第31話 謎の四角関係
「ふー……恭一、おめぇ、なかなかの具合だったがや」
既に月が昇り、辺りが暗闇に覆われている時間であった。
とある森の一角、アーチャーは満足そうに地である名古屋弁でそう言うと、タバコの煙を吐き出した。
そして、隣で裸で転がる元斑恭一の尻を優しく撫でた。
「……あふん!」
その巧みな指使いに悶絶し、恭一は頬を赤らめる。
そう、アーチャーこと、織田信長は、森蘭丸よろしく少年愛(ボーイズラブ)の人だったのだ。
「信長様!」
突然の悲鳴。
その声に聞き覚えのあるアーチャーはギョッとした顔で仰け反った。
彼の視線の先には、織田信長の正妻である濃姫と赤頭巾の二人が立っていた。
「の、濃!?
いや、違うぞ!!
俺はお前一筋だ!!」
必死で弁解するアーチャーだったが、その隣には裸で転がる少年、恭一がいた。
「……あの頃、すっかり夫婦仲も冷め切っていると思っていたら……衆道の気があったなんて」
「こんな綺麗な奥さんがいるのに、ホモだなんて最低だ!!」
濃姫が涙し、濃姫に恋焦がれる赤頭巾は激怒する。
「いや、待て……そういうわけでは!」
「……織田さん、俺のこと可愛いって言ってくれたのは嘘だったんですか?」
何かに目覚めたのか恭一までもがそんな事を言う。
「黙れ!小僧! 人の家庭を壊す気か!!?」
「最低だ!このオヤジ!」
赤頭巾が鬼の首でも取ったかのように喚き立てる。
「黙れ!小娘! 当事者でもないのに人の家庭問題に入ってくるな!!」
「……こんな年端もいかぬ少年少女に喚き散らすなんて何ともみっともないこと。もう顔も見たくありませんわ!」
濃姫もまた失望したかのように走り去った。
「濃ーーー!カムバーーーック!!」
情けない顔で涙を瞳に浮かべながら、アーチャーは膝をついた。
いや、実に情けない。
「……許せぬ。あんな美人の奥さん持って放蕩三昧のホモ野郎……」
今までの可憐な少女の声ではなく、それは野太い男の声だった。
その異様な殺気を感じ取り、アーチャー、恭一が赤頭巾を見た。
「例え神が許そうとも、我は許さん。この祖母の介護で鍛えた腕力で貴様を殺す!!」
既に赤頭巾に少女の面影はなかった。
身長230cm、体重180kgの筋骨隆々の大男がそこにいた。
「死ね」
それは赤頭巾の丸太のような脚から放たれる蹴り。
「危ない、織田さん!」
ひと時、肌を重ねた情からか、恭一がアーチャーを庇うように割って入る。
「あべし!」
しかし、その蹴りは恭一の脳髄を撒き散らし、ぐちゃぐちゃにした。
恭一は死んだのだ。
「さあ、次は貴様の番……だ?」
しかし、アーチャーは既に逃走しており、その場にはいなかったのだ。
残された巨漢、赤頭巾は呆然と立ち尽くす。
最終更新:2015年01月27日 15:39