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UNTITLED

2006年10月16日(月) 17時22分-NONAME

 

 
 ふつつかながら、あなたにひとつお断りを申し上げます。

 私はまだ、あなたに対してなんらの感情も抱いてはおりません。私はあなたを存じませんし、あなたも私をご存知でない。ですから、あなたがどんなであろうと、私の知る所ではございませんし、また等しく、私がどんなであろうと、あなたの知る所ではございません。野暮を申し上げるようですが、私たちは互いに知らぬもの同士にすぎません。他人です。他人より、もっとです。私は、あなたが現に存在するかさえ存じないのです。同様に、あなたは、私が現に存在するものかご存じない。従って私たちの間に介在するものはありません。そこをおして、あえて介在物をあげるなら、「あるかもしれない」という根のない推測の他はありません。実際、私がこうしてあなたに申し上げるのも、一重に、この極めてはかない推測を通じてのものにすぎません。通じて、というのは、しかし少々誤謬であるようにも思います。本当に通じているかさえ知る術はないのです。
 あなたはいらっしゃらないかもしれない。私は本当にはいないのかもしれない。しかし、これは、これでよいのです。復唱になってしまうことをお許し願いますが、私はあなたに対してなんらの感情も抱いてはおりません。私はあなたを存じません。そして、私はこれからもずっと、そうあり続けたいと思っております。私はあなたに対してなんらの感情も抱こうとはいたしません。あなたを知ろうとは毫もいたしません。
 私たちは、他人を超えて、より遠い関係にあります。正確には、関係さえ持たぬ、あるいは持ち得ぬ者であります。ただ、私がこの状態を保ち、あなたと恒久に不知でありたいと願い、提案するのは、正直に申しまして、私がつまらない人格であるからに他なりません。つまらない人格との関係は、つまらないものであります。ですから、つまらない人格とは、こうしていらっしゃるのが、最も良いと、私は思うのであります。この状態の崩壊することは、すなわち世界で最も遠いところにある私たちの間が、一寸でも縮まってしまうことは、あなたにとって喜ばしからぬことであると思うのです。ですから、あなたには安心していただきたいのです。私には、この状態を乱す意思はございませんし、この状態を保持するためならば、犬馬の労も厭わぬ所存であります。
 ただ、誤解のございませんようにもう一言、付け加えさせていただきたく思います。私は、あなたに安心していただきたいと申し上げましたが、これは、「あなた」に対して、特別に抱く私の思いでは決してございません。私は、つまらない人格であっても、人情というものは持ち合わせてあるつもりでおります。人情とは、ここではすなわち、不特定の、見知らぬ方々にさえ、私のためにその幸いを損じてしまわれることを、ただ忍びなく、申し訳なく思うの情であります。 したがって、この人情という一種不可解なものは、この私から、特別のなにかに向くものではありません。元来から、わたしの人情というものは行き場のない、空ろなものにすぎないのであります。ですから、私がこの人情を発現しようとも、それは決して、私の申し上げているあなたにこそ、害なすことはございませんことを、おこがましくもご承知いただければと存じます。
 
 最後に、この手記が決して「あなた」の目に留まらず、よって私の存在が認知されることさえなく、ただ恒久に、私たちの平和が続きますよう、お祈り申し上げて、不足ながら結びとさせていただきます。
最終更新:2012年12月12日 21:23