44話


「ふぅふぅ・・・」
女子3番 唐沢 幸子(からさわ ゆきこ)は全速力で闇夜の森の中を駆けていた。
事の発端はいきなりの銃撃だった。
暗闇の中、突然聞こえた銃声・・・幸子はその狙いが自分なのだと気付くくらいには用心深かった。
すぐさま逃げ出した。
闇に包まれた森の中をジグザグに。
だが、ずっと相手は追いかけてくる。
しかも銃撃は止まらない。
辺りは暗い。
もしも自分がこけたりして、動きを止めれば、殺される。
そんな恐怖心に負けぬように彼女は走り続けた。
『バンッ!』
「きゃああああああ!!」
彼女が撃たれたのは足だった。
落ち葉の敷き詰められた森のじゅうたんの上に彼女はスッ転んだ。
「チェックメイトだな・・・ウヒヒ」
それは暗視ゴーグルをつけた男子2番 伊藤 麗司(いとう れいじ)だった。
「なんだ・・・てめぇは・・・・」
「女の子がそんな乱暴な口をきいたらダメだよ・・・お仕置きしちゃうよ・・・ウヒッ!」
『バンッ!』
「がっ!?」
右手を撃ち抜かれた幸子は苦悶の表情を浮かべる。
「次は左手か、それとも残った足か?」
拳銃グロッグ23を弄びながら、麗司が汚らしく笑う。
「そこ! 誰かいるのか!?」
突然、麗司の背後から男の声が聞こえてきた。
麗司は、不機嫌そうに小さく舌打ちをする。
「・・・・チッ、邪魔者が入ったか・・・・運が良かったなぁ・・・・ウヒヒ」
そう言って、その場から消えた。
最終更新:2012年01月04日 22:59