Case 09 アイツは人間のクズだったかもしれないが、俺の親友であった
「あれは、典子じゃない!? 典子!!」
さくらが診療所の外で走るセーラー服姿の人影に呼びかける。
だが、その返事として返ってきたのは、銃声だった。
「伏せろ!」
そんなさくらを新井田が地面へと突っ伏させる。
辛くもさくらは、九死に一生を得る。
「新井田君、大丈夫!?」
「くっ……ふぅふぅ……がはっ!」
新井田は、胸を撃たれたらしく苦しそうに呻いた。
口から血の塊のようなものを吐き出す新井田に俺は血の気が引いていく。
だが、事態は更に急展開を迎える。
外から典子とかいう女の悲鳴が聞こえた。
驚き、窓からそっと外を覗くと、女が倒れていた。
そして、そのすぐ傍には、鋼鉄の肉体に包まれた武骨な上半身裸の男が立っていた。
「杉村弘樹……不味いな……アイツはゲームにのっているようだ」
息も絶え絶えに新井田が呟く。
杉村は血塗れの拳を気にすることなく、こちらへとゆっくりと歩いてきた。
既に俺たちの存在に気付いているようだった。
「……アイツは、俺が刺し違えてでも殺す。お前らは急いで裏口から逃げろ!!」
ボウガンに矢を装填し、新井田が力強く言う。
「駄目よ、新井田君、殺されちゃうわ!」
さくらが新井田を止める。
だが、分かっている筈だ。
半死半生の状態の新井田を連れて俺達3人が無事に逃げ切れるのは不可能だと。
「恐らく杉村がゲームに乗った責任の一端は俺にある……千草をやったのは俺だ」
新井田は、そう皮肉気に呟くと「最後に童貞だけは捨てたかったんでな」と付け加える。
さくらの話によれば、杉村と千草はとても仲の良い男女であり、付き合っているという噂も多い関係だったそうだ。
俺は、新井田を見た。
ヤツの眼には、既に俺達を映してなかった。
それが千草への罪悪感からなのか、俺達に蔑みの眼を向けられるのが怖かったからなのか分からない。
ただギラギラと肉食獣のような眼で杉村を捉えると、数本の矢を口に咥えてボウガンを構えて特攻していく。
「新井田! 親友(とも)よ!」
最後に俺はヤツの背中に向かい、呼びかけた。
ヤツは振り向くどころか、反応すらしなかった。
そして、俺は。さくらの手をひき、診療所の裏口から抜け出した。
女子15番 中川典子 死亡 残り 14人 to be continued
最終更新:2012年01月05日 18:32