そろそろ頃合いだろうか。もう少し早く出るつもりだったのだが、何の気無しに手に取った漫画が存外に面白く、つい最後まで読んでしまった。

漫画喫茶を出て、徒歩で10分。マンションの5階までエレベーターで上がり、ドアの鍵を開けようとする。キーホルダーからいくつか鍵を試して、ようやく鍵が開いた。中の様子をうかがう。6時間ほど放置していたが、特に異常はないようだ。
こざっぱりした部屋の中、彼女はそのままの状態でいた。胎児の体勢で横になっている彼女は、革の拘束具で自由を奪われている。目隠しで視覚も奪われており、猿ぐつわされているため声も出ない。服装こそすぐにでも大学のキャンパスに通えそうなものを着衣しているが、それは単に脱がすのが面倒だっただけだ。

仕事、の準備を確認する。コンセントから伸びた電源ケーブルは、彼女のスカートの中に消えている。俺は無造作にスカートをめくり、股間から生えている白い硬質の物体が細かく振動するような音……実際にそれは振動しているのだが……を発しているのを確認し、満足する。これはまあ、要はバイブなのだが、電池で動くその係累と異なり商用電源で動作するため、望む限りの強い出力と、長い動作時間が実現できる。どちらかというと、電機マッサージ器に近いものだ。今も、電池式のそれでは実現できない出力を、もう6時間ほど継続している。
もちろん、嫌がる相手に無理にこういう処置を施したところで、ただ痛がらせるだけだろう。いくらスタンガンで意識を失わせ、その間に拘束し、膣に潤滑剤(長期戦になるので、ローションとワセリンを混ぜたものを使っている)を入れ、器具を挿入するまでをスムーズに出来たとしてもだ。だが、ある種の薬剤をあらかじめ注射していたとなると、話が違ってくる。作り話に出てくるような催淫剤みたいな便利なものはないが、精神的に興奮する薬剤、感覚器を敏感にする薬剤など数種類をカクテルしたものならば用意できるし、それを絶妙な分量で注入すれば、目の前の彼女のような状態になる。

あえて気にしないようにしていたが、彼女は先ほどからビクン! ビクン!と波打つように身体を反応させている。拘束されているため大きな動きにはならないが、拘束具の鎖に強い張力がかかっているのが一目で見て解る。
股間からは洪水のような、というと陳腐な表現だが、様々な液体が全力で分泌された形跡が残っており、正直言ってあまり清潔な光景とは言い難くなっている。
猿ぐつわは唾液で濡れそぼっており、時折声にならない絶叫がか細く聞こえてくる。
普通はこの準備段階で2, 3時間放置するのだが、今回は長くやり過ぎてしまった。あまり性的に経験がないらしい、というか依頼者の話によると初体験から一ヶ月も経っていないような女なのだが、過激に過ぎただろうか。

コンセントを抜き、膣からバイブを引き抜く。その過程でまた絶頂を迎えたようだが、気にしない。次に、目隠しと猿ぐつわを取る。
「ふぐっ、がっ、あっ……」
中学生、下手すると小学生と言っても通りそうな童顔が現れるが、人間の受容できる限界を遙かに超える快感を長時間にわたって受け続けていた彼女からは、獣のような声しか聞こえてこない。
「ああっあっあっあっっあっ!!」
余韻で、また絶頂を迎える。硬直が解けると、また絶頂する。
「うああああ!!」
どうしても快感が止まらない彼女を尻目に、最後に足につけていたタイマ式のスタンガンを停止する。これは、定期的にショックを与えることで、彼女が快感のあまり気絶したままの事態になることを避けるための処置だ。
そして、彼女の様子が収まるまで、俺は次の準備を進めておく。

「もしもし?」
絶頂がようやく収まったであろう彼女に、声をかける。目が半分開いたような閉じたような状態で、気絶こそしていないが意識があるとも言えない状態のようだ。軽く頬を張り、さらにスタンガンの最弱出力で刺激を与え、ぎりぎりコミュニケーションが取れる状態にまで持っていく。
「なんでこういうことになったか、わかる?」
彼女はゆっくり首を横に振った、ようだ。
「君、ちょっと前から男と付き合いはじめたでしょ。それが、俺の依頼人には気に入らなかったんだってよ」
そう言って、依頼人の名前を告げる。一瞬の無反応の後、怒りとも絶望ともつかない、不思議な感情が顔に浮かんだ。
「そんなに肉欲を満たしたいんだったら思う存分楽しませてやるよ、ってのが今回の趣旨な訳。わかった?」
わかるわけはないだろうが、俺はそこで話を打ち切る。

膣に再度、潤滑剤を入れる。彼女が多少抵抗するが、膣を少し刺激されるだけで達するため抵抗らしい抵抗にならない。
次に、別のバイブを挿入する。最初のものは振動で刺激するタイプのものだったが、こちらは振動だけでなく前後動もするタイプで、特に子宮口とGスポットを重点的に刺激する複雑な形状をしている。挿入するだけでもちろんイってしまうのだが、息を詰めたような絶頂がしばらく続きそうだったので、その間に手早く続きの作業に着手する。

お腹の二カ所に、電極を張る。これは、それぞれGスポットと子宮口の位置に対応する。バイブにも同様の位置に電極が設置されており、体表面と体内間で電流を流すことで振動や前後動とは異なる強い刺激を与えることができる。通電試験をすると、それだけでまた絶頂に達した。通電する、絶頂。通電する、絶頂。通電する、絶頂。
「っ、あ、あああああっ…………………………………………!!!」
快感はもはや声になっていない。一瞬目が合う。屠殺場の牛のような目だな、と思った。目を合わせたまま、再度通電。そのまま眼差しから意識が抜けていくのがわかったので、とんとんとんと小刻みに電流を流し、無理矢理なアクメで目を覚まさせる。
ぱくぱくという口、ただ呼吸するだけのその動き。タスケテ、と動いたような気もするが、服の上から乳房を指ではじくと、
「あぐぁっ」
快感のうめきで続きを綴れない。

気絶防止のためのスタンガンに電源を入れ、タイマを仕掛ける。
最後に、補液のための点滴を入れ、栄養補給のための点滴も入れる。長期戦になるからだ。そして、快感を増大させる薬剤を、追加で注射する。経口摂取と違い、すぐに作用するはずだ。
準備が出来た。少し背を伸ばし、悪意有る装具で全身を固められている彼女を視野におさめる。ここまでされると、いったいどのような快感を得ることになるのだろうか。人間の身体はここまでの快感を得ることを前提には設計されていないはずで、設計限界を超えた快感というのはどのようなものなのだろうか。

「さて……聞いてる? また電源入れるからね」
彼女は完全に怯えた表情で俺を見ている。
「申し訳ないけど、俺の経験上さっきまでとは比べものにならないほどの快感になるはずなんだ。
身体も準備が出来てるし、あなたの中に入れたものも気持ちいいポイントを重点的に刺激する形になっているし、快感を増す薬も増量したし」
そこで時計を見て、次にここに来る時間を彼女に伝える。それは、8時間もの間絶頂に耐え続けろという意味の言葉と同値であり、それを理解した彼女からは表情が無くなった。快感は人にここまでの絶望を与えることができるのだな、と感心する。
「じゃあ、まぁ、思う存分気持ちよくなっててよね。一生忘れない思い出にしてくれって依頼だし」

そして、バイブのスイッチと電気刺激のスイッチを同時に入れる。
とたん、拘束具のバシっという音と共に、彼女の全身の筋肉が限界まで収縮した。ぶるぶるという小刻みな痙攣が全身を支配し、それと並行して快感から全力で逃れようとする意志が身体を突き動かす。一度、二度、三度、何度も何度も脳のリミッタを無視したかのような力で想像の限界を超える強度の絶頂を表すが、その程度で表現しきれる快感では到底ありえなく、行き場のない絶頂感は彼女の体内に蓄積し快感はさらなる高みへと積み重なっていく。
数分も経たないうちにそういった身体が暴走したような反応は消失し、寝ているかのように静まる。これは気絶しているわけでも無感覚になっているわけでもなく、絶望的なまでの快感が身体を硬直させている状態だ。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!!!!!」
声にならない声で、嬌声にならない嬌声で、快感のごく一部が漏れ聞こえる。
試しにバイブを持ち、前後に揺さぶってみる。
「ーーーーーー!」
文字では表現できないような絶叫。こうなるともはや、絶頂という言葉は意味をなさない。全ての瞬間が絶頂であり、その絶頂の高みは通常の方法では間違っても到達できないものだ。そしてただ暴力的な感覚は、一瞬一瞬ごとに強度を増していく。

じきに、全身の筋肉がそれぞれ協調せずに無秩序な動きを始める。目もすっかり白目をむいたままだが、意識を失っているわけではなく全ての快楽をその意識下に刻んでいる。
そして、脳が正常に動作できていないことを証明するかのように、不自然な痙攣、不自然な発声、不自然な動作が始まる。

死なないと良いな、と思った。まあ、これでしばらく休憩だ。俺はまた漫画喫茶に向かった。
なお、その8時間後に彼女が解放されたかというとそうではなく、8時間ごとに計2回の補給が行われ、全てが終わった時には彼女を拘束した時点から30時間が経過していた。その後彼女がどうしているか、俺は聞いていない。

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最終更新:2013年01月01日 21:22