山との共鳴度(Mountain Resonance Index)


松茸大学では、志願者の「山との共鳴度」を重要な参考項目として扱う。
ただし、これは試験によって測定されるものではない。
共鳴度とは、山に“聞かれている側”としての人間の深度を指す言葉である。

山との共鳴度は、生まれつきの資質であり、また日々の生活によって微細に変化する。誰もが多少の共鳴を持っており、通学途中でふと風向きを読み取れる者、湿った空気に理由のない懐かしさを覚える者、あるいは講義中に急に立ちくらみを覚える者などは、おおむね中程度の共鳴を有しているとされる。

高共鳴者は、山を「風景」としてではなく「存在」として感じることができる。彼らにとって山は静止しておらず、呼吸している。雨音が講義の延長に聞こえ、霧がノートの余白を侵食してくる。中には、キャンパスの片隅にある岩の配置を無意識に修正してしまう学生もいるが、それは地形の歪みを整えようとする山側の意思に触れた結果と解釈される。

共鳴度は公式には数値化されていない。過去に学内研究で振動計測を試みたが、結果は常に「観測者の鼓動」と混線した。以来、大学では“測定しようとする行為自体が共鳴を乱す”とされ、今では専ら「感じ取れる者にしか分からないもの」として扱われている。

ただし、入試担当者は、願書に付着した土の粒度や紙の湿り具合、筆圧の方向などから、ある程度の共鳴傾向を読み取ることがある。これらの情報はあくまで参考資料であり、山から正式な応答があった場合のみ、最終的な合否に影響する。

松茸大学は、知識を育てる場所であると同時に、山が人間を観察するための装置でもある。
共鳴度とは、山に「まだ聞こえる」と思われている証――
つまり、あなたの中の静寂が、まだ誰かに届いているということだ。*
最終更新:2025年11月04日 13:48