第26話 「囲炉裏はいいなぁ」
東雲漸次、ルシフェル、大宮利美の3人は、町はずれのとある古小屋で夜を超すことにした。
3人は囲炉裏を囲んで暖をとりながら、定時を放送を聞いた。
「先生……それに、八神も……?」
魔術師であり、医師である東雲漸次は愕然とした。
表の顔である医者としての師匠である魚住雅の死に。
「あの人は戦えるような人じゃないんだぞ……クソッタレ!!」
そして、生前に漸次の命を奪った八神恭二。
戦闘においては、かなりの実力者だった筈だ。
そんな男がこうも早く殺されてしまった事に彼は驚いていた。
「それだけの実力者、そして、力無き老人の命すら平然と奪う外道がこの島にいることか……」
「酷い顔をしているな。大丈夫か?」
そんな漸次を気にかけて、ルシフェルが声を掛ける。
「大丈夫だ。問題ない」
漸次は笑って、答えた。
「そうか、お前は強い男だな」
ルシフェルも笑った。
「ねぇ……諸葛亮孔明って……あの三国志に出てくる人と同じ名前……まさか同一人物?
ジークフリートって名前をどっかで聞いた事があるし」
「それは、多分同一人物だろう。
利美ちゃんには、突拍子もない話かもしれないが、いや、馬鹿げた話かな。
でも、僕たちの命に係わる事だから、聞いてほしいんだ」
「???」
「俺は一度死んでいる。
この島に連れて来られる以前、僕は魔術師として”聖杯戦争”というものに参加していた。
それは、7人の魔術師のマスターがそれぞれサーヴァントと呼ばれる使い魔を召喚して殺し合うものだった。
サーヴァントには、英霊と呼ばれる存在が召喚される。歴史上の偉人、神話の英雄、怪物、または伝説上の何か。
そう……例えば、三国志史上最大の軍師、諸葛亮孔明、竜殺しの英霊であるジークフリートなんかだな。
その7組は、最後の1組になるまで殺し合うんだ。最後に残った1組はどんな願いでも叶えられる聖杯を得られるからな。
今呼ばれた、八神恭二という男もそのマスターの1人だった。俺は八神に殺された身なんだ。なのにこの場に生きている。
そう、俺は生きているんだ。さっき呼ばれた魚住という女性は俺の医師しての師匠。
もう80歳くらいの婆さんなんだが……この島には、そんな婆さんも手にかけるような外道がいるって事だ。気を引き締めてくれ」
「東雲さん……」
漸次のとてつもない話を聞いて、涙ぐむ利美。
「そんな顔をするな。俺は大丈夫だ……俺には10才になる娘がいるんだ。
折角、生き返ったんだしな……死ぬわけにはいかない。また生きて娘に会いたいしな」
漸次は無理やりに笑顔を作った。
「私も……この島に来るまでに色んな事がありました……」
利美はゆっくりと語りだした。
漸次とルシフェルは、彼女に注目する。
「そうですね。まずは不思議のダンジョンってものについて話しましょうか……」
そして、3人の夜は更けていく。
最終更新:2015年01月26日 23:16