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「彼」は、腑に落ちないような顔をしていた。
幼なじみにわざわざ人づてに呼び出されただけでもおかしな事だが。
(確かに、言われたよりも早く来てしまったけど……)
指定された建物の中からは、何人もの女子たちの話し声がざわざわと聞こえてくる。
中でもよく通る声で汚い言葉を吐いているのは、メッセージを渡しに来た女子たちのリーダーではないか?
(先客がいたのか……?)
首をひねりながらその場を離れようとした彼の耳に、自分の名前が入ってくる。
(……ん?)
確かに、中の話し声からだった。
そう思って聞いてみると、会話の端々で自分について触れているのが分かる。
気を引かれた彼は、足を戻す。
扉をゆっくり、細く開けて、静かに中を覗いた。
最初は何があるのかよく分からないが、薄暗さに眼が慣れるに従ってだんだん中の様子が分かるようになってくる。
目に入るのはあの、いつも群れている女子たちのグループ。
彼女たちは円を描くように立ち、言葉を交わしている。
その中心、床の上には。
(…………!)
こちらを向いて突っ伏した少女の裸身。
心なしか震えているように見える。
白い肌が目を打つ。
少女は誰か。
その髪の長さから推して――。
意を決した彼は、扉を大きく開け放って中へ踏み込んでいった。
――――
壁に凭れていた彼が、呆れたように声を掛けた。
「……なあ、そこまでする必要はあるのか?」
「同じことしてるだけ! キミくんだって手伝ってくれたくせに!」
「……お前がやりたいなら止めないけど」腕を組んで溜息をつく。
辺りを見渡すと、彼の闖入に異変を察して飛び出してきた男たちは、一人残らず殴り倒されて隅に転がされている。
取り巻きの女子たちが一人ずつ、ローターを当てられた状態で縛り上げられている。
中心に立った彼女がリモコンを操作する度に、甘い呻きが室内を満たす。
そしてリーダーの女子は彼女と対峙している、いや狙われている。
「さぁて、アナタにもわたしとオナジコトをしてあげましょうかしらねぇ……」
「いいの? そ、そんなの入れたぐらいで、あたしがへばる訳、な、ないじゃない」
「へえぇ……本当かしら?」
会話の途中にも、手に持った醜悪な形をしたもののスイッチを入り切りし続ける。
それがモーター音を響かせる度に、縛られて目隠しをされた女子が身を震わせる。
振動させたまま、鼻先に突きつけて。
「これで、気持ち良ぉくさせてあげますからねー。大丈夫、ちゃんとローション使ってあげるから」
「それじゃ、仕返しにならないって。あ、あんたみたいなウブなのとは、違うんだから」
そうは言いながらも、無理矢理浮かべた笑みは明らかに強張っている。
「ちがーう。アナタには散々気持ちよくさせてもらったから、そのお礼がしたいだけ。ね? いいでしょう?」
入口にあてがって軽く掻き回すと、ローションの音がいやらしく響く。
「……やるなら、早く済ませなさいよ」
狙いを定め、軽く体重をかけると、ゆっくりと、丁寧に進めていく。
「そんなに硬くなることないのに。歯食いしばったりなんてしなくてもいいんですよ?」
「…………ぁ……くぅぅん…………あぅぁ………………」
巨大な異物が中を拡げ、擦り上げていく感触に呻きが漏れる。
挿入自体はスムーズだったが、あくまでも少しずつ、じりじりと進む。中がゆっくりと、慣らされていく。
「さすが、ああいう不良と付き合ってるような子はこんなのもすんなり入るのねぇ。
これ動かしたら、すぐ気持ちよくなれるんでしょう? うらやましいなぁ!」
カチッと音を立てて、スイッチを動かす。
強度は最弱。
しかし、最奥部と中の腹側、外の突起に当たるように差し込まれたバイブは、三つの敏感な個所を同時に襲う。
「あぁぁっ、ふぁぁぁぁぁぁ……ぁ…………」
「あんまり気持ちよくないの? じゃあお胸にローターも追加、っと」
「ふんっ。な、生ぬるいなあ。随分、怒ってた、み、みたいだけど、こ、こ、この程度、なの……?」
と、言葉とは裏腹に快感に蕩け崩れはじめた顔で強がる。
「…………こんなの、ぜ、全然、よ。まだまだ、ものたりな、ぁぁっ!?」
「お礼だからね、一緒にしてあげないと」もう一つの穴をゆっくりとこじ開けながら少女は笑う。
「なに、これぇっ……きゅうってなって、もっとひびくぅぅっ…………」
「このバイブってほんとうに高性能だよね。グラインドを足してあげますからねぇ……」
「ふぅぅ………………んぁっ!……っ! っ!……んぅぅぅ…………」
「あれぇ、イっちゃったの?」
「ちがぁうぅ…………んふぅぅぅ…………もう、いい、でしょ……とめてぇ…………」
「気持ちよさそうねぇ。じゃあ」
「!?」
胸に当てたローター、前と後ろに入ったバイブが一気に最大の振動になった。
突き抜けるような快感の爆発が全力で襲い掛かる。
何も分からないままに、体験したことのない絶頂に押し上げられる。
理性の最後の留め金が、弾け飛ぶ。
「ぐうっ……んふぅぅぅぁぁぁぁ! えぐぁぁっ! がぁっ! くぅぅぅぅぅぅ………………んぁぁぁ―――――っ!
やっ! やあぁっ! こんらにぃっ! イきらくな――――ぁ――――――――っ! っ! っはぁぁぁっ!
あへぇぁぁ……………ひぃぁぁぁっ! やらのにぃっ、イっひゃうぅぅ…………っ――――――! くふぅぅぅ……っ!
ゆるひてぇっ、なんでもしゅるからぁぁぁっ! きもひいいのもうやらぁぁぁぁぁぁっ! ……ぅぁあぁぁぁぁぁ!
――――っ、んぁぁぁぁぁぁぁっ! またイっへる、イっへるの――――っ! んぅぅぅあぁぁぁぁぁぁ――――――っ!
ぁぐぅぁぁぁ……………………っ…………っ!……ん"っ!……んぐあ"ぁぁっ! お"ぉぉぉぉ――――っ! お"ぁぁっ!」
痴態をまじまじと見ていた少女は立ち上がって、ぼうっと一部始終を見ていた彼のところに歩いていく。
「あの子は置いて、もう行っちゃおうか」
「……いいのか?」
「なんで今さら。あれだけみっともないのを見たら気は済んだし」
「……まあ、どうにかなるか。誰かに見付かるか、男の誰かが目を覚ますか」
「どっちでもいいけどね。でも」
扉の手前で立ち止まる。
「これじゃ、もしかしたら」
小さく振り返って、髪を振り乱して叫び続ける女子に冷たい視線をやって。
「仕返しに、なってないかもね……」
……次の日の昼休み。
「リーダー」を替えた女子たち(元リーダーを含む)に追い回されながら、こそこそと弁当を食べる場所を探す二人の姿があった。
―了―
最終更新:2013年01月01日 23:28