「あのう」
週末の昼下がり。公園で1人ベンチに佇んでたら、ジジイ……オジイサンが俺に話しかけて来る。
「どうしました?」
「これを見てください」
ジジイは、携帯電話の画面を俺に見せる。動画サイトの動画だ。
「なんですか、これは?」俺は率直に疑問をぶつけた。
「物凄く面白い動画です。でも、著作権無視なので犯罪動画なんですよ」
「ええー!? 犯罪動画!?」俺はワザとらしく驚いた。
「でも、大丈夫ですよ! 犯罪になるのは、アップロードした人ですから」
「ええー!? 犯罪動画を犯罪と知りながら見て楽しんでも、犯罪にならないんですか!?」
やはり俺はワザとらしく驚いた。
「そうなんですよ」満面の笑みでそう言って来る、ジジイ。
「じゃあ、犯罪者がアップロードしたこの犯罪動画で何回楽しんでも、俺は無罪?」
「そうなんです」
「自分で犯罪犯すのはごめんだけど、『誰かが犯罪犯してくれる分』には遠慮なく楽しめばいいんですね」
「そういうことです」
更に不敵な笑みを浮かべるジジイ。
「凄いじゃないですか! 犯罪動画と知りながら楽しんでも、無罪になるなんて!!」俺は狂喜乱舞した。
「ちょっとした神気分でしょ?」
「ですね。全ての罪は著作権無視の動画をアップロードした奴が被るんだい! って楽しめるなんて、神気分ですよ。見てる時点で関係者なのに、無関係者装えるんですからね」
「これからも、犯罪者がアップした犯罪動画で楽しみまくってください」
「はい。まったくけしからんですね。犯罪動画をアップする奴は!」
「ですね」
「俺達みたいに、楽しむだけにしとけばいいのに」
ちなみに俺とこのジジイの職業は、警察官だ。
最終更新:2012年01月20日 20:19