第34話 兄(天才)と妹(未来少女)


 石川銅鑼美は立ち止まる。
 服に返り血を浴びた大柄な少年?が歩いてきたからだ。
 少年?は、デイバッグを肩に担いでおり武器らしきものは携帯していなように見えた。
 しかし、魔術師の斉木や、素手で人を殺す賞金稼ぎのGO☆ヒロミといった者もいるのだし、この少年が素手で人を殺せないという道理はない。
 銅鑼美はそう判断した。

「貴方……その血は殺し合いに乗っていると思っていいのかしら?」

 銅鑼美は支給品の鉄の剣を手にぶしつけに質問をぶつけた。

「ん~? この天才たる乱堂サマが殺し合い等という下らぬ戯言に乗っているわけがなかろう?
 この返り血は、俺サマを毒殺しようとした諸葛亮孔明とかいう愚かなオヤジを返り討ちにしてやった血よ」

 乱堂は舌なめずりしながら不敵に笑う。
 素手であるにもかかわらず、全く物怖じしないその態度に、銅鑼美は警戒を強めた。

「そう。私の名前は石川銅鑼美。
 人を探しているのだけど、聞いてもいいかしら?」

「なんだぁ? 人探しかぁ。良かろう。この乱堂サマに質問するがいい。
 ……と言いたいところだが、俺サマがこの島で出会った人間は諸葛亮ひとり。
 そのオヤジも俺が始末してしまったし、残念だが、お前の質問には答えてやれそうもないな。キッヒッヒ!」

 乱堂は笑う。

「そう……」

「ふむ。どんなヤツかな? 俺サマが出会うことがあれば、お前が探していた事を伝えてやっても良いが……」

 乱堂はぴたりと笑うのを止め、銅鑼美を気遣う言葉をかけた。

「探しているのは石川銅鑼衛門。
 二頭身でカラーは青と白の未来戦士で私の兄よ」

「ほう……お前の兄か。
 良かろう。お前の兄がゲームに乗っていないのであれば、この天才が保護してやろう」

「出来るなら、兄に会ったならば殺して欲しいわね。
 兄はゲームに乗っているわ」

「……ふむ。良かろう。ならば、この天才がお前の兄を殺してやろう」

 乱堂にも双子の妹がいた。
 だが、その妹はプログラムの見せしめにと殺されてしまった。
 その悲しい思い出が脳裏がよぎったが、性格が変わってしまった彼にとっては、それは、ただのノイズでしかなかった。

「自己紹介が遅れたが、俺は乱堂毅(らんどう つよし)。天才だ。
 銅鑼美よぉ……お前は運が良い。お前の兄、俺が出会う事があれば殺してやろう」

「ええ、ありがとう。乱堂くん?で良いかしら?よろしく頼むわね」

 乱堂は不敵に笑い、銅鑼美と握手を交わす。



「……え?」

 次の瞬間、銅鑼美が間抜けな声と共に倒れた。
 乱堂の手刀が銅鑼美の腹部に突き刺さっていたからだ。
 そして、次の瞬間、乱堂の指から疾風が巻き起こる。
 真空波が銅鑼美の首を一瞬にして刎ねた。
 未来少女の首は無残にも地面に転がった。

「クックック、油断しおって。馬鹿めが!
 天才たる俺サマが貴様のような下等な娘と対等に会話する等おこがましいわッッ!!」

 乱堂は銅鑼美の首を踏みつけると、そのまま力任せに踏み潰した。
 少女の小さな顔が潰れたトマトのようにグシャリと、血と脳髄を撒き散らして潰れた。

 乱堂は血にまみれながら歩き出す。
 天才たる自分の行く道に一点の曇りも無いかのように。


 石川銅鑼美@安芸葉町立煌香高校プログラム    死亡    残り23人
最終更新:2015年03月10日 12:09