47話


「あの・・・僕は天道君がそんなに悪いヤツには思えないんだけど・・・」
男子14番 野村 仁(のむら じんは)は言った。
男子9番 須崎 史々(すざき ふみふみ)は、その言葉をギョッとした顔で受け取った。
だが、須崎は折角、一緒に行動できそうな人間――仁を手放すを惜しく思った。
だから、食い下がる。
「いやいや、本当なんだって! アイツはゲームに乗ってんだよ! アイツはあぶねーヤツなんだってば!」
調子よく、そういう須崎をやはり仁は怪訝な顔で返した。
「須崎君・・・ごめん、やっぱり僕は天道君が悪いヤツには思えないんだ・・・」
「オイオイ・・・お前がどんなに天道と仲が良いかは知らないがよ・・・今はプログラムの最中なんだぜ。もし仮に、お前の言うとおり――俺は日常の天道なんて知らないから仮の話だけどさ――アイツがいいヤツだったとしても――今は日常じゃない。アイツはケンカも強そうだしよ・・・殺し合いに手を染める可能性は低くないと思うぜ?」
(くくっ・・・我ながら、悪くない言い訳だぜ)
須崎は、心の中でほくそ笑む。
「・・・だけど」
(面倒クセ―ヤツだなー・・・仕方ない・・・攻め方を変えてみるか・・・コイツ人だけは良さそうだしなー)
「なぁ・・・頼むよぉー・・・俺は1人じゃ不安なんだ・・・いきなり天道に襲われるしよぉー・・・・なぁ? お前はそんな事しないよなぁ?」
手のひらをこすり合わせ、お願いのポーズをしながら、だが弱々しさを出しながら・・・且つ、自分のキャラに無理がないように。
そんな事を心がけながら、須崎は仁を上目づかいで見る。
「と・・当然だよッ!」
仁の必死の肯定、それに付け入るように須崎は仁の顔を覗き込んだ。
「じゃあさ、頼むから、一緒にいてくれよぉー・・・な? な? 俺、不安でしょうがないんだわ!」
「わ・・・分かったから・・・そんなに顔を近づけないで・・・」
「サンキュー!」
(ふぅ・・・これで安心して夜寝れるぜ・・・こんなやつでも俺が寝てる間の見張り位出来るだろ・・・お人好しそうだしな・・・これで寝込みを襲われる心配はだいぶ減ったな・・・へへへ)
須崎は、心の中で舌を出して笑った。
最終更新:2012年01月05日 18:17