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彼は転びそうになって、慌てて姿勢を立て直す。
約束の時間からはもう一時間も遅れている。
彼の責任ではないとはいえ、これだけ遅れれば相手が何も思わないはずはない。
(アイツのことだから、待ってるような気がするけど…… それにしても)
なぜ電話に出なかったのかが心に引っかかる。メールも返ってこない。
何となく不安な気分になりながら、約束の場所に着く。
走り慣れた彼でもさすがに息が切れている。
体重を掛けて重い戸を開ける。
正面に彼女が――座り込んでいた。
涙の跡を残したまま、放心したような顔をして。
身に付けた制服はよく見るとあちこちが乱れ、破れているところもいくつかある。
慌てて駆け寄ろうとする彼の足を、弱々しい視線が止める。
「キミくん……ごめんね、電話出れなくて」
「それよりお前、どうしたんだよ、それ……」
「……大丈夫だから。でも、できたら……昔、してくれてたみたいに……手、にぎって」
軽く頷くと、ゆっくりと歩き寄って隣に腰を下ろした。
手を繋ぐ。
微かに握り返してくる感触は、ひどく頼りない。
落ち着かない気持ちでいると、「……怒らないで、ね」と前置きして、彼女は話し始めた。
彼女が経験した、全部を。
告白の間、彼は一言も挟めなかった。
掛ける言葉が見付からなかったからだし、訥々と話す彼女に圧倒されていたからだった。
「――それで、わたし……イっ、ちゃって……何人も男のひとに、されて、変な声、たくさん出して……
だから、キミくんが遅れてきて、よかったと思うんだ。あんな姿見られたら、わたし、狂っちゃってたかも――」
照れくさそうに。
「キミくんのこと、好きだから」
「……うん」
意外なことではない。
いつからか分からないくらいずっと、こっちだって同じ気持ちだったのだから。
この手の汗で、伝わっている、はず。
「……ごめんね。初めては、キミくんとって決めてたのに、あげられなくなっちゃった」
どうして、そんなことを。
「……いいって。悪いことなんか、してないんだから……」
「ありがとう……早く、忘れたいんだ……そういうことをされてたのも、反応しちゃった私の身体も、とっても、嫌だったから……」
うつむいたまま、呟き続けていたのが。
「だから」
声に力が戻ってくる。
顔を上げて、前を見据えて。
「キミくんに、気持ちよくしてもらいたいんだけど、嫌……かな?」
握った手の力が、強くなる。
「…………いい、よ」
さらに強く握り返して応えた。
壁にもたれた彼に体を預けて、後ろから耳を念入りに舐められている。
初めてのキスでは上あごを舌でくすぐられ、舌を絡ませ合って。
身体の力が入らない。
「ふぁ……ふやぁぁぁ……やだ……キミくん、じょう、ず……」
「ありがとう……初めて、だけどな」
耳への愛撫と並行して、胸にも手が差し入れられ、快感を増幅させていく。
先程とはまったく違う優しい愛撫に、嬉しさで胸が締め付けられたようになる。
「ん。ちょっと、仰向けになって」
恥じらいながら、床に横たわると。
すでに潤いを取り戻したそこに、舌が這う。
「ちゃんと、ん、濡らして、あげないと」
「やあぁっ…………恥ずかし……もう、大丈夫、だってぇ…………んっ……んんっ! ふぅぅぅっ!」
舌が潜り込んできて、軽く、達した。頭の中に火花が散る。
明らかに、段違いに体が敏感になっているのが分かる。快感を受け入れる準備が出来ている。
期待と恐れが、入り混じった気持ちで。
「入れる、ぞ……」
「うん、来てぇ……」
すでに色々なものを受け入れてきたそこは、すんなりと飲みこんでいく。
新しく、中がその形に合わせて作り変えられていくような感覚。
気を遣っているのか、いやにゆっくりな挿入が徐々に奥へと進んでいって――
先がいちばん奥を突いたとき、絶頂がやって来た。
無理矢理与えられたものとは違う、全身に沁み渡るような快感の頂点。
口を半開きにしただらしない顔で、体じゅうを痙攣させて頭が焼き切れそうな快感に耐える。
中も激しくうねって、入ってきたものを揉みしだく。
「ふやぁぁぁぁっ……っ……っ…………しゅごいの、きたぁぁぁっ……いれた、だけで、なんれ、こんなにぃぃ……」
涙をぽろぽろと零しながら身体を震わせる。
「……おい、大丈夫か?」
「だい、じょうぶぅ……キミくんとつながりぇたの、うれひくて……きもひよくひぇ……」
突然強く抱き寄せると、火がついたように抽挿を始める。
「あはぁぁっ!?」
「ごめっ……! でも、中、気持ちよすぎて、止まらな……っ!」
「やぁぁぁぁぁぁっ! ――あああっ! んんぅぅ…………ひあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!……あああっ!……っ!……っ!」
立て続けの絶頂は、快感と共に歓びを倍加させていく。
耐え切れずに、涎が垂れるのにも構わず、声の限りに叫ぶ。
「んうっ!? 何だ?」
突然妙な声を出して、動きが止まった。
――散々突かれてきた最奥部が、突破された。
本当の一番奥で、繋がれた。
足の震えが止まらない。
「いちばん、おくぅ……あかちゃんの、ところ、だよぉ…………」
慌てて抜こうと動いた腰を、意外なほどの力で掴んだ。
「だめぇ、そのままぁぁ…………う、うごいてへぇ、いい、よぉ……」
喉仏が動くのが見えて。
「うぐぁぁぁぁぁっ! おぐぉぉっ! ふにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――っ!」
子宮口を、擦り上げられる。中のものが出入りする度に、意識が飛びそうな快感が襲う。
髪を振り乱し、喉からは人間のものでないような叫びも漏れる。
「――んお"ぉぉぉぉっ! イった、イっひゃのぉっ、うごいひゃ、だめぇぇっ、ん、だめひゃない! ん"ぅぅぅぅぅっ!
やめないれっ! えへぇぇぇぇぇぇっ! またぁ、またイ"ぐぅぅっ! あ"―――――――――っはぁぁぁっ!」
「もう、ダメだっ……イクぞ!」
「うん、なかで、イってへぇっ! わたひも、んっ、イきゅ、イっひゃうぅぅぅぅ――んああぁぁぁぁぁぁぁっ!」
熱さ、を感じた。
猛烈な締め付けをものともせず、子宮を満たさんばかりの射精が打ち付ける。
視界が真っ白になり、背中に回した指がいっそう強く食い込む。
彼女の痙攣を治めようとするように、二人は固く抱き合っていた。
――呼吸が落ち着いてきたのを見て、入っていたものが全体を現す。
抜いてすぐに閉じたそこから、白濁が滲んでくる。
「はひぇぁぁぁぁ……しゃわせぇぇ……キミ、くぅん、だいしゅきぃ……」
身体を離したあとも、二人の手はしっかりと繋がれていた。
―了―
最終更新:2013年01月01日 23:26