~第11話 脱プログラムへのロード 序章
御巫貴史――成績が良い訳ではなく悪くもない、運動神経は並以下。
顔立ちは、割と中性的な女顔でクラスの女子にもウケは悪くない。
そんな彼もクラスでは宮嶋博和・御巫貴史・飛鳥新一の3馬鹿トリオとして有名だった。
彼は所謂オタクで、イリーガルなアンダーグラウンドの世界に片足を突っ込んでいる。
パソコン――ネットを使っての、クラック行為、政府の秘密情報や海外の情報にも滅法強い男だった。
一度気になったら、知らずにいられないという彼の探究心がそういう技術を彼の物としたのである。
「さてと……」
山のふもと――貴史は、ガチャリと腕に金属具をはめる。
黒い金具を回転させると、ジャキンと刃渡り30センチ程の鋭利な4本の爪が飛び出す。
「争い事は苦手なんだけどな」
彼は己へと支給品された【アイアンネイル】の刃を仕舞うと、辺りを見回す。
地図(>>25)を確認した彼は、校舎を出て、北東へ向かう事にした。
人が集まりそうな東地区に向かうためには、2つの手段がある。
1つは、真っ直ぐ東に向かいトンネルを抜ける。
そして、もう1つは南東へ向かい山を登り、橋を渡る道。
一先ずこれからの事を考えなくてはならない。
戦いを避ける為、即ち、人が集まりそうなこの2つのルートは避けた方がいい。
そう考えた彼は、人に会わぬように細心の注意を払い、北東を目指す事にした。
「そうだな……」
まずは、この首輪を外さなくてはらない。
どうすれば、首輪を解除できるか――これがプログラムから脱出する為のキーである。
だけど、【僕は首輪を解除する手段を知っていた】。
数年前、プログラム中に前年度優勝者である少年に首輪を解除され、その時の主催者が皆殺しにされたという事件があった。
もともと、首輪の解除方法は割と単純なものであったという。
だから、それを境に首輪の解除方法を変更した。
ある特定の周波数の電波を読み込ませる事で解除が可能。
それ故に解除コードは毎回プログラム毎に変動する。
政府のBR委員会にクラックをかけた際に、僕はその事を知った。
校舎にある首輪への電波を統括するであろうPCを乗っ取り、一旦首輪爆破の懸念を排除。
そして、解除コードを奪う。
「まあ、これが適当な手だろうな」
リスクは高いだろうが、これが自分に出来るであろう最善の手であろう。
もしかしたら、他に良い手があるのかもしれないけど、それは僕には思いつかない。
それなら、僕は僕の信じた道を進む。
その為には、信頼の出来る仲間を集めなければならないな。
【御巫貴史】《所持品》アイアンネイル《場所》3-E
最終更新:2015年01月30日 11:14