概要 | LLF | 古野まほろ作品 |
暗号を解くときのキーワード、「補助線」 | 〈やまつみ〉という文面から真の意味を汲くみ取るためには、補助線を引いてこれを読み解とく必要がある(P.41) | 「この数列、さくさく解いちゃったのよね?補助線と図形を使って」(P.379) |
生徒会月報 | 生徒会月報(P.56) | 例えば公の史書でない同窓会報、記念冊子の類はどうか。(P.273) |
学校の地下に関する山積みの資料 | 彼の机の上には、付箋の挟まれた生徒会月報が山と積まれていた。 「あ、学校の地下軍事施設関連でしょ? もう、せっかく放課後何もないんだから、足じゃなくて羽を伸ばそうよ。地底探検もいいけどさ」(P.69) |
平積みにした資料五十冊余(P.273) |
通り雨で男女が足止め | 当然傘など持ち合わせていない僕はしばらく雨空とにらめっこ。(P.71) | ふたりになったとき。そしてたまたま、瀬戸内海を引っ繰り返した様な夕立で、郵便局の軒先に閉じ込められたとき(P.64) |
死体発見時の描写 | 社会科研究室の扉が開くと、中から冷気が溢れ出した。エアコンがかけっ放しらしい。何か異様な雰囲気と共に、確かな臭気がその中に感じ取れた。 「うっ……なに、この臭い」 千鶴が鼻を押さえる。 「――灘瀬先生、いらっしゃいますか?」 呼び掛けながら室内に足を踏み入れる会長。僕がその後に続いた。 研究室の入り口付近は左手にすぐ壁、そして右手に本棚といった配置である。そのため本棚が途切とぎれたところで、ようやく部屋の全容が見渡せた。 目に飛び込んでくるのは痛いほど鮮あざやかで、残酷な色彩。 一面の赤色。 血の海。 赤の海。 そこに沈む、ぐにゃりとした男の体。 深紅に溺おぼれる、こと切れた灘瀬がそこにいた。(P.176) |
彼女は第七楽屋に脚を踏み入れ。 室内を塞ぐ様にそのまま顧った。 実香さんのその絶望の瞳。僕は忘れない。おそらく生涯、いや地獄でも。 思わず彼女の躯を除けた。 第七楽屋を繞る、嵌め殺しの化粧卓。 そこにぱたむと倒れ、被さっている瀬尾。 当然の様に。 肩から上には、首が無かった。(P.480) |
警察への通報を拒否する | 「早く警察を……」 線太郎が常識的な判断の下、当座に必要な処置を的確に提案しようとする。 その時だった。 会長がすっとみんなを置き去りにするように入り口の方に向かった。そして直後、社会科研究室の扉がぴしゃりと閉じられる音が響いたのだ。 「会長……?」 不審に思い、僕も一度灘瀬の遺体から離れ、一同の輪の方へ戻ることにする。 そこから入り口を見ると、なんと会長は信じられないことに扉を背にしてその場で膝を折り、こちらに向かって土下座をしていたのだ。 それだけではない。とんでもない発議がその口からなされた。 「……頼む! 文化祭が終わるまで通報を待ってくれないか」(P.183) |
「緊急の議決を要するのは」と柏木。「ひとつしかないー通報か、沈黙か、それが疑問だ」 「僕は沈黙派だ」それしかないだろう?」(P.483) |
殺人よりイベントが優先という議論 | 「分かっているんだ、これは普通の思考じゃない……異常だ、狂ってる……そんな風に思うかもしれない……それでも! それでも私は自らの全てを鷹松祭に注ぎ込んできた……実行委員長として私にはこの祭を完成させる義務がある。それだけは誰にも邪魔させない。じきに一般公開も終わる。そこから簡単な片付けがあって後夜祭、ファイアーストーム、そしてグランドフィナーレ――鷹松祭が終了を迎えるまで残り約三時間、あとたったそれだけなんだ!」会長は喘ぐように息を継いだ。「――今一度、三顧の礼を尽くして懇望する。鷹松祭の終了まで示し合わせて黙っていてはくれないだろうか」(P.183) | 「大会が破局する」警察が初動捜査を開始すれば、と僕。「あれだけの演奏が出来たのは瀬尾の御陰だし、その客観的評価を確定させるのが最大の供養だと考える」(P.483) |
イベントより殺人が優先という議論の中で、通報しないことを倫理的に糾弾 |
「先ほども申しましたが、会長の心境には私自身強い同情を感じています。ただ……人が一人死んでいるという状況、命を落としたという事実に対して応じることは、やはり何にも増して優先されるべきだと思います。どんな信念、心情を差し置いても、です」(P.184) 「会長の鷹松祭への熱意も、それを慮る副会長の誠意も、最大限に斟酌したいと思います。でもやはりそれとこれとは別問題と言わざるを得ない。通報を保留し、再度この部屋に鍵を掛けて、知らぬ存ぜぬでさあ鷹松祭ですか? 死者を前に失礼ですが、僕は生前、灘瀬先生のことをあまり快く思ってはいませんでした。そんな僕でもこんな所業はあんまりだと思います」(P.186) |
「あたしの臓腑は煮え滾っている。ひと刹那でも迅く殺人者が死ねばよいと思ってる。その為には警察を頼るしか無い。 それに、ひとの生死以上の優先事なんか、この地上に在りはしない、たとえそれが音楽であったとしても」(P.483) |
通報か沈黙かを投票によって決める | 一時沈黙、に一票(P.185) | 『一馬案に一票』ほか (P.484, P485) |
多数決が残り1票を残して同数に | なんてったってこれで三対三、通報か否かを巡る決議はもつれにもつれていた。(P.188) | 「あとは……」と柏木。「……峰葉さんと、僕か。現段階で二対二……」 (中略) 「棄権する」と実香さん。 (中略) 「……なら最後は僕か」と柏木。「古野案に一票、だ」 三対二――(P.484) |
イベントが優先になり現場を立ち去る | 「会長の志操への共感及び千鶴の指摘した推理が引っ掛かるから。よって一通り意見が出揃った今、僕が提案するのは多数派の意見を取って通報を保留すると共に、速やかに情報を集め千鶴の推理を検討するということ」(P.189) | 「なら」と由香里ちゃん。「ここは撤収すべきですね、粛々と、超特急で」「実況見分を終えたあとで、でもある」と修野嬢。(P.486) |
未確定の犯人に自白を求める | 「これでもまだ……自分がやったと名乗り出る気はありませんか」 千鶴が静かに問い掛ける。 沈黙。 「これから研究室捜査組の報告もあるし、審議は続く。容赦はしない。逃げられないぞ」 会長の警告。(P.204) |
「(前略)まだ赦してあげます。いま自白するというのであれば、少なくとも僕とまほろには、 殺人舞台の御見物から下りて、観劇した物語のすべてを記憶から失わしめる準備がある。 さあ、自白されますか――?」(旧訳御矢P.557) |
アリバイ確認 |
「順番が前後してしまった感もあるが……次に死亡推定時刻周りの各人の行動について細かく訊いておくべきかと思う。女バスの二人組の証言では、誰がいつ四階へ立ち寄ったかまでは分からなかったからな」 時を移さずして会長から提言がなされた。これはさもありなんといったところ。事実、誰かが言い出しそうな雰囲気であった。異議はもちろん唱えられず。彼女は場の承認を見て取った。(P.208) |
「僕等は二条さんと約束したから、殺人者を摘発しなきゃいけない。その為には先ず、被疑者の範囲を確定すべきだと思う。候補者が絞れたら、それらの不在証明を検討しよう」P.500) |
推理合戦から降りる存在(オブザーバー) |
私は降ります」鋸りり子だ。「やはり不毛に思えてなりません。通報派は一度譲歩しているわけですし、探偵ごっこへの参加を棄権するぐらいは認めてもらってもいいはずです」 皮肉たっぷりの言い草に会長はやや眉をひそめたが、それでも認めないわけにはいかなかった。りり子はここにおいても頑なに探偵を拒否することを選んだのだ。 「僕も棄権でいいですか」線太郎が続いて意見を表した。「証拠に基づいて僕なりに考えようとはしてみたんです……でも、どうしてもこの中に殺人犯がいるなんて思えなかった」 「ぼ、僕もです」金牛事務員も同調した。「オブザーバーとしてここにいさせてもらえたらと思います」(P.215) |
「最初に訊くけど」と柏木。「棄権はあるかい?」 「私は棄権する」と修野嬢。 「理由を頂戴出来れば」と柏木。 「客観的な裁判官が必要だから」 「あたしも棄権、です」と由香里ちゃん。「先輩方のなかに殺人者がいるなんて莫迦げてます。したがってこの議論自体に反対です」(P.563) |
推理合戦の開始 | 引用略(P.218) | 第3章~ (P.562) |
ダイイングメッセージの解釈 | 「で、アストロロジカルシンボルっていう十二宮それぞれを表すマークがあって、金牛宮のそれがこんなの」(P.221) | 粉彩色の黄の附箋に、赤小球筆で何か筆記してある。これは……『よえ』? それにト音記号、楽譜第三線に半音下、そして四分音符がファとソ…… 「えぐいで」と切間。 「そうね」と一馬。「シ、ドじゃあね」 「え?」と僕。「これはファ……」 「古野先輩」と由香里ちゃん。「それはホルンの記譜だけです」(P.531) |
「会長直々のご要望であれば幾らでもお話ししましょう。衿井会長の名前は雪。名前で『ユキ』という音は珍しくありませんが、スノウの意のこの字をそのまま当てるのはやや珍しいのではないでしょうか。少なくとも僕は今まで出会ったことがありませんでした。そして自然現象であり、気象条件そのものであるため、これは天気記号というもう一つの表し方ができるんです」(P.228) | 源氏模様(柏木の図案)、キリマのKM、上之巣ゆかり(P.573~) | |
素直に罪を認めろとの発言(オブザーバー宛) | 以上であたしの推理を終わります。素直に自分の罪を認めてください(P.222) | 「さあ二条、アタシの答案はこれで終わりよ、いさぎよい身の処し方、期待しています」(P.569) |
オブザーバーの嫌疑が晴れて、推理者は謝罪 | 「あの……ごめんなさい、金牛さん。突貫とっかん推理で噓つき呼ばわりの挙げ句、殺人犯だなんて疑ってしまって……」(P.223) | 「二条警視正、呼び捨てになんかして御免なさい、誣告についてもすべて撤回してお詫びします」(P.572) |
告発されたものが笑い出し、相手を賞賛する | 「くふふ――いや、失礼。なるほどね、見事だよ。想像力の豊かさは賞賛に値する。脚本家にでもなったらいいんじゃないかな」(P.229) | 「……あっは、あっははは、あっは!!」なんと官憲は大爆笑して。 「(略)くふっ、いや失礼、志度君だったか、素晴らしい。即逮捕状を請求して、姫山警察署に引致したい。 感動的な説得力があった……」(P.569) |
推理合戦を終わらせるとの宣言 | この推理合戦、次の私の番で終わらせてもらうよ(P.231) | 「あらいいの?」と一馬。「せっかくの喋くり出来なくなるわよ、アタシで終わりだから」(P.563) |
探偵が虚偽の推理を展開する | 引用略(P.238) | 引用略(P.611~) |
警察とマスコミの介入に言及 | (警察とマスコミの介入に言及)(P.243) | 「大衆報道だか葬式泥棒だか新興宗教家だか」と修野嬢。「脳の働きが可哀想なヒトたちがごろごろしている。」(P.302) |
探偵に代わり、真の探偵が出る | 今から私が真犯人を告発します(P.247) | 「其処まで道を踏み外しているなら」と柏木。「是非もない、僕がやるしかないだろう」 「僕が?」最終の探偵、真打ちが動いたか。「道を……?」(御矢P.556) |
探偵は狂言回しとの告発 | 中村君がこの戯曲――偽曲ともいえるのかしら――の狂言回しを務めていた。(P.247) | 「もうそういう宰領者ごっこも狂言回しも嫌なんだもん。ヒトの死を戯曲や方程式に貶めるのは嫌なんだもん」(御矢P.332) |
(探偵役と真打ちがお茶で会話) | (探偵役と真打ちがお茶で会話)(P.272) | 「御茶が入りました」由香里ちゃんは回教寺院のように尖塔を有する燻し金の露茶沸器から、黒い茶杯に紅茶を注いだ。(P.686) |
ここでは、『LLF』と『果実』はストーリー展開においても類似していることを示します。
以下の表をご覧頂くと、2作品は、「探偵小説」「ミステリ」の根幹部分であり、作品の「肝」 である
事件発生から解決までの手順が、非常によく似ていることがわかります。
なお、比較の際には、長さの違う物語を一つの尺度で測るために、
「ある場面が全体の何%のページから始まっているか」を計算し、数値化しました。
計算式は以下の通りです。
場面開始ページ数÷総ページ数×100=X (ただし小数点以下を四捨五入)
両者の数値を比較すると、2作品の数値は偶然とは言えないほど近接しています。
ただし、展開が似通っているのは、星海社が言及したように、
両作品が学園ミステリの「王道」に乗っ取っているためだというご意見もあるでしょう。
ですから、比較対照の為に、同じ手法で作品Cの構成を提示しました。
ネタバレを防ぐ為に匿名化してありますが、作品Cを選んだのは、
・学校生活(授業、部活動など)の範囲内でとある事件が起きる、学園ミステリである
・それを探偵役の生徒が解決する
・複数の生徒が推理を示す「推理合戦」的な展開がある
・多重解決ものである
という、『果実』および『LLF』との共通点を持つからです。
なお、匿名化した為項目数が少なくなっています。もし再検討などのために作品名をお知りになりたい場合は、委員会までご連絡ください。
ロジック・ロック・フェスティバル (総ページ数287。ただし後書き除く) |
天帝のはしたなき果実(新訳) (総ページ数755。同左) |
対照作品C (総ページ数250前後。同左) |
第1章 学校生活 ↓ 挨拶回り(仮名先輩の家) P.40~ 14%謎1(やまつみ)→解 第2章 P.73~ 25%りり子の家 ・主人公とヒロインが「いい雰囲気」になる P.93~ 32%謎2(写真紛失事件) ↓ 解(伏線の提示) ↓ P.124~ 43%幕間 前夜祭を終えて(宴会) 第3章 P.129~ 45%学園祭・日常パートのクライマックス ↓ 社会科研究室 第4章 P.178~ 62%事件発覚 ↓ P.183~ 64%多数決「3時間の猶予」 ↓ 現場検証 ↓ 音楽室へ DM(ダイイングメッセージ)の解読 アリバイ確認 「前提」を整理 第5章 P.217~ 76%推理合戦 1人目:オブザーバを告発 2人目:女子生徒を告発 3人目:男子生徒を告発 主人公:「偽犯人」を提示 ↓ P.248~ 86% 事件の真相 ↓ 終章 P.265~ 92%主人公が友人の実像を知る |
序章 学校生活 ↓ P.70~ 9%柘榴館 主人公がヒロインと「いい雰囲気」になる (まほろと実香の「契約」) 第1章 P.170~ 23%謎1(奥平事件) ↓ P.273~ 36%謎2(開かずの書庫および道化師登場) 解は示されないが、伏線の提示がされる ↓ P.358~ 47%RAPPA!(宴会に相当) 第2章 P.420~ 55%大会当日・日常パートのクライマックス P.480~ 63%事件発覚 ↓ P.483~ 64%多数決「3時間の猶予」 ↓ 第四会議室へ アリバイ確認 DMの解読 「公理」を整理 第3章 P.562~ 74%推理合戦 1人目:オブザーバを告発 2人目:男子生徒を告発 3人目:自殺説 4人目:女子生徒を告発 5人目:男子生徒を告発 主人公:「偽犯人」を提示 第4章 P.641~ 85% 事件の真相 ↓ P.676~ 90%主人公が友人の真の目的を知る ↓ P.751~ 99%終章 |
第一章
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