第二話「頂上者達の宴」


「私はただの音楽家……別に司会などに興味のない裏方の老人……何故殺し合いなどしなければならない……」

 森の中、音楽家すぎやまこういちは大樹に寄りかかり項垂れるように座り込んだ。
 彼の支給品は、バタフライナイフ。
 人を殺すことは可能だが、既に齢80を越える彼にはこの殺し合いは過酷なものであった。

「ドラクエしてぇなぁ……」

「そんな事より野球しようぜ!」

 落ち込む こういちの前に現れたのは巨人軍の杉内俊哉 投手であった。

「殺し合いなんて下らないです。
 野球を通して夢を見、また魅せていた。
 貴方もそうでしょう? 
 音楽家のすぎやまこういちさん、貴方の音楽は人に感動を与えるものだ。
 殺し合いなんてぶち壊してやりましょうよ!」

 俊哉の言葉にこういちは、ゆっくりと立ち上がった。
 その眼は音楽家すぎやまこういちの眼であった。

「そうですね……私は忘れていた……若かった頃の気持ちを」

「ふふふ、僕もゲーム好きなんですよ……休日には息子と一緒に遊んだりしてます……」

 二人は握手をかわす。
 共に音楽、野球の世界で成功を収めてきた二人はお互いを分かり合い、一種の感動に浸っていた。

 その為に気付かなかった。
 俊哉の上空から、接近する人影に。

 ザクッ!
 上空からの来襲者――ケイン・コスギの振り下ろした日本刀が俊哉の肩から腰にかけて切り裂いた。

「がっ……ごふっ!」

 俊哉は激しく吐血して倒れる。
 十分な致命傷だ。
 こういちの顔は一瞬にして青ざめる。

「何故――!!」

 こういちの言葉は続かない。
 ケインは、日本刀の切っ先をこういちへ向けた為にすくんでしまったからだ。

「野球選手も音楽家も司会の座は必要ない。
 だが、僕には必要だ……筋肉番付もドラマの仕事も滅多にない……僕には今一度スポットライトが必要なんだ」

 こういちは何かを言おうとしたが、ケインの目にも止まらぬ斬撃が彼の首を刎ねた。




出席番号 07 番  杉内俊哉
出席番号 16 番  すぎやまこういち          ――死亡  残り14人
最終更新:2015年01月27日 17:19