篠宮伊織はバスケット片手に校庭のベンチに佇んでいた。美術部の紀子先輩を待っている。
 今日はあこがれの先輩と一緒に美術館めぐりをするつもりだった。
 祝日の校舎は人もまばらだ。約束の時間まで、まだあと二時間近くはある。

 さすがに早く来すぎちゃったかなあ。
 でも、初夏の日差しも気持ちがいいし、朝の空気も心地いい。
 ここでのんびりと時を過ごすのも悪くは無いかも。彼女はそんなことをぼんやりと思う。この場所がとても危険な場所だなどとは考えもしなかった。

 こないだ買ったお気に入りの白い帽子、かぶってくればよかったかな。徐々に強くなる日差しの中で伊織はふと考える。この白のスカートや、ちょっぴり自慢の長い黒髪にも、あの帽子はきっと似合ったと思うんだ。
 それに、この強い日差しに対してだって、帽子があったほうが良かったはず。

 日差しが、暑くて――。

◆◇◆
「……、……」
「……」
 ひどく耳障りな話し声で伊織は目覚めた。
 自分はどうしていたのだろうか。熱中症にでもなったのか、記憶が定かではない。
 頭がぼうっとして話し声の内容がどうも把握できない。だけど聞こえてくるのは確かに人間の言葉だ。日本語のはずだ。

 それにしても不快で奇妙な声だった。あまりに変な音声なので伊織には話し手が
 人間のようには思えなかった。ひどく不明瞭で、ノイズ混じりの声。もし爬虫類が会話可能ならばこんな喋り方になるのではなかろうか。言葉交じりに、べちゃべちゃとした唾液の音があたりに響く。
「目覚めたようだな」
「あのっ、私、」
 どうしていたのでしょうか、と問いかけようとして伊織は固まった。
 分娩台のようなものの上であおむけに、両手両足が固定されていたのだ。
 多少遊びの部分はあるけれど、ほとんど身動きが取れない。昆虫採集された虫の気分だ。はしたなくも両足は90度以上に大きく広げられて、正に大の字の状態にある。
 目にはアイマスクのようなものがかけられていて周囲の状況はまるでわからない。

 伊織は肌が粟立つのを感じた。ひどく、嫌な予感がする。

「あのっ、これ、はずしてもらえませんかっ!!」
 伊織は大声をあげたが、声の主は彼女の言葉に耳を貸さない。おそらく彼によって伊織は拘束されているのだ。

「諸君の中にはこちらに来て日が浅いものも多い。人の生理というものを学んでおくのも悪くは無いだろう」
 耳障りな声は、なにやら説明じみた科白を続けていく。
 諸君? ここには他に何人の人がいるのだろうか。そういえば人の気配がする。伊織は耳だけであたりの様子を探る。密閉された部屋のようだ。ここには、3人、4人?
 いや、もっと多そうだ。

「お願いします、これ、はずしてください!!」
 伊織は再度、声をふりしぼって叫ぶが、誰からもいらえはない。まったくの無視だ。

 と、扉の開く音とともに、数名の集団が部屋に入ってくる様子が聞こえてきた。
「あれ、篠宮サンじゃねーの」
 クラスメイトらしき男の声に、伊織は即座に反応する。
「お、織田くん!? その声は織田くんですよね? お願い、助けてください。私、拘束されて動けないんです」
「あー。篠宮サン、悪りいけどそれはできないんだ。ここの『竜種』のオッチャンがさ、
 面白い機械を見せてくれるんだと。そいで、君はその被験者ってわけ」
「りゅう、しゅ?」
 そういえば聞いたことがある。
 ダンジョンからやってきたモンスターの中には、人間そっくりの者もいて人間界にまぎれていることもままあるらしいと。そして最近では、彼らのうち一部の者を崇める宗教団体が流行っているようだとも。その、神と祭り上げられているモンスターが、たしか『竜種』と呼ばれていた――。

「ちょいとお嬢様には刺激が強すぎるかもしれないけどな。ま、悪く思うな」
「あの、ちょっと待って、織田くん!? 織田くん!!」
 伊織は何度も彼に呼びかけたが、織田はそれきり言葉を返してこなかった。
 ひょっとしたら会話を禁じられてしまったのかもしれない。怪しげな宗教団体に拉致された被験者? 自分は一体どうなってしまうのか。
「うぐ、えぐ、えう、うわぁぁぁぁっ」
 伊織は不安で泣き出してしまった。

 伊織のあずかり知らぬところだが、現在この部屋の観客は12,3名といったところだった。ここしばらく使われていない旧校舎の、密閉された放送室。自称『竜種』のモンスターが 6,7名と、この学校の生徒がやはり同じく 6,7名、伊織の足元からやや離れたところにパイプ椅子を並べて座っている。
 伊織の傍らには先ほどから奇妙な声で話をしている進行役の『竜種』が立っていた。彼らの年齢は今ひとつわかりづらいが、どうやら彼が一番年長のようで、人間で言うと三十台後半といったところか。

 実際のところ、竜種が地上にこうごろごろといるはずもない。おそらく彼らはリザードマンかその亜種といったところなのだろう。やや緑がかった膚の色以外は人間とまるで変わらない容姿だ。
 現在この部屋には、伊織のほかは男性しかいない。彼女の更なる不幸を予感させる状況である。

◆◇◆
「まずは、生殖器、だな」
 進行役の『竜種』が意味不明の言葉を放つとともに、足首の固定台がせりあがってきた。伊織の両足をぐいぐいと上の方へと押しやって、いわゆる「まんぐり返し」の体勢にしてしまう。
 スカートがめくりあげられて、伊織は局部に外気を感じた。いままで気がつかなかったが、意識を失っている間にに下着は剥ぎ取られていたらしい。

「おいアレ、二年の伊織ちゃんじゃね? かわいいって噂の」
「うわマジ? 生マンコ見ちゃったぜ。ラッキー」
「伊織ちゃん毛薄いねー。おしりの穴もかわいー。マンコもピンク色で綺麗だねー」
「ひゃ、いっ、やーーっ!! やだやだやだやだ見ないでくださいっ!! 見ないで、見ないでーっ!!」
 伊織は涙を流しながら絶叫しだが、彼女の言葉に耳を貸す人間などここには誰一人いない。
 進行役は続けて指をVの字にし、伊織の割れ目をぐいっと押し開く。
「ひっ」
 誰の目にも触れさせたことのない、自分自身でも見たことのない秘唇の奥が観客の目にさらされる。きれいなピンク色の処 女膜を目にし、おおおーっ、と、生徒たちから歓声がわきあがる。伊織は校内でも人気者だ。期待も大きいのだろう。

「やっべ、おっきした。オレ、ここでオナニーはじめてもいいか? もうたまんねー」
「ばっか、まだまだこれからだって。もったいないから溜めとけよ」
「触らないでっ!! うあーん、いや、いや、いやいやーーっ。うあー、うあぁぁぁぁーっ」
 あまりのことに伊織は言葉も出ない。もはやただ泣き叫ぶだけだ。
「ふむ。なんともうるさい被験者だな。さっさとぶち込むとするか」
 そういって、進行役は大人の腕ほどもありそうな巨大な張型を持ち出してきた。
 男性器を模したそれは蛇腹状に長く続いていて、ずっとたどっていくとその根本は伊織の寝ている寝台から生えていた。さてこれは、どのような仕掛けが仕組まれているものなのか。
 見れば伊織の横たわる寝台からは、他にもマジックハンドやホース、単眼鏡といった怪しげなものがいくつも飛び出している。先に織田が告げた「面白い機械」とはこの寝台のことなのだろう。
 進行役はその巨大な張型を伊織の局部にあてがったが、いざ突き刺そうというところで観客の生徒から横槍が入った。
「あのー。人間の女性は処女膜を大事にするんですよ。道具で初体験しちゃうのはちょっと可哀想だと思いますが」
「ほう、そういうものか。それは知らなかった、こちらの文化には疎いものでね。それではこれは後回しにしよう。まずは胸からにするか」
 そういって進行役は張型を放り出し、伊織のブラウスのボタンをゆっくりと はずしにかかる。
「うぐっ……、ひっく」
 身動きの取れない伊織は無論抵抗などできず、ただぐずぐずと泣きじゃくっていた。
 やがて進行役が器用にブラを取り去ると、14才にしてもやや小ぶりな伊織の双乳がぽろりとまろびでる。やわらかで白い肌がまぶしい。

 もはや観客にも、はやしたてるものはいない。ただこれから起きることに期待しつつ、かたずを呑んで見守っている。
 進行役は、台座から伸びた 2本の触手の先端を伊織の乳首にむにょりと押し当てた。目隠しされている伊織には何をされたかはわからない。ただひんやりとした感触だけが伝わってくる。
「ひゃっ」
 触手の先端はぷよぷよとゼリー状になっていて、その周囲をぐるりと羽毛のようなものが取り囲んでいた。ゼリー部分が伊織の乳首に張り付くとともに、羽毛がくるくると回転をし始める。羽毛が彼女の胸にそっと触れて、じわじわじらしながら責めだした。
「やだ、なにこれ、なにこれ、なにこれなにこれーっ!!」
 伊織は自慰を知らない。
 知識として理解はしていても経験はない。無論性的快感を得たこともない。だから今、自分が得ている感覚の正体が何なのかもわからず、彼女は戸惑うばかりだった。痛みともかゆみとも似た、しかしそれらとは違う、甘く切ない感覚。
「いや、わかんない、胸がヘンなの、やめてください、私、何かヘンなのか来ちゃう、来ちゃふっ、やだやだなにこれおかしくなる、いやいや、いやいやーっ」
 進行役は伊織に構わず観客に説明を加える。
「このゼリー状の部分が強力な媚薬を放出しているのだよ。性感帯に触れているだけでもかなりの快感を得ることができるのだがね」
「はうあ、うあ、うあ」
「さらにこのようなこともできる」
 と突然、触手のゼリー部が伊織の乳首に吸い付き出した。ぴんと立った彼女の乳首を搾り出すようにしごき始める。羽毛の回転も速度を速めだす。
「はうぁ、ひぁ、胸が胸が!! 胸がヘンなんです、うぁ、あうぁぁぁぁーっ、いや、いやあぁぁおぁぁーっ! 止めて止めて、うっ、あーっ! ひあぁ……ふぁ、おぉぉぉぉぉぉぉあぁぁぁぁぁぁーっ」
 強烈な刺激が乳首から全身に広がり、伊織は半狂乱になった。頭から足の先まで、ビリビリと電流を流されたような衝撃が走り抜ける。体が固定され身動きもできないためか、動かせる首だけが自然と力一杯にイヤイヤを繰り返す。
「んはぅっ、はふぅ!! うふあぁぁぁぁぁぁぁーっ」
 伊織の腰がぴくんと跳ね上がり、秘唇から愛液とも尿ともつかない液体が断続的にぴゅ、ぴゅ、と噴き出してくる。

「うわすげ、潮吹いてるぜ」
「おー、篠宮サン初絶頂が潮吹きか。すげーな。可憐なお嬢様だと思ってたのに、こんなにエロい人だったとはね」
「はぁ、はぁ……。な、なにこれ、なにこれ……。私、おかしく、なっちゃったの……?」
「伊織ちゃん、それ絶頂ー。それが『イク』ってことだよー」
「イ、ク……?」

「そう、これが絶頂だ」
「がふぁっ、胸が胸が!! う、うあぁぁぁぁぁぁーあぁー。おぁぁぁぁぁぁーっ」
 伊織が絶頂を迎えても触手はまったく止まる様子を見せない。むしろ勢いを増し、伊織の胸を責め立てる。
「うぁ、私、またイく!! イッちゃうイッちゃう!! もう許して、お願いやめて、こんなのやだ、イク、またイっちゃいます!! 嫌なの、はずして、これ、はずしてくだ、さい。死ぬ、死んじゃ、うぁ、イク!! イクイク!! うあぁぁぁぁぁぁーーっ」
 伊織は思い切り頭を左右に振りながら絶頂を迎える。自慢の長く美しい黒髪もすっかりぐちゃぐちゃだ。何度も潮を吹いたため、だらしなく開かれた股下はぐしょぐしょに濡れている。
「被験者は初心者のようだ。しばらくはこの胸の触手に慣れさせるとしよう」
「ひぁっ。も、許し、あ! あぁ、あぁぁぁぁーっ」

 それから30分間以上、伊織は絶頂を続けた。何度も何度も絶叫しながら潮を吹きまくり、全身は痙攣しっぱなし。しかし精神的にも体力的にもそんなことがいつまでも続けられるはずもない。
「ふぁ、も、もう無理、ぁ、や、ダメ!! や、またイっちゃう!! イっ、ヒっ! イク、イク!! ダメダメ無理、無理です、やだ、またイっちゃいます、イクイク、う、うあ!! おぅ、ほおあぁぁぁぁぁぁぁぁっ! イク、イクイクっ!! うあぁぁぁぁぁぁぁぁーーー、いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーっ」
 伊織は絶叫した後、頭をがくりと後ろにそらせたまま死んだようにぴくりとも動かなくなった。口は大きくOの字に開けたまま、だらしなくよだれもたらしたまま。

「ありゃ、伊織ちゃん失神しちゃったかー。凄かったもんなー」
「あー。ホント凄いわ。ビデオ撮っといたか? 永久保存版だろこれ。とても処女とは思えねーよ」
「しかし、おっぱい責めただけでこれなら、マンコ責めたらどうなるのかね。すっげー気になるわ」
「そだねー。そりゃ絶対見逃せないよ。ちょっと休憩いれてから続行だよな、もちろん。それにしても伊織ちゃん、なんで被験者なんかになってんの?」
「んーあの『竜種』のおっさんが、日射病で倒れていた伊織ちゃんを拾ってきた らしいよ」
「へーそいつはラッキーだな」

 薄れいく意識の中、伊織は彼らの会話をぼんやりと聞いていた。
(あ、やっぱり、帽子をかぶっておけばよかったんだ……)
 そう思いながら、意識は深い闇の底へと沈んでいく。

 伊織の宴は、まだ、終わらない。

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最終更新:2013年01月02日 00:16