第15話「乱入者」



 なるほど、松崎のオッサンの攻撃で異様なダメージを受け過ぎて、人のカタチを保つのが不可能になったと。
 玉ちゃんの話を聞いて大体理解した。
 う~ん、玉ちゃんは思った以上に虚弱らしい。


「それで、俺はどうしたらいいんだ?」

『隙を見て逃げた方がいいよ。呑気なマスターが思っている以上に状況は悪いわ。
 あのエイハンとかいう女はマスターがサーヴァントを召喚してるとは気付いてないんだと思う。
 あの女が言ってた神谷一樹というのは、聖杯戦争のマスターなのよね?』

「ああ、そうだな……ライダーってのを連れてた」

 あの福耳のオッサンを思い浮かべる。
 とっとと俺を始末した方がいいと言っていた。
 アレは、もしかして本当にやばい状況だったのか……。
 あのオッサンが松崎やランサーとかアサシン並に強そうには思えないが……。

『ライダー、ね……どんなヤツだった?』

「どんなヤツってなぁ……冴えないオッサンって感じだった。
 サラリーマンで課長とか係長とかやってそうな感じ?
 強そうって感じはしなかったなー。
 ランサーとか松崎のオッサンみたいにガタイも良くなかったしな」

『じゃあ、多分、宝具……何かに騎乗したら真の力を発揮したりするタイプなのかもね。
 まあ、余りのんびり話してる暇もないし、取り敢えずとんずらしちゃおっか』

「おう、そうすっか」

 ヨーコちゃんと松崎は戦いに夢中だ。
 逃げるなら今しかない。
 俺と小狐玉ちゃんは顔を見合わせて頷き合った。

 だが、次の瞬間、頭上の天井が崩壊した。
 轟音、天井の破片が降りかかる。

『な、何――』

「お、おにいちゃあああああああああああああああああああああん!!!!」

『コォ――…………………………………………』

「何じゃコイツはああああああああああッ!?」

 俺はぶったまげた。
 眼の前に巨大な黒い鉄の塊で出来た人型の何かがいたからだ。
 コォーーっとか言いながら、ドライアイスみてーに口から白い息を勢いよく吐き出している。
 ダースベ●ダ―かよ、テメーはよぉー!!

「……って、お兄ちゃん?」

 この塊は俺の妹?
 そんな馬鹿な!
 いや、違う。
 この黒鉄の巨人の背中に何かが負ぶさっている。
 そして、その何かが首だけ覗かして「イヒッ」と歪に笑った。

「み、見つけたあああ、ああ? ああああああ!! おふふ!!」

『気を付けて! コレもサーヴァント! バーサーカー……狂戦士のクラスね!』

「どっちも狂ってるみたいなんスけど!」


「あらら、また会ったわね」
「バーサーカーか。ククク、骨のありそうなヤツだ」

 ヨーコちゃんと松崎が気付いた。

「またおまえか! ハエみたいに鬱陶しいいいんだよこのチビ!!」

 バーサーカーの背中の女(の子?)は、金切り声で二人に注意を変えた。
 チビって事は、ヨーコちゃんの事だよな。
 二人は、知り合いなのかって、とっとと逃げないとな。

 俺は、小狐玉ちゃんを小脇に走り出す。

「逃げんじゃねええよバインドォ(捕縛)!!」

 俺はいきなり足が動かなくなり、スッ転んだ。
 両足首がぶっとい輪っかみてぇな何かでグルグル巻きにされてたからだ。

「バーサーカー捕獲しろおおお!!」

『コォ――…………………………………………!』

 バーサーカーは巨体に似合わぬ速度で一瞬で倒れた俺との距離を詰めると、米俵でも担ぐかのようにヒョイと肩に担いだ。
 そして、バーサーカーは天井の穴に向かって跳んだ。

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!」

 俺は叫ぶ。
 そして同時に俺は思った。
 絶対に俺死んだ。
最終更新:2015年10月13日 00:01