第三章 選択と集中
Ⅰ選択と集中のながれ
選択と集中という言葉をキーワードにわが国企業は1990年代後半以降から、規制緩和や法制度改革等の政策的後押しも受け、事業再編・再構築を積極的に行ってきた。またグローバル化・IT化等の情報化時代の急速な進展は、わが国の経済・社会構造に大きな変化を生じさせた。これが最近までのM&A件数増加の背景にあった。2004年に入り、企業業績の回復もあって経営者が急速に自身を取り戻したこと、そしてM&Aが持つ企業戦略上の優位性が幅広く認識され始めていることも要因に加わりM&A市場は新たなステージに入り始めている。
Ⅱ企業再編の歴史・現状
Ⅲ企業再編が起こす問題
事業再編における雇用問題・・・雇用調整として受け皿となる場の不確立
Ⅳ事業再編の手段・種類
Ⅴ事業再編における今後の課題
- 税制・・無税は共同事業(複数の会社が共同事業を設立する取引)グループ内再編(持株比率50%超の資本関係が維持される再編)の場合の2つが財務省に認められている。
○スピンオフは有税取引
スピンオフとは・・会社の一部門を切り離し独立させること。広義ではスピンアウトと同義ではあるが、狭義ではスピンオフは、元の企業と関係が切れずに、元の企業のブランドや販売チャネルなどの資産を活用することができる場合をさす。新会社の株式を親会社の株主に割り当てる方式をさすこともある。近年、日本において
MBOなど、バイアウトと呼ばれる企業買収の手法が用いられているが、バイアウトは、スピンオフするための手段として活用されている。
事例(ウィキ参照)
みずほ銀行・みずほコーポレート銀行
会社分割制度導入の背景には、財界の強い要望があった。これは、当時の第一勧業銀行・富士銀行・日本興業銀行をみずほ銀行・みずほコーポレート銀行に再編するにあたり、その規模および社会的影響から、事業譲渡よりも会社分割を行うほうが望ましいと判断されたことによる。加えて、法律上、普通銀行である第一勧銀・富士銀行と長期信用銀行である興銀との間では、合併は可能だが会社分割や事業譲渡は不可であった(普通銀行どうし、長期信用銀行どうしで会社分割や事業譲渡をすることは可能)ため、2002年4月1日に以下のスキームで再編がなされている。 第一勧銀のコーポレートバンキング業務を富士銀行に、富士銀行のコンシューマーバンキング業務を第一勧銀に承継する吸収分割を行い、第一勧銀は「みずほ銀行」、富士銀行は「みずほコーポレート銀行」に商号変更した。また、再編に先立ち、「みずほ統合準備銀行」という長期信用銀行を設立、免許を取得して再編に備えた。そして、興銀は、コンシューマーバンキング業務をみずほ統合準備銀行(同日みずほ銀行に吸収合併)に吸収分割したうえで、みずほコーポレート銀行に吸収合併された。
日本企業のM&A(企業の買収・合併)が活発化する中、特に件数が増えているのが経営陣による企業買収(MBO)だ。MBOで一般的なスキームの株式の公開買い付け(TOB)では、買い付け価格は直近の平均株価に一定のプレミアム(上乗せ分)を付けるケースが大半だ。プレミアムの期待があるかどうか、今後MBOを実施する可能性のある銘柄を探ってみた。
昨年末、ジャスダック上場企業が相次いでMBOの実施を表明した。スチール棚製造大手の日本ファイリングは十二月二十五日に、コンクリート製品製造の旭ダンケは翌二十六日にそれぞれ、オーナーの関係する会社によるTOBでMBOを実施すると発表した。
プレミアムは日本ファイリングが発表の前営業日の終値に比べ八七%、旭ダンケは五二%。MBO発表後、両社の株価は急上昇し、プレミアムのついた価格前後に張り付いている。こうした上場企業(ジャスダックを含む)のMBO発表は昨年は十一社に達した。
この中で目立つのが経営者や創業者が多くの株式を持つオーナー企業や同族企業だ。キューサイやダイトーエムイーのように創業者から現経営陣への事業承継にMBOを活用する事例もあるが、赤字転落など業績が低迷しているか、利益は出ていても成長に陰りが見え、長期的な立て直し策が必要なケースが多い。
株価が低迷し時価総額が低ければ、買収などのターゲットにもなりやすい。「株価純資産倍率(PBR)が解散価値と呼ばれる一倍を割り込んだり、一倍台であれば株価は資産に比べ割安の水準」(外国証券ストラテジスト)。そうした企業にとって買収リスクを未然に排除する手段の一つがMBOなどで株式を非公開にすることだ。
MBOの可能性を探るため、日経会社情報をもとに主要株主に経営陣や創業者一族(資産管理会社を含む)が記載されている企業で、直近業績が振るわず、PBRが二倍未満と低い企業を抽出してみた。
たとえば昨年MBOを含めたM&A(企業の買収・合併)が相次いだ食品など消費財関連産業をみると、石井食品などがあてはまる。同社は健康志向を背景に無添加調理を特色にするが、今期予想を含めた直近五期の連結業績は売上高は横ばい圏で経常損益は二期が赤字で今期も減益予想。株主構成は社長の関係者で二五%を超え、株価もPBRが一倍割れだ。
代表取締役が四位株主のマンダムも増収を続けるが、今期予想を含め三期連続の連結経常減益で業績に伸び悩み感がある。株価もPBRで二倍に届かず比較的低水準。両社は今後のMBOについて言及しているわけではないが、同様の見方で企業を見ればMBOの可能性を探る一つの手掛かりになるだろう。
MBOでもう一つ注目されるのは上場子会社だ。昨年は東芝セラミックス経営陣がMBOで独立を発表。ある投資ファンド幹部は東芝同様に「複合企業を中心に事業の選択と集中を進める流れはさらに強まり、今後も非中核事業の分離が続く」と見る。
上場子会社を巡っては、親会社も上場しているいわゆる親子上場に関して、東証が年内にも上場の是非を含めて何らかの規制をかける可能性がある。規制が行われれば、事業の選択と集中の流れはさらに加速し、中核事業であれば完全子会社化、非中核はMBOを含めて売却の対象となる可能性が強まるだろう。
ファンドが重視するのは
成長性・現金収支…でも一番は経営者の力量・熱意
M&A仲介のレコフ(東京・千代田)によると、二〇〇六年に公表されたMBO案件は前年比十三件増の八十件。〇三年が三十二件だったのに比べるとその急増ぶりが際立つ。さらに公表された買収金額は〇三年の千四百八十二億円から〇六年は六千八百七十五億円となった。
MBOは経営陣による買収だが、経営陣だけでは資金ではなく、ファンドと組むケースも少なくない。投資ファンドがMBOを提案するのはどんな企業なのか。実は各ファンドが共通して求める条件がある。
第一は成長性だ。MBOで株式を非公開化した後、資金回収の最も有力な手段は再上場させること。新たな資金の活用で海外に販路を開いたり、資本関係にとらわれず従来の系列外の取引を増やせる可能性があるかが重要なポイントになる。
次は安定したキャッシュフロー(現金収支)だ。大半の案件は買収資金に銀行融資も活用しており、確実に返済するには安定して現金を稼ぐ力が必要だ。
もっとも各ファンドが口をそろえるのが経営者の力量や熱意だ。自ら資金を出し、ファンドとともに計画達成のための経営ができるかどうか。あるファンドマネージャーは「面会した経営者の半数はすぐにダメだと思う」と打ち明ける。MBOの検討案件は増えているが、実際に成功するのは一部。MBOの可能性がある企業を探すことは将来の成長のポテンシャルを探ることでもある。(丸山修一)
【表】06年にMBOを公表した主な上場企業
発表日 企業 PBR 発表直前期の通期売上高 市場 資本構成 MBOの理由など
12月26日 旭ダンケ(コンクリ製品等販売) 0.48 131 ジャスダック オーナー企業 上場の意味薄れた
12月25日 日本ファイリング(スチール棚製造) 0.29 103 ジャスダック オーナー企業 業績悪化
12月20日 サンテレホン(通信機器商社) 0.88 468 東証 ファンドが筆頭株主 買収防衛策など
11月17日 ベルテクノ(住宅設備製造) 0.59 273 ジャスダック オーナー企業 長期的視野
11月10日 レックス・ホールディングス(外食) 2.05 1,485 ジャスダック オーナー企業 長期的視野
10月31日 東芝セラミックス(半導体製造装置等の製造) 1.61 848 東証 上場子会社 長期的視野
10月20日 神明電機(電子部品) 0.55 80 ジャスダック オーナー企業 長期的視野
10月2日 キューサイ(青汁製造販売) 3.12 421 東証 オーナー企業 事業承継
7月19日 ヤギコーポレーション(アパレル) 0.39 32 ジャスダック オーナー企業 業績悪化
6月8日 すかいらーく(外食) 2.40 3,793 東証 オーナー企業 長期的視野
5月26日 ダイトーエムイー(電子部品) 0.75 83 ジャスダック オーナー企業 事業承継
(注)連結決算発表企業のPBR、売上高は連結ベース。単位はPBRは倍、売上高は億円。PBRは発表前日終値と直前期末の株主資本を比較
最終更新:2007年10月03日 18:25