第11話「逃亡開始」
俺は命からがら教会の地下へ身を隠す事に成功した。
教会の中は結構広く、幾つもの部屋や通路がある。
無駄に入り組んだ教会の造りのお陰で、俺は何とか身を隠せてる状況だ。
ここは物置らしい。
何かよく分からない荷物がたくさん積んである。
「……にしても魔術師、か」
あの松崎のオッサン、いきなり身体から炎を出しやがった……。
魔術――ってのがあるなら、ああいうもんなんだろうな。
見た感じ、あのオッサン相手に「実は俺、魔術師じゃありませーん!」っつって出て行っても丸焼きにされてしまいそうだ。
倒す、ってのは無理だろうな。
俺を倒すってのなら、不意打ちなり、騙すなりして、俺を攻撃すりゃ良かったんだ。
宣誓したうえで、俺に戦いを挑んできたってのならば、松崎のオッサンは自分の力に自信ありってところだろう。
魔術なんて使えない俺じゃ、どう足掻いても勝てなさそうだ。
取り敢えず、何か武器でも探すか。
親父に多少は仕込まれてるから腕っぷしには少しは自信があるが、あいつが魔術師っていうなら何か魔法の道具的な何かあるかもしれんしな。
そういう素敵なアイテムがあれば、松崎を出し抜く事もできるかもしれん。
いや、つーか、俺も何ちゃら戦争のマスターに選ばれたんなら、俺も英雄を呼び出せるんじゃね?
「おーし、なら来いよ! 英雄よ!」
だが、何も起こらない。
起こるわけねーよ、どうやって呼び出すんだよ、俺のヒーロー……!
いや、出来ればヒロインがいいな……。
海の家での一夏のアバンチュールが消えたんだ!
「おお! ここに居たのか!」
バンとドアを開けて、松崎のオッサンが入ってきた。
相変わらず暑苦しいオッサンだぜ。
「お呼びじゃね~んだよ! オッサン!!」
俺は手近にあったモップで松崎に殴り掛かる。
オッサンが怯んだ一瞬の隙をついて、オッサンの脇を抜けて物置から通路へと逃げる。
オッサンの背中はごうごうと燃えており、屋内でもお構いなしだ。
教会の地下は火に包まれている。
炎が周ってないのは……あっちか……仕方ない……行くしかないか。
あんな化け物、相手に出来るかよ!
最終更新:2015年10月12日 23:39