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その男、反逆者につき - (2008/08/08 (金) 21:41:16) のソース

**その男、反逆者につき ◆qvvXwosbJA

F-7エリア、その東部に位置する駅、S9――「ステーション9」。 
この駅には、もっというならこの区画の駅全てには、参加者には知らされていない事実がある。 
それは、この駅を通っているのは通常の路線ではなく『地下鉄』であるということ。 
地上にあるのは整然と並ぶ券売機と無人の改札、商品が放置されたままの売店ぐらいで、改札を通った先には地下へ続く階段が奥へと延びている。 
しばらくはろくに整備されていないのか(もっともこのフィールドがいつから存在するかなど知る由もないのだが)、 
切れかけの蛍光灯の明滅する光がその明るさとは裏腹に深夜の陰気な不気味さを醸し出している。 
階段を降りた先のホームには無機質なリノリウムが敷き詰められていて、くすんだ黄色の点字ブロックが形ばかりの存在感を主張している。 
こちらは地上ほどは暗くはないものの、明るいだけで人の姿も見えない空間というものは逆に不安になるものだ。 
進めど聞こえるのは自身の足音の反響のみ。複数の光源を起点にいくつもの方向に伸びる影法師が目に入る唯一の動くもの。 
そして、忘れてはならないのは、いくら人がいないようでもここは殺人ゲームの会場の一角に過ぎないということ。 
正常な神経の持ち主なら、この状況にある種脅迫的な緊張感を感じるだろう。 

あいにく、今この瞬間にステーション9のホームにいる唯一の人間は、その手の緊張感とは無縁の男だったのだけれど。 

猫背気味の姿勢、野生の猛獣のようなギラギラした光を湛える瞳。 
デイパックを左手で肩に引っかけ、その男は苦虫を三匹ほどまとめて噛み潰したような表情で歩いていた。 
男の名はカズマ。人呼んで“反逆者(トリーズナー)カズマ”。 
ロスト・グラウンドの荒野にその名を轟かせる凄腕のアルター使いだ。 
曰く、“全てを断罪するアルター”。曰く、“そいつに目をつけられたらノー・フューチャー”。 
ロスト・グラウンドで不法を働くネイティブ=アルター達から恐れられるこの男も、今この瞬間においては虫の居所の悪いチンピラ同然だった。 

口の半分開いたデイパックからは、乱雑に突っ込まれた支給品が顔を出している。 
薔薇の造花に番傘、そして使い道すら分からない正六角形の金属塊。 
一応確認だけはしておこうと、カズマが支給品を取り出したのが数刻前。 
ただの紙から明らかに大きさのおかしい品物が出てきて驚いたものの、結局どれもガラクタ同然と気付き、苛立ち紛れにデイパックに押し込んだのがついさっき。 
ちなみに説明書もついていたのだが、頭を使うことに慣れていない彼は一行読んだだけで放り出してしまった。 
カズマはもとより使える武器などを期待していたわけではない。 
カズマが信じているものは、自分自身と自分のアルター“シェルブリット”だけだからである。 
しかし、殺し合いをしてもらうと言っておきながら配るのはただのガラクタ。 
人の生き死にをおちょくっているとしか思えないあの光成とかいう腐れジジイの笑い声を思い出し、カズマの表情が一層険しくなる。 

いつの間にか目の前に迫っていた階段の一段目に足を掛け、カズマは一つ舌打ちをした。 


 ▼ ▼ ▼ 


階段を上りながら、カズマは考える。 
先ほどちらりと目を通した名簿。知っている名前は、三つだけ。 
いけすかないホーリー野郎、劉鳳。奴といつも一緒に行動していた女、シェリス。そしてホーリーの親玉、マーティン・ジグマール。 
奴らがどうなろうとカズマには関係ない。いや、ジグマールとかいう野郎にはぶん殴ってやるだけの理由があるが。 
少なくともこのゲームに巻き込まれた連中のなかに、かなみはいない。君島もいない。水守も、箕条も、ハーニッシュもいない。 
今の自分に、守るべきものは何もない。 
だったら、今ここで俺がやるべきことはなんだ? 

(をいをいをいをい……そんなの決まってんじゃねぇか) 

カズマの顔に、はじめて不敵な笑みが浮かんだ。 
野獣の瞳が煌々と燃え、階段の先の深夜の闇を見据える。 
脳裏に蘇るのは、かつて兄貴と慕った男の言葉。 
ストレイト・クーガー。誰よりも速さを求めた男。カズマに反逆のなんたるかを教えた男。 
そのクーガーの声が問いかける。 

――カズマ! 今のお前の弱い考えは何だ? 答えろ! 

(俺の、弱い考え……) 

――殺し合いに敗れて無様に死んでいくことか? それとも、戦いを放棄して逃げ回ることか? 

(……違うな! あのクソジジイのニヤケ面に、俺の自慢の拳をぶちこんでやれないことだ!) 

――だったら、その考えに反逆しろ! 

(言われるまでも無え!) 

カズマは右の拳をきつく握り込んだ。 
全身をバネにして階段を駆け上がり、改札を飛び越えて、闇の中へと飛び込んでいく。 
そして、走りながら思い出す。はじめにカズマが連れてこられた空間。そこで起こった惨劇を。 
首を吹き飛ばされた少女の無念の表情を。まき散らされた血の赤さを。彼女の名を呼んだ少年の慟哭の声を。 
あの娘は抵抗すら許されずに一方的に殺された。不条理な死。それがこのクソッタレな殺人ゲームのお約束だっていうなら…… 


だったら、その不条理に反逆する! 

こんな首輪一つで人の命を弄ばれて、それでも黙っていられるか? 
このバトルロワイアルを、最後の一人になるまで殺し合うイカレたゲームを、運命だって諦められるか? 
答えはノゥ! 絶対にノゥだ! 
運命ってのは自分の足で前へ進み、自分の拳で掴み取るもんだ! 誰かに強制されるものでも何でもねえ!! 
だから俺は反逆する! このバトルロワイアルという現実に! 
その意思を、理不尽な現実へと抗う意思を――弾丸に、込めろ!! 

さあ――――反逆だッ!!!  


【F-7 S9駅/地上 一日目 深夜】 

【カズマ@スクライド】 
{状態}健康 
{装備}無し 
{道具}支給品一式、ギーシュの造花@ゼロの使い魔、神楽の仕込み傘(強化型)@銀魂、核鉄(ニアデスハピネス)@武装錬金 
{思考} 
1:反逆のためにできることを探す 
2:まどろっこしいのは苦手なので基本的には単独行動 
3:悪党は全力で殴る 
基本行動方針: 
バトルロワイアルに反逆する 
参戦時期: 
対アルター仙人戦後、ハイブリット覚醒前(原作4巻) 
※進化の言葉“s.CRY.ed”をすでに刻んでいます。 
※支給品は全て確認しましたが、説明書にはろくに目を通していません。 
 そのため、三つとも役に立たないガラクタだと思っています。 

【地下鉄について】 

繁華街のS3駅からS7~S8~S9~S10までの区画は、地下鉄が通っています。 
一定の時間をおいて電車が行き来しているものと思われます(詳細は後の書き手さんに任せます)。 
電車を利用すれば長距離を比較的高速で移動できるほか、電車にさえ注意すれば地下道として徒歩での移動も可能です。 
電車に乗車中は禁止エリアの影響を受けません。 
基本的には地上との連絡経路は駅の階段だけですが、どこかに地上に続く非常口がある可能性もあります。 
なお、各参加者に配布されたマップには「S3~S10の区画は地下鉄である」という情報は記されていません。


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