49話


「取り敢えず誰もいないみたいだな・・・」
山のふもとに建つ小屋に男子14番 野村 仁(のむら じんは)、男子9番 須崎 史々(すざき ふみふみ)は入り、互いに頷く。
須崎は、荷物を下ろすとドカッと腰を下ろした。
「まあ、何とか生きてるしよ・・・取り敢えずは今日は休もうぜ」
「うん・・・」
仁の声は暗かった。
天道が殺し合いに乗っているかもしれないという事にショックを受けているからだ。
今までは、須崎の言葉を信用できないでいたが、冷静に考えれば、今は殺し合いが公認されている状況なのだ。
いかなお人好しの仁も流石にそれを否定できる事は無かった。
須崎が耳元で何度も「天道に殺されそうになった!」とか「今は殺し合いの場なんだぜ?」とか「不安なんだよー」などと言ってれば、彼も”しっかりしないと・・・”と思わざるを得なかったのだ。
「野村、メシ食わんの? もうメシないなら、少しだけなら分けてやるぜ。腹減ってたら、元気も出ないしな!」
支給された食料であるカロリーメイトをかじりながら、須崎は言う。
だが、これも彼の計算だ。
(野村みたいな無難そうな生き方しかしてないヤツが一気にメシを食っちまうって事もないだろう。それにある物を無いって言うヤツでもなさそうだしな・・・へへ・・・お前にわける分はねぇよ)
「うん、大丈夫、そうだね・・・ありがとう。食べるよ」
そう元気なく言うと仁は、自分の分のカロリーメイトを取り出してモソモソと食べ出す。
(やっぱりな・・・俺って頭良いぜ)
「・・・悪いけどさ、先に寝かせて貰っていいか? 天道の事もあって疲れてるんだ」
須崎は、腫れた頬を擦りながら媚びるように言う。
「あ・・・うん。いいよ、僕が見張ってるから・・・」
「悪いな。後で起こしてくれ。交替で休もう」
「うん」
そう言うと、須崎は眠り出した。
最終更新:2012年01月05日 23:51