第35話 ふたりの雄
「おのれぃ……濃よ、何処へ行きおったのだ……」
アーチャーこと織田信長は妻の濃姫を追いかけてきたが、深い森の中の所為もあってか見失ってしまっていた。
元斑が死んでしまった事も知らないし、もう既に元斑の事など忘れていた。
「ほう。人の気配がすると思えば……」
そんなアーチャーの前に姿を現すのは勇者キース・ハーディンフォード。
実力は勇者並みと云われた長肉体派の戦士である。
「ふん。貴様、なかなかの使い手のようだな。
俺はアーチャーの織田信長。小僧、名を名乗れぃ!」
アーチャーは一目でキースの力量を見抜く。
そして、自分に絶対の自信を持って構える。
「アーチャー?
ふん、弓兵(アーチャー)の織田ごときがこの勇者キース・ハーディンフォードに名を名乗れなどと偉そうに」
勇者キース・ハーディンフォードは剣を抜いた。
気に入らない相手を殺すためにだ。
セラミックソードをゆったりとした構えで持ち、アーチャーの隙を伺う。
「ふん!」
アーチャーが支給品のレミントンショットガンの引き金をひいた。
キースは目にも留まらぬ太刀で、レミントンの銃身を切断した。
ばら撒かれた散弾はキースに傷ひとつ付けれない。
「見事だ!」
そして、叩きつけるように槍斧(ハルバート)を振るう。
重い一撃をキースは軽々と受け止めた。
そして、キースはハルバートを弾き帰して、アーチャーと何合か打ち合った。
「ほう。なかなかやるな。弓兵の織田。
俺の攻撃を受け止めるヤツはそう滅多にいないぞ」
「キース……バテレン人めが。
ならば、喰らえぇぇいぃ!!」
アーチャーはハルバートを投げ捨てると、宝具”種子島”を具現化させる。
そして、次の瞬間、種子島からレーザー状の収束された魔力が放たれた。
「ちっ」
キースは舌打ちしながら、それを必死に避ける。
光速で放たれたレーザーであったが、キースの化け物じみた反射神経で何とか回避した。
「……壊れた幻想(くたばりやがれ)」
だが、避けた先には弓矢を構えたアーチャーが居た。
愛刀の”圧切長谷部”を弓につがえると、刀が矢へと変化して放たれた。
「弓兵ごときが――ッッ!?」
そして、矢がキースへ直撃すると共に彼の世界がはじけた。
爆炎に包まれ、キースは跡形もなく消え去った。
「……ぬぅ」
アーチャーは膝をついた。
「マスターの不在の所為で魔力の消費が激しいな……何処かで回復させねば――」
ゆっくりと立ち上がろうとした次の瞬間、アーチャーの頭が血に染まる。
そして、彼はどさりと倒れた。
脳天を銃弾で撃ち抜かれた……それがアーチャーの死因であった。
「人が夜寝てるってのに五月蝿いんだよ!この馬鹿チンが!!」
「あかんわ~!
安眠妨害は万死やわ~!
でも、流石は坂持先輩や!
脳天を一撃必殺とは凄いですね!」
プログラム担当教官である坂持金発と西川ぎよしが姿を現した。
そして、キレた坂持がアーチャーの遺体を蹴り飛ばした。
「あ、これ、僕が淹れたホットココアです。身体が温まりますんで、坂持先輩どうぞ~」
「流石はぎよしくん! これは温まるね。この後、ゆっくり快眠できそうだよ。
やっぱり人は思いやりを持って支え合って生きていくもんだよね。ぎよしくん!」
坂持はホットココアをがぶ飲みしながら、アーチャーとキースの遺品を回収する。
ふたりは仲良しの先輩後輩なのだ。
そして、魔力の枯渇したアーチャーの遺体は粒子となって消えていった。
キース・ハーディンフォード@C2ロワイアル
アーチャー@安芸葉町立煌香高校プログラム 死亡 残り21人
最終更新:2015年03月11日 09:47