この緑炎は!
李純は一人の少女の名前を思い出していた。 いや、もう二十歳になったのだから女の名前というべきか。
本当は思い出す必要なんて無い、心に刻み込まれた名前。
何年も同じ時間を共有した盟友の名前が大きく心に響く。
名も知らない彼女が発動した炎の色は、かつての戦友が掌で熾す正義の炎の色と同じだ。
そう、それは銭琳の、魂の色だ。
彼女は単語帳を手にしていた。 そういえば色違いのものを銭琳も持っていた。
「もしかして、オマエは他の人間のチカラを複写できるのか」
ええ、と彼女は頷いた。
「そのためでしょうか。 最近誰かに狙われているんです」
私じゃなかった。 あの駆動鎧の標的は私じゃなかった。 この女だったんだ。
「オマエの心の空白を埋めてくれるかもしれない人を私は知っている。 その人の所にいくためにはあいつを倒さなければ」
「でも、もうカードもなくなってしまいました」
「ソッカァ、チカラは物にコピーするのか。 ならば…」
私の力をオマエに託す。 小腹が空いた時用に買っておいたバナナの房を掲げる。
「注意することがある。 邪な思いに呑まれたらオマエ戻ってこれない。 そしてもう一つ…」
何ですか、と物問いたげな彼女に念押しする。
「使ったら、とってもお腹減る!!」
最終更新:2011年09月04日 22:17