、我らの先祖が女神によって創られ
最初に降り立った地が、ここなのだそうだ。
はるか昔から、死期が近づいた
エルヴァーン族は、この地を訪れて最期の時を待った。
女神に近づきたい一心で、無数の他族の巡礼者も、
長旅の末に、この地で果てた。
厚い信仰心は美徳だ。無欲も賞賛に値する。
しかし、私はあえて言おう。先ず自分の生を楽しもう。
他の生を尊重しよう。信仰は、その次でも悪くはない。
そう、ガルカの友人にも言ったら、笑われた。
人生短き者は、考える暇も無いから、それもよかろう。
しかし、長く感ずる者には、色々ある。
迷いもまた多いのだ、と。
それもまた真なり、だ。

天晶759年 グィンハム・アイアンハート


ブンカール浦〔S〕


石碑には、このように記されている。
長汀曲浦のブンカール浦に足を延ばしたのは
無論、物見ではなく地図作成のためであった。
けれど、ここで正直に告白しよう。その時
私はまったく別のことで、気もそぞろだった。
この浦にはバストア海の暖流とシュ・メーヨ海の
寒流が同時に流れ込む。おまけに汽水域でもある。
おわかりだろう。そう、釣りだ。私の知る限り
ここは、もっとも魚相の豊富な好漁場なのだ。
だが、そんな私のささやかな楽しみは
地鳴りのような足音で、台無しになってしまった。
物陰に隠れると、数名の巨人が目の前を通り過ぎた。
またぞろ略奪のため上陸した北方の海賊に違いない。
ふと、彼らが巨躯に比して小さな数枚の円盾を
腰に提げているのが目に入った。彼らのではない。
いつしか私は、海の民バイキングが住まうという
北洋の島に思いを馳せていた。釣りはしばし忘れて。

天晶758年 グィンハム・アイアンハート


グロウベルグ〔S〕


石碑には、このように記されている。
当初、ここグロウベルグに足を踏み入れるつもりは
まったくなかった。内陸部の詳細な測量までは
計画していなかったし、それに第一、船乗りだった
私は、山登りを大の苦手としていたからだ。
だが、今や私も故国から探検の資金援助を受ける身。
愚かな計画とは思いつつも、その意向を無視する
わけにはいかなかった。どうやら我がスポンサーは
この天然の要害に、トーチカを構築したいらしい。
灰色山という名から想像していたより、山道には
緑も多く、長閑な景色を楽しみはじめた矢先だった。
にわかに落石が起こり、私は両脚を折ってしまった。
人里離れた山中でだ。楽観的な私も最期を覚悟した。
痛みで気を失ってから、どれぐらい経ったのだろう。
笑い声で目覚めた私の目に、虫の翅で飛翔する子供の
姿が一瞬映った。折れていたはずの脚は治っていた。
地はトーチカ構築に不適、と私は報告書に記した。

天晶762年 グィンハム・アイアンハート


カルゴナルゴ城砦〔S〕


石碑には、このように記されている。
陽気なタルタル族の友人の案内で
聖都ウィンダス防衛の要である
ここカルゴナルゴ城砦に、私は遊びにきました。
いかに、親しくなったとはいえ
因縁浅からぬサンドリア出身の私を拠点に招待し、
あまつさえ測量まで許した本当の理由……それは
私への信頼ではなく、彼らの自信の表れでした。
この城砦を構成する五楼と呼ばれる楼閣は
故メダダ師により魔法学的に完璧な補完関係で
縄張りされており、理論的にあらゆる物理、魔法
攻撃に耐え得る構造をしているそうです。
完璧なものほど、一点の綻びに弱いものでは?
という私の愚問に、彼らは笑って答えました。
完璧なものに、綻びなどできるかい? と。
どうか、この碑が完璧な構造を崩しませんように。

天晶778年 エニッド・アイアンハート



■関連項目 ある冒険者の足跡
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最終更新:2013年05月24日 22:10
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