Constitutio Imperii Thracis-Romani



Imperator Romanus Ⅳ Princeps Civitatis

30 Maius, 2642 A.U.C




前文


ローマの市民と元老院の名に於いて
国民の第一人者にしてローマ人、ブルガール人、セルビア人、ダルマティア人、マケドニア人の皇帝たる朕、ロマヌスは次の通り周知する。人の生まれながらの尊厳・自由に対する権利の保証および正義・自由・秩序に基づく社会を確立せしめるため、ここに本憲法を制定し、公布する。
朕及び朕の継承者並びに全ての臣民がこの憲法を承認し、遵守し、及び同法に従うべきことを慈悲深く命令する。確認のため、朕は、これに自らの手により署名し、これを確定し、次のとおり、ここに御璽を鈐した。

御璽
ロマヌス

第一部 序編

第一条
トラキア・ローマ帝国はトラキア・ローマ皇帝が統治する自由にして不可分の国家である。

第二条
政体は立憲君主制とする。帝位は帝位継承法に従い継承される。

第二部 皇帝


第三条
皇帝は神聖不可侵であり、その人格は至聖である。自己または摂政の行為についてはこれに副署した者が責任を負う。

第四条
皇帝は帝位にふさわしい称号を用いることができる。

第五条
皇帝はこの憲法に定められた範囲内において、すべての国政について最高の権限を有する。係る権限は第7条で定める方式によりこれを行使する。

第六条
皇帝は、左の大権を有する。
1.法案および予算案を裁可する大権。
2.勅令を制定する大権。
3.国会を召集、解散、停止する大権。
4.軍隊を指揮、監督する大権。
5.国務大臣・公務員・軍人・裁判官を任命し、かつ罷免する大権。
6.閣議を主宰する大権。
7.帝室財産を管理する大権。
8.貴族、騎士を叙任する大権。
9.各種勲章授与など栄典を授与する大権。
10.法律に従い、恩赦、刑の執行の免除を決定する大権。
11.国会の同意の元、外国の国家承認、宣戦布告と講和、条約の締結を行う大権。
12.属州を統治し、総督を任命する大権。
13.最高神祇官として神官団を監督する大権。
14.枢密院顧問官を指名する大権。
15.副帝および皇太子を指名する大権。
16.摂政を指名する大権。

第七条
皇帝の統治に対する行為及び第6条における大権の行使については皇帝の署名によって有効になる。ただし、署名には1人ないしそれ以上の執政官、国務大臣及び官吏の副署を伴っていなければならない。副署した者は、これに対する責任を負う。

第八条
皇帝の経費は、皇帝の在位中、制定法によってこれを供与する。

第九条
皇帝は、議会の承認を得ずに他国を統治することは出来ない。

第十条
皇帝は必要に応じて枢密院を召集することが出来る。枢密院は議長・副議長各1名、執政官および各国務大臣、破毀院院長、顧問官を含む50名から構成される。

第十一条
皇帝の疾病、未成年または不在の場合、摂政が皇帝の名で主権を行使する。この場合には、第7条の規定が準用される。

第十二条
この憲法の規定で皇帝に関するものは女帝が元首である場合、女帝に適用される。

第三部 国会


第十三条
1. 国会は、帝国臣民の代表機関であり、元老院と平民会の二院で構成される。

2. 国会は、皇帝とともに立法権を共同で行使し、予算を承認し、および憲法が付与するその他の権力を行使する

3. 国会議員は、選挙民による命令的拘束を受けない。

4. 国会は、不可侵である。これの自由や安全を侵すことを目的とした行為は、これを禁止する。

第十四条
平民会で可決された法案、予算案、条約締結の可否は1ヶ月以内に元老院へ送付される。

第十五条
何人も、同時に両議院の議員になることはできない。また、男爵以上の爵位を持つものは平民会議員になる資格を有さない。

第十六条
平民会は最高330人の議員で構成される。

第十七条
平民会議員は満18歳以上の選挙権を持つ者による、普通、自由、平等、直接及び秘密選挙で選出される。

大十八条
国外に在住するトラキア・ローマ臣民の選挙権行使については、別途法律でこれを定める。

第十九条
平民会議員は、トラキア・ローマ国籍を持ち、かつ有罪の宣告を受けていない18歳以上の者でなければならない。

第二十条
平民会は内閣の信任および不信任決議を採決する。決議は、出席議員の過半数の賛成により可決される。

第二十一条
平民会議員の任期は、4年とする。ただし、議会が解散された場合にはその限りではない。

第二十二条
平民会は、以下の場合に解散する
1. 議員の任期が満了した場合

2. 内閣の信任決議が否決、不信任決議が可決された後、14日以内に何らかの新任案が可決されない場合

3. 平民会議員の3分の2が早期解散に賛成した場合

第二十三条
元老院は最大300人の議員で構成される。

第二十四条
元老院議員の任期は、これを定めない。

第二十五条
元老院議員は各州および海外領土・属州議会の推薦を受けた男爵以上の爵位を持つ者が皇帝の勅令により、任命される。

第二十六条
元老院は平民会を通過した法案、予算案、条約締結の可否を30日以内に議決する。可決には出席した元老院議員の過半数の賛成を要する。
否決した場合は元老院議長は平民会議長に否決の理由を通知する。

第二十七条
平民会は第二十六条で否決された法案、予算案、条約締結の可否について、同院の同意なく元老院で3度否決された場合、元老院の同意なしに皇帝の裁可を受け、議会制定法とすることができる。

第二十八条
元老院議長は元老院が可決した法案、予算案、条約締結の可否を皇帝に送付する。

第二十九条
平民会議員および元老院議員は、以下の免責特権を有する。

1. 平民会議員および元老院議員は、現行犯の場合を除き、国会の会期中刑事訴追されない。また、会期前に訴追された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

2. 平民会議員および元老院議員は、院内での演説、討論又は表決については院外で責任を問われない。また、それを理由に訴追、拘留あるいは逮捕されることはない。

3. 平民会議員および元老院議員は、法律の定めるところにより、活動に必要な相当額の歳費を国庫から給付される。

第三十条
平民会および元老院は罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、弾劾裁判所を設ける。弾劾に関する事項については、別途法律によってこれを定める。

第三十一条
平民会議員および元老院議員は、登院に際し、法律の定める方法によって本法および皇帝に対する忠誠を宣誓するとともに、職務の誠実な執行を宣誓する。

第四部 内閣


第三十二条
皇帝は統治を行うために内閣を組織する。

第三十三条
内閣は皇帝と共同で行政権を行使する。

第三十四条
内閣は皇帝の統治に対する行為および第六条に定める大権の行使に助言を与える。

第三十五条
内閣は皇帝及び平民会に対し、責任を負う。

第三十六条
内閣は執政官及び法律に定める各国務大臣で構成される。

第三十七条
皇帝は平民会において過半数の信任を受けた平民会議員を執政官に任命する。

第三十八条
執政官および国務大臣は平民会に自由に出席でき、要望すれば発言が認められる。
平民会及び元老院は執政官および国務大臣の出席を要求することが出来る。

第三十九条
内閣は不信任決議案が可決された場合、または執政官の職務執行が不可能になった場合に総辞職する。

第四十条
執政官および国務大臣は、現行犯の場合を除き、その任期中には刑事訴追されない。


第五部 司法


第四十一条
司法権は、裁判所に帰属し、同権の行使については本法および各種法律に定められた規則にのみ拘束される。

第四十二条
司法機関は他のいかなる権力からも独立した組織である。

第四十三条
破毀院、憲法裁判所を除くいかなる裁判所も、法律によらなければ設置されてはならない。

第四十四条
司法機関を統括する組織として司法全体会議を設置する。

第四十五条
破毀院院長および検事総長は、当然に司法全体会議の一員となる。

第四十六条
司法全体会議は以下の権能を有する。                                     
1.破毀院院長を推薦する。皇帝は内閣の助言により、これを任命する。

2.全体会議での議決を得て、裁判官及び書記官を推薦する。皇帝は内閣の助言により、これを任命する。


3.裁判所内部規則の制定。

第四十七条
破毀院は、トラキア・ローマ全土および海外領土を管轄する司法機関であり、違憲審査を除いて、終審として判決を宣告する。

第四十八条
破毀院の判決は、いかなる場合でも上訴することはできない。

第四十九条
破毀院は、1名の院長と15名の判事でこれを構成する。

第五十条
憲法裁判所は、トラキア・ローマ全土および海外領土・属州におけるすべての法律および法律と同等の効力を持つ諸行為、勅令、命令および処分と本法との適合を審査する。

第五十一条
憲法裁判所が違憲判決を下した場合、当該規定は判決公示翌日から失効する。

第五十二条
憲法裁判所の決定は、公示され且つ国会両院および関係する機関に通知される。

第五十三条
憲法裁判所の決定に対してはいかなる上訴も認められない。

第五十四条
裁判の対審は公開法廷でこれを行う。但し公開が公共の秩序に甚大な影響を与える場合は非公開とすることが出来る。

第五十五条
政治的犯罪、出版に関する犯罪および本法の定める臣民の権利と自由に関する事案については、これを非公開とすることはできない。

第五十六条
裁判官の任期は終身である。ただし、法律に定める定年に達した裁判官は、これを退職せしめる事ができる。

第五十七条
裁判官は、現職の間は他の公職に就いたり政党または労働組合に所属することは出来ない。

第五十八条
裁判官は裁判によらなければ罷免されない。また、転任は新たな任命で且つ本人の同意によらなければ行うことは出来ない。

第五十九条
裁判官は、任官に際し、法律の定める方法によって本法および皇帝に対する忠誠を宣誓するとともに、職務の誠実な執行を宣誓する。

第六部 自治体・海外領土及び属州

第六十条
国土の基本構成要素として、広域自治体、基礎自治体、海外領土および属州を置く。

第六十一条
広域自治体たる州は州条例を制定し、州議会を置く。

第六十二条
皇帝は州議会の推薦に基づき、州の首長を任命または罷免する。

第六十三条
基礎自治体たる市は市条例を制定し、市議会を置く。

第六十四条
州の首長は市議会の推薦に基づき、市の首長を任命または罷免する。

第六十六条
皇帝は自身の名代として海外領土及び属州に総督を任命・派遣する。

第六十七条
海外領土及び属州政府の構成及び運用方法は、別途法律でこれを定める。

第六十八条
自治体もしくは海外領土・属州政府のいかなる構成員たちは、その職務の行使に当たり自らにより表明された意見により訴追され、何らかの捜査の対象とされることはない。

第六十九条
自治体もしくは海外領土・属州議会の議員は国会議員となる資格を有さない。

第七十条
自治体もしくは海外領土・属州議員は、満18歳以上の選挙権を持つ者による、普通、自由、平等、直接及び秘密選挙で選出される。

第七十一条
自治体もしくは海外領土・属州議員の被選挙権については、別途法律もしくは条例でこれを定める。

第七部 権利及び自由


第七十二条
何人も、人間たる尊厳、およびその生来の権利を侵されない。

第七十三条
何人も、生命、身体および精神の自由を有し、いかなる場合においても拷問や非人道的な刑罰や扱いを受けてはならない。

第七十四条
臣民は何人も法の前に平等であり、出生、人種、性別、信条、思想その他如何なる理由であれ、差別は認められない。

第七十五条
臣民は何人も、人間の尊厳に値する生活を送る権利を有する。

第七十六条
臣民は信教の自由を有する。皇帝またはその政府は、臣民に特定の宗教または信仰を推奨し、強要してはならない。

第七十七条
臣民は何人も、宗教活動及び儀式への参加も安息日の遵守も強制されてはならない。

第七十八条
現行犯の場合を除き、何人も理由を付した裁判官の令状によらなければ逮捕されてはならない。その令状は逮捕時又は遅くとも48時間以内に提示されなければならない。裁判官が48時間以内に左記の措置を行わない場合、直ちに身柄は開放される。

第七十九条
法律で規定する理由以外での身柄拘束、個人の検査・捜索その他のあらゆる個人の自由の制限は認められない。

第八十条
臣民は何人も、その意に反して、裁判官の裁判を受ける権利を奪われない。

第八十一条
臣民は、弁護士の立ち会いを求める権利、自己に不利益な供述をしない権利、有罪を自白しない権利および無罪の推定を受ける権利を有する。

第八十二条
如何なる刑罰も法律に依らなければ設けられ、課されてはならない。

第八十三条
如何なる法律も遡及して適用されてはならない。

第八十四条
住居は不可侵である。家宅捜索は刑事事件の場合且つ裁判官の令状によらなければ行われてはならない。

第八十五条
臣民は個人の財産を侵害されない。公益のためにその財産を使用する際は法律により定められた場合で、正当且つ事前の補償と引き替えでなければならない。

第八十六条
臣民は何人も、政治的、宗教的若しくは文化的な観点又はその他の同種の観点において、自らの見解を明らかにするよう強制されてはならない。

第八十七条
臣民は自己の思想・表現を自らの言論、書面およびその他のあらゆる普及手段により自由に表明する権利を有する。

第八十八条
出版は自由であり、検閲は、これを認めない。

第八十九条
臣民は信書など内密な送付物の検査、電話による会話又はその他の内密な通信の盗聴、又は録音から保護される。

第九十条
臣民は武装せず平穏に集会を行う権利を有する。

第九十一条
臣民は犯罪行為を目的としない限り、自由に結社する権利を有する。

第九十二条
臣民は官公署に対し請願を行う権利を有する。

第九十三条
臣民は、帝国領内において移住の自由を有する。各人は、帝国の任意の場所に滞在し、かつ、定住し、土地を取得する権利を有する

第九十四条
臣民は何人も、職業選択の自由を有する。強制労働又はこれに類する行為は、これを認めない。

第九十五条
臣民は労働条件の改善と公正な賃金を求める権利を有する。また、左記の目的を達成するため、労働者の団結する権利及び団体交渉、またはその他の団体行動を行う権利は、これを保障する。

第九十六条
公共の福祉の増進のため、すべての臣民がその生存を確保するために働くことが出来る条件を与えなければならない。

第九十七条
児童は何人もその道徳的、肉体的、精神的及び性的高潔を尊重される権利を有する。

第九十八条
就学年齢に達した児童は公立学校において無償の教育を受ける権利を有する。

第九十九条
臣民の外国への引き渡しは、国際協定により規定される場合のみ認められる。

第百条
如何なる場合にも、政治犯を理由とした引き渡しはその国籍を問わず認められない。ただし、テロ行為はこれを政治犯と見做さない。

第百一条
トラキア・ローマ帝国領土にいる外国人はすべて、法律の定める例外を除き、その身体及び財産に与えられた保護を享有する。

第百二条
第七部は臣民が有するすべての権利及び自由を列記したものではない。

第八部 軍隊


第百三条
皇帝は軍隊の最高指揮官である。

第百四条
軍隊は、帝国の防衛及び帝国の利益の保護並びに国際的な法秩序の維持のために存在する。

第百五条
軍人の身分、権利及び義務は別途法律でこれを定める。

第百六条
軍人は、法律により定められた方法によらなければ、その階級、栄誉及び年金を剥奪されてはならない。

第百七条
外国の軍隊は、法律に基づかなければ、国の軍務に迎え入れられ、領土を通過することはできない。

第百八条
徴兵は、これを廃止する。

第九部 戦争及び非常事態


第百九条
皇帝は戦争もしくは非常事態下に際しては、全土又は一部の地域に戒厳を布告する。

第百十条
国内外の安全の維持のため、法律により指定される非常事態を勅令で宣言することができる条件は、別途法律でこれを定める。

第百十一条
非常事態の宣言後、勅令で当該宣言が廃止されるまでの間、国会は、必要であると 判断する都度、当該宣言の更新について審議し、及び議決する。

第百十二条
国が戦争状態または非常事態下にあり、その結果として、皇帝の政府がその任務を遂行することができない場合には、 国会は、政府の形成及び政府の活動形態について決定することができる。

第百十三条
国が戦争状態非常事態下にあり、その結果として、国会がその任務を遂行することができない場合には、政府は必要な範囲内で、当該任務を遂行することができる。

第百十四条
皇帝の政府又は国会は、被占領地域において、国会議員又は大臣としての資格において有する権限を行使してはならない。

第百十五条
各公的機関は、被占領地域において、防衛の努力及び抵抗運動、並びに臣民の保護及びその帝国の利益に資する最善の策を講ずるように行動しなければならない。また、いかなる場合においても、公的機関は、国際法に反して占領権力を援助するよう国民に対して義務付ける決定を行い、又は措置を講じてはならない。

第十部 通則


第百十六条
憲法はその全部又はその一部を一時停止されてはならない

第百十七条
憲法は帝国における最高法規であり、これに反する全ての法律及び勅令、命令、処分は無効になる。

第百十八条
憲法の法文はラテン語およびギリシア語の文語たるカサレヴサで作成される。

第十一部 憲法改正


第百十九条
本法の改正の発議は平民会及び元老院の総議員の三分の二以上の賛成にて改正案が可決される事を要件とする。この場合には、両院はそれぞれの院を構成する議員の少なくとも三分の二が出席していなければ審議することはできない
国民投票の過半数以上の賛成で改正は成立する。改正された法は、皇帝の名の下に公布・施行される。

第百二十条
憲法施行の日から、憲法に抵触する全ての法律及び勅令、命令、処分は廃止される。

第百二十一条
いかなる憲法改正も、戦時中又は帝国領内で国会が自由に集会するのが妨げられている際は、着手し又は続行してはな らない。

第百二十二条
本法第一条、第二条および第三条は改正の対象にできない。


我々がこの全ての規定をこのとおり望み、承認し、遵守し、及び同法に従うことを確認するために、ローマ建国より2642年5月30日、アンドロニコポリスにおいて、我々トラキア・ローマ帝国の全ての諸身分は、ここに署名し、押印した。

貴族の名の下に
エヴメニス公爵ニキフォロス
(印)

帝国騎士の名の下に
帝国騎士アントニウス・アポロニウス
(印)

神祇官の名の下に
エウゲニウス・アキリウス・マーロー
(印)

市民の名の下に
マルクス・フロリアヌス
(印)
最終更新:2023年09月22日 00:00