2006年03月26日(日)00時19分-元月組
そのころ、我らが主人公雨宮水知とヒロイン光原ハルは結構困っていた。
「いつの間に……。っていうか早っ!」
地下風水盤に向かうべくプールを訪れた彼らを待っていたのは、ごく普通の――普通な状態のプールだった。
そう、先日の雨衣の攻撃によって破壊されたはずのプールが、ものの見事に修復されていたのである。
「ねえ、水っち。本当にこの下にあるの? それっぽいのは何にも無いんだけど」
「いや、ここで間違いない。プールの底に入り口があったんだ」
「底? 何にもないけど?」
「もっと下、プールの床の下さ。僕が来たときには床が根こそぎひっくり返されてたんだけど……」
「でも別に工事とかしてなかったよね」
「そうなんだよな」
今回のプールの破損について、誰か――無論、とある部活の連中だが――が動いているという話を水知は知らない。授業に出ていない、というかまともに学校に行っていないから聞く機会がなかったのかも、とも考えたが、ハルも知らないということはそれも違うだろう。だったらどうして、と水知が不思議に思っていると、ハルが分かったといわんばかりにポンッと手を打った。
「そっか! これが噂のMIKかぁ」
「えむあいけえ?」
「知らないの水っち? メンインカーペンター、天晴高校七不思議の一つだよ。誰もが手におえないような大規模な破壊が起きたとき、その身をスーツに包み、頭にはねじり鉢巻、七種の大工道具を自由自在に操る男の人たちが現れて、誰にも気付かれずにそれを修理し、そして去っていくっていう感じの。ちなみにその人たちを見てしまった人は記憶を消されるとか」
「なんか七不思議のくせに都市伝説っぽいんだけど。ていうかそんな痕跡がありありと残ってる七不思議なんてあり!?」
「あと、土木部の部室に祀られてるって話も」
「しかも信仰の対象ぉ!?」
変だ変だとは思ってきたがもう本気を通り越してどうでもいいくらい変だこの学校、と水知が頭を抱えそうになっていると、
「そんなところで何をしているんだい、後継者」
「!? 誰だ!」
「フフフフフ。イヤッホーーーーイ!」
人影が更衣室の屋根から飛び降りた。そして、よくわからないポーズを決めながら水知たちの目の前に華麗に着地する。
「俺の名は――」
「いや言わなくていいですよ。だいたい掛け声の時点で丸解りですし」
「なるほど。けど後ろの娘とは初対面のはずだぜ」
「知ってますよ。富士森先輩、ですよね? 生徒会会計の」
「へえ、結構有名なんだ、俺って」
((そりゃあんな奇声発してれば有名にもなるって))
「それで晴天同盟の人が何の用ですか」
「おいおい、そんな怖い顔するな。別にアンタたちに用があるわけじゃない。むしろ余計な戦いは避けたいぐらいさ」
「だったらなんで更衣室の上なんかに……」
「それは男の面子の問題だ。登場の仕方っていうのは常に意味ありげで格好良くなければいけないだぜ。後継者」
そう言う富士森に敵意は見られなかった。戦う気がないのは本当のようだ。だったら何でここに、と水知が口にするより早く、今度は富士森が言った。
「で、アンタたちはどうして授業にも出ずにこんなところに?」
「えーとですね。私たち地下ふが」
馬鹿正直に答えようとしたハルの口を水知は慌てて塞いだ。
もしここで自分たちが風水盤に向かっていることを知れば、富士森と戦うことになるかもしれない。余計な戦いを避けたいというのはこちらも同じなのだ。
ふがふがと不服を示してくる彼女に黙っているようにとジェスチャーで伝える。そして、ばれていないことを祈りながら水知は富士森を見た。
「地下……? ひょっとして地下迷宮か?」
「そ、それはその、えーと」
しっかり聞こえていたらしい。どう誤魔化そうか水知は必死になって考える。地下、とつく言葉で無難なもの。地下道、地下室、地下洞窟。そういえば富士森は地下迷宮とか言っていた。そんなものまであるのかこの学校という名の魔境には。
混乱し始めた水知に向けて、突然富士森が歩み寄った。思わず傘を握る手に力が入る。富士森は目と鼻の距離ほどに近づくと、水知へと手を伸ばし――空いている左手を握った。
「そうか、アンタも助太刀してくれるのか。流石は強敵(とも)」
「へ?」
「そうかそうか。そうとわかればさっさと会長たちに追いつかねえとな。いくぜぇ、イィヤッホーーーーイ!!」
「え、ちょっとま――うああああぁぁぁぁ!?」
「あ、水っち」
そして、何が何だかわからないままの水知を引きずりながら、富士森はいつものように駆けて行ったのであった。
44皆既日食
ずりずりと引きずられていった先は――
「・・・監視台?」
プールのすみっこにある、何の変哲もない監視台だった。
「そうさ、この監視台こそプールの司令塔。漢の浪漫を搭載した夢の素敵機関だ!」
よっこいせ、と妙に古風な掛け声とともに、富士森が監視台をよじ登る。
そして登りきると座るのではなく、その腰掛に雄雄しくそそり立つ。
左手は腰に。
両足は軽く開き、必要以上に胸をそらしさわやかな笑顔を顔に貼り付け、
『快男児』と朱で書かれた黄金のホイッスルを力の限り吹き鳴らす。
しかし音は出なかった!
「故障かよ!」
「待て後継者、確かに今音は鳴った。そしてコトは成った」
「いやそんなうまいこと言わなくてもいいから!」
ぎゅいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい。
怪しげな駆動音とともに、プールの中からエレベーター(らしきもの)が出現する。
「・・・そんな」
目を点にしてハルがつぶやく。
「プール、壊されたばっかりなのに・・・なんでこんなものが」
「地下風水盤に対して、生徒会も何もしてこなかったわけじゃないのさ」
誇らしげに富士森が言う。
「MIKに頼んでエレベーターを設置してもらったのさ!濡れるのヤだし!!」
「いやそれより先になんか対処するべきものがあるだろ!?」
恐るべし生徒会。信仰の対象にまで昇華されたMIKにまでパイプを持っているとは。
否、真に恐るべきはただのホイッスルを犬笛に加工し、それをスイッチに動く隠しエレベーターを考案してしかもその案を通した富士森なのであった。
もはや何処から予算を捻出したのかもわからぬ。この漢、会計としては超がつくほど優秀である。
「さあいざ行かん地下迷宮へ!イィヤッホーーーーーーーーーイ!!!!!」
水知とハルを両手にひっつかんでエレベーターに飛び乗る。
「時間的にこの工事は無理があるだろー!」
「いやああああああああああ!?」
エレベーターは、富士森コウの趣味によって遊園地のフリーフォール並みの速度で地下へと下っていった。
◆45(穂永)
地下を歩く三人の男女。一人は元気溌剌、一人は涙を浮かべて腰をさすり、もう一人は呆れ顔。
「うぅ……お尻をしたたか打っちゃったよぅ」
「ハハハ、あのエレベータは二人乗りってのを忘れてたぜ。過負荷のせいでケーブルが切れて落っこちたっぽい」
「しっかりしてよ、先輩。私のお尻が平らになっちゃう」
「イヤイヤ、それ以上小さくなりようがないんじゃないかな」
この言葉にかちんときた光原ハル、回し蹴りで富士森コウの後頭部を打ち砕こうとたくらんだが、腰を打った痛みのために足が上がらない。やむなく回し蹴りは諦め、唐竹割チョップで勘弁しておくことにした。すると富士森は頭をぽりぽりと掻いて笑った。
「フハハハハーッ! そんな攻撃、我には通じぬわ!」
「くっ、貴様ッ……!」
このテンションについていけない我らが主人公は、呆れつつも少し富士森を羨ましく思いつつ、早く風水盤のところに到着しないかと念じていた。その願いはなかなかかなわず、水知は無言で『露草』を撫でた。
ようやくというか、しばらく歩いていくと、あの祭壇とあの風水盤が眼前に姿を現した。風水盤の上には今なお『雨月』が突き立ち、その長い柄からは一道の蒼光が地を貫き天へと奔っていた。
「しかし、なんなんだろうな、これは一体……」水知がつぶやいた。「水落衣織や志藤会長は、これについて何を知っているんだろう」
「ハハァ、それを本人に尋ねようってわけだな、我が強敵(とも)」やたらと勘の鋭い富士森が看破した。
「富士森先輩は、これについてなんか知ってたりします?」ハルが尋ねる。
「いや全然。気象学や化学は俺の専門外だぜ、イェイ」
「自慢になってないっす」
二人の声を背景に、水知はつかつかと祭壇を登っていく。
――ここで衣織と戦った。
ふと見下ろせば血痕が一つ。これは衣織のものか。はたまた自分のか。
祭壇の上はすぐそこなのに、なぜか遠かった。どれだけ登っても、永遠にたどり着かないような気がした。足が痺れてきた。気分が悪くなった。膝を突いた。
「あっ、水っち!」
慌ててハルが駆け寄る。
「いや……大丈夫、急にめまいがして。うん、もう良くなったみたいだ」
強がりではなかった。ハルが近づいて、身体の調子は戻ったらしい。
――風水盤の影響? いや、まさか……。
気を取り直して、水知は祭壇を登る。間もなく風水盤へ。水知は『雨月』の柄に手をかけた。
「……ッ!」
弾かれて、水知はしりもちをついた。ハルがまた駆け上がってきて、水知の隣に立った。
「水っち、ホントに大丈夫?」
「いや、なんていうか……伝説の武器に拒まれる脇役戦士みたいな?」
テレビゲーム世代にしかわからない比喩を言うと、水知は起き上がってもう一度『雨月』の柄を掴んだ。掴むことはできた。が、手が焼けるように熱い。引き抜こうとするが、力が入らない。十秒ばかりのあいだ引き抜こうと試みたが、やがてまた手を離した。
――さっきは触れもしなかったけど、今度はしばらく掴んでいられた……それにさっきのめまいもハルが側に来たら治った……やっぱり何かあるのか?
そう考えた水知は、
「光原、どうも上手く抜けないから、手を貸してくれる?」
「ん? いいよ?」
タイミングを合わせ、二人で同時に『雨月』に手をかける。今までの抵抗感がない。二人はそのまま、おもむろに『雨月』を引き抜いた。『雨月』はするりと抜けた。
その時、どこかで「ぴしり」と何かが裂ける音がした。
水知は瞬時、警戒をはしらせたが、周囲には何の異常もなかった。
手の中には『雨月』。
「ようやく取り返せたなあ……」
「じゃ、あとは水落先輩を探すだけだね」
二人揃って階段を下りると、富士森は地面に鼻をつけてなにやら嗅ぎまわっている。
「……富士森、何やってんだ、と僕は聞くべきなのか?」
「是非とも」と富士森は顔を上げずに言った。
「富士森、何やってんだ?」
「……会長の追跡。そのために、臭いを追ってる」
水知も、さすがにハルも絶句した。
「このあたり、確かに会長と副会長の臭いがする。どうやら二人とも通ってったらしい。が、気になるのは会長たちの側にもう二人いること。それに、別のグループが通ってったような臭いもあることだ」
二の句が告げない水知たちに構わず、富士森は続けた。
「会長たちの側の二人のうち一人は……どうも水落衣織みたいな感じがするな。なんで同行してるんだ……?」
この名を聞いてようやく二つ目の目的を思い出した水知。
「ともかく、志藤会長の跡を追うべきじゃないか?」
「おう、そのとおりだぜ強敵。さあ行くぞ、さあさあ」
壁のランプが、迷宮の中を照らしていた。時折、道の端の方をネズミやクモが走り抜けていった。
「しかしえらく複雑な道筋だな。化学実験地下室ってのはこんな深部にあるのか?」蜃楼が思わずつぶやいた。
「ええ……雫ちゃんに聞いたところによれば、かつて極秘裏に地下核実験を行うために作られたものらしいですから」と葉露。「深さと強度は折紙つきです」
「風水盤と迷宮の次は核ときたわね」マクブライト教授が言った。「もう何があっても驚きそうにないわ」
「どうでしょう、まだろくでもないことがありそうな気がしますが」と鷹名。
嵯峨がごくりと唾を飲み込む。
「心配性だね、二人とも」と万花。「大丈夫大丈夫、いざとなれば守ってあげるって。ハツユが」
「え、私ですか?」
「守って……くれるよね?」万花は眼をきらめかせる。
「ね、と言われても……まあ、最大限努力はしますよ」
そう言いつつも、葉露は味方を決して失うまいと決意してはいた。
「まあこちらには『仙医』もいるし」安道に目配せしつつ、蜃楼が言った。「死なない限りは大丈夫さ」
「無責任ですよ、蜃楼先輩」と安道。「医術など、使わないにこしたことはないのですから」
「でもまあ――」マクブライトが言った。「これだけ手だれが集まってれば、心強いけどね」
花月葉露、蜃楼遥、万花湖子、嵯峨清香、安道然、鷹名晴嵐。この顔ぶれが相手となれば、どんな勢力も軽々しく戦闘を仕掛けてきはしないだろう。だが実際にはみな病み上がりばかりで、長期戦や多人数相手の戦いは危険だ。
――罠に気をつけないと。バラバラにされたり、囲まれたりしないように……。
葉露はそう考え、周囲に一層の警戒を働かせた。
「カチリ」
「今、誰か何か言った?」と万花。
「機械の音のように聞こえましたけど……」と嵯峨。
足元に違和感を感じたマクブライトがそろりと足を上げる。ドクロマークのついたスイッチがそこにあった。
葉露たちは一斉にそれを見た。
「あはは……」マクブライトは笑った。
「ははっ……」蜃楼たちもみな笑った。
背後から地響きが迫った。葉露たちは一目散に駆け出した。
「教授!」万花が走りながらマクブライトを睨んだ。
「仕方ないでしょ、化学者ってのはドジっ娘っていう法則があるんだから!」とマクブライトが意味不明な言い訳をした。
「どんな法則!?」
音を響かせながら巨大な岩が追いかけてきた。
「創造力の乏しい奴め!」蜃楼がやり場のない怒りを迷宮の設計者にぶつけた。「こんな古典的な罠を!」
「私たち、ここでおしまいですか……!?」嵯峨が目に涙を浮かべながら言った。
「つぶれても大丈夫だよ、ゼンがいるから!」万花が難題を下級生に押し付けた。
「風船じゃないんだから、平らなのを膨らませたりできませんよ!」と安道。
葉露は最後尾を守りながら思案した。自分の傘技で、この岩を破壊できないか。あるいは――。
「わき道があるぞ!」蜃楼が目ざとく見つけて叫んだ。「飛び込め!」
蜃楼、万花、安道が次々に飛び込む。が、彼らより前を走っていた嵯峨、鷹名、マクブライトは機を逸してわき道に入り損ねた。彼女らのことが気になり、葉露もやはり飛び込めなかった。
葉露ら四人はやがて下り坂の一番下の丁字路にたどり着いた。
が、葉露はここでまたしてもミスを犯す。丁字路のどちら側へ逃れるか指示し忘れたのだ。このため四人は、マクブライトと嵯峨、葉露と鷹名の二人ずつに分かれることになってしまった。
「聞こえる、ハツユ?」大岩の向こうからマクブライトの声が聞こえた。
「聞こえます、教授。嵯峨さんは無事ですか?」
「なんとか怪我をせずにすみました」と嵯峨の声。「そちらは?」
「私も晴嵐さんも無傷です。でも……」
「心配無用、私がいるから」とマクブライト。「途中で別れた三人組も、シンロウ・ハルカがいるから大丈夫でしょ。今は余計なことは考えず、合流できる場所と、シュウスイ・シズクたちの場所を探したほうがいいわ」
「分かりました、くれぐれもお気をつけて」
マクブライトと嵯峨のかすかな足音が遠ざかると、葉露は頭をかかえた。
「また失敗してしまった……!」
「会長、ですが誰も怪我をしてはいません」
「慰めは無用です。――迷宮内で少人数行動。蛟丸に各個撃破の機会を与えてしまうなんて……」
――衣織先輩か雫ちゃんがいてくれれば。葉露はそう思わずにはいられなかった。
気を取り直して迷宮を進んでいくと、奇妙なことに壁に植物が繁茂していた。これほど大量の植物がどうやって持ち込まれたのだろうか。しかもこの植物は強力な繁殖力と堅牢な性質を持つらしく、場所によっては壁の形を歪めてさえいる。
「これ」鷹名が言った。「どこかで見覚えがあるんですが」
「ええ」葉露はうなずいた。「これは多分……」
「カラソノ・ミドリの植物?」マクブライトが聞いた。
「はい」嵯峨が答えた。「唐園さんの菜園で見たことがあります。でもあまりに繁殖力が強く、成長が早く、他の植物にからみついて枯らしたり、建物を歪めたりするんで、すぐに栽培をやめてしまったみたいですが」
「これがここにあるということは……」
「唐園と秋水がいない!?」翼は声を荒げた。「どういうことだ?」
「グロテスクな植物が扉を捻り潰してたんですよ」香勝が答えた。「唐園緑が、隠し持っていた種をこの数日で育てたのでしょう。身体検査をちゃんとしなかったのは失敗でしたね」
翼は目の前の管制盤を見上げた。盤上には迷宮の地図が詳細に展開され、青い点と赤い点があちこちで光っている。青い点は味方、赤い点はトラップを指す。一つだけ点滅している赤は、転がる巨岩のトラップ。四つの点滅する青は、交戦中の味方を示している。
雲原豪姫から、蜃楼遥らと交戦中との連絡が入っていた。味方は豪姫、勇姫と海公兄弟。四対三、まずは味方有利の展開だった。
「まずいな。目立つ武器は取り上げたとはいえ、唐園・秋水の戦闘力は決して侮れるものではない。嵩宮雨水さまさえ、花月葉露に勝てるとは限らんというのに、彼ら二人に加わられたら……」
「まさか今日この日に脱出されるとは、最悪のタイミングですね。どうしたものですか」
「俺が見回りに行く」
「ここはこれから加速度的に忙しくなりますが」
「力負けしてしまうようでは作戦などと言っておれなくなる。戦況の把握と各所への指示はおまえ一人でなんとかしてくれ」
「――もし唐園・秋水に遭遇したとき、貴方一人で戦うことができるのですか?」
「できるのではない、するだけだ」
香勝は翼の黒い眼をじっと見た。――これほど頼れる男がいるだろうか。
「……分かりました。ここは責任を持って引き受けますので、余念なく戦ってください」
翼はうなずき、管制室を去った。
青い点がひとつ、管制室を離れていった。
やがてあちこちで青と赤が点滅を始めた。香勝は誤った指示を下すまいと、注意深く管制盤を見つめた。
◆名無し只今反省中
全ての絆において血の繋がりを最たるものだとする者がいる。
間違ってはいまい。ただ、それ以外で勝ちうることもある。
例えば、友情。
「まったく・・・役立たずだなお前らは」
「何だと豪姫! 勇姫様の姉だからとはいえ――」
「血を分かつ姉だとはいえ、侮辱することは許さん!」
あきれたような豪姫の言葉に、素早く海公兄弟が返した。
「もー! 三人ともやめてもらえる? 仲間割れしたら敵の思う壺でしょうが!!」
「それもそうだな・・・」
「「申し訳ありません、勇姫様」」
双子×2のコントのような状況ではあるが、戦いは緊迫していた。
「やはり仲間割れは難しそうですね」
「誰だよ! 急ごしらえのタッグだから身内争いさせようって言ったヤツぁ!!」
お前だろ――そう言いたいのをグッと堪えつつ(椅子を持った万花にそんなことを言ったら今度はこっちが仲間割れしかねない)、蜃楼は油断無く海公兄弟を見た。第七衣『星針』こと海公津波、第八衣『闇針』こと海公小波――第四衣である自分と、第五衣である万花であたれば苦戦する相手でもない。
だが、打ち破れない。追い詰め、追い込み、無駄に時間を食っているというのに、まだ相手は戦力を残している。こちらにも第十衣『仙医』こと安道然がいるのだが、彼は今後の戦いのためにも力を浪費させてはならない。
「ともかく、上衣の我々をここまで梃子摺らせたことは褒めなければなるまいな、海公兄弟」
「「我らは二身にして一心、故に同心で臨めば貴方であれそう簡単に負けはしない!!」」
「・・・そこで“勝つ”と素直に言ってくれればカッコいい所を見せられたのにな・・・」
上衣相手に勝つ見込みなど無いですってば――と言い訳がましく口を開く双子を見遣りながら、豪姫はパラソルを握り締めた。
「そろそろ僕らも――」
「ンだぁ!? ようやっとお偉いサマの参戦ってか、高みの見物決め込みやがって!」
ぶぅんと大きく椅子を振り回す万花に、豪姫は意外にもあっさりこう答えた。
「引こう」
「「「了解」」」
待て――お決まりのそんな言葉も虚しく、四人はパッと虚空へ消え去った。
「にゃろう・・・得意のイリュージョンってか? 負け犬は遠吠えと逃げ足には自信があるらしいなぁ、おい!」
だがその時、蜃楼の姿は無かった。
『空蝉』たる所以のその素早さ――そして、仲間のためにも負けるわけにはいかないという気迫が、勝機を掴み取ろうとしていた。
「月針! お前さえ倒せば我らの勝ちだッ!!」
神速の移動で勇姫の姿を捉えた蜃楼は勝ち誇った――四人を繋いでいるのはこの少女ただ一人、よって彼女がいなくなれば残された三人は空中分解を起こす。
勝つ! 仲間のために。
人間には素晴らしい機能が生まれつき備わっている。それは情報を無意識のうちに選別し、加工することである。それによって、注意を払うことの無い事象を簡単かつ的確に踏まえることが出来るのである。
だが反面、大変な失態を犯すことがある。
それは――思い込み。
自動的に行われる機能に依存するが故に、情報が歪められ、正しくその姿を捉えられない事態が起こりうる。
万花は己の目を疑った。
第六衣『月針』といえば、非力ではあるがそのリーチを生かした遠方攻撃を得意とする戦士であったはずだ。いかに蜃楼が力よりもスピードに長けているとはいえ、超接近戦において力押しで負けるはずは無い。
だが、その蜃楼は万花の後方に吹き飛んでおり、安道が救急手当てを行っているところなのである。
「な・・・なんだってんだ!?」
「僕には触れない、というか、僕に接近戦で勝とうなど10年早い」
顔にかかる髪の毛を宝塚風に払いながら、“勇姫”がそう答える。その立ち振る舞いは、まるで別人だ。
今まで戦っていたのは海公兄弟、雲原姉妹はその後ろで隠れていた――少なくとも、そう見えていた。
だが、本当の目的はただ戦闘を回避するためだけではなかったのだ。
「貴方がた・・・入れ替わっていますね」
「ま、ネタばらしすると、そーゆーことよね」
三人の要が勇姫であることは、何よりも彼ら自身が一番よく知っている。そこで策を考えたのだ。
「姿を消す時に僕が服装を変えただけ・・・誰でも気付く、トリックとも言えない稚拙なものだけど、まさか成功するとはね。ま、多少は役に立ったな、津波、小波」
「うわ、気持ち悪い。声が変」
「うわ、似合わない。見慣れない」
「ちょっとねー、津波、“似合わない”はまだしも“気持ち悪い”はないでしょ!」
「・・・まるで、もう勝ったような、馬鹿騒ぎだな、ランベ・リューア諸君・・・」
ふらついた足取りで蜃楼は立ち上がると、武器を構えた。と同時に、四方を大勢の蜃楼が取り囲んだ。
「負けるわけにはいかん! 皆のためにも、絶対に負けん! 我が最大奥義、『分け身の術・天』にて策などことごとく打ち破る!!」
だが、囲まれているというのに、四人はまったく動揺の色を見せなかった。むしろ余裕の表情だ。
「あらあら、今度は遥が“負けない”になっちゃったのね」
「・・・ならば、遠慮無く勝ちに行くか。津波、小波、今すぐ消されたくなかったら本気で戦え」
「豪姫、勘違いするなよ。あんたの脅しじゃなく」
「そう、勇姫様へのこの想いのため――」
「「愛のため、完全勝利を捧げます!!」」
「大声で叫ぶのヤメテ。恥ずかしい」
「殺意すら覚えるな」
「だ~か~らぁ~!! 天然コントは勝った後にやれ~ッ!!」×大勢
狭い場所に大勢の蜃楼の声がワンワンと木霊すのをゴングに、死闘が始まった。椅子を引っつかみ、万花もこれに応じた。
だが、これはいけなかった。
結果として、残りの戦力のために戦闘回避を命じられた安道が姿を消した後、偶然にもこの場所を訪れた水知によって見たものは、術を破られ、武器を奪われ、戦意こそ失ってはいなかったが、それでも戦力にならないほど叩きのめされた蜃楼と万花の姿だったのである。
他方、ランベ・リューアの被害も少ないとはいえなかったが、深手を負ったのは豪姫ただ一人。そしてその彼女も、『決戦』の門にヤツらが辿り着くまでには、戦えるまでに回復しているだろうとのことだ。これは薄れ行く意識の中、万花が聞いた言葉だ。
策謀を得てとする蛟丸が、回復役が足りないことを放っておくわけが無い。彼が呼び寄せたのは、安藤全――安道然の義理の兄である。
ともかく、この一戦はランベ・リューアの勝利に終わったかのように見えた。
だが、それも誤りである。
たとえ戦力にならなくなったとはいえ、戦士は戦意を失わぬ限り、戦士であり続ける。そんな戦士が、救世主と呼ばれる男とあまりにも早い邂逅を果たしたこと――それこそが、嵩宮蛟丸の、大きな見落としであった。
<おまけ?> 分身vs双子
「数じゃ不利よ! 何この数ってかキモッ! デカ顔がどっちを向いてもミッチリ詰まってるなんて・・・」
「「確かに」」
「なな何だときき貴様ららぁ! こここの蜃楼遥かかのささ最終奥義ぎぎをキキモイイで済ませるる気かかぁ~!」×大勢
「エコーして何言ってるか聞き取りづれぇんだよッ!!」
「というか、むしろキモイのはお前自身だ、蜃楼」
「!!」×大勢
「あぁもぉッ! ウゼェ心理攻撃に引っ掛かってんじゃねぇよ、遥!! 誰でもいい、一人ずつ潰せ!!」
「だだだが、そそうするとおおお前がが」×大勢
「もう喋るな! さっさと潰せばオレが三人も相手する時間が減るだろが!! こっちだってなぁ、必殺技の一つや二つはあんだよッ!!」
――というわけで。
≪蜃楼vs豪姫≫
「なるほど、この僕を倒すつもりらしい」
「そその通りりりぃ! ははははぁはははぁは、いいくら貴様とててこここの数を相手にににどどどこまででたた戦えるかなななぁああぁあ~~~?」×大勢
「だから何を言っているのかわからないとあれ程・・・」
この後、大勢の蜃楼と女子制服姿の豪姫という妙な組み合わせで死闘が行われていたが、蜃楼が口を開くたびに無駄にエコーするので、以降はエコー割愛。
「後ろを取ったぞ!」×少数
「これで技が出せまい」×大勢
「別に困らないが」(普通に傘を振り回して攻撃)
「ぐはっ」×少数
「はっはっは、ただ振り回すだけとは無様どば」×2~3体
「くっ、柄を伸ばすとは卑怯な・・・」×大勢
「伸ばす(グハッ)以外にも、増やしたり(グワッ)飛ばしたり(グフッ)消したり(ウワッ)出したり(ギャッ)出来るけど・・・ああ、だいぶ減ってきたか」
「クッ、敵ながら見事な技だとしか・・・」×大勢
「修練したからな」
「こっちだって包帯グルグル巻きから復帰したんだ! なめるな!! 秘義・全方山風刻み!!」×大勢
「(かかった!)この時を待っていたぞ・・・!」
「な、なんだとッ!?」×大勢
豪姫、姿を消す。
「ど、どこに・・・?」×大勢(密集中)
「分身の術、見破ったぞ! トリック・消滅」
「何ッ!?」×一人
説明しよう! 豪姫はその卓越したネタ見破りの才により、相手の不思議な術のネタを見破ってしまうことが出来るのである! そこから派生する技『消滅』が決まれば、相手に大きな隙を生じさせることが可能だ。
「二度目の技は無いと思え」
「まだだ! 力勝負で勝てると思っているのか、豪姫!」
「いいや・・・」
「このまま押し切ってくれる!」(跳躍)
「・・・だから、先程すれ違った時に仕掛けをだな・・・その手にある花、僕へのプレゼントかい?」
「え」
「そういうわけで、君の武器は全部すり替えさせてもらったから」
「貴様はスリか!!」
「手先が器用じゃないとマジシャンにはなれないからな」
「しゃらくさい! 似非マジシャンめ、これでもくらえ!!」(手裏剣の代わりにカードを投げつける)
「似非・・・じゃあ君が投げたこのスペードの10をこうしてかざすと別のカードに――」
「だったらどうした!(ちょっと気になるが・・・)」
「で、スペードの10は君の懐に戻しておいたよ」
「!」
「そうそう、スペードは剣を意味するんだってね。というわけで、カードと同じ10本分、君にナイフをプレゼントだ。ありがたく受け取れ」
グサッ ×10
「お、おのれ豪姫・・・殺す気か・・・」(気絶)
「当たり前だ。誰が似非マジシャンだ、誰が」
「そんな程度で・・・殺されそうになったのか・・・みんな・・・すまん・・・・・・」(気絶)
「禁句だ。だが、蜃楼・・・さすがは第四衣・・・やはり、あの数・・・軽症では、すまなかったようだ、な・・・」
豪姫、腹を押さえて倒れる。
≪万花vs勇姫、津波、小波≫
「これでもくらいやがれッ! 必殺・椅子嵐!!」
「あ、あの技は伝説の!」
「伝説の椅子格闘技の女王の必殺技!! まさか習得していたとは!」
「くっ、近寄れない・・・というか、もしかして、吸い込まれてる?」
「「勇姫様!」」
「地味だけど・・・針投げ」
「あ、針が吸い込まれた」
「あ、針を吸い込んだ」
「イッテッ! チクチクする!」
「「・・・地味に効いてます」」
「よいこは針を人に向かって投げないよーに」
「クソッ! ならば吹き飛ばし!!」
「うわっ! 今度こそ近寄れない!!」
「どうする、小波?」
「突っ込むか、津波?」
「・・・一時退避」
暫くして。
「あ、風がやんだ」
「お、風が止まった」
「やっぱり・・・自分が一番目が回るからね」
「なん、だと貴様、ら・・・あっちこっち、移動しやがって・・・」
「それでも立ち続けるとは、見事な闘魂」
「ファイティング・スピリッツが光っている!」
「うるへーぞ・・・まだまだ・・・戦えんだからな・・・オリャ! デリャ!! トォ!」(適当に椅子で殴りつけている)
「危なくて近寄れない・・・ここは小波、」
「ああ、津波、今こそ我らの最終奥義を・・・」
「・・・ってか、針鞭で椅子を取り上げればいーんじゃないの?」
「「あ、そっか。さすがは勇姫様」」
万花、椅子を奪われまいと抵抗するも、目を回しすぎたために抗いきれず、そのまま倒れる。
「! そうだ! 豪姫!?」
「あ、大変だッ!」
「変な格好のまま倒れているッ!!」
「格好は余計よ! 豪姫、大丈夫、怪我は――え、ちょ、深いじゃないの! どうして呼ばなかったの!?」
「・・・案ずるな、勇姫。あの男なら、おそらくこの程度の傷・・・」
「あの男・・・信用出来るか、小波」
「腕は確かだが・・・俺は嫌いだな。津波もだろ」
「・・・悩む暇などあるものか・・・『決戦』の門に、ヤツらが辿り着く、それまでには・・・戦えるまでには回復、している、だろう・・・十分だ」
「――とにかく、行きましょう。『あの場所』へ。一刻も早く」
「「了解しました!」」
四人、どこかへ足早に去っていく。
「(あの男・・・決戦の門・・・あの場所・・・いったい・・・ダメだ、気を失っちゃ・・・せめて、今の謎ワードを覚えなきゃ・・・)」
はい、つづく。
47(ばーねっと)
ガシャァァン
どこか白々しい金属音を立てて二人の背後になにかが落ちた。振り返ってみると、どこから現れたのか妙に古びた鉄格子が道を遮っている。
ふう、と冷めた顔でマクブライトは溜息をついた。ちなみに左足がやけに不自然な位置に置かれている
「まったく、数さえ多ければそれでいいとでも思っているのかしら。こんなちゃちなトラップを仕掛けた連中は」
……あなたが言いますか、それを。
起動したトラップとマクブライトを交互に見て、これまた冷めた顔で嵯峨もボソリと呟いた。その声に不安や驚きはない。そんなものとっくに通り越して、残っているのは呆れだけである。ちなみに嵯峨自身はまだ一度も引っかかっていない。呆れとはつまり、そういうことである。
「もっとこう、知性ってやつを見せてほしいわね。こんなのじゃつまらないわ」
鉄格子への興味は失せたのか、マクブライトはさっさと歩き始めた。できればあなたも見せいただけるとありがたいです、と今度は心の中だけで呟いて嵯峨も後に続く。
しばし、無言。二人の足音だけが洞窟に響く。
しばらく歩いた後、カチリ、と言う音がかすかに聞こえた。ちなみに本日十三度目である。
「!?」
直後、声にならない声を残して、マクブライトの姿が地面に飲み込まれるように消えた。反射的に手を伸ばす嵯峨。その手に確かな感触。人間一人分の重量に引きずり込まれそうになりながらも、嵯峨は何とかその場に踏みとどまった。
見れば足元には大きな穴が開いていた。無論つい先ほどまでこんなものはなかった。本当に古典的なのが好きだな、と現実逃避の意味合いもかねて嵯峨はそんなことを考える。
とりあえず掴まっているマクブライトを引き上げようとしたとき、何か小さな音が聞こえた気がした。今度はなんだ、と顔だけで音のほうを見上げる嵯峨。
――その眼前に一本の矢が迫っていた。
突然のことに嵯峨は一瞬だけ反応が遅れてしまう。その一瞬が命取りであった。
直進する凶器はスロー映像のようにじわじわと、それでいて十分な速度を持ったまま――何に十分かなど考えるまでもない――動けない嵯峨を捕らえ――るその寸前に下から投擲された何かに撃ち落とされた。
ん、と掛け声を出しながら自力でよじ登ってくるマクブライト。固まったままの嵯峨から手を離し天井を見上げる。視線の先には何か筒のようなものがぶら下がっていた。
「なるほど、二重トラップとはね。少しは頭を使ってるみたいじゃない。でもこんなシロモノでこのグレイシア・マクブライトの頭脳に挑もうなんて100年、いいえ1――」
ガン、と
鈍い金属音が地下迷宮に響き渡ったのはそのときである。
上方からマクブライトの頭を強襲したその物体は、やけに安っぽい音を立てて地面に転がった。その正体は、昔の某お笑いグループのコントでおなじみのアレである。
体は固まったまま、首だけを器用に回してそれを見るマクブライト。
「……何かしら、これは……?」
「……金ダライ、ですね」
――そのトラップによる物理的なダメージはほとんど皆無だった。しかし、精神的なダメージは筆舌に尽くしがたいものであったと、後にマクブライトは語っている。
「……低俗な。なんて低俗な! 低俗すぎるにもほどがあるわ!! こんなことを考える連中にシュウスイ・シズクが捕らわれているなんて。ああ、一秒でも我慢できなくなったわ! 急ぐわよ、サガ・セイカ。一刻でも早くシュウスイ・シズクを助け出すのよ!」
「急ぎたいのは我々とて同じです、教授。しかしこのトラップの山、加えてランべリューア配下の者たちの妨害もあると考えられます。策もないのに無理をして急ぐのは――」
危険です、と最後まで言い切ることはできなかった。うふふふふ、という不気味で無機質な笑い声が聞こえてきたからである。
「策? 決まっているでしょう? こんなときは、スマート、かつ、エレガントに――」
振り向いたマクブライトの顔は笑っていた。――眼を除いては。
「――強行突破よ」
◆49(穂永)
化学と蛮勇――最も不釣合いなこの取り合わせ。
その取り合わせを兼ね備えた稀有な人物こそ、グレイシア・マクブライトだった。彼女ほどの天才なら、慎重に歩を進めさえすれば、あらゆる罠を察知し、事前に取り除くことができただろう。だが彼女が選んだのはその方法ではない。あらゆる罠を無視し、発動したならあるいは逃れ、あるいは叩き潰して、ひたすら先を急ぐという手段だった。
だが意外にも、この手段はうまく機能した。
次々に罠を叩き壊しながら、マクブライトは駆けた。自らの身を守りつつ、そのあとに従うことが出来た嵯峨清香も、さすがは黒合羽十二衣の一人と言うべきであろう。いつしか彼女たちは、地下迷宮に入ったどのグループより遠くへ進んでいた。
やがて彼女たちが目にしたものは――これまた地下迷宮には最も不釣合いな取り合わせの――「茶室」だった。
思わず二人は目を見合わせる。とりあえず入ってみることに決めた。
「おいでやす~」
二人を見て、茶室の中に一人ぽつんと座っていた少女がにこりと笑った。
「折角来たんやし、茶ぁしばいてってやぁ」
「そんなことできますか、木枯さん!」とワンテンポおいて嵯峨が言う。「あなたはランベ・リューアの一員のはず、敵の差し出すものを飲むなんて」
「ランベ・リューア? 彼女も秋水を閉じ込めた一人なの?」とマクブライトが聞く。
「そもそもですね」と嵯峨。「類似の部活は同じ勢力に属する場合が多いのですが、伝統芸能、つまり花道・茶道・書道はそれぞれ別の組織に属しています。花道部は晴天同盟の膝下にあり、生徒会副会長美田原陽子は花道部部長でもあります。書道部は雨衣で、代表は私。そして茶道部、特に裏千家茶道部はランベ・リューア傘下にあって、この木枯渚はその部長なんです。したがって、彼女は敵で――」
「あはん、同じ伝統芸能に連なる部長同士なのに、嵯峨ちゃんたらつれないのねん。わらわはぁ、戦いで疲れた皆さんにお茶を差し上げたいだけなのにん」
「じゃあOK。頂きましょう」とマクブライト。「大丈夫、毒が入ってるかどうかは、見ればわかるから」
化学物質には無色透明なものも多いはずですが。
マクブライトは座った。やむを得ず、嵯峨もその隣に座る。
「カマン、ロボットォ~!! 今日もイケてるぜぇ!!」と渚が叫ぶと、カタカタと音が聞こえてきて、どこからともなくお茶汲みのカラクリ人形が現れた。カラクリ人形はぎこちない動きでマクブライトの前まで移動すると停止した。
マクブライトは人形の運んできた茶を一瞥する。確かに毒が入っていないことを見て取った。
「では、頂くわね」
マクブライトが人形の手から茶碗を取った瞬間――。
カチャカチャカチャ!
どうしようもなく耳障りな音を立てながら、カラクリ人形が巨大化した。巨大化しながらも次々と変形を重ね、あたかも変身ヒーローものの巨大ロボットのような様相を呈していく。その表情はさきほどの童子の顔から一変、恐ろしげな鬼のものとなっている。マクブライトは人形浄瑠璃で、人形師が手をかざすと、女の顔が鬼の顔に早変わりする場面を思い出した。
――逃げなければ!
一瞬呆然とした嵯峨が悟るより早く、マクブライトは行動していた。手元にある茶をカラクリ人形に投げかけたのだ。機械が水分に弱いのは常識である。
「甘いわ甘いわ甘いわぁ! とっくに防水加工済みだぜ、フハハハハハハァ!!!」
ギッチョン、ギッチョン、ギィーヨン、ギィーヨンと音をたてながらカラクリ人形が迫る。マクブライトと嵯峨は茶室の外に飛び出す。人形は相変らずギッチョン、ギッチョン、ギィーヨン、ギィーヨンと音をたててついてくる。
「ふっ、そんなスピードで追いつけると……」
いや、違う。カラクリ人形は驚くべき速度で走ってきた。
「教授、このカラクリ人形、音とスピードが合ってません!」と嵯峨が叫ぶ。
「オホホ、ギッチョン、ギッチョン、ギィーヨン、ギィーヨンなどという音は、人形の速度を誤認させるためのおとりにすぎませんことよ。第一このワタクシのカラクリが、そもそもギッチョン、ギッチョン、ギィーヨン、ギィーヨンなんて無様な音を立てると思って? ギッチョン、ギッチョン、ギィーヨン、ギィーヨンはカラクリ内部からラジカセで流している音ですわ」
マクブライトと嵯峨は走りに走った。あとからカラクリ人形と木枯渚が追いかけてくる。
追い詰められるのが物語の約束だ。
二人は急坂に追い詰められた。急坂といっても、その角度は六十度ほどもあり、表面にとっかかりもなく滑らかで、人間が上ることはできないものであり、つまり壁と同じであった。
急坂の上からは、何かが激しくぶつかりあう音がいくたびも聞こえてきた。
「ふむ……上のほうも佳境のようじゃな」と渚。「この音響からすると、恐らくは翼と緑。あるいは”あやつ”も緑とともにおるのかもしれぬな。力量は互角、じゃが地の利は翼にある……さあ、こちらも決着をつけようではないか」
カラクリ人形の口が開き、口の中に白い光が輝き始めた。
――これってまさか……。
慌てたマクブライトは液体窒素銃を乱射し、嵯峨は筆を揮った。だが銃も筆もかすり傷すら与えられない。人形の口中の光が強くなるが、しばらく何も起きない。エネルギーの充填に時間がかかるのだろう。
「薙ぎ払え!」と渚。「どうした、それでも世界で最も邪悪な一族の末裔か!」
閃光が奔った。
マクブライトが急いで光学シールドを展開した。これによってなんとか二人は命を取り留めた。
「凄ぇ……世界が燃えちまうわけだぜ」と思わずマクブライトがつぶやく。
「教授、大丈夫ですか!?」
「ええ、でもシールドはもってあと一度よ……」
カラクリ人形の口中に再び光が集まり始めた。万事休すと見えたとき、助けられるはずの者が助けに現れた。
急坂を少女が転がり落ちてくる。
「痛たたた……」
打ちつけた尻を左手でさすり、思わずこぼれた涙を右手で拭う。それから彼女は、眼鏡の奥のまぶたを開いた。
喜ぶ前に驚いた顔の嵯峨とマクブライト。そして憎しみを露わにした渚。白い光を強めているカラクリ人形。
「――なるほど、そういう状況なわけね」秋水は目を細めて言った。「教授、液体窒素銃は持ってる? 私の武器は、蛟丸に奪われてしまったから」
「持ってるけど、アレにはきかないみたいよ」それでも銃を渡しながら、マクブライトは言う。
「大丈夫」秋水は銃を受け取ると、おもむろに立ち上がり、銃口を斜め上に向けた。
「薙ぎ払え!」と渚が叫ぶ。「どうした化け物、さっさと撃たんか!」
エネルギーが臨界に達しようとしたまさにその瞬間、秋水はカラクリ人形の口中を撃ち抜いた。
行き場の無くなったエネルギーを上に向けてゆっくりと放出しながら、人形は崩れ壊れていった。
「カラクリ人形死んじゃった……」と嵯峨がつぶやく。
「そのほうが良いんじゃよ、シズクの怒りは大地の怒りじゃ」とマクブライトが諭す。「あんなものにすがって生き延びて何になろう……」
「こらそこ、何を敵のネタに乗せられてるのよ」と秋水が突っ込む。
この間、渚は逃げ出そうと図った。だが秋水が見逃すはずはない。液体窒素銃をその後頭部に向けると、文字通り冷たい一撃を放った。渚が痙攣して倒れる。
「ちょっ、殺してしまったのでは……」嵯峨が慌てる。
「良く見て、嵯峨さん」と秋水は渚の遺体を示す。いや遺体ではない、先の巨身――じゃなかった、お茶汲み童子と同じカラクリ人形だ。「渚が自分で危険な場所に出向いてくるわけはないわ。おそらく本物は蛟丸の側に控えているはず……」それから秋水は後ろを振り返って急坂を見た。「この坂道――唐園君を助けに戻るのは無理みたいね。さて――」
秋水は二人のほうをじっと見た。やがて急にはっとして二人の間に割り込み、嵯峨を腕でかばいながらマクブライトを睨みつけた。
「嵯峨さん、この教授になにかされなかった?」
「え?」
「恥ずかしくても勇気を出して告発しなきゃ。こういういやらしい教授を野放しにしておかないためにも……」
「ちょっと、シズク、人聞きが悪いじゃないの。私は別に法に触れるようなことはしてないわ」
「ニューヨークの地下鉄で、人ごみにまぎれて他人の腰を撫でてきたのは誰だった?」
「いや~、ばれるとは思わなかったわ。って、そんな過去の話はどうでもいいでしょ。私だって時と場所はわきまえてるんだから」
「――通勤ラッシュの地下鉄だったらTPOに合ってるわけ……? それはともかく、本当に嵯峨さんには何もしてないんでしょうね?」
マクブライトが何度もうなずく。秋水は嵯峨に視線をやる。
「ええ、確かに触られたりはしてませんが」嵯峨が赤面して言う。「言われてみると、ここ(と合羽の胸元の小さな裂け目を指す)、罠に引っかかって(引っかかったのは教授ですけど)破いてしまったんですが、教授は妙にここに視線を送ってきたような――」
「ご、ごほん、良いじゃないの、私が破いたわけじゃなし」
「良いわけはないけど、詮索してる時間はなさそうね。回り道を探して唐園君を助けに行かなきゃならないし」秋水が言った。「では歩きながら聞かせてもらうわ。今までの経過と、どうして貴女たちがここへ来たのかをね」
◆
穴だらけの場所だった。ややもすると転落しそうになる。秋水のように。
初めはあちらで、つぎはこちらでと、矢継ぎ早に火花が飛び散る。ランべ・リュ―ア四天王筆頭と雨衣黒合羽第一衣、二つの勢力の二番手同士の戦いに相応しい、力強く俊敏な戦いであった。
「しばらく見んうちに、腕を上げただな」
「お前こそ、数日間幽閉されてなおそれだけ動けるとはたいしたものだ。それでこそ――」
穴を避けつつ、か細い足場を跳びまわりながら、二人は戦った。かたや蝙蝠傘、かたや高麗人参をふるって。
「回転根舞!」
「飛影炎剣!」
人参が黒野井の右肩を浅く裂き、蝙蝠傘が唐園の左頬を小さく割った。
同時に黒野井は体勢を下げると、唐園の足を狙って切りつけた。長身の黒野井だが、唐園はさらなる巨躯を誇っている、それゆえかえって足元には隙が出来やすかったのだ。唐園は後方に小さく跳んでかわす。が、穴に足が引っかかり、落ちはしなかったが少しよろめいた。それに乗じて黒野井が畳み掛ける。唐園は防戦に回らされた。
唐園緑は焦った。黒野井翼のほうはというと、この事態に備えて悪地での戦闘術を磨いてきたため、若干の余裕があった。渚の見立てどおり、元来の力量は互角でも、地の利で差がついていたのだ。
「とどめだ!」
傘を振り上げた黒野井の手元に、何か赤いものが高速で飛来した。慌てて身を退けてかわす。黒野井の足元に突き刺さった。それは薔薇だった。
黒野井と唐園が同時にそちらを向く。
視線の先には、花のような少女――。
「生徒会副会長、兼花道部部長、美田原陽子。義によって雨衣の唐園君にお味方します!」
◆
管制室。険しい表情の香勝が、点滅する管制盤を睨みつけている。
――渚もやられてしまいましたか。
すでに二人には脱出され、秋水は嵯峨・マクブライトと合流を果たした。この調子では唐園・秋水を再び捕えることは難しそうだ。
――作戦には、もう成功の目はほとんど無いですね。ここは撤退を指示したものでしょうか。
来るべき最終決戦のために、ここで戦力を失うようなことがあってはならない。あたう限り敵に打撃を負わせたのち、全員無事で撤退しなければ――。
それにしても、迷宮には唐園、秋水がうろついている。もし彼らと遭遇したとき、互角に打ち合えるのは紫電先生とデミトリだけだ。これに加えて最も恐るべき敵・花月葉露もいるとなれば――。蜃楼と万花に重傷を負わせただけでよしとするべきだろうか。
――やはり作戦続行の方が危険ですね。
香勝が全員に撤退を指示しようとしたそのとき。
「動くな」
金の糸が咽喉元に伸びてきていた。
「――これは水落総帥」務めて冷静さを保ちながら、香勝が言った。「お元気でしたか」
「おかげさまでな」衣織は答えた。「『菜鬼』と『禍炮』を解放してもらおうか」
「申し訳ないがそれはできない相談です」香勝は言った。「二人とももう逃げ出してしまいました。この果て無き迷宮のどこを彷徨っていることやら、我々にも検討もつきませんね」
そう言いながら、香勝は退路を探した。しかし首筋に衣織の糸を突きつけられている上、その側にはなんと生徒会長志藤元気までもが控えている。衣織、元気、さらに医術部部長・影日玄青までも相手にして強行突破を目指すのはあまりに無謀である。
「なるほど、さすがは雨衣の上三衣を負うだけのことはある」元気が言った。「水落総帥、二人がすでに逃げ出したのなら、可及的速やかに合流すべきだ。美田原君のことも気になるしね」
「だが志藤会長、ここをこのままにしておく手はないでしょう」と影日。「見たところここは管制室。ここを抑えておけば、ランベ・リューアの命令系統を絶つことができるはずです」
元気と影日はともに衣織を見た。衣織はうなずく。
「降服しろ、ジャック。もうお前に勝ち目は無い。それに」衣織は言った。「このまま蛟丸を放置すれば、世界は滅亡してしまうぞ」
「降服……?」香勝はいつものいやな笑顔で言った。「ご免こうむります。ランベ・リューアの人間はたやすく敵側に寝返ったりしない」
香勝はさっと手を伸ばして、管制盤の上のつまみの一つを思い切り捻った。部屋の照明が急に強く――ほとんど真っ白なほどになる。思わず衣織たちは目を伏せる。
「今です、全さん!」
何も見えなければ、黒も白も闇と同じである。その白い暗黒の中から、無数の針が飛来したのがわずかに見出せた。いな、感じ取れた。
衣織が刹那のうちに強度の高い布を織り上げる。針の攻撃が終わって布がはらりと落ちると、すでに照明はもとに戻っていた。香勝の隣にいたのは――。
「なぜ貴方が――!」衣織と影日が同時に叫ぶ。「先代雨衣総帥兼医術部部長――安道先輩」
安道全――安道然の義兄にして、かつての雨衣総帥――は答えず、両手の針を構える。その横では蛇之目香勝が、同じく戦闘準備を万端に整えている。衣織は右手に玉葉針をしっかと持ち、左手で糸の束を按じた。元気は生徒会長に代々伝わる日傘をあみだにした。影日は一歩下がって、戦況を見つめた。
最初に痺れを切らしたのは元気だった。御しやすい相手からと判断したのか、まず香勝に向かって一直線に突進していく。
――生徒会長がジャックを倒してしまえば、二人で安道先輩に勝つのは容易だ。
そう判断した衣織は、玉葉針を振るって全に踊りかかった。変幻自在にして強豪無双な手芸の技が、全をして一歩の優位をも得させない。
「くっ、水落君、腕を上げたものだな」
「先輩、あとでたっぷり事情を聞かせていただきます」
一方の戦いはすでに元気の優勢が明らかだった。衣織には及ばないとはいえ、元気はさすが生徒会長にして晴天同盟の盟主、一組織のトップが、せいぜい高等幹部程度に負けるわけにはいかない。窮地に陥った香勝は必殺の一撃に賭け、天――というか、天井――めがけて跳び上がった。
「天女散花!」
あの雪守氷衛の鉄壁の防御を打ち砕いた技である。
「甘く見るな、香勝君!」
元気はその一撃を正面から受け止めると、思い切り横に払った。香勝の身体が吹っ飛んで管制盤に激突する。
その時、管制盤が故障して照明が落ちた。管制室のみならず迷宮全体に――今度は文字通りの――暗黒が覆い被さってきた。
50(ばーねっと)
突然訪れた暗闇を、安道全は即座に利用した。小さく飛び退いて間合いを取ると、全周囲に向けて針を乱射したのである。
いかな戦士であろうと闇に飲まれたこの空間の中で針の軌道を完全に見切るのは不可能。実際、全自身にも投げた方向が分かっているだけで、針そのものは見えていない。
しかし、一見有効に見えるこの攻撃は実のところそれほど効果を期待できるものではなかった。広範囲に攻撃を行うということはつまり攻撃の密度が薄くなるということでもある。しかも特に狙いをつけずに投げているため、軽傷ならともかく、致命傷を与えることはまずありえない。さらに言うなれば、先ほどのように防御されたり遮蔽物に隠れられたりするということも十分に考えられる。
だが、それを理解していながらも全は攻撃を止めなかった。なぜなら――それは攻撃ではないからである。
直後、針の乱射はそのままに全は駆けだそうとした。目指すは出口。
そう、この場からの脱出こそが全の狙いであった。作戦はもはや失敗したも同然、ならば不利な状況のままここで戦う必要はない、と彼は判断したのである。
針の弾幕は、突然の暗闇というアクシデントによる錯乱とあいまって足止めとして十分な効果を発揮する。その証拠に今、目前にいるはずの水落衣織からの攻撃も途絶えている。いける、と自らの策の成功を確信する全。
しかし全には誤算があった。この暗闇を彼以上に利用した人間が背後から忍び寄っていたのである。
その人間の名を影日玄青という。
傍観者として戦いを見ていた玄青は、照明が落ちた瞬間に誰よりも早く――全よりも、である――行動していた。全が針を乱射する前に気配を断って彼の背後に移動していたのである。
策の成功を信じて疑わなかった全が背後の気配に気付いたのは一歩目を踏み出そうとしたその瞬間であった。そして次の瞬間には、全の意識は途切れていた。
非常電源に切り替わったのか、照明が復活する。一度照明が落ちてから約十秒後であった。
再び光を得た管制室に立っていたのは、布で全身を防御した衣織と、気絶した香勝を盾にした元気と、全の首筋のツボに針を突き立てている玄青であった。
すでに意識を失っている全に向かって玄青は小さく呟く。
「先輩……、私は先輩や然君ほど投擲は上手くありませんが、こういう使い方なら先輩にも負けない自信があるんですよ」
そして、ためらいもなく針を引き抜くと、全の体は地面に崩れ落ちて動かなくなった。
こうして、ついに管制室は制圧されたのだった。
久しぶりのエラー。これで何回目だろ。
富士森コウ。忘れたころにヤツは来る。(ばーねっと)
もはやエレベーターの役目を果たしていない。数秒っていうか1,2秒で下に着くので、衝撃に備えてください。(皆既日食)
これ以上放置するのもアレなんで、先に書かせていただきました。
さて地下迷宮の死闘が開始。まずは蜃楼・万花・安道VS雲原姉妹・海公兄弟(って書いてませんけど)。唐園・秋水は助けられるまでもなく脱出してしまい、ランベ・リューアの作戦も狂いつつあります。
折角の機会なので、色々な対戦カードを組んでみたいですな。唐園・美田原VS黒野井(ナンバー2対決!)とか。もちろんそろそろ水知VS葉露もやってみたいところ。
さてそのあたり、どうなりますことやら。穂永。
そうそう、雨月を抜いたときの「何かが裂ける音」ですが、裂けたのは空という意図だったりします。しばらくして迷宮を脱出すると、空に巨大な亀裂が走ってたりするんじゃないでしょうか。穂永追記。
ランベ・リューアえこ贔屓。御免。(名無し)
嵯峨の名前の読みはセイカであってるんでしょうか?(ばーねっと)
およそ一月ぶりの更新。ようやく秋水復活です。
美田原陽子は罠にかかって衣織・元気とはぐれてしまったという設定です。そう書いとくのを忘れてた。穂永。
またしても一ヶ月ぶりとかありえないですよね……(自己逃避中)。(ばーねっと)