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変態!!俺? - (2008/08/06 (水) 23:04:29) のソース

**変態!!俺? ◆TJ9qoWuqvA



 金の光を淡く浮かばせ、瞬く星とともに街を照らす月。 
 月を見つめるものはさまざま。その中の一人が、電柱の頂点に立つ。 
 両手を手首の位置で交差させ、天に向けている。腰は左に突き出し、視線は月へ向けている。 
 その格好は、奇抜としか言うしかなかった。 
 全身にフィットする、黒いタイツ。胸元から腰まで開いており、その間を繋ぐのは黒い紐。 
 もっこりとした股間には、蝶の模様が白くかたどられている。 
 肩のふくらみと、手首の位置にある白い布の飾りが、昔の貴族の衣装を髣髴させていた。 
 印象深い見た目だが、より印象的なものはその顔にある、蝶をかたどった仮面。 
 前分けにされた黒髪の下にある仮面は、長身痩躯の彼の印象を強いものにしていた。 
 それこそ、一度見たら忘れられないほどに。 



 その彼が、月を見て思うのは、殺し合いに乗ることか。再会を望むのか。 
 静かに佇む姿からは、第三者には分からないだろう。 
 やがて、彼がゆっくりと口を開く。 
 空気が変わり、待ち望んでいたように停滞していた時が動いた。 



「パピッ!! ヨンッ!!」 



 ……まずは、己の名を愛を込めて叫ぶことにしたらしい。 



□ 



 暗闇の中から、長身の男と、小柄な少女が浮かび上がる。 
 男の方は、身長百九十五センチのたくましい身体を学生服に包み、学生帽の下にある意志の強い眼差しは近寄りがたい雰囲気を作り出していた。 
 右手に首輪探知機を持ち、猥雑に器材が並ぶ道を行く。 
 首輪の反応を見つけ、彼の探し人であるか確かめにきたのだ。 
 そうでなくても、傍にいる子供といって差し支えない、金の長い髪を二つに結ぶ、白い肌の少女を預けられる人物に出会いたいと願っての行動でもある。 
 もっとも、反応している先が、DIOみたいな危険人物である可能性もある。 
 慎重に足を運び、首輪の反応があると思わしき場所に視線を向けた。 
 くいっ、と袖を引っ張られるが、無視をする。 
 相手が殺し合いに乗っているなら、一瞬の油断が命取りだ。 
 暗闇が怖いなどのくだらない戯言に付き合う暇はない。 
 なにより、こういった子供が苦手ということもある。 
 自分たちの旅にも、家出少女が引っ付いていたなと思いながら、引き続き探索を行う。 
 再度、袖を引っ張られる。まだ状況を察していないのかと呆れ、ため息をつきながら振り向く。 
 そこには、少女が指を指している様が眼に入った。 
「JOJO。あれ……」 
 ナギが指している先に、視線を移動させる。 
 すると、電柱の頂点に、奇妙なポーズをしながら、月を見つめている男が眼に入った。 



「パピッ!! ヨンッ!!」 



 叫びが聞こえ、反応に困った。 
 その奇妙な格好は、一つの単語を思い浮かばせた。 
「……変態」 
 ポツリと呟かれた、ナギの言葉に思わず同意する。 
「……やれやれだ」 
 帽子のつばを掴み、呆れたように呟く。 
 その瞬間、承太郎は視線を奇妙な男から外していた。 
「変態とは、随分とご挨拶だな」 
 驚き、振り向くと着地するパピヨンと叫んだ男が眼に入った。 
「このまま舞踏会に駆けつけれるほど、素敵な一丁裏じゃないか」 
 いかれた台詞に、ナギがヒッと短くもらすのが聞こえる。 
 その彼女を庇うように、前へ出て厳しい視線を射る。 
 あの僅かな瞬間で、自分に気づかれず跳躍した奴に油断はできない。 
「……てめーは、この『ゲーム』に乗っているのか?」 
「てめーじゃない。パピヨン♪ それが俺の名前だ」 
 パピヨンは答え、笑みを深める。 
 その、どぶ川が腐ったような色の瞳が、気に入らなかった。 



□ 



(外れか……) 
 近くで、人の気配を感じてはいた。 
 その人物か知るため、一つの手段をとったのだ。 
 電柱に立ち、自分の名前を叫ぶ。 
 これを聞いたのが、武藤であれば声をかけるだろう。 
 あの偽善者のこと、自分にもこのゲームを壊すのを協力しろというはずだ。 
 武藤でない錬金の戦士やゲームに乗った殺戮者が聞いたのなら、ほどほどに相手をして逃げればいい。 
 見晴らしのいいこの場所、襲われたとしても逃げるのはたやすかった。 
 それでは、今しがた出会ったゲームに乗っていない連中にあったならどうするのか? 
(殺すかどうかは、これからの抵抗しだいで決める。まずは、核鉄を持っているか、確認がしないとな。 
それに、この華麗なオシャレを理解せず、変態と言った償いはしてもらおう) 
 どうやって探りを入れるか考え、承太郎の視線に真っ向から対抗する。 
 この程度の威圧など、ホムンクルスとして死線を乗り越えた自分にとってはそよ風にも等しい。 
(さて、どうするかな?) 
 次の一手を考え、彼は楽しそうに笑みを深めた。 



□ 



 承太郎とパピヨンのにらみ合いに、異様な空気が広がる。 
 その空気に適応できず、三千院ナギは胃を痛めていた。 
(いったいなんだ! JOJOも変態も睨み合っただけでまったく動かないなんて! 
あの変態、いきなりフォーとか叫んで暴れたりしないよな? それは私のお稲荷さんだとか言わないよな? 
そんなことされたらハヤテと結婚できないではないか!? ハヤテ、助けて) 
 ナギは慣れない空気に動揺しきって、妙な考えが頭から離れない。 
 結局、空気に耐えれずに一歩後ろに下がると、器材に足がとられてしまった。 
「あっ……」 
 盛大な音を立て、ナギが転がる。擦り剥いたひじが痛い。 
 しかし、いまだ二人は微動だにしていなかった。 
 背景のような扱いに、少し挫けそうになる。 
 デイバックを掴むと、中身が出ていることに気づいた。 
 自分に支給された道具の一つ、核鉄だ。 
 拾って顔を上げると、パピヨンが自分を見ているのに気づく。 
 承太郎に向けていた笑顔が、更に深められ、不気味な様子をさらけ出していた。 
「核鉄、蝶戴!!」 
 シュワッチと叫びながら、パピヨンがナギに迫る。 
 ウルトラ○ンを髣髴させる突進に、なす術もなく見ることしかできなかった。 
(ああ、きっとあいつに私は顔を股間に入れられ、振り回されるんだ。って、冗談じゃない! 
そんなことされて堪るか! ハヤテ~) 
 泣き顔を浮かべる彼女に、パピヨンの指先が触れそうになった。 
「オラァァッ!!」 
 その瞬間、承太郎の傍に立つ、古代ローマの戦士を思わせるような黒髪の戦士が、拳をパピヨンに放った。 
 パピヨンは、錐揉みしながら壁を砕き、瓦礫に埋もれていく。 
 ナギは泣き顔から、花を咲かせたような笑みを承太郎に向ける。 
「JOJO~」 
「とっとと隠れてな。こいつは、お子様には刺激が強すぎるぜ」 
 ナギは瓦礫を跳ね除けるパピヨンに対峙する承太郎の後ろに隠れ、戦いの行方を見守るしかできなかった。 



□ 



(今までジッとしてたくせに、ナギの支給品を見ていきなり飛び掛ってきやがった) 
 パピヨンは瓦礫を跳ね除け、立ち上がる。 
 手加減なしの、全力の攻撃だった。 
 少し威力が下がっている気がするが、それでも並みの相手なら下半身を引きちぎってもおかしくない攻撃だ。 
 それに速さも半端ではない。あと少しでも反応が遅ければ、ナギに触れていただろう。 
(一筋縄ではいかない、敵ってわけか。やれやれ……) 
「随分と面白い能力を使うな。その横の人形、なかなかの威力じゃないか。 
ちょっと痛いけど、快・感♪」 
「てめー、スタンドが見えるのか?」 
「もちろん。そのガキにも見えているみたいだぞ」 
「……本当か? ナギ」 
「ああ。私にも見えている」 
(どういうことだ? スタンドはスタンド使いにしか見えないはず。 
あのパピヨンはともかく、ナギがスタンド使いの素質があるとは思えねえ。いったいどういうことだ? 
まあ、いい。まずは、こいつをぶちのめす!) 
 疑問を解決している暇はない。 
 油断できない「敵」をぶちのめす。それだけを考え、スタンドを構える。 
 パピヨンは、相変わらずどぶ川の腐った色をした瞳を、ナギに向けている。 
 迷惑な子供だが、見殺しにするのは目覚めが悪い。 
 瓦礫が飛び散り、敵が迫る。 
「おおおお!!」 
「オラオラオラオラオラオラッ!!」 
 承太郎のスタンド、スタープラチナのラッシュがパピヨンを貫く。 
 パピヨンは腕を交差させ、頭のみを庇う。 
 拳の連打は、敵の身体に窪みを作り、血反吐を吐かせた。 
 しかし、ニィッと微笑まれ、血を吐きながら腕を振るってくる。 
 紙一重でかわすが、承太郎の頬が血を噴出した。 
 スタープラチナの精密な動きと、驚異的な視力、反応速度をもってしても、かわしきれない。 
 間合いが離れ、パピヨンが指に纏わりつく、承太郎の肉を舐めとった。 
「なかなかいい味がするじゃないか。久しぶりに人肉を食ってみるのも、いいかもしれない」 
「なるほど。DIOと似たような化け物というわけか。道理で頑丈なわけだ」 
 お互いの視線が交差する。 
 空気が凍りつき、火花が散るような錯覚を感じた。 
 おそらく、相手も同じ事を考えているだろう。 
 一歩、二歩と近付く。二人の距離が吐息がかかるほど近寄ったその時、動き始めた。 
「オラァッ!!」 
「ハッ!」 
 拳が、お互いの頬に突き刺さった。 



□ 



 激闘を繰り広げる承太郎を、ナギは見つめるしかなかった。 
 もちろん、あの場へ自分がいっても足手まといになのは分かりきっている。 
 それでも、自分の恩人に報いれないことに腹が立ってしょうがない。 
(私は何もできないのか? いや、そんなことはない! 考えろ、ナギ! 
諦めたらそこで試合終了だって、安○先生も言っていたじゃないか!) 
 もっとも、猛スピードの戦いに割って入るのは無理だ。 
 それなら、変態の気を引くか、承太郎の援護になりそうな行動をとるしかない。 
 そういえばと、核鉄の説明書に目を通す。 
(たしか、この核鉄は弓矢に変形して、自動的に敵を撃ってくれるとあったはず。 
なら、こいつを使えばJOJOを援護できるのではないか?) 
 決意し、核鉄を掴む。 
 何より、彼女は説明書の全自動という文字に惹かれた。 
 全自動とは、かなり魅力的な言葉である。 
 洗濯機も、皿洗い機も全部自動であるから、あんなに売れているのである。 
 武器も自動で使えるなら、もっと人気が出るはずだ、とくだらない事を考え、戦いを繰り広げる二人の前へ、躍り出る。 
 承太郎が邪魔だという視線を向け、パピヨンが物欲しいそうに核鉄を見つめていた。 
 金属片を天に掲げ、武器を発動させる言葉を告げた。 



「武装錬金!!」 



 金の六角形の金属が、内部の機械をむき出しにして広がる。 
 金属片を変形させ、ナギの右手にパールピンクの小手と、左手に弓を精製していく。 
 そして、承太郎とパピヨンの間に、羽状に弓を背負った、不細工な人形が現れた。 



「時空を超えて、オレ、参上ッ!!」 



 瞬間、空気が凍った。 
「お、重たい~」 
 否、ひ弱さゆえによろめく一人を除いて、空気が凍った。 



□ 



「パッピーじゃねーか。何やってんだ?」 
 不細工な人形、エンゼル御前が話しかけてくる。 
 パピヨンにとって、不本意だが知り合いではある。 
 ため息をつき、エンゼル御前の頭を掴んだ。 
「いてっ! なにすんだ!」 
 無視しながら、ナギに近付く。 
「安心しろ。もうやる気はない」 
 脅える彼女と、承太郎に告げる。 
 もっとも、承太郎は油断しておらず、ナギに触れるなら容赦なくスタープラチナの拳を叩き込むだろう。 
「ちっこいの。武装解除しろ」 
「ちっこいいうな! ……武装解除」 
 彼女の言葉に従い、エンゼル御前が先程の過程を逆に六角形の金属片に戻った。 
 そのシリアルナンバーXXⅡの核鉄を奪い、パピヨンは自分で展開させる。 
「武装錬金」 
 再び、金属片が展開し、不細工な人形を作り出す。 
「いきなり何するんだっ! せっかく登場したのに!」 
「うるさい。大体お前が何故いるんだ? この場に桜花はいないんだぞ」 
「まじかっ! あれ? 本当に桜花の反応がない! どうしよう!? パッピー!」 
「俺が知るか」 
 涙を流し、訴えるエンゼル御前に答えながら、一つの疑問が浮かんだ。 
(どいうことだ? 何故ニアデスハピネスのアナザータイプが発動しない? 
核鉄に似た、何かだというのか? いや、このエンゼル御前は本物だ。 
なら、何か外的要因が、核鉄の武装を固定させていると考えるのが自然か) 
 やっと手に入れたと思った、蝶の羽を奪われ、パピヨンは憤慨する。 
「……その様子だと、『ゲーム』には乗っていないようだな」 
「こんなふざけた『ゲーム』、俺の趣味じゃないね。念のために聞くが、他に核鉄を支給されたか?」 
「いや、それだけだ。嘘だと思うなら、調べてみるか?」 
「いや、いい。どうせ俺に渡す気もないだろうし、嘘の可能性は低いからな」 
「……なかなか頭が回る奴だ」 
「これでも、病気になる前は『天才』の名を欲しいままにしていたんでね。 
ま、今は『蝶・天才』だけど♪」 
 歌うように呟き、承太郎たちに背を向ける。 
 彼の目的は果たした。これ以上承太郎たちに関わる気はない。 
「パピヨン。てめーはこれからどうするつもりだ?」 
「パピ♪ ヨン♪ もっと愛を込めて。 
ま、武藤って奴を探しに行くさ。それ以外は興味ないし。後は首輪を解除させるだけかな?」 
「首輪に関する知識もあるってわけか。『蝶・天才』の名は伊達じゃないって事か」 
「そいうこと。それじゃ、さらばだ。デュワッ!」 
 パピヨンは用はないといわんばかりに、屋根を跳躍して移動していく。 
 その背中に、いつの間にかエンゼル御前がしがみついていた。 
「スピードを抑えてくれ、パッピー! 振り落とされる~」 
 声をかけられ、核鉄にかけられた謎を解くのも悪くないと、僅かにスピードを緩める。 
 そのまま、パピヨンは天に存在する月に向かって跳ぶ。 



「パピッ!! ヨンッ!!」 



 月の光を浴びて、パピヨンは月の女神に祝福されている気がした。 



□ 



「……やれやれだぜ」 
 パピヨンの去った方向を向いて、思わず呟く。 
 この『ゲーム』に乗ってはいないものの、油断できない相手だ。 
 ナギに視線を向け、先を促そうとすると、名残惜しそうにパピヨンの消えた先を見つめている。 
「可愛かったな。あの人形……」 
 その呟きに、とんでもないと思考した。 
 あの人形がパピヨンを追っていって助かった。 
 これ以上、お荷物が増えるのはゴメンである。 
 もはや、承太郎の感想は一つしかない。 
 もう一度、先程の彼の口癖を呟く。 
「やれやれだぜ」 




【B-2、工業団地/一日目 黎明】 
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】 
[状態]頬に切り傷。多少の打撲。軽い疲労。 
[装備]無し 
[道具]首輪探知機@漫画版バトルロワイアル、支給品一式、不明支給品0~2(本人は確認済。核鉄の可能性は低い) 
[思考・状況] 
基本:殺し合いからの脱出 
1:ナギを守る。 
2:ジョセフ・ジョースターと合流する。 
3:首輪の解除方法を探す。 
4:DIOを倒す。 
5:主催者を倒す。 
6:パピヨンを警戒。 
参戦時期:原作28巻終了後 




【B-2、工業団地/一日目 黎明】 
【三千院ナギ@ハヤテのごとく】 
[状態]健康  
[装備]無し 
[道具]支給品一式、不明支給品0~2(本人は確認済。核鉄の可能性は低い) 
[思考・状況] 
基本:殺し合いはしない 
1:しばらくは承太郎と行動する。 
2:ハヤテ、マリア、ヒナギクと合流する。 
3:エンゼル御前可愛かったな。 
参戦時期:原作6巻終了後 




【B-2、工業団地/一日目 黎明】 
【パピヨン@武装錬金】 
[状態] 全身に軽い打撲。口に血の跡。中程度の疲労。 
[装備] エンゼル御前@武装錬金 
[道具] 週刊少年ジャンプ@銀魂、んまい棒@銀魂、綾崎ハヤテの女装時の服@ハヤテのごとく 
[思考・状況] 
1:ニアデスハピネスの核鉄を手に入れる。 
2:早いうちに武藤カズキと合流。 
3:核鉄の謎を解く。 
4:武藤カズキと決着をつける。 
※エンゼル御前は、使用者から十メートル以上離れられません。 
 それ以上離れると、自動的に核鉄に戻ります。


|033:[[出動!バルスカ神父]]|[[投下順>第000話~第050話]]|035:[[嫌なこった]]|
|033:[[出動!バルスカ神父]]|[[時系列順>第1回放送までの本編SS]]|036:[[The Great Deceiver (邦題:偉大な詐欺師)]]|
|013:[[闇の中で]]|空条承太郎|063:[[三千院ナギと素直じゃない仲間]]|
|013:[[闇の中で]]|三千院ナギ|063:[[三千院ナギと素直じゃない仲間
|004:[[無題]]|パピヨン|062:[[立ち止まるヒマなんかないさ]]|

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