プロローグ


 そこはどこかの教室だった。
 薄暗い教室である。
 俺は、最前列の席に座っていた。
 圧倒的な違和感……。
 俺はすぐさま周囲を見回した。

「え……?」

 教室内に席に座っていたのは、見知らぬ人間たちだった。
 どういう事だってんだよ……。
 夢か?
 いや、またプログラムだっていうのか?
 何かまた首輪してるし……。
 そういや、俺は、ルードリッヒとかいうクソバカが教官担当するプログラムに選ばれたんだっけ?
 それで、キースとかいう自称勇者をシェリーとかいう魔法使いと共闘して倒して……――。

「んで、このザマかよ」

 俺は溜息を吐いた。
 これは恐らく夢。
 夢であって、あと少ししたら、目が覚めて、また京也達との平穏な日常を過ごしていくのだろう。


 俺は網井海斗として。


「おーい、お前らー^^ 私語は慎めよー?^^」

 ガラガラと教室の前方のドアを開けて、入ってきた笑顔の男。
 男は微笑みながら、教卓の上に日誌(らしき黒い冊子)を置いて、教室内を見回す。

「うん、みんな揃ってるな^^
 私は、今日からみなさんのクラスを受け持つことになった高田です^^
 早速ですが、みんなにはこれからクラス内での親睦のためレクリエーションとして殺し合いをしてもらいますね^ー^」

 ほら、来た。
 やっぱ殺し合いだ。

「また殺し合いかよ……」

 俺は辟易したように呟いた。

「ほんとだぜ! さっきプログラムやってて殺されたばっかりだったってのによー!」

 眼鏡を掛けたガリ勉風の男も苦笑い気味にそう言った。
 初めて見る顔だが、年齢は俺とそう変わらないようだ。
 どうやらアイツもさっきまでプログラムをやってたらしいな。
 状況的には、俺と似たような境遇らしい。

「ここってやっぱ地上なのかなー。
 さっきまでダンジョンに潜りっ放しだったんで、やっぱシャバの空気はいいねー」

 そして、卓上で軽やかなステップを踏みながら、俺と同年代くらいの男が爽やかに言った。
 はっきり言って、変なヤツとしか言いようがない……ダンジョンって何のことだ?

「ぐがーーぐがーーー!」

 そして、緊張感もなく大イビキをかいて寝ているおっさん。
 髪はボサボサ、ヒゲは伸び放題、来ている寝間着はボロボロ……何なんだこの人選は。

「おいおい、兄さんよ。何たわけた事言ってるんだ?
 こんな首輪なんてつけやがってよ……変態趣味なのか?
 殺し合いだと? テメェ、脳にウジでも沸いてんのか?
 そんなもの誰がするかってんだよ。馬鹿が。俺は帰らせてもらう」

 やさぐれた警官の格好をした20歳台半ばの男が怒鳴り散らす。
 まあ、それが当然の反応と言えよう。
 警官は席から立ち上がり、教室から出ようとする。

「おいおいー^^; そんな事したら、先生困っちゃうなー^^;
 そんじゃ、先生、この首輪の効果を教えちゃうゾ^0^」

 高田がどこからともなくリモコンを取り出すと、スイッチを押す。

「ぐがーぐ――」

 ボン、という破裂音と共にイビキをかいていたオッサンの首が宙に舞う。

「居眠りをしてる悪い生徒へのお仕置きも済んだところで、ゲームの説明をしますね^^
 ほら、そこのおまわりさんの格好のキミもちゃんと席に着けよーー^0^」

 警官は、高田の陽気な言葉の通り、渋々と席に着いた。
 今、死んだオッサンを見て、クラス内に緊張が走る。
 高田が俺達の生殺与奪権を握っていることを理解したからだ。

「さて、ゲームの説明をするゾ^0^
 キミ達には殺し合いをしてもらいます。
 特に反則はありませんが、先生に逆らう悪い子にはお仕置きをします^^
 ゲームの舞台は、とある島で行い、島は6×6のエリアに分かれています^^
 2時間ごとに禁止エリアを増やしていき、禁止エリアに入った生徒はゲームオーバーになります^^
 ゲーム開始時刻は、正午です^-^ノ
 毎日8時と18時に定期放送を行い、死亡者と禁止エリアの発表をします^^
 ちょうど、78時間――つまり、3日間ちょいで全エリアが禁止エリアになるので、それまでに頑張って殺してくださいね^^
 キミ達には、デイバッグを支給します^^
 デイバッグの中には、水と食料、地図とコンパス、時計、筆記用具と何かしらの支給武器を支給します^^
 勝った人はおうちに帰してあげますからね^q^
 それじゃ、頑張って下さいね^p^」


 日暮 熟睡男@こちロワ 死亡  残り49人
最終更新:2015年01月26日 22:54