14話
「オイ! テメー! 愛沢を寄越しやがれ!」
後からやってきた 男子9番 須崎 史々(すざき ふみふみ)が叫ぶ。
かなり興奮しているようだ。
「寄越せ・・・って、あんまり感心できないセリフ・・・」
須崎を見据え、冷たく言い放つ。
「いたた・・・」
大きな人影にぶつかって、ぺしゃんこになった鼻を擦る 女子1番 愛沢 由希(あいざわ ゆき)
人影は、かなり大きくて、由希は、見上げる形になる。
男子12番 天道 衛(てんどう まもる)だった―――顔にデカデカとある傷、傷を隠すように着けているバンダナとサングラス。
そして、クラスに全く馴染もうとせず、衛の放つ独特の雰囲気というのだろうか。
工藤 無頼たち不良とは違う、何となく孤高を感じさせる男―――
クラスの誰もが彼に関わろうとせず、クラスの中で、もっとも異彩を放つ男だった。
「天道ぉ・・・・」
須崎も、今更、相手が天道だと気付いたようだ。
振り上げていたサーベルも何となく、下げてしまう。
由希を庇うように前に出る衛―――
「必死だな―――格好悪いぜ―――男の癖に。」
抑揚のない声―――かすかに怒っていたのかもしれない。
それは、須崎に向けられたものだった。
その態度に対する須崎の答えは―――
「かっこつけんじゃねぇぞぉー! がぁああ!」
―――元々感情が高ぶっていたためか、実に単純なものであった。
サーベルを後ろにひく。
そして、渾身の力で突いてくる。
一方、衛はそれを待っていたかのように、肩に掛けていたバッグを捨て前に出る―――
サーベルを紙一重で避わし、距離を詰める―――そして―――
衛の拳が須崎の顎を掠めた―――『カスゥッ!』―――
(ボ、ボクシングみたい――)
『バシャァァアア!』
カウンターが決まり、須崎は、そのままうつ伏せに崩れ落ちた。
男子9番 須崎 史々 昏倒
最終更新:2012年01月04日 09:12