第17話 出会いは突然に
「クックック……殺し合いとは面白い。
再び数々の狼共を葬ってきたこの祖母の介護で鍛えた腕力を見せる時が来たようだな……」
赤い頭巾をかぶった小柄で可憐な少女が怪しげに微笑む。
だが、その姿はフェイクである。
彼の真の姿は身長230センチメートルの大巨漢。
得意の変装で、小柄な少女に擬態した彼は、エロ目的で近寄ってきた幾多の狼共を葬ってきた歴戦の狩人なのだ。
彼の名は赤頭巾、屈強な戦士である。
彼は、獲物を待ち構えるために、わざと力なき幼女の姿で嘘泣きを始めた。
「童女よ、泣くのはおよしなさい」
そこに通りかかる上品な和製着物の女。
心の中でにやりと笑いながら、赤頭巾はしめしめと思う。
(全て俺の思い通りだ……また美しき俺の少女姿に酔いしれる馬鹿が一人……)
「かかったな……ばかめ――」
赤頭巾は変装を解きながら、筋肉を肥大化させ元の姿に戻る。
彼は、元の姿に戻るつもりでいたのだ。
だが、彼は絶句していた。
その目の前にいる女の美しさに見とれてしまったのだ。
故に、変装を解くのを忘れてしまったのだ。
「童女よ、何故黙る……私の顔に何かついておるか?」
「いや……その……ハッ!?」
(そんな馬鹿な……世界一美しき筈の俺が他人に見とれる……だと!?
有り得ん……そんな馬鹿な……!!)
自らの美貌に絶対の自信を持っていた赤頭巾の中で、何かが大きく揺さぶれていた。
それが自己嫌悪なのか、それとも、自らが見惚れてしまった目の前の女の美しさか。
それは、彼自身も分からなかったのだ。
「私の名は濃……赤き頭巾の童女よ、おぬしの名は何という?」
「お……俺、いや、わたしは赤頭巾……」
「そうか、赤頭巾よ、私は行くが、おぬしはどうする?」
突然の言葉に考え込む赤頭巾だった。
だが、目の前の濃という女が行ってしまう、そう考えれば、何故か胸が苦しくなるのだ。
そして、彼は決断をする。
「待ってくれ……俺、いや、わたしも一緒に連れて行ってくれ!」
赤頭巾の伸ばした小さな手を濃の細い手がゆっくりと包み込んだ。
その行為に、赤頭巾は今まで感じた事のない暖かさに包まれるのであった。
最終更新:2015年01月26日 23:10