15歳、少女の孤独

私ハ、アルゼンチンノスラム街デ一人暮ラシテイタ・・・

5歳ノ時、両親ニコノ街ニ捨テラレタ、毎日明日ヲ生キル為、食料ヲ探シニ辺リヲ彷徨ウ日々
食料ヲ見ツケルモ住ミ着イテイル他ノ住人ニ奪ワレル事モアル
ヒドイ時ハ意識ガ朦朧トナルマデ殴ラレタ・・・
誰モガ食料ニ飢エテイルノダ──、
耳ガ痛クナル話ヲスレバ・・・・コノ街ニ住ム少女ノ約半数以上ガ子ヲ妊娠、出産ヲシテイル。
食ベ物ヲ得ル為、仕方ナク自ラノ身ヲ売ル行為ニ走ッテイルノダ
時ニ、アル少女ハ“エイズ”ニ犯サレ死ヲ迎エ、マタアル少女ハ身ヲ売ッタ男ニ薬物投与サレ売春、二度ト戻ッテ来ナカッタリモシテイル
ソンナ事ガ日常茶飯事ニ起コッテイルノダ、ソレ程ココハ瘴気ニ溢レテイル、
警察モコンナスラム街ノ為ニ調査ナドシヨウ筈ガナイ、モハヤ無法地帯トイウ所ダ
モシカシタラ私モ何時カハ人攫イニ会ッタリ身ヲ売ル行為ニ走ッテシマウカモ知レナイ・・・

怖イ

常ニ恐怖ヲ感ジテイタ・・・ダガ、助ケテクレル人ハ誰モイナイ、皆自分自身ノ事デ精一杯ダ・・・スグニデモココカラ出テ行キタカッタ
シカシココ以外行ク当テガナイ私ハ、今日モマタ食ベ物ヲ探シ街ヲ彷徨ウ─、
両親ニ捨テラレ約2年・・・何トカ生キ長ラエタ私ニモ限界ガ来タ・・・
アル日ノ事ダ、丸二週間食ベ物ヲ口ニスルコトガ出来ズ、私ノ体ハ衰弱シテイッタ

「ア・・・・・ゥァ・・・・・」

道端デ倒レコンダ私ハ、起キ上ガルドコロカ言葉モロクニ話セナイ状態ニ陥ッテイタ
死ヲ覚悟シテイタノカモシレナイ、モハヤ食ベ物ナドドウデモヨクナッテイタ
不思議ト怖クナカッタ・・・人攫イ等デ死ヘノ恐怖ガソレヲ上回ッテイタカラナノダロウカ
ソモソモ生キテ私ハ何ガシタカッタノカ

ワカラナイ──、

何故生キヨウトシテイタノカ
皆ガソウシテイルカラ真似ヲシテイタノダロウカ・・・ソコニ私ノ意思ハ?

モウソレスラモワカラナイ──、

意識ガ遠ノク中、私ノ心ガ徐々ニ晴レテイクヨウナ感ジガシタ・・・ナゼナラ

ヨウヤクコノ瘴気ニ満チタ世界カラ開放サレルカラ──、
モウイイ・・・所詮私ハコノ世界ニ生マレテクルベキデハナカッタノダ、息絶エテモ誰モ悲シンダリハシナイダロウ、死ンデゴミ同様ニ捨テラレル筈
私ハソット目ヲ閉ジタ

サヨウナラ───、




・・・・・・ソンナ時ダッタ


「何だこいつ、邪魔な野郎だな・・・くっせぇ上きたねぇ!ぺッ!」

“誰カ”ガ私ノ頭ニ唾ヲ吐キカケタ
私ハ目ヲ開イタ、ソコニ立ッテイタノハ──

「と、・・・統真様!何をなさっているんですか!?いけませんよそんなのに近づいては!」
「うっせぇな!指図してんじゃねぇよ付き添いの分際でよ!」

当時10歳ノ早乙女 統真様ダッタ、面白半分デコノスラム街ニ住ム人々ノ生キ不様ナ姿ヲ見ニ来テイタノダ
ソノ時モ統真様ニハ世話係ノ人ガ付キ添ッテイタ、男性ノ──、

「う・・・も、申し訳ございません・・・」
「決めた、お前はクビだ・・・今すぐ消えろ」
「なっ!・・・そんな統真様!」
「クビにされたくねぇってか?・・・ハッ!じゃ一つだけチャンスをくれてやってもいいぞ?」
「チャ・・・チャンス・・・ですか??」
「あぁそうだ・・・・ん~、そうだな・・・」

ソウ言イナガラ統真様ハ、私ノ方ニ目ヲ向ケタ

「ふっ・・・そうだ、おい!1ヶ月以内にこのきったねぇのを扱き上げてこの俺様の世話役として付かせてみせろ!そうしたら許してやる」
「えっ・・・ぇえ!!?しょ、正気ですか統真様!?いくらなんでもそんな・・・・」
「じゃ消えろ」
「うっ・・・・わ、わかりました、やります・・・・ですが統真様、この子のご両親と・・・あと旦那様にはどのように?」
「知るか、てめぇで考えろ・・・じゃ俺様はホテルに戻るからな」

彼ラノヤリ取リヲ聞キナガラ、私ハ意識ガ薄レテイッタ・・・

━15歳、少女の孤独━

当時ノコトヲ昨日ノヨウニ思イ出セル、アノ一ヶ月、生キ抜ク機会ダト感ジ、死ニ物狂イダッタ・・・ソノ結果、統真様ノ世話役ニ任命サレタ
ソシテ8年ノ月日ガ流レ、今、私ハ佳美トイウ少女ヲ人質ニ取リ──、“ライカ・ラスポート”ト決闘(デュエル)ヲ行ッテイル
コレヲ命ジタノハ無論統真様デアル・・・統真様ハ余程コノ女性ガ気ニ入ラナイラシイ
ソレモソウダ、隣町ノデュエル大会デ大勢ノ前デ統真様ニ恥ヲカカセテイルノダ
アノ時モ私ハアソコニ居タ・・・何カアッタラ閃光手榴弾ヲ投ゲルヨウ統真様ニ言ワレテダ
閃光デノ目クラマシ後、家ニ戻ラレタ統真様ハ私ニカードキーヲ渡シ今マデ奪ッテキタデッキノ処分ヲ命ジテキタ・・・
偶然ト言エド、アノ時救ッテクダサッタ統真様ノ為ナラ、私ハドンナ事デモ厭ワナイ覚悟ガアッタ・・・シカシ、
“カードキー”ヲ手ニ持ッタ瞬間、何カノ“重サ”ガ私ノ手ニノシカカッテキタ・・・ソシテ、
“処分シテイイモノダロウカ”・・・ソノ言葉ガ私ノ脳裏ヲ過ッタ
気ガ付クト、私ハライカ・ラスポートニ処分スル筈ノデッキガ収マッタ金庫ノ“カードキー”ヲ渡シテイタ・・・
自分デモ何ヲシテイルノカ・・・何ガ起コッテイルノカヨク分カラナカッタ、ソノ“重サ”ガ私ヲココマデ導イタノダロウカ
ソノカードキーヲ渡シタ時、不思議ト安心感ガ芽生エタ・・・・

シカシ2日経ッタ時ダ、統真様ニ呼ビ出サレタ私ハ急イデ部屋ヘト向カッタ、ソコニ居タノハ何時ニモ増シテ怒リヲ露ニシテイル統真様ノ姿ダッタ・・・

「ア・・・アノ・・・ドウナサレマシタカ?」

私ガ恐ル恐ル聞クト統真様ハユックリト口ヲ開イタ

「エマぁ・・・・お前、俺が処分するよう言っといたデッキはどうしたぁ?」
「・・・・エ?」

ソノ言葉ヲ聞イテ・・・・私ハ、血ノ気ガ引イタ・・・

「このゴミクズがぁ!!!」

《ドコォッ!!》

「ガァッ!!」

顔ヲ殴ラレタ・・・ソレカラダ、ソノ一撃デ意識ガ朦朧トスル私ヲ躊躇イモナク統真様ハ何度モ私ヲ殴リ、蹴リ飛バシタ
腹ニ衝撃ヲ食ラワサレ、私ハソノ場デ嘔吐スル・・・シカシソンナコトデ統真様ノ怒リガ治マル筈ガナイ
殴ラレ続ケ、ソノ鼻血ヤ吐血デ嘔吐物ガ赤ク染マリ、統真様ハ私ノ顔ヲソレニ擦リ付ケタ

「・・・・銀行の奴から俺とお前以外の奴が俺のカードキーを持ってきたって言ってやがった、もしやと思ってあのカードショップにガキどもを見に行ったらデッキが戻っていた・・・説明してみろ・・・!」
「ウ・・・ウグッ・・・・ッ!」
「貴様ぁ、雇われの身で俺様の言いつけを守らねぇで勝手なことするたぁどういうことだ?・・・・ぁあ!?」
「ウグ・・・モ、申シ訳ゴザイマ・・・セン・・・」
「何ならまたあのゴミ臭漂う吐き気のする場所に帰るかぁ?おいコラ・・・ッ!」

統真様ハ、私ニ対シテノ暴力ヲ振ルイ続ケタ・・・ソノ間意識ガ薄レ、
気ガ付クト、私ノ体ハ起キ上ガレナイ程痛メツケラレタ
顔ニハ吐キ出シタ嘔吐物ト血ガ混ザッタモノガヘバリ付キ、着テイタ仕事着ノスーツモ暴力ヲ受ケテイル最中ニ破レ、ボロボロニサレタ

「ウ・・・・ック・・・・ッ!」
「お前はもうクビだ・・・言うこと聞かねぇ家畜なんぞ置いとく必要ねェからな・・・とっとと失せろ!」
「ウ・・・ウゥ・・・・ト、統真様・・・・ッ、オ、オ許シクダサイッ・・・・!」
「はぁ?」
「マ、魔ガ・・・・差シテシマイ・・・コノ様ナ事ヲシテシマイ・・・申シ訳・・・ゴザイマセン・・・」
「知るかクソがッ!!とっとと出て行け!!」

《ドスッ!!》

私ノ腹ニ統真様ハ力強ク蹴リ込ンダ
ソノ勢イデドアマデ飛バサレタ・・・・ソコカラ動ケズ、蹲ッテイタ

「グッ・・・・!」
「今すぐ俺の視界から消えろ・・・このゴミクズが!」

マタアノ生活ニ戻サレル・・・・ソウ考エタトキ私ノ体ガ恐怖デ振ルエ上ガッタ、
戻サレタラ最後、今度コソ生キテイケナイ気ガシタカラダ、
シカシ統真様ハ、一点張リ・・・私ハ何トカ許シヲ乞ウ為声ヲ出ソウトシタ

「ト・・・・・・・・・・・・・トウ・・・・・サ・・・・・・・・マ・・・・・・・」

ダガ、全身ニ激痛ガ走ルセイカ、ウマク喋ルコトガデキナカッタ
ソシテ部屋ノ物音ヲ聞キ付ケ、屋敷ノ清掃ヲシテイタメイド達ガ統真様ノ部屋ヘヤッテキタ

「と、統真様!一体何事ですかこれは!?」
「なんだおまえらか・・・・おい、この腐れ潰れたボロクズを今すぐ屋敷の外に放り出せ!」
「腐れ潰れたって・・・・エマ様をですか!?彼女今虫の息じゃありませんか・・・!」
「だったらどうした、そんなのがくたばろうが俺の知ったことじゃねぇ」
「ですがこれでは本当に・・・・ッ!」
「ト・・・・トウ・・・・・マ・・・・・サ・・・・・マ・・・・・オユル・・・・・・・・・シクダサ・・・・イ・・・」
「エマ様・・・喋ってはいけません!」
「・・・・・・・・・・・・・・ッ」

私ノ声ヲ聞キ入レテクレタノカ、統真様ガソバヘヤッテキタ

「おうエマ、そんなに許してもらいてぇのかこの俺に?」
「・・・・・・ゥ・・・・ァ」
「ほぅ・・・・そうか、じゃチャンスをくれてやってもいいぞ?」
「・・・・・・・・。」



ソシテ今現在、デュエルニテ私ノターンガ終ワリ、ライカ・ラスポートノターンガ始マル

「ターンを進める前にエマ、あんたに一つだけ聞いておきたい事がある。」
「何デスカ?」
「あんたのそのデッキ、あの大会の時に早乙女が使ってたものでしょ?」
「!?」

彼女ノ話ヲ聞キ、耳ヲ疑ッタ──
ソウ、私ガ今使ッテイルノハアノ大会デ、統真様ガ使ッテイタ“ドラゴン族を主体にしている”デッキデアッタ

「その驚きようだと間違いなさそうね、っとするとそれは本来“トリシューラ”ではなく“F・G・D”を呼び出し速攻でカタをつける、言わば“パワーデッキ”」
「・・・・・・・・・。」
「だからあいつは“トリシューラ”の効果をあまり理解していなかった・・・あれは“ドラゴン族”だったから一応デッキにぶち込んでいたんでしょうね」
「ソレガ分カッタカラト言ッテ何ニナルンデスカ?、コノ状況デ」

ソウ、今私ノフィールド上ニハ──、
“F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)”ト“メテオ・ブラック・ドラゴン”ガ存在シテイル、ドチラモ高イ攻撃力デソウ簡単ニ破壊ハ出来ナイ筈
ソレニ彼女ノフォーチュンレディハ功/守共ニ“?”、ツマリ効果ガナイ場合ハ“0”・・・彼女ハ壁ノ為ニセットスル裏側守備表示ノカードヲ伏セテクルハズ、ソコヲ一気ニ終ワラセル為、
私ハ罠カード“竜の逆鱗”ヲ場ニ伏セテイタ・・・・・

“竜の逆鱗”━、
自分フィールド上に存在するドラゴン族モンスターが守備表示モンスターを
攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える永続罠。

ソウ思ッテイタ時ダッタ──、

「・・・あんた私に“ドラゴン族デッキ”で挑んできたのがそもそもの間違えよ・・・・」
「・・・・ハ?」
「言っておくけど、あんたがいるその“地点”、私はとうに通過してんのよ・・・、もうあんたに次のターンは永久に来ない」
「!?」
「魔法カード!“二重召喚”発動!!」

“二重召喚”━、
通常魔法
このターン自分は通常召喚を2回まで行う事ができる。

「私は“二重召喚”の効果で手札に存在する“フォーチュンレディ・ライティー”2体を通常召喚!」

“フォーチュンレディ・ライティー”星1/光属性/魔法使い族
攻 ?/守 ?
このカードの攻撃力・守備力は、このカードのレベル×200ポイントになる。
また、自分のスタンバイフェイズ時、このカードのレベルを1つ上げる(最大レベル12まで)。
このカードがカードの効果によってフィールド上から離れた時、
デッキから「フォーチュンレディ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。

効果で攻/守200の“フォーチュンレディ・ライティー”2体がライカのフィールド上に並ぶ

「そして、魔法カード、“ブラック・ホール”!」
「ナッ!?」

“ブラック・ホール”━、
通常魔法(制限カード)
フィールド上のモンスターを全て破壊する。

「これであんたの“F・G・D”と“メテオ・ブラック・ドラゴン”は破壊する、“ライティー”と一緒にね!」
「(シマッタ、イクラ5000ノ攻撃力デ光族以外ノ破壊耐性ヲ持ッテイル“F・G・D”デモカード効果デハ破壊サレテシマウ!マサカ初手デ“ブラック・ホール”ヲ握ッテイタナンテ・・・・ッ!)」

互いのフィールドから“F・G・D”、“メテオ・ブラック・ドラゴン”、“フォーチュンレディ・ライティー”2体が破壊された──、そして

「“ライティー”の効果!デッキから“フォーチュンレディ・アーシー”、“ダルキー”を特殊召喚!!」
「ッ!」

“フォーチュンレディ・アーシー”星6/地属性/魔法使い族
攻 ?/守 ?
このカードの攻撃力・守備力は、このカードのレベル×400ポイントになる。
また、自分のスタンバイフェイズ時、このカードのレベルを1つ上げる(最大レベル12まで)。
このカードのレベルが上がった時、相手ライフに400ポイントダメージを与える。

“フォーチュンレディ・ダルキー”星5/闇属性/魔法使い族
攻 ?/守 ?
このカードの攻撃力・守備力は、このカードのレベル×400ポイントになる。
また、自分のスタンバイフェイズ時、このカードのレベルを1つ上げる(最大レベル12まで)。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
自分フィールド上の「フォーチュンレディ」と名のついたモンスターが
戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、
自分の墓地の「フォーチュンレディ」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚できる。

ライカのフィールド上に攻撃力2400の“フォーチュンレディ・アーシー”、攻撃力2000の“フォーチュンレディ・ダルキー”が特殊召喚された

「叩き潰せ」
「ア・・・ァアッ!!」

《スドドオオオッ!!》

“フォーチュンレディ・アーシー”“ダルキー”の攻撃がヒットした


エマ LP4000 ⇒ LP0


エマが“F・G・D”、“メテオ・ブラック・ドラゴン”を出してきたにも関わらず、ライカはたった1ターンでケリをつけた。

「・・・・・・クッ!」
「約束よ、佳美ちゃんを返してもらうわ」
「ライカ、あんたやるわね!あの攻撃力の高い“F・G・D”共々蹴散らした挙句、1ターンで勝負決めるなんて」
「あたしも前までドラゴン族使っていたから、あいつの伏せてたカードが“竜の逆鱗”であったことなんて、手に取るようにわかったわ」
「・・・・・・・・・・」
「ちょっと聞いてんのあんた?早く渡しなさい」

その瞬間、エマは立ち上がり、佳美ちゃんを抱え・・・・・・・・

「ちょ、ちょっと!あんた何やってんの!!?」

なんと、身を乗り出すギリギリのところで佳美ちゃんを抱きかかえたままエマが立ち止まった
地面までの高さは約30mある、ここから落ちればまず助からない

「あ、あんた!バカな真似やめなさい!」
「クッ・・・クルナッ!私ハ、負ケテシマッタ・・・負ケテシマッタ以上ッ!モウ統真様ノ所ニハ帰レナイ、勝ッテアナタノカードヲ取リ上ゲル筈ダッタ・・・」
「シカシ、負ケタ場合、命ニヨリコノ子ト一緒ニ死ネト言ッテイタ・・・!ダカラ、私ハ・・・・ッ!」

統真様ハコウ言イ放ッタ

『エマ、だったらチャンスをくれてやる、あの“ライカ・ラスポート”とデュエルしてこい方法はてめぇにまかせる』
『・・・・エ?』
『お前が勝って奴のデッキをとりあげてきたら、今回の件は水に流してやろう・・・しかし、もし無様に負けたなら・・・』
『マ・・・マケタラ・・・?』

『死ね』

「はぁ!?何言ってんのあんた!?・・・ってちょっとライカ!あんた黙ってないで何とか言ってあいつ止めなさいよ!」

ネネがライカに振ってきた・・・・それに対しライカは

「・・・・もういいんじゃない?好きにさせて・・・・」
「え!?あんたまで何言ってんのよ!!」
「大体さ、タカが“カードゲーム”で死のうとしているバカ助けたってこの先生きていけないに決まってるでしょ?」
「ちょ・・・そんな・・・じゃ佳美ちゃんはどうすんのよ!あの子関係ないじゃないの・・・ッ!」
「そうねぇ~・・・佳美ちゃんは関係ないわね~・・・スー・・・」

ライカは大きく息を吸い込んで大声を出した

「じーちゃーん!っというわけだから!その黒い子が抱えている子供取り上げてぇ!!!」
「ッ!?」

次の瞬間、大きな影がエマの前に現れ、抱えていた佳美ちゃんを奪い、鉄骨を渡ってライカのところまでやってきた

「はっはっはっ!・・・・ライカよ!ちと呼ぶの遅すぎやせぬか?座り続けておったせいでわし腰を痛めてしもうたぞい!」
「しょーがないでしょ、あのエマってやつにおじいちゃんの存在を知られないようにしていたんだから・・・」
「・・・・・え?ちょ、ライカ・・・の、じいさん!な、何でココにいんのよ!?」
「こっち来る前に私が携帯で呼んどいた、こう見えておじいちゃん、昔山で修行をしていたせいか身体能力が人間離れしてんのよ・・・年取ってもその筋力は健在」
「・・・人間離れって・・・あれじゃまるで忍者じゃないの!」
「おお!そうじゃぞ!わしは忍の道を極めるために山で修行しておったんじゃからな!おかげで70超えてもこの通りピンピンじゃ!はっはっはっはっ!」
「・・・・・はははははっ(つ、ついていけない・・・)」
「そんなことより佳美ちゃんに被せてある袋取りましょう・・・ネネが突っ込みいれてる間に死ぬわよこの子・・・」
「いやねライカ、その突っ込みを出させてる原因作ってんのあんたらでしょ・・・・ったく!」

そういいライカは佳美ちゃんに被せていたビニール袋を取り除いた
顔、体等には目立った外傷は無かったが念のため病院へ連れて行くことにした

「ゲホ・・・ゲホ・・・・ハァ、ハァ」
「おじいちゃん、ネネ、佳美ちゃんを病院へ連れて行って頂戴、私はまだあいつに話があるから・・・」
「ウ・・・・」
「ちょっとライカ、エマは今追い詰められてんのよ?それなら私も・・・」

ネネはその場に残ろうとしたがおじいちゃんがネネの腕を取り引き止めた

「ネネちゃん、わし一人でこの子を連れて行ったらこの子泣き出してしまうじゃないか・・・ネネちゃんにも来て欲しいんじゃがの?」
「え?・・・・う・・・」
「ネネ、佳美ちゃんについてあげて頂戴、大丈夫・・・後はなんとしておくから」
「・・・・・・・・・・、分かったわ、行きましょうじいさん!」
「おぉ!そう来なくてはな!」

すぐさま2人は佳美ちゃんを連れ病院へと向かった

「さて、これで邪魔者はいなくなったわけだから・・・後はあんたの好きにしたら?エマ」
「・・・・・・・・ゥ、ゥゥ」

おじいちゃんの出現で最初は何が起こっていたのかわからなかったエマだったが、次第に今のおかれた状況を理解したのか、力が抜けたようにその場に座り込んだ

「・・・ソウデスヨ・・・・アノ子ハ・・・・カ、関係ナンテナカッタノニ・・・・私ハ・・・・・ウ、ゥゥ・・・」
「・・・・・・・」
「ヤッパリ、私ハコノ時代ニ嫌ワレテイルンデスネ・・・・モウ、ツカレマシタ・・・・ハハ・・・・ハ・・・」

エマの嘆きを聞きながらライカはポケットからテープレコーダーを取り出した

「エマ、そっから飛び降りるって言うんなら別に止めはしない・・・でもね、それをする前に預かっていたものがあるから、これを聞いてからにして頂戴」
「・・・・エ?」

そういい、ライカは床にテープレコーダーを置いて再生ボタンを押した

『始まっているのかな・・・?』
『もう録音ボタンおしてるよ』
『わっ!・・・・・あ、えー・・・!』

そのテープレコーダーに記憶されていたものは子供たちの声だった

『えっと、エマさん、ライカ姉ちゃんからききました・・・僕らのデッキを返してくれてありがとうございます、この恩は絶対に忘れません』
『本当にありがとうございます、このデッキには、転校する友達からもらったカードや、死んだじいちゃんから誕生日プレゼントでくれたカードなど』
『思い出がいっぱいに詰っていて、他では手にはいらないカードばかりだからです』
『取られた時、なんだか、心に大きな穴が開いてしまったような、とても悲しい気持ちになりました』
『でも無事にカードが戻ってきてくれたおかげで、今は悲しくありません・・・またその楽しい思い出が蘇ってくるからです』
『今度エマさんと一緒にデュエルしてみたいです、一緒にデッキを構築したり、エマさんとお話をして仲良くなりたいです。』
『テープでしかお礼を残せないのがとても残念です、でも僕らは、いつでもカードショップにいます、よかったらきてください・・・待っています』

テープレコーダーの再生はここで終わった

「エマ、子供らにはあんたがあの統真の使用人だってことは伝えていない・・・それはあんたの口から伝えるべきだと思ったからよ、伝える伝えないはあんた次第だけどね」
「ウッ・・・・・・・・・・・・・・ウゥ」

テープレコーダーを聞き終えたエマの目から大粒の涙が零れ落ちた
今まで人から感謝をされたことなく、報われることのない事を引き受けてきたエマにとっては、このテープは何よりも大きく、そして何よりも暖かいものを感じたからだ

「ゴメンナサイ・・・ゴメンナサイ・・・ッ・・・彼ヲ・・・統真様ヲ止メルコトガ出来ナクテ・・・ッ!彼ノソバニ居ナガラ、不甲斐ナイ私ガ・・・全テイケナカッタンデス・・・ッ!」
「本当ハコンナ事ニナラナカッタ・・・狂イハジメタンデス・・・全テアノ時カラ・・・・ッ!!ウワアアアアアアアァァァッ!!」
「・・・・。(あの時?)」

声をかけることなく、ただエマの泣く姿を見据えていたライカ・・・・しかし
もしかしたら、この瞬間が“ライカ・ラスポート”の運命を分けたのかもしれない━━

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2013年06月06日 06:58