感情と知の共鳴構造
――菌糸伝達における六芒星的配置の有効性について――
提出者:広瀬 鈴(きのこ薬学コース)
指導教員:榊原 麦造 教授
要旨
本研究は、感情という非物質的現象を薬理的に扱う試みとして、菌糸伝達における形態的配置と共鳴効果の関係を検証したものである。
私は、薬とは単に身体を治すものではなく、心の構造を媒介する媒体であると考える。
その根幹には「知覚」と「共鳴」という二つの力があり、菌糸のネットワークはそれを可視化する“生きた翻訳装置”として機能する。
本研究では、六芒星状に配置した培養槽群を用い、菌糸伝達における電位変化と感情刺激の同期現象を観察した。
結果として、六芒星的配置においては感情誘発後の菌糸応答速度が平均12.8%上昇することが確認された。
この現象は単なる電気的干渉ではなく、菌体内情報伝達の共鳴構造による**「思考の伝達現象」**であると推測される。
第一章 感情の薬理学的定義
感情を定義することは、薬を定義することに似ている。どちらも「作用する瞬間」を境界にして形を変える。
私が注目したのは、“薬効”と“共感”が脳内でほぼ同じ領域に発火するという既知の事実である。
つまり、感情は生化学的に見ても一種の薬理的現象である。
その発火が“人から人へ”と伝わるのならば、菌糸が物質を伝達する構造を模して、感情の伝導も再現できるはずだ。
第二章 六芒星配置の原理と仮説
六芒星は単なる象徴ではない。
私はそれを「情報が最短距離で還流する構造」として利用した。
六つの培養槽を導電性の銀糸で接続し、中央に共鳴核を配置することで、菌糸が“互いに見る”関係を作り出した。
実験中、被験者に文学的刺激(悲劇的文章の朗読)を与えると、菌糸電位がわずかに同期し始めた。
まるで菌が、読者の感情を読み取ったかのようだった。
その瞬間、私は「薬とは共感の形である」と確信した。
第三章 実験結果と考察
全実験を通して、六芒星配置群では非配置群に比べて菌糸の反応開始までの時間が短縮され、
また培養槽間の電位変化が周期的パターンを示した。
特筆すべきは、被験者が“理解しすぎた”瞬間に菌糸活動が低下する現象である。
過剰な理解は、菌にとっても毒だった。
私はこの現象を「知性の発酵抑制」と呼ぶ。
つまり、理解とは発酵過程そのものであり、完全に透明化された瞬間に、思考は死ぬ。
ゆえに、人間と菌糸の関係は、未熟なまま発酵し続ける共生として存在すべきだ。
結語
本研究を通じて、感情と知の伝達は六芒星的配置において促進されることが示唆された。
しかし、それは万能の構造ではない。
むしろ、配置そのものが“思考を方向づける呪術的要素”を内包している。
この実験を終えた今、私は一つの仮説を抱いている。
「思考するとは、菌糸を伸ばすこと。
そして、菌糸を伸ばすとは、他者を思うこと。」
薬は身体を癒し、感情は世界を癒す。
その中間点に、私は“発酵する知”を見た。
私は今日も、考えながら少しずつ発酵している。
最終更新:2025年11月02日 06:02