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~第5話 無題

そこは、緑に囲まれた開けた山の頂上だった。
少女は、目深に被った黒いキャップから覗かせる虚ろな瞳を空に向けながら、強い風を感じるように、ただじっとしていた。
少女が何を願うか、何か伝えたい事があるのか、何を考えているか、表情からは全く読み取れない。
彼女の名前は、三上 蓮華(みかみ れんげ)、転校生である。


彼女は空虚だった。
何も無かった。
帰る家もなければ、頼る人間もいない。

それらは幼い頃に失ってしまった。
原因は火事、両親はその時炎に焼かれて死んだ。
現実とは過酷であり、時に救いようの無い事が多い。

蓮華がキャップを取ると、長い白髪が風に吹かれ、荒々しくなびいた。
彼女は、心地良さそうに手を広げ、身体全体で風を受ける。
しばらくそうしていると、満足したのか彼女は放り出したデイバッグから支給された武器を取り出した。
タンクとタンクから伸びた有線式の銃のようなもの。
引き金を空に向けて軽く引くと、ぼうっと炎が放出される。
それが火炎放射器だと理解すると、彼女は少しだけ皮肉気に笑ったかのように見えた。


【三上蓮華】《所持品》火炎放射器
最終更新:2015年01月30日 11:09