「下々の者よ!よく聞け!余の名はスクナ・ヒダノゴウ!
砂漠の王である。
庶民どもを統治する為に東方魔法学園で学んでおり、今回フィジル島魔法学園に留学に来た。
喜ぶが良い。諸君等に余の学友になる栄誉を授けよう!
とはいえ、畏れることは無いぞ?普段通りに生活していて良い。
でないと庶民の実態がわからぬでな!」
開口一番発せられた言葉がこれであった。
これは夢の中、学園長からの学園祭にくる転入生、留学生、来賓の紹介での一コマ。
スクナと名乗ったその男は金眼黒髪にハチマキ。
丈の短いベストにサラシ、ズボン、そして体の随所に巻かれる包帯。
腰に巻きつけている砂の入った瓶。
左二の腕には香炉の刺青、胸元には女の顔の刺青。
微妙に間違った砂漠の民の衣装を纏い、満面の笑みで自分を紹介した。
スクナの自己紹介はまだ続く。
「しかし!余の威光が諸君等を照らしてやれるのは日輪の輝く間だけ。
間違えぬように最初に言っておくのでよく見ておけ!」
そういうと、スクナは自分の左の二の腕に掘られた香炉の刺青に手を伸ばす。
驚いた事に、手はそのまま二の腕に入っていってしまった。
そして引き抜かれる手には香炉が握られており、左二の腕にあった香炉の刺青は跡形も無く消えていた。
「これは夜陰香炉と言い、一時的に夜にするアイテムである。
夜になるとどうなるか、見るが良い!」
その言葉と共に、香炉から漆黒の煙があふれ出す。
煙はたちまち辺りを覆いつくし、そこに【夜】が出現した。
闇夜に包まれながら、スクナの胸元に掘られた女の顔の刺青が広がっていくのが見えただろうか?
辺り一帯は夜の帳が落ち、ライトがつけられてスクナを浮かび上がらせる・・・
否、そこには既にスクナはいなかった。
スクナの代わりに、銀眼、黒髪ロングにリボン、衣装は変らぬが腹に巻かれていたサラシは胸を隠している。
左二の腕には鐘の刺青、胸元には男の顔の刺青。
香炉を片手に持った女が立っていた。
「ごめんなさい。ごめんなさい。カナブンよりごめんなさい!
スクナがとんでもない事を言っていますが、悪気は無いんです。
ただちょっと頭のイタイ子なんです。
どうか皆さん、仲良くしてやってください。」
開口一番頭を深々と下げて謝罪の言葉。
その後に漸く女の自己紹介が始まった。
名をツイナ・ヒダノゴウといい、スクナ・ヒダノゴウとは同一人物である、と。
自分達が太陽と月の運行に心身ともに影響を受け、昼夜で人物が入れ替わるニ身一体の種族だという事。
身に宿したアイテムで5分だけ夜や昼を作り出せる事。
そして、腰のつけた瓶を見せながら、瓶詰め砂漠を拾ってスクナは自分が砂漠の王だと思い込んでいるだけという事などを。
「あ、あの、お裁縫が少し出来ますので何かあったら言ってください。
どうぞよろしくお願いします。」
ツイナは最後にもう一度深々と頭を下げ、そこでスクナとツイナの紹介映像は終わったのであった。
文化祭の朝。
フィジル島最東端の岸壁。
朝焼けに照らされる二つの人影があった。
逆行で人物の特定はしにくいが、二人の会話は聞こえてくる。
「太陽が何もしなくともその輝きで隠れられないように、王たる気は意識せずとも周囲を萎縮させますわぁん。
それでは下々の実態を掴む事などできはしませんでしょう?」
「おお!?そうか?うむ、確かにの!」
「で・す・か・ら・・・こういったものを進呈しますわぁん。」
女のシルエットが男のシルエットに何かを差し出し、その効果を説明する。
男のシルエットは受け取りながらそれを聞く。
「成る程!バーサーカー将軍や徘徊ジェネラル方式か!
しかし何故じゃ?無料なのか?」
「あらぁん、いやだわぁん。王に貢献するのが下々の喜びですものぉん。」
「お、そうか?そうなのか!わっはっはっは!苦しゅうないぞ!」
一連のやり取りの後、男のシルエットは消えた。
そして朝日の中から出てきたのは・・・
不敵な笑みを浮かべたアルナワーズだった。
孔雀の羽で作られ、目玉模様をあしらわれた団扇で口元を隠しながらアルナワーズが校舎方面へと消えていった。
最終更新:2008年10月28日 10:40