54話
「由希・・・・」
男子13番 永井 等(ながい ひとし)はガックリと肩を下ろし膝をつく。
先程の放送で幼馴染であり、探し人である愛沢の死に彼は大きなショックを受けていた。
「そうか・・・俺は由希の事がすきだったのかもしれないな・・・・」
彼の心はポッカリと何か大事なものが抜け落ちたような感覚を味わっていた。
無気力というべきか、何も考えられないといった風にへたり込んでいた。
それは、どこか遠い所見ているような眼。
「・・・あれは――誰だ?」
しばらく、遠くを見ていると、コソコソと移動している男子生徒を見つけたのだ。
それは、見覚えのない人間であった。
「あんなヤツ・・・うちのクラスにいたか?」
等は、ひとり呟く。
今まで見た事もない人間がプログラム会場にいる。
それは、彼の好奇心をくすぐるには充分であった。
「・・・そうだな。まだ佐藤達は生きている・・・こんな所でメソメソしてる場合ではない」
ゆっくりと、だが、しっかりとした足取りで立ち上がる。
「取り敢えず、今の男を捕まえてみるか・・・」
(何か今の状況を変えられるヒントが得られるかもしれないしな・・・根拠はないが・・・死ぬのを待つよりも何倍もマシだ!)
等は、モリを肩に担いで、先程見かけた人影を追う事にした。
最終更新:2012年01月07日 18:14