松茸大学 薬学部 薬学科


薬学科は、人と菌の関係を医療・文化・日常のあいだで再構築する学科である。
学生たちは、松茸の香りを嗅いだだけで血圧が上がる教授のもと、菌類の多様な可能性を追求している。
講義では「結果より過程を観測せよ」が合言葉だが、過程の長さがあまりに長いため、年度をまたぐ研究テーマも珍しくない。
実験棟の冷蔵庫には、開学当初から“まだ発酵中”と書かれた瓶が眠っている。

きのこ薬学コース

薬用キノコの成分解析や発酵プロセスを中心に、香りが心身に与える影響を探る。
学生は週に一度、嗅覚評価実習で“未知の瓶”を嗅ぎ、どれが松茸抽出液かを当てる訓練を行う。
正解率は低いが、なぜか毎年、卒業研究のテーマは香りに関係するものばかりになる。
なお、学生間で最も人気の高い実験は「教授の昼食の匂いを成分分析する」である。

伝承医薬コース

古文書や民間療法を現代科学で再検証するコース。
地域の祈祷師や薬草採取者との共同研究が盛んで、時には“論文に署名を残さない”客員研究者も現れる。
教授陣は「再現できたらそれはもう呪術ではない」という哲学のもと、あえて不完全な再現を大切にしている。
授業では、呪文の発音が合っていないと装置が反応しないことがあり、学生たちは発声練習から始める。

臨床薬学コース

臨床現場での薬剤師業務を想定し、実践的な処方演習と患者対応を学ぶ。
模擬患者役の学生が真に迫りすぎて医務室に運ばれることが年に数回あり、それを“実地研修”として単位換算する柔軟な運営も特徴。
国家試験合格率は全国平均より少し低いが、試験当日、香水を嗅ぐと集中できる学生が多く、“嗅覚コンディショニング”が非公式伝統となって
いる。

研究トピック例

  • 松茸芳香成分の吸入による自尊心の一時的上昇について
  • 儀礼的言語と薬効プラセボの因果関係の曖昧化を再現する実験
  • 投薬時のBGMテンポが副作用報告率に与える影響
  • 「教授の昼食の匂い」と学習効率の相関性調査(非公式)
卒業研究の発表では、発酵臭が廊下にまで漂う。だが、それが薬学科の“春の香り”として学生に親しまれている。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2025年11月02日 01:08