第三話「一流への道」


「おすぎです!
 殺しあえなんて、まるで映画じゃない!
 いや~ねぇも~う! 何だったかしら? 
 バトルロワイアル? 昔流行ったアレみたいじゃないもう!
 それに松子ったら、最近調子に乗ってるんじゃない!?
 こっちは、松子より何十年も長くオカマやってるってのにぃ!!」

 映画評論家おすぎは、プリプリと怒っていた。
 ぽっと出の巨体のオカマに殺し合えと言われた事にだ。

「芸能界の上下関係ってものを知らないのかしらもう!」

 支給品である鉈を手に砂浜を歩いていた。
 そんな彼のもとに、やや頭髪の禿げ掛けた小太りの男が歩いてくる。

「おすぎさんじゃないっすか!
 何やってはるんですか!?」

 それは、お笑い芸人のブラマヨ小杉だった。

「あら、小杉じゃない。何するも何もないわよ!
 あの松子ってコ何考えてるのかしら……生意気だわ~!」

「ですよね~! でも――」

「……小杉、あんた!」

「――24時間テレビの司会……メッチャ魅力的やないですか」

 ブラマヨ小杉は支給品の金属バットを構えた。

「すんません、死んで貰いますよ、おすぎさん!!」

 おすぎの頭めがけて振るわれた金属バット。
 それをおすぎは、ギリギリ受け止める。

 だが、30代で体格の良いブラマヨ小杉と比べると、おすぎは70歳に手の届きそうな老人である。

「きゃあ!!」

 おすぎは直ぐに力比べに負けて吹っ飛ぶ。
 砂地に転がるおすぎにトドメ

「すんません……オレらも今そこそこ売れてるんですけど、やっぱ一流ってヤツに憧れるんですわ……」

「あんた……おかしいんじゃない!?」

「すんません……オレ、このチャンスを必ずモノにしますんで……」

 おすぎの言葉は既に届かない。
 ブラマヨ小杉の金属バットが頭上に振り上げられる。

 歴代の24時間テレビの司会は一流芸能人ばかり。
 その席に並ぶというのは、ブラマヨ小杉にとっては大きい事なのだ。

「すんません……」

 グシャッ



出席番号 01 番  おすぎ          ――死亡  残り13人
最終更新:2015年01月27日 17:19