8話


「――――――え?」

「――――――あ?」
一瞬双方間の抜けた顔をする。

工藤 無頼―――うちのクラスの不良―――滅茶苦茶喧嘩が強くて、教師さえ手に負えない―――卒業生恒例のお礼参りに呼ばれるも無傷で帰還、代わりに30台の救急車が学校に乗り付け、卒業生が運ばれていったらしい―――補導しようとした警官数人を半殺しに、そのとき、警官が発砲したとか、してないとか―――(以上回想シーン この間0,3秒)

―――こちらの存在を確認すると、無頼は塀を乗り越えながら、懐から大振りのナイフを抜く

(コ・ロ・サ・レ・ル―――)
「――う、動くなァ!」
銃(エアガン)を構える。
(こうなりゃ、ヤケじゃ!)

だが―――

(ぐはっ――予想が外れた――)
てっきり、止まってくれるものと思ったのだろうが、そうはいかなかったようだ。
(おもちゃだって、ばれたのか?)
すかさず、家の奥に引っ込む。
遅れて―――
『バリーーーーーン――ドサッ!』
窓硝子の割れる音がして、無頼が入ってきたようだ。

(無茶なヤツ・・・)
浩介は、T字路となった廊下の影に素早く移動する。無頼の居る居間のドアは開いていたが、丁度居間からは死角となって、うまく隠れることができたようだ。

(ちっくっしょー! なんで、俺がこんな化け物みたいなヤツに狙われなきゃダメなのさ!)

スタート直後に襲ってきた 伊藤麗司 とは、明らかに違う―――俺だけを自分の獲物と定め、執拗に狙ってきている―――銃(おもちゃだけど)を見せても怯まなかった――

(やっぱアイツ化け物・・認定・・・)
(でも、どうしようかな? ここからの出入り口は、正面の玄関、台所の裏口くらいしかなさそうだし)
(玄関は、居間の前を通らないとだめっぽい。 ムリ、鉢合わせになったら、切り抜ける自信ねーし)
(やっぱ、裏口かなー)

『―――ドスドス』

無頼が動く気配がした。否応なく身が縮こまる。
(どーか、こっちにきませんように!!)

だが、またもや予想に反して、その気配は2階へと消えた。
最終更新:2012年01月04日 01:55