ED後~系譜な感じのラムアス。今度こそラムアス。


 眠りは、常に浅かった。曖昧な微睡みは時に覚醒近くまで意識を浮上させ、器の知覚は自身の延長として存在していた。
 拒絶もなく、干渉もない。ただ、甘受されていた。霞み掛かった領域の向こうから、時折柔らかく語り掛けてくる声に耳を傾ける。「ラムダ」という人ならざる存在を、受け入れ、容し、そして包み込むような声音は子守唄にも似ていた。それはラムダの、宿主の声だった。
 鮮やかな朱に染まる天と、静かに水を湛えた地との狭間でラムダは浅く、穏やかに眠り続ける。そこは、宿主とラムダとの境界をはっきりと示す領域だ。静寂だけが広がる空間は追われ続けたラムダに、確かな安らぎを与えた。身の内に元素[エレス]を吸収し、星を蝕み、核と同一になることでしか得られないのだと思っていた安寧で、この領域は満たされていた。
 時折、呼び掛けるのでなく語り掛けるような返答を求めない声音が、領域の水面を穏やかに揺らす。その気配に、ラムダは浅い眠りを一層覚醒へと近付けて、けれどその声に応えることなくただ知覚だけを宿主へと伸ばし、彼の伝えようとするものを感じ取った。それは羅針帯[フォスリトス]の揺れる空だったり、庭に咲き乱れた花々だったり、かつてラムダを滅ぼす為に生み出された兵器が淹れたという蜂蜜入りのミルクティーだったりした。宿主は、美しいもの、優しいもの、柔らかなもの、善いもので、この領域を満たし、ラムダを充たそうとしている。
 初めの内にこそ、ラムダはそれを境界を侵され、自我を侵食されることを恐れての予防線なのだろう、と思っていた。しかしそうではないのだ、と気が付くと今度は、追われ続けたラムダへの同情から来るものなのか、と思うようになった。けれど一ヶ月も身体を共有し、臓腑よりも深い場所から彼を感じ続けるラムダは、それがただ純粋に身の内に巣食う同居人を案じているだけなのだということを理解した。恐らく、そのとき感じたラムダの落胆は誰にも解らないと思う。落胆したラムダ当人ですら、何故自身がこんなにも気落ちしたのか未だに解らずにいた。ただ、奇妙な同居生活が始まり半年経ったつい最近になってようやく、あの時感じた落胆が一種の呆れにも似た感情だったのだ、と思い至るようになった。それ程までに宿主――アスベル・ラントという男は愚かだった。
 ラムダがアスベル・ラントと初めて会ったのは、もう八年近くも前になるらしい。曖昧さが滲む理由は、ラムダが当時のことをあまり覚えてはおらず、アスベル・ラントより以前の宿主であったウィンドル王国の現国王リチャードに寄生していた時分、その懐疑と拒絶とに彩られた記憶の中にその姿を見留めた為だった。そうして、再び目の前に現れた忌々しいフォドラからの追っ手――プロトス1(アスベル・ラントはこのヒューマノイドを『ソフィ』と呼んでいるようだ)を退けることに必死だったラムダの視界の片隅に、彼が居たかも知れないという記憶がようやく蘇る。だが、それからもアスベル・ラントの存在は酷く浅薄な印象を以ってしかラムダの中には残されていなかった。
 リチャードに寄生し、その身の内に巣食った年月の中、彼という存在と記憶はまるで血泥に咲く花のような尊さでそこに在り続けた。だが、それだけだ。ラムダにとっての脅威はプロトス1ただ一つであり、そこに追従する者たちの一人にアスベル・ラントが居たとして、然して記憶に留まるものではない。幾度となくプロトス1と、そしてプロトス1と行動を共にする彼ら――アスベル・ラントと対峙して尚、この男を「人間」という括りでしか認識していなかった。ラムダの中で個として存在していたのはあくまでラムダに名を与え、ラムダに個としての自我を与えたコーネルと、そんな彼の傍らに常に在り、そしてラムダを滅ぼすべくプロトス1を造り上げた女――エメロード、プロトス1、そして宿主であるリチャードくらいだ。フォドラでも、エフィネアでもなく、それがラムダの世界であり、全てだった。
 だが、アスベル・ラントの認識はラムダとは異なっていた。
 元素も宿主も失いただ深い眠りか、プロトス1の備える対消滅によっての滅びを待つばかりだったラムダに、彼は手を伸ばした。そこにはプロトス1を失いたくない、守りたいという人間らしい愚かな打算と、ラムダとリチャードがそうだったように自らの境遇にラムダの境遇を同調させた、これもまた身勝手極まりない愚かな共感とが見て取れた。そうして、傲慢で頑愚な彼はその打算と共感とを、その身を差し出すことによって成し遂げようとしていた。或いは、人間はそれを自己犠牲とも称する。プロトス1のように造物者の手で予め備え付けられた機能ではなく、アスベル・ラントはその傲慢な主張を貫く為に自らを差し出すことを選んだ。自らを差し出し、プロトス1に人間としての生を望むだけでなく、ラムダにもまた善美なる世界を与えようとした。全てを、ただ強欲なまでに守ろうとした。
 アスベル・ラントとラムダとが共有する領域に、またラムダという個を指し示す声音が響く。いつかコーネルがラムダに望んだ言葉をなぞり、手を伸ばすことを拒絶し消えようとしたラムダを引き留め、絡め取ったその声が囁きかける。
 傷付けるものは何もない。何も恐れることはない。繰り返し、繰り返し、暴星の揺り籠は領域へと世界のカロカガティアを謳う声を響かせた。その声音、その響きに、ただの一度も言葉を返すことなく、ラムダは穏やかな波紋の広がる水面に抱かれて安寧に身を任せ微睡み続けていた。

 ある日のことだ。声は、一際大きく領域に響いた。焦燥を孕む類いの声音ではなかったので大小の差こそあれ、それが宿主の常と変わらない囁きであると理解したラムダは、またいつものように言葉を返さずにいた。だが、奇妙な鮮明さを以って領域に降り注いだ自身を示す記号に、ラムダは凡そ千年ぶりの純然な知的好奇心を覚えた。
 浅く微睡むラムダはその声に応えるように、けれど沈黙を保ったまま感覚を外へと伸ばし、アスベル・ラントの知覚へと同調させる。人の身であれば、それは息を潜めるように慎重に、決して相手に気取られることのないようゆっくりと、ラムダは自身の領域を宿主へと重ね合わせた。
 先ず、鼻腔を突いたのは潮と甘い花の薫りだった。視覚は最初に遠く広がる水平を捉え、頬を湿った風が撫でていた。頭上はエフィネアを包み込む海の彼方、宙の昏い色をそのまま落とし込み、揺らめいていた。水平線は朝の光を連れ、淡く滲み始めている。
 この光景を、ラムダは識っていた。実際に目にしたわけではない。かつて寄生していたリチャードの中に、そして今ラムダの宿る器であるアスベル・ラントの中に、鮮明に刻まれた光景がこの――ラント領の裏山から見えた朝日の滲む水平線と、朱と青とが少しずつ融けゆく様だった。そしてプロトス1もまた、同じものを彼らと共に視ていた。もう、八年近く前のことだ。
 夜明けの迫る彼は誰の闇の中、アスベル・ラントはラムダの意識が浮上していることに気が付いた様子もなく水平線から視線を反らした。暗闇の中に在ってもラムダの融けた知覚は正確に事象の輪郭を捉え、彩度を欠く筈の視界は足元に咲き乱れる花々を鮮やかに映し込む。アスベル・ラントの瞳の色に似た小さな青い花、白く縮れた花弁がレースを思わせる可憐な花、赤い花、黄色い花、橙色、薄紅――そしてプロトス1を思わせる、クロソフィの花が一面に咲き乱れていた。この裏山は一年を通して、このように花が咲き乱れている。エフィネアに点在する大輝石[バルキネスクリアス]の総ての色が循らせた元素が、均しく豊潤に充ちる希有な土地だ。故に、千年前ラムダとの交戦によって破損したプロトス1はこの地で眠りに就き機能の修復をはかった。そうして、ラムダの宿主であるアスベル・ラントと出会ったのだった。
 どうりでいつもよりも大きく声が響く筈だ、とアスベル・ラントに同調した視界の捉えるクロソフィを見下ろしたままラムダは思った。様々な元素が混じりあい、濃く充ちたこの土地に宿主が足を踏み入れたことで常よりラムダへの影響が強く顕れたのだろう。
 思案に耽るラムダを余所に、その気配に気が付かずにいるアスベル・ラントは視線を花畑から外し、切り立った崖の先端部にそびえる巨木を見上げた。エフィネアを覆う海越しに、羅針帯が揺らめいて見えた。宿主の足取りに迷いはなく、やがて剣を握る者の武骨な指先は硬く冷たい木の幹を滑っていた。
 「ラムダ」、と声がした。宿主と共有する唇はその名を形取ることをしなかったので、単に強くラムダの名を思ったに過ぎないのだろう。ラムダは突然の呼び掛けに少なからず驚いたものの、矢張り沈黙を守った。沈黙を守ったまま、続くだろう言葉を待った。宿主は、そんな身の内に巣食う暴星の沈黙を気に留めた様子ものく、また言葉を続けることもせずに幹を滑る指先をゆっくりと下の方へとずらしていく。
 そこには、拙い子供の書く文字が刻まれていた。それは、友情の誓いと称し幼い時分の彼ら――アスベル・ラントとリチャード、そしてプロトス1とが刻んだ彼らの名前だった。その名前の一つ一つをアスベル・ラントはゆっくりとなぞりはじめた。そして、今度ははっきりと口を開き言葉を発した。
「昔、ここでリチャードとソフィと三人で友情の誓いをやったんだ」
 識っている、とラムダは思った。思っただけで、発することはしなかった。
「ソフィと初めて会ったのもここだったんだけど、リチャードは崖から落ちるし……もう散々だったなぁ」
 散々だった、と口にするわりにその口調は酷く柔らかいものだった。結局自分もソフィも一緒に落ちただとか、身体中痛いし眠いし、ラントに戻ったら親父には殴られるし、とアスベル・ラントはその後も過去を懐かしむ語り口で言葉を紡いだ。だけど、と締め括りアスベル・ラントは朱と青が融け菫色に染まる空を、空と海との境界が混ざりあい消えていくその様子を遠く眺めて言った。
「お前にも見せてやりたくてさ」
 喉で小さく笑うと、視界は閉ざされてしまった。けれどそれは本当に一瞬のことで、次の瞬間にはまた菫色に耀く空をアスベル・ラントは見上げていた。
 「目が覚めたお前がもし、」漂う雲は、陽の光に輪郭を滲ませて黄金色に燃えている。「もし、お前が」
 そこで、アスベル・ラントは息を吐いた。短く、浅く、けれど言葉は途切れて、揺れる視界に彼が首を横に振ったのだと知れた。
 「やめよう」、と領域に声が響く。そうして、それっきりアスベル・ラントは口を開くことはなく、また領域に声を響かせることもなく、気が付けば頭上を覆う空は清浄な青一色に染まっていた。それでも、彼は融けた水平線を眺めたままその場からいつまでも立ち去ることをせず、ラムダもまた宿主の目を通して同じものを眺めていた。


そして嬰児は胎衣を脱ぎ捨て世界に融ける Purity
20101221


 違和感は唐突に訪れた。裏山での一件以来、ラムダは領域内で微睡みながらも時折、アスベル・ラントに悟られないよう外界へと意識を向けることが多くなっていた。だから、というわけではないだろうが元素への感受性の高いラムダは恐らく、誰よりも早くからその異変を感じ取っていた。だが、宿主は勿論プロトス1ですら異変に気が付いた素振りはなく、またラムダ自身この異変がどのように転ぶのかを判断し兼ねていた。何より、彼らにどのような言葉を以って伝えるべきかはかりかねていた。
 躊躇は、ラムダ自身がかつて彼らを害し、苦しめ、排除されるべく存在した「敵」だったからという思いから来ているのかも知れない。アスベル・ラントが手を伸ばし、言葉を投げ掛け続けたその後もラムダはただの一度もその手を握り返し、声に応えたことはなかった。それどころか、共有する領域に動揺や困惑といった波紋が拡がり、彼の心の隙のようなものが見て取れたその時ですらラムダは反応らしい反応を示さずにいた。それは彼を慮ってのことというより、今まで最低限の人間関係すら必要としなかったラムダという生き物が単に対応し兼ねただけの話だった。裏を返せば不干渉の沈黙はラムダなりの不器用な甘えだったがその事実には宿主も、またラムダ自身気が付いてはいなかった。
 だが、ここに来てラムダは得体の知れない、僅かな焦燥に背中を押される形で度々意識を浮上させていた。そしてこれは偶然なのだろうが、領域内に拡がる波紋――アスベル・ラントの動揺もまた強く、拡がる回数も増えていった。彼が庇護欲を抱くプロトス1の孤独の片鱗を垣間見たというのが、動揺の最たる理由なのだろう。ラムダはこのときばかりはプロトス1に少なからず同調し、またアスベル・ラントに呆れもした。
 それはラムダの自我が形成されて間もない時分、人間が言うところの「父親」のように慕っていたコーネルの死に起因する感情でもあった。人は死ぬ。遅かれ早かれ、事故であれ病であれ寿命であれ、必ず逃れようのない死は訪れる。だが、その死を理解するにはプロトス1の情緒は未だ成熟とは程遠かった。ラムダ自身、コーネルの死を以って初めて理解へと至った感情だ。或いは、曖昧だったラムダの自我の中で初めて明確化された感情こそが別離の痛みを伴う悲哀だったのかも知れない。だからこそ、可能性を考えなかったのだとしたら、アスベル・ラントは愚か以外の何ものでもない、とラムダは思った。
 結局、エフィネア全土において急速に凶暴化を始めた魔物の調査要請がアスベル・ラントに告げられた次の日の朝には、プロトス1は姿を消していた。その時のアスベル・ラントの動揺と困惑、そして後悔とは筆舌に尽くしがたい。それこそ、リチャードがアスベル・ラントに斬り付けられた時程の心の隙は確かに彼の心に生まれていた。
 アスベル・ラントは身の内に巣食う暴星に無防備な隙を晒したまま、凶暴化した魔物の調査の為にかつてラムダが根城にしていた王城地下の更に深くから発見された遺跡へと向かった。その遺跡は風の元素を司る大輝石、大翠緑石[グローアンディ]の真下に位置し一歩足を踏み入れたその時からラムダは得体の知れない焦燥をある種の確信へと変え、緊張感に感覚を研ぎ澄ませた。同時に、その酷く久しぶりの緊張感に呆れもした。ラムダの過ごした千年以上の歳月、或いはリチャードに寄生した八年間でさえ張り詰めたままでいた緊張の糸が、アスベル・ラントの身の内で過ごした瞬きの間程にすっかり弛んでしまっていた事実に酷い自己嫌悪すら覚えた。
 随分と性質の悪い毒だ、とラムダは思った。膚よりも、骨よりも、胃の腑よりも深い場所をアスベル・ラントと共有するという事実は、鋭利だった筈の傷付ける者の刃は少しずつ刃こぼれし、腐蝕していくということだ。強固なまでに己を害する者を排除し続けてきたラムダにとっては致命的だった。アスベル・ラントでは駄目だ。アスベル・ラントの中に在っては、自分は駄目になってしまう――そう、ラムダは思った。そうでなければ早く次の宿主を探さなくてはならないそうでなければ今まで守り続けていた総てが喪われてしまうそうでなければ生きてはいけないそうでなければコーネルと交わした約束が

 約束があった。約束があって、ラムダはここまでやって来た。約束を守り続けた。その約束の言葉、コーネルの遺した最期の言葉は、ラムダに生きることを望むものだった。
 そうして、アスベル・ラントもまたラムダに言った。彼は手を伸ばし、ラムダを捉え、放さなかった。
 生きることを望まれた。

 アスベル・ラントは、まだ繋いだ手を放してはいない。強く、ラムダを繋ぎ止めたままだ。

 魔物の咆哮が空気を、元素を振るわせる。アスベル・ラントの膚を通して、その異質さはラムダにも伝わった。ラムダ細胞による遺伝子の強制置換とはまた異なる変質をしたその生物は、プロトス1の能力を取り込み行使する筈のアスベル・ラント達の振るう刃を容易く弾き、光子を振り払う。彼らの攻撃はことごとく通らず、極彩色の翼竜の爪はアスベル・ラントの肩口を引き裂き、なぎ払われた尾はリチャードをその剣ごと蹴散らした。アスベル・ラントの弟の放つ銃弾は硬質な膚を穿つ前に霧散し、彼らの師の繰り出す輝術は異形の竜の動きを捉えることが適わない。癒しの術を紡ぐ少女の声は擦れ、喘ぐように大きく肩で息をする。
 アスベル・ラントの中に、次第に焦燥が膨れ上がっていった。今なら、容易くラムダはこの頑愚な男を支配出来る。そして極彩色の翼竜の体皮を貫くことの適わないプロトス1に由来する光子に代わり、自身の因子を帯びた暴星の紫焔であれば或いは勝機も見出だせるのではないか、という確信にも似た算段もラムダにはあった。何より触覚を延ばし、精神を浸食し、アスベル・ラントと共有する領域を蝕むまたとない好機だった。
 足を止めたアスベル・ラントの隙を翼竜は逃がさない。鋭いく迫る敵の牙に、反応が遅れる。だが、その間にリチャードが割って入った。親友を守る、と言った彼は己の身も、立場も、容易く投げうち辛うじてかざした剣の腹で敵の一撃を受け止めた。
 油凪のように穏やかだったアスベル・ラントの領域が大きく波打つ。動揺が、焦燥が、敵意が、輪を描き拡がっていく。
 懐かしい衝動だ。抑制の利かない感情の昂ぶりを増幅させ、その激情に身を任せ領域を充たすのは、ラムダにとって酷く容易いことだった。そうしてラムダはかつての宿主だったリチャードを支配し、浸食した。同じことが今ならアスベル・ラントにも出来るだろうな、とラムダは思った。ずっと、思っていた。そう思っていた。
 辛うじて相手の攻撃を受けていたリチャードが、その力に耐え切れず大きく体勢を崩され吹き飛ばされる。アスベル・ラントは息を詰め、奥歯を強く噛み締めた。
「よくもリチャードを!」
 鋭く、アスベル・ラントは叫んだ。歯噛みし、それでも尚強く剣の柄を握り直す。
 アスベル・ラントの激情は、確かにそこに在った。領域に渦巻き、激流となってラムダを飲み込もうとしていた。懐かしい筈のその感情は、けれどラムダの識るどの色とも異なっていた。守りたい、守らなくては――彼の衝動はその全てに集約され、突き動かされていた。
 馬鹿馬鹿しい、とラムダはアスベル・ラントの深みで毒づく。同時に、何故だか酷く業腹だった。
 ここに居る。己が居る。その手の内に力がある。だのに彼はそれを求めない。
 ラムダは、猛々しく燃えるような朱に染まった領域の空を仰いだ。
 手は、繋がっている。繋がったままでいる。だから、握り返すことが出来る。
 ラムダは、アスベル・ラントに呼び掛けた。アスベル・ラントに、応えた。
 繋いだ手を、握り返した。

 




リベンジは成功してると思うけど電波っぷりは相変わらずorz
(20101221)




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最終更新:2010年12月22日 00:06