「快感であれ痛みであれ、同じ刺激を長く与え続けられると、人の脳はそれに適応し麻痺してしまう」

 失神した伊織を前に、進行役の『竜種』は解説を続ける。伊織の胸に張り付いた触手はまだうねうねと蠢き続けているのだが、彼女は気絶したままだった。
「そのような場合は、別な刺激を加えてみるのがよい」
 そう言いながら、進行役はぬめぬめと光る黒い棒を十数本ほど取り出して、2,3本ずつ伊織の肛門へ、つぷり、つぷりと差し込んでいく。どのような仕組によるものなのか、長さ 20cm程、小指の半分くらいの太さのその黒棒は、蛇のようにうねうねと這いずって伊織の中へ次々と入り込む。
 驚いたことに、伊織の下腹部は何の抵抗もなく十数本の黒棒を全本飲み込んでしまった。さすがに最後の数本はその全てが入りきらずに、体長の半分以上が尻尾のように肛門から飛び出ている。美少女の尻から突き出た黒棒がもぞもぞと動きまわるその光景は、なんとも淫靡なものだった。
 しかしそれでも気を失った伊織は無反応のままだ。多少身じろぎはしたものの、目を覚ます様子はない。

「あれ、反応無いスね」
「そうだなー、これはこれでエロいけどな」
「いや、まだ続きがある」
 進行役は説明を再開した。
「この『黒軸』は、媚薬を放出しつつ、肛門周辺や腸の内部を舐めまわすような道具なのだがな。しかし尻穴の感覚は特殊でね。肛門性交の経験が無い者は、どんな刺激もちょっとした違和感にしか感じられないケースが多い。快感を得るには『学習』が必要なのだよ」
 彼は先のものとは異なる触手を取り出しながら説明を続ける。
「肛門への刺激と同時に、別の性感帯も責めていく。そうすることによって、大脳と神経系に対し、肛門への刺激は性的快感なのだと『学習』をさせることができる」
 今度の触手は先端が三叉になり、それぞれの先が細い舌状になっていた。ちろちろなまめかしく蠢く半透明の三本の舌先を、彼はおもむろに伊織のクリトリスに押し当てる。
「ひゃあぁぁぁぁぁぁぁーっ」
 伊織は電気ショックを加えられたかのように腰をビクビクッと跳ね上げて飛び起きた。拘束されてはいるものの、打ち上げられた魚のように、動ける範囲で最大限にその全身をぴくぴくと跳ね回らせている。
「うぁぁぁっ!!お願い止めて止めてぇぇぇぇぇぇっ!! 熱い、あそこが熱くて熱くて痛いの、熱い熱い熱い痛い痛いぃぃぃぃぃぃーっ」
 実際に熱いわけでも痛いわけでもない。
 ただ先ほどからずっと与えられている性的刺激は彼女には未知の感覚で、意識の中ではこの感覚はまだ快楽と結びついてはいなかった。彼女にとって、今の刺激に一番近い感覚が、「痛み」や「熱さ」なのだろう。苛烈な刺激のためすぐ頭の中が真っ白になってしまい「気持ちいい」という認識を得るきっかけさえなかったのだ。

 三本の舌はそれぞれ別方向から包皮を剥ぐようにクリトリスを舐め上げる。
 先ほどの乳首への責めは、伊織にとっては胸から秘唇へと伝わる間接的な刺激に感じられていたのだが、今のクリトリスへのそれはより直接的で強烈だ。彼女の体は自らの意識によらず勝手に飛び跳ねてしまう。
「ひぁ、ひぁ、う、あぁぁぁぁっ」
 目隠しで、自分の何がどうされたのか訳も分からぬまま、伊織はひたすらのたうちまわる。休み無く十分間ほどもそうしていたが、やがて終焉が訪れた。
「熱いっ、もうダメ無理です許して! うぁぁぁ!! いやあぁぁぁーっ」
 突然伊織は糸の切れた人形のように全身をばたんと投げ出し、またも失神してしまった。

「ふむ、体力的に限界のようだな。栄養剤を持ってきてくれ。あとは膣への刺激だが、これは本人の同意を得る必要があるのかね?」

◆◇◆
「う……、あ……」
 異常なまでの体の火照りで、伊織はすぐに目が覚めた。

 喉が、からからだ。

 だが、それよりもなによりも、今の彼女にはこの全身の火照りが問題だった。お腹の内側が、焼け付くように熱く、そして、痒い。いや、正確には熱いわけでも痒いわけでもないのだろう。言葉では表すことのできないもどかしい感覚。膣口とその内側が疼いて、とにかくぐちゃぐちゃに掻き毟りたくてたまらない。手足が自由なら、傍目も気にせずに自分の秘唇を擦り上げていたに違いない。

「はぁーーっ」
 たまらずに伊織は身をよじった。ため息とも吐息とも取れる切ない声が漏れる。

「目覚めたか、被験者の娘よ」
 進行役の竜種に声をかけられ、伊織は軽く驚く。これまでずっと無視されてきたのに、どうして。いままでの所業からいっても、彼に人間扱いされるとは思ってもみなかったのだ。
「これを飲め。栄養剤だ」
 唇に差し出されたそれを、ためらわずに伊織はごくごくと飲み干した。ポカリスエットのような味がする。とにかく水分が欲しかった今の伊織にとって、これは生き返りの薬のようだった。

「全身が火照ってつらいのではないかね。特に膣が」
「……はい」
 実際今の伊織の状態は『火照っている』などという生易しい表現ではとても表しきれてはいない。体全体が火照り、疼き、先ほどからずっと全身小刻みに震えている。頬の筋肉までもが痙攣し、会話すらままならない。
 気が、狂いそうだ。
「君の処女膜を破ればその火照りは解消できるのだが、さてどうするかね」
「……まずは、この目隠しをはずしてください。この拘束も」
「ふむ。拘束の解除はできないが、目隠しは取り外そう。視界は遮ったほうが快感は得やすいのだがな。まあ、仕方が無い」

 伊織のアイマスクが外された。
 汗がびっしょりで涙に濡れてもいるけれど、それでもなお、彼女の顔は可憐で清楚だった。弄ばれても快楽に溺れず、自分を律し真っ直ぐに前を向いた瞳。どれだけ涙を流しても辱めを受けても、心はまだ折れずにいた。たとえ全身を拘束され恥部をさらけ出され、秘裂から愛液をだらだらと垂れ流し続けているとしても。

「うわ、やっぱ伊織ちゃん可愛いよー」
「顔見せてくれると嬉しいよな。萌えるわ」
 外野の声を無視し、伊織は辺りを見回す。
 ――まぶしい。
 拘束されてからまだ数時間だというのに、光を見るのが随分と久しぶりな気がした。とっくにわかっていたことだけれど、クラスメイトや学校の生徒にまじまじと自分の秘唇を見つめられていて、伊織は恥ずかしさで死にたくなる。

 だけど、今の自分にはそれよりもずっとずっと切羽詰っていることがある。今はとにかくこの体の熱を、疼きをなんとかしなくては。

 伊織は傍らの竜種に、ささやくように伝える。
「お願、い、します」
「ふむ? では、処女を奪っても構わないのだな」
「……はい」
 伊織は、こくり、とうなづいた。
 今の自分の置かれている状況が哀しくて、また涙がぽろぽろと零れ始めてきてしまったけれど、それでも伊織のその表情は毅然としたものだった。覚悟を決めた顔つきだ。
「では、失礼する」
 彼は自らのペニスを取り出し、伊織の膣口にゆっくりと押し当てていく。
 それは日本人の平均サイズからするとかなり大きめのものだったが、伊織にはその判断はつかなかった。とにかく今は、ただ膣の中を思いっきりかき回して欲しい。

「うっは、いよいよ伊織ちゃんの処女喪失か」
「くっそ、オレが一番手になりたかったぜ」
「いやでもワクテカだよー、もうたまらないよー」

 いよいよ、くる。
 さすがに恐ろしくなってきて、伊織はぎゅっと固く目を閉じる。
「これは気持ちのいいことだ。そう思いたまえ」
「えっ!?」
「君の肉体は今、快楽を優先して受け付ける状態にある。処女膜を破る際も、肉体的には破瓜の痛みよりも快感の方がずっと大きいはずだ。痛みと快感、どちらの感覚が強いかは、あとは気持ちの問題になる。そうだな、『気持ちいい気持ちいい』と口の中でひたすら唱えていたまえ」
「……は、はい」
「では、いくぞ」
(気持ちいいです、気持ちいいです、気持ちいいです……)
 伊織はそっと目を閉じて、言われたとおり素直に口の中で同じ言葉を繰り返す。簡単な自己暗示というところなのだろう。だが伊織は今、身体が勝手に性の快楽を欲している。そんな彼女がその言葉を唱えると、それだけで自然と股間が疼き、そこから愛液がたらたらと凝れ落ちてきてしまう。

 ずぶり。
「ひぁぅっ」
 伊織の小さなピンク色の膣口を、竜種の野太いペニスがずりゅっずりゅっとこじ開けていく。膣の中をごりごりと擦られる、ずっと待ち望んでいたこの感覚。
「ふぁ、お、おぉーっ! きますっ、きたきたっ、きましたっ、気持ちいいですっ、気持ちいいですっ。気持ちいいですーっ!! ひぃぁぁぁぁぁーっ」
 伊織は大きく目を見開いて、嬌声の悲鳴を上げる。
 確かに破瓜の痛みはあった。でも、自己暗示などではなく本当に気持ちが良かった。
 それが、伊織の中にある何かのスイッチを押す。

 拘束されてからずっと、伊織にとって未知の感覚だった絶頂感。それが今この瞬間、彼女の意識の中で『快楽』へと切り替わる。『水』を初めて認識し感動に打ち震えた三重苦の少女のように、伊織は今、初めて絶頂感の中に『快楽』を見出して、体中が歓喜で震えあがる。

 伊織は、爆発した。この快楽は、もう、止まらない。止められない。

「ふぁ、きっ気持ちぃぃぃぃぃぃっ。ほんとにほんとに気持ちいいです気持ちいぃですっ!! はぁ、はぁーっ、お願い、もっとしてっ!! 早く早く奥を強くかき混ぜてくださいっ。早く奥に来て!! ふぁぁぁぁぁっ!! もっとっ、もっともっとこしゅり上げてくらさいっ!! おへその奥まで擦り上げて!! 」
 入り口近くの膣壁を亀頭で引っかくようになでまわしてから、進行役はペニスをゆっくりと奥深くへと押し進める。処女の秘肉はきつく狭く、彼の大きめな男根がそうすんなり挿入できるものでもないのだ。

「む。きつすぎてこれ以上奥へ入れるのは難しいか。深呼吸したまえ。体を楽に」
「ふぁーっ、ふぁーっ、ふぁーっ」
「ふむ、やはりきついようだな。先ほどまでで濡れきっているから大丈夫かと思っていたのだが。ここで止めるか」
 腰を止め、彼は伊織に告げる。
「嫌ですっ。ヤだ。ヤだヤだヤだーっ!! もっと奥をえぐってくださいっもっともっと奥をっ、痛くても構いませんっ!! 早く、早くっ、早く早くーっ!!」
 伊織はイヤイヤをしながら泣き叫ぶ。すこしでもペニスを強く膣にすりあわせようと必死に腰を浮かせている。
「そうかね。ではその前に、今日の復習といこうか」
「は?」

「まずは、胸」
 そう彼が呟いたとたん、いつのまにか止まっていた胸の触手が再始動しだす。
「ひぁ、ふぁ、胸が胸がぁ!! 胸が気持ちいいですっ。すごくすごく気持ちいいっ!! 私の胸がとけちゃうよぅとけちゃうよぅとけちゃうよぉぉぉぅーっ!! うぁぁぁぁぁぁぁん!!」
 これまではこの触手で訳もわからず失神させられていた伊織だったけれど、今は胸の刺激もしっかりと快楽として受け止めていた。伊織はぽろぽろと涙を零し始める。この涙もまた、先ほどまでのものとはまるで違う、歓喜のそれだ。

「次に、肛門と陰核」
 その言葉に連動し、更に黒軸とクリトリスの触手が動作を再開した。三本の舌がぷっくりふくらんだクリトリスを舐め上げ、同時に伊織の腸内に収まっていた十数本の黒い棒も一斉におなかの内側から彼女を責め立てる。
「ひゃっ、あーっ、おーっ、おぉーっ、おしりが熱いです熱いでしゅあちゅくて
 ぎぼちいぃぃぃぃぃぃぃぃーっ!! ひぁ!! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
 あぁぁぁぁぁぁ!! あそこも気持ちいいっ!! すごい、素敵です素敵すぎですっ
 もう頭が真っひろになるっ。……ふぁ、イキそうです、イくイくイッてしまうの
 やだやだまだイキたくないのっ!! 私イクの我慢しゅてるから早くもっと奥をちゅいて
 わたひの中をかき回してくらさいっ!! お願い、早くはひゃくお、おぁぉぉぉ!!」
 伊織は絶叫し続けた。ペニスが入れられたままの秘唇から、続けざまにぴゅ、ぴゅ、と潮を吹き上げる。両足の指先がぎゅっと内側に折り曲げられ、全身が硬直して呼吸困難寸前だ。

「……はぁーっ。……ふぁ、ふぁーっ」
「では、最後に膣だ」
 彼は無理矢理ペニスを伊織の膣奥深くへねじり込み、そのまま強く激しいピストン運動を開始する。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!! うまる、うまる、私の中がおちんちんでみっしりうまっちゃううめられひゃうっ!!」
 接合部から、じゅぶりじゅぶりと淫靡な音があふれだす。乱暴な抽送がどんどん加速し、その音も勢いを増していく。一つ突き込まれる毎に、膣内に一体感を感じて伊織は喜び狂う。
「はあぁぁぁぁぁっ、はじけるはじける、お腹がはじけちゃいます、これすごい、
 このおちんちんすごく気持ちいいのっ!! うぁ、私イッてる!? イッた!! すごいのイッたまま
 止まらないのっ!! イッたのにイキ続けてるっ!! ふぁ、イッてるイッてるいっへるイクイクぅぅぅぅぅっ!!」
 伊織は腰をがくがくと震えさせながら叫び続ける。進行役のペニスが激しく膣内をかき回してもなお、自らも懸命に腰を突き出してより強い快感を得ようと必死だ。
 他人の目も気にせず涙と鼻水とよだれとを垂れ流し、目の焦点も合わず快楽にとろけきったその表情は、先ほどまでの清楚な彼女とは別人のようだった。

「うぉ、出すぞ、いいか」
「出してくだひゃいっ。出ひて、出ひて、強く擦りつけて私の中に出し切ってぇぇーっ!!」

「うぉっ」
 処女を失ったばかりの膣奥に、激しい勢いで精液が流し込まれる。その噴出は、絶頂中の伊織の意識を更なる高みへと押し上げていく。
「ひぁぁぁぁっ。熱いっ。熱いのが来たっ!! 出てる出てる私の子宮に気持ちいい精液がっ!!
 はひっ、お腹の奥に熱いのがたくさん来る来る来るまたイッちゃうっ。イッちゃうのっ。
 イったばかりなのにっ!! イクイクイクイクっ!! ふあぁぁぁぁーっ。 胸もおしりも
 おなかもあそこもみんなみんな気持ちいいよ気持ちいいよぅ気持ちいいよぉぉぉぉぉぅっ!!」
 全身を痙攣させると同時に小水をじょぼじょぼと垂れ流し、伊織は完全に失神してしまった。

◆◇◆
 伊織は夢の中にいた。
 青空の下、学校の中庭で、あこがれの紀子先輩と一緒に絵を描いている。
 先輩が、にこやかに笑いながら言う。

――伊織ちゃん、ずいぶんと淫乱な子だったのね。

 違うんです違うんですっ、あれはあのヘンな機械が悪いんです、あれは私じゃありませんっ、本当の私はあんな人間じゃありませんっ。
 伊織は絶叫する。

 ――本当にあの淫蕩な機械のせいだけなのかな? あれもまた、本当の伊織ちゃんではないのかしらね? 快楽を望む自分は、あなたの中には居ないの?

 伊織は自らのあまりに卑猥な痴態を思い出し、羞恥で泣きそうになる。
 でも、今の自分はあんなこと絶対にごめんなんですっ。二度とあんなことは望まないんですっ。

――ふふ、そうかな。あの快楽を味わったら、もう元には戻れないのではなくて? うふふっ。

 そう告げた先輩の姿がふいに目前からかき消え、伊織は今、自分が夢を見ていることに気がついた。

 夢。
 夢――。
 ではこの夢が覚めたら、またあの狂った性宴が再開されるのだろうか。
 ぜんぶぜんぶ、夢だったらいいのに。あんなことみんな、無かったことなら良かったのに。

 いや。
『快楽を望む自分は、あなたの中には居ないの?』
 先輩の声が胸中をリフレインする。

 本当にもう二度とあんなことはしたくない。
 だけど、あの快楽を味わいたいと思う自分も、確かに伊織の中には存在している。伊織にはその自覚がある。
 目覚めたときに、あの男たちからの性への誘いを、自分は断りきれるのだろうか。それどころか、自分から快楽をむさぼってしまわないだろうか。

 目覚めるのが、怖い。
 伊織は自分の心が信じきれなかった。
 そして、そんな自分の心こそが、今の伊織にとっては一番恐ろしいものに感じられていた。

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最終更新:2013年01月02日 00:40