「それで、羽賀ちゃんの能力って何なん?」
四人の新人のうち、三人がそれぞれの能力を見せ合った後。
最年長の尾形は何気なく聞いた。
「火脚」「空気調律」「応援」。特殊な能力を披露する同僚たちを見て眉一つ動かさないと
ころから見ても、最年少の少女が普通ではない能力の持ち主であることは間違いないのだが。
「私の能力は…これです」
羽賀は、そう言いながら右手を尾形に向けた。
その小さな手に握られているのは、玩具のようではあるが。
紛れもなく、銃。
「え?どういうこと?」
「あかねちゃん、そんなもの持ってなかったよね!!」
首を傾げる野中、大げさな表情で驚く牧野。
それに気を良くしたのか、羽賀は当たり前のようにその銃を「消し」、持っていた手提げ鞄
からあるものを取り出した。
「半紙と…筆? 羽賀ちゃん習字でも始めるん?」
机に広げた半紙に、流れるような手つきで文字を書き込む羽賀。
そこに大きく描かれた、「虎」の文字。
次の瞬間、羽賀以外のその場にいた全員が度肝を抜かれる。
机の上。ついさっきまで何もなかったその場所に、逞しい四肢の大きな虎が座っていたからだ。
「とっとっ虎ぁ!?」
「オーマイガーッ!!!!」
「た、た、食べられちゃう!!」
今にも襲い掛かって来そうな顔をしていた虎はしかし。
羽賀が机の上の半紙を畳むと、煙のように消えてしまう。
「さっきの拳銃も、これで出したんです」
どや顔で懐から畳まれた半紙を広げる羽賀。
そこには、ひらがなで「けんじゅう」と書かれていた。
羽賀朱音::【墨字具現化(embodiment of the letter)】
描いた文字を具現化する能力。半紙を畳むことで収納可能。
字を書く度に精神力を消耗するため、一日に能力を使用する回数には限りがある。
また、半紙に書くという性質上、半紙に何らかの物理的変化(水に濡れる・燃やされる等)が
発生すると無効化されてしまう。
対象は物質である限りは具現化可能だが、羽賀本人が良く理解してないものについてはそれな
りのものしか出せない。また、ひらがなで書いてしまうとやはりそれなりのものしか出せない。
漢字の習得如何によって精度が大きく左右される能力でもある。
戦闘前に予め仕込むことにより、多彩な戦法を取ることが可能。
例えば「炎」の文字をしたため周囲に仕掛けることで、相手を炎の輪で閉じ込める。「落とし
穴」と書かれた半紙を地面に埋め込み相手に踏ませることで罠を発動させる。等。
もちろん、半紙が損傷しないようにそれなりの工夫はしなければならないのは言うまでもない。
投稿日:2015/03/04(水) 01:41:36.30 0
最終更新:2015年03月05日 01:05