第33話 真夜中の攻防

「ほう、なかなかイイ女じゃないか!」

 未来戦士・石川銅鑼衛門が獲物を見つけて、舌を出して笑う。
 そして、銃撃。
 彼の標的となったのは、美しき魔女、蘇 妲己である。

「こんな夜更けまで狩りだなんて、精が出ますことね」

 妲己は弾丸を魔術結界で防ぐと、バックステップで距離をとる。

「俺の最後の息子だった醜銅羅も死んじまったみたいだし、新しい子供も欲しいしな。お姉ちゃん、俺の嫁になってくれや」

「痴れ者め」

 その言葉に生理的な嫌悪を抱きつつ、妲己は魔術による光弾の雨を降らす。

「ハッ!甘いぜ!」

 銅鑼衛門は、その二頭身の身体からは想像出来ないほどの速度で、拳銃とビームサーベルの斬撃で妲己の魔術攻撃を打ち落とし、距離を詰めていく。

「嘘!? 早い!? 新しい魔術詠唱が間に合わない――きゃあ!!」

「未来戦士は伊達じゃないってなぁ!!」

 銅鑼衛門の蹴りが妲己を吹き飛ばす。

「さて、そろそろ決めさせてもらうぜ!」


「……ほう、おぬし、殺し合いに乗っておるのか?」

 それは低い男の声であった。
 緑の甲冑に身を包んだ長いひげの美丈夫。
 異様なプレッシャーを感じた銅鑼衛門の注意は、その緑の甲冑の大男に注がれた。

「しかし、いたいけな小娘をいたぶる趣味は関心せんのう。
 それ以上やるというならば、この関羽雲長が相手になろうか」

 徒手空拳のまま、銅鑼衛門の前にゆっくりと歩みを進める関羽。
 圧倒的な力の差を感じた銅鑼衛門は、思わず、後ずさりした。

「何だ、テメェ……人間か?」

「ふん、貴様、わしとの力の差が分かるか。ならば、貴様がここに居る理由はなかろう?」

「―――ッッッッッ!!」

 銅鑼衛門は逃げ出した。


「ふう。相手も相当の実力者であったろうが……度胸のないクズで助かったわい。
 恐らくは、自分より格下の敵としか戦ったことのない男だったのだろう。ここ一番で情けのないやつだ」

 そこまで見透かしていた関羽は倒れた妲己をひょいと担ぐと、どこか休めるところを探して歩き出した。

最終更新:2015年01月27日 15:50